女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」:Prologe「Overture」(9)-2

「じゃあ、シェリー、行ってくるからな。お母さんの言うこと聞いて、良い娘にしてるんだぞ」

漆黒の闇の中、行方不明のシェリーの父が、アイアンランスを担いでシェリーに語りかけてきた。
気付けば、シェリーの隣に、何故か亡くなった母が居る。
そして、左隣後方には、祖母が居た。

「もちろんよ、シェリーは良い娘だもんね」

そう言って、母は肖像画そのままの笑顔で、シェリーを見やる。
しかし、シェリーの姿は、過去の幼かった頃のそれではなく、19歳の今の姿のままだった。

「!? ま、待って、お父さん…! 行くって、どこに!?」
「何って、老山龍討伐に決まってるじゃないか、おかしな事言うんだな」
「で、でも、その槍で? 『アイアンランス』で行くの? それじゃ、勝てないんだよ!」

「お父さんに任せろ、必ず老山龍を倒してやるからな」

会話がかみ合わない。
シェリーは、思わず叫んでしまう。

「だから、その槍じゃダメなんだってば! お父さん、そんな事も分からないの…!? 本当に、ギルドナイトなの…!?」
「? どういう事だい、シェリー?」
「…アイアンランスは、弱いんだって…。 それじゃ、老山龍を倒せないんだって、あの人が、そう言ってたもの」
「あの人? あの人って、誰だい?」
「誰、って…」

誰だったろうか。
シェリーが逡巡している間に、父は言葉を続けた。

「シェリーは、お父さんが強いって、信じられないのかな」
「だ、だって、お父さんはね、その槍を使って、老山龍を撃退できずに、敗れるんだよ!」

すると、父はびっくりしたように肩をすくめる。

「そんな事を言われるとは思わなかったな」
「嘘じゃないわ! それで、村のみんなに、罵倒されるの! お願いだから、もっと…」

もっと…何だ?

「心配要らないよ、シェリー。 お父さんはね、仮に敗れて、村が壊滅状態になったとしても、その立て直しに尽力するつもりさ」
「そうよ、いざとなれば、お母さんだって頑張っちゃうんだからね」

「で、でも、実際は…!」
「シェリー」

祖母が、たしなめるような声をかけてくる。

「…お婆ちゃん」
「お前は、お父さんとお母さんの事が、信じられないのかい?」
「だ、だって、だって…。」

「それとも、お父さんと、お母さんの事が、嫌いになったのかい?」
「う、ううん、そんな事ない、けど…。」
「嫌いになったんじゃ、ないのよね?」
「…う、うん」
「この子はね、私が産んだ、自慢の子さ…。 決していい加減な事を言う子じゃないよ」

闇の中の祖母は、行方不明の父を顔で指して、そう言う。
祖母は、実直で、誠実で、物静かな女性だった。

「だから、お前のお父さんは、きっとそうする。 安心して、お見送りしなさい」
「じゃあ、行ってくるよ、シェリー」

そう言って、行方不明の父は、闇の彼方から射してくる、光の方角に向って歩いて行く。
やがて、その姿は、まばゆいばかりの光に溶けて見えなくなる。

「お、お父さん…!!」

シェリーの父は、姿が全て消える直前、ゆっくりこっちを振り向き、手を振って笑った。
それは、家の居間の肖像画にある、そのままの笑顔だった。


窓から差し込む、穏やかな曙光の中、シェリーは眼を覚ました。
昨日、狩りに行った後の肉体的疲れと、青年ハンターから真相を知ったショックで、泣きながらいつの間にか寝ていたらしい。
体が冷え切っていた事を思い出したかのように、思わず身震いする。

「よかった、風邪引かなくて…。」

そうひとりごちたが、彼女の問いに答えたのは、あまりにもなじみ深い静寂だった。

「…?」

ふと、周囲を見回すが、あの青年ハンターの姿は、どこにもない。

「…ね、ねぇ、貴方、どこ? どこにいるの!?」

しかし、それにも返答はない。
物音どころか、自分以外の気配すらしないのを悟ったシェリーは、慌てて屋根裏部屋と納屋に行くものの、青年の姿は見当たらない。

「(マズイ、もしかして『出てって』なんて言ったから、どっか外で野宿でもしてるんじゃ…)」

彼は、愛用のヘヴィボウガンが、夜露で濡れる事を嫌っていた。
シェリーは慌てて家中を探したが、青年ハンターの姿は、どこにも見当たらなかった。

「(…何よ、あの人ったら、何処行ったのよ!!)」

その時、シェリー宅の玄関ドアを、ゴンゴンとノックする音が聞こえる。
青年ハンターか、と思ったシェリーは、慌てて玄関まで走り込み、勢いよくドアを開けた。

「もう、ちょっと、どこに行ってたのよ!? 探したんだから、心配させないでよ!」

だが、そこに居たのは、青年ハンターではなく、ゾラだった。

「…なんだい、あたしが、件の青年ハンターとでも、思ったのかい?」

意外な客でもあったが、まるで心を読まれたようなリアクションに、シェリーはしばし硬直する。
それを見て、ゾラはため息をつくと、ぞんざいに話かけてきた。

「シェリー」
「な、何ですか」
「申し訳ないけどね、食材はもうやれないね」
「…え?」

「例のハンターさんだよ、お前さんが、村長から面倒見るように、って言われてた人だよ」
「そ、それが」
「ウチで、面倒を見る事になったんだよ」
「え!? な、何で…」
「お前さん、自分が具合が悪いからと言って、彼を外に追い出したそうじゃないかい」
「そ、そんな事、言ってな…」

だが、ゾラはシェリーの抗弁を遮るように、大声で叱咤してきた。

「何を考えてるんだい、この穀つぶしが! あの人は、村を救いに来た英雄なんだろう!? もっと礼を尽くして遇すのが、当たり前だろう!? それを、自分の都合で追い出すって、何を考えてるんだい!」
「…!!」
「もし、それで、彼がヘソを曲げたりして、この村から去ったりしたら、どうする気だい! ウチらが、老山龍に踏みつぶされてしまえば、それで良いとでも思ってるのかい!? 責任取れるのかい、あんた!」

何も言い返せなかった。
全くその通りだった。

「あのハンターさんはね、あんたから追い出されて困ってたんだ」
「それを村長の許可を得てだね、当分、ウチでお世話させて頂く事にしたんだよ」
「彼の食事の面倒をみなきゃいけないからね、もう当分、あんたに渡す分の食材なんて無いよ!」

「そ、そんな…。」
「食材くらい、自分で稼いできな! 自分の事すらロクにできない奴が、人の面倒をみようだなんて、おこがましいんだよ!」

そういうと、ゾラはくるりを踵を返して、荒々しくドアを閉め、外に出ていった。


…そして、ゾラは隣の自宅に戻った所で、ふう、と大きくため息をつく。
娘のコルネットから、「シェリーと絶縁宣言をしてきて」と言われたのだ。
それを一応こなし終えての、安堵のため息だった。

コルネットは、絶縁してと言っていたが、一応、同じ村人なので、あまり追い込んでは後々こちらにもよろしくない。
できるだけ、自分たちを正当化して、シェリーを叱りつけてきたつもりだった。
まぁ、別段間違った事は言ってないし、あれだけ言っておけば、しばらくは家に近寄らないだろう。
村長が言うには、老山龍が来るまでには、あと半年ほどあるとの事だった。

今、コルネットと青年ハンターは、デートに出かけている所だ。
それまで上手く行くかしら、と思うと、さっきとは色の違うため息がこぼれた。


その頃、ディキシー、マイノ、タッシュの3人組は、タッシュ宅の屋根裏部屋に居た。
タッシュ宅は豪農であり、その陽の射さない屋根裏部屋には、様々なガラクタが、うず高く積まれていた。

「あのよォ、その、ボウガンを駄目にしちまう方法って、何なんだヨ、いい加減教えろヨ」
「だから、後で話してやる、って言ってるじゃねーか! わざわざ此処まで付いて来なくて良いんだよ、馬鹿が!」
「…お前が、探しものがあるというから、手伝おうとしてるんじゃないか」
「要らねー世話だよ! いいかお前ら、そこらへんの品物、絶対扱うんじゃねーぞ!」

「エロ本でも隠してるのかヨ」
「ありえるな」
「ねーよ、バカ! 手を付けるんじゃあねーぞ!」

「でもよォ、何もせずにしてるのも暇なんだヨ、何かさせろヨ」
「あるいは、せめて説明くらいしてくれ」

タッシュは、心底ウザそうに、2人に対して背を向けたまま言う。

「『モンスターの体液』だよ」
「…体液?」
「ああ、こないだ、密林にファンゴ捕まえに行った時、一緒に取って来ただろ」
「それが、どうしタ?」
「アレはな、鎧の接着剤の代わりになるほど粘度が高いし、乾けばなかなか取れなくなる」
「…それを?」
「ボウガンの砲身の中にブチ込めば、中で乾いて、暴発の危険性が出てくる。まともな神経してる奴なら、もうその銃を使おうとはしねぇよ」
「なるほド! じゃあ、もうそれで役立たず決定、って訳だナ!」
「「バカか、お前」」

マイノとタッシュが同時にツッコむ。

「銃を取り換えれば意味ねーじゃねーか」
「あ、そ、そうカ…。 じゃあ、どうすんだヨ」
「そこで、銃を『すり替え』るんだよ」
「…すり替エ?」
「ああ、そこで、クソ弱い銃とすり替えちまえば、アイツがどれだけ強かろうが、ファンゴ一匹にも手こずるはず…。」
「なるほど、それを見た村人達は、こぞってアイツに幻滅、って訳だナ!」
「そういう事だ。いくらなんでも、ファンゴに手こずる奴が、老山龍に勝てるって思うバカは居ねぇだろうからな」
「なるほど」
「さすがだナ、タッシュ! それ、イケてるゼ!」

ディキシーとマイノが、2人して感嘆の声を上げる。

「じゃあ、お前が探してるのハ、そのクソ弱いボウガンなんだナ?」
「俺たちも探してやるよ、その方が効率良いだろう」
「だから、テメーら! 余計な事すんなっつってるだろが、このバカが!」
「気にすんなヨ、エロ本出たって、見なかった事にしてやるからヨ!」

タッシュの制止を無視して、その「弱いボウガン」を意気揚揚と探そうとするマイノとディキシー。
2人を怒鳴りつけるタッシュだったが、彼にとって不運な事に、そこで過去の因縁が眼を覚ました。

「…?」

ふと、ディキシーは、木箱の中から漏れる光沢に目が行く。
木箱の紐が解けかけて、中から、装飾を施された金属が見える。
…値打ちものか?

好奇心に駆られ、彼はその木箱の蓋を取り払い、中の物を掴みだす。
それは、ズシリと重い金属の棒…いや、それは武器という事がすぐに分かった。
傭兵やハンターが使う「ランス」だ。

「…なんだ、こレ」

取り出したその槍は、豪奢な作りでありながら、ただならぬ覇気が漏れている。
槍の先こそ欠けているものの、それは、長い使い込みに耐えた業物である事が、ディキシーにすら分かる。
握った感覚で、これは歴戦の戦士が使っていたもの、という直感があった。

「…テメェ!! 勝手に漁るなって言ったろうが! さっさとソレを仕舞えっ!」

「…おい、タッシュ…。」
「何だ! さっさと人のモン、仕舞えって言ってるだろうが、バカがッ!」

だが、ディキシーは呆けたように、その槍を見つめ続けた。
彼らは当然その槍の事を知らない。 これからも知ることはない。
その槍の名は、かつて天の怒りに触れた、神話の巨塔を意味する「バベル」と言う。

ディキシーは、その槍を見ながら、呆然と問うた。

「…もしかして、こレ、シェリーの父親のか…?」


その頃、シェリーは、密林へと向かって、一人峡谷道を南下していた。
父の形見である、「アイアンランス」を抱えて、泣きながら走り続けていた。

「(何で…。 何で、こうなってしまったの…?)」

自分は、あまりにもうかつで、愚かだった。
それ故に、何もかも無くしてしまった。

自分たちの家族は、高貴な生まれではなかった。もちろん自分も。

コルネットは、あの青年を気にいっていた。
おそらく、青年ハンターと、もう逢う事は叶わないだろう。
あの夢のような日々は、たった三日間で終わりを告げた。

同時に、生活費を得る手立ても失った。
ハンターとしての訓練を受ける事もできなくなった。

そして、食材を買う事もできなくなった。

何もかも、振り出しに戻ってしまった。
自分にはもう、何もない…。


戦おう。
モンスターと戦って死のう。

それだけが、何もかも失った、彼女の最後の自尊心だった。


<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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