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女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」:Prologe「Overture」(5)

「じゃあ、これからよろしくね。しばらくお世話になります」
「え…ちょ、ちょっと待って、それってどういう事」
「どういう事って、そういう事だよ。君の家でしばらく寝泊りさせてもらうから、よろしく、って事」
「えええーー!?」
「うわっち!」

思わず、ドガッシャンを派手な音を立ててシェリーは立ちあがる。
その衝撃で、テーブルの上に置いてあった青年のスープ皿が傾いて、スープが思いっきり体にかかった。

「あ、ご、ごめん…。 じゃなくて! 何で貴方が、ウチに泊まる訳!?」

ナフキンで飛び散ったスープを拭きながら、青年がさも当然のように答える。

「村長に言われたでしょ、老山龍が来るまで、丁重にもてなせって」

言われてみればそうかもしれない。
シェリーは、今日だけの話かと思いこんでいたが、良く考えれば、そっちの方が正しいかもしれない。

「え…、え…。じゃあ、今日から、アンタと一緒に生活する、って訳?」
「そうなるね」
「嫌よ! 何で、その、年頃の男女が一つ屋根の下な訳!? 間違いがあったらどうするのよ!」
「僕は平気だよ」
「あたしが嫌なのよ! 昼はここに居てもいいけど、夜はどっか、村の近くに宿を取ってよ!」

そういうと、青年は憮然とした表情で返した。

「無理だよ」
「何で!?」
「お金がない」

…実に単純明快、かつストレートな返答だった。

「全然? 全く? 1zもないの?」
「1zもない訳じゃないけど、少なくとも無駄使いできるほどじゃない」
「何で、そんなにお金ないのよ! 貴方、中央ギルド所属のハンターなんでしょ!?」
「だって、僕、ガンナーだから」
「へ?」

青年の話によると、剣士と違い、ガンナーは弾がないと戦えない。
しかし、肝心の弾を揃えるのに、とにかくお金がかかる。

「どんだけかかるのよ」
「貫通弾レベル3を全部揃えるなら、2,000zは必要かな」
「2,000z!?」
「一番安価な弾でも、最低300zは必要なんだよ」

それらを一通り揃えるとしたら、これは凄まじい出費になる。
まともなクエスト報酬なんて、弾代だけでふっとんでしまう。

「…貴方、それでよくやっていけるわね」
「だから、ガンナーはいつも収支に敏感なんだ。 ガンナーの一番の強敵は、弾代と赤字だよ」
「それで、お金がないって訳?」
「一応、対・老山龍のために、一通り弾丸を揃えてきたからね… おかげで、馬車代も出せなかった」

だから、あんな所をウロウロ歩いてたのか。

「はぁ…。そんな所まで、似てなくて良いのに…。」
「…? 何のこと?」
「なんでもない。 じゃあ、悪いけど、夜だけ野宿してよ」
「嫌だよ」
「何でよ! 男だったら、夜、外で寝るくらい、我慢できるでしょ!?」
「悪いけど、僕は野宿嫌いなんだよ」
「どんだけ坊ちゃんなのよ!」
「違うよ」

そういうと、青年は、隣に置いているバッグに、静かに手をやる。
彼の重銃「アルバレスト改」が、その中で眠っている。

「こいつが、雨や露で濡れちまう」

なんだそれ。

「いいじゃない、ケースあるし、そんな簡単に濡れないでしょ」
「金属部品が錆ると、メンテが大変なんだよ。それに、火薬がしけっちゃ話にならない」

シェリーは、大きくため息をつく。

「はぁ、もう…。 分かったわよ」
「じゃあ、僕はここにしばらくご厄介になるって事で」
「ダメよ」
「ええ!? あのさ、村長さんに、丁重にもてなせって言われてたでしょ?」
「そうしてあげたいけど、あたしもお金がないの」
「へ?」
「今日、この食事を作るのだって、結構材料費かかったのよ」
「うん」
「だから、ここに泊ってもいいけど…」
「うん」
「代金は、体で払って」

…そういうと、青年は眼を見開いた。
でも、元々が糸目なため、妙に鋭い三白眼になっただけだった。
瞳の色も真っ赤で、ちょっと、怖い。

「…そういうのが嫌なのかと思ってたけど…。 案外、君、性に対して積極的なんだね」
「そ、そういう意味じゃないわよ、バカ! 同居すんのを嫌がってるのに、何でそっち方向に話が行く訳!?」
「あ、違うの?」
「違うわよ! 働いて返せ、って意味!」
「…なんだ、それならそう言えば良いのに」
「そう言ってるわよ!」

それで、シェリーが青年に要求した事とは、狩りへの同行だった。

「…そんなので良いの?」
「だって、あたしができそうな村の仕事って、他にないもの…。 だから、せめて狩りくらい手伝ってよ」
「まぁ、君がそれで良いなら、付き合うよ、シェリー」
「あ、ありがとう…」

老山龍を倒す使命を負ったギルドのハンターだから、断られるかな、ともちょっと思っていたのだが、案外気さくな返答だった。

準備…と言っても、特にやることはない。
資材は殆どないので、もう手持ちのアイアンランスと、スティールメイルを装備して出かけるだけだった。
それは青年も同じで、ヘヴィボウガンのケースを担いでそのまま外に出ただけだった。

「ねぇ、貴方…。回復薬とか、持っていかないの?」
「持ってない。君こそ、持っていかないの? 剣士なのに」
「持ってない…。こないだ、ゲリョスに散々盗まれて」
「そっか、僕と同じだね」

そう言って、青年はあははと笑う。
何故か、この青年に笑われても、そんなに嫌な気分にはならなかった。

シェリーの家は、村を守る砦「大城門」のすぐ近くにある。
16年前、老山龍がこの村を襲って以降、村のみんながコツコツと作り上げた要塞だ。
一見すれば、その名の通り、城の城壁に見えなくもない。

その巨大な砦の脇を通ると、両側を谷がずっと挟み込む、峡谷道に出る。
ここには、途中に物見櫓や、途中の巨石を削りだして作った岩棚がある。
そして、そばらく道を進むと、この村に来る時にも見たが、またも岩石と丸太で作られた砦が眼の前に見えてきた。

「…これ、全部、対老山龍用の迎撃施設だよね。 もしかして、みんなの自作?」
「そうよ、村長命令で、若い男たちが、労働の間に、ずっとこの作業やってるの」
「そりゃ大変だ」

…苦労は認める。これだけの物を作るのは、さぞかし大変だったろう。
でも、どの迎撃施設の作りも、極めて稚拙。
多分、ある程度の衝撃で、簡単に崩壊するはずだ。
こりゃ、次からは、中央ギルドに依頼して技師の一人でも連れてきた方がいいな、と青年は思った。

2人はてくてくと歩きながら、峡谷道を南下して、密林へと向かう。
まだ作りかけの、村から最も離れた砦に辿り付いた時、後ろからドドドと馬の蹄の音が聞こえてきた。

「よぉ、シェリー! 今日も歩いて狩りかヨ!」

ディキシー、マイノ、タッシュの3人組が、シェリーと青年を取り囲む。
シェリーは無視していたが、代わりに青年がにこやかに挨拶した。

「…なんだ、お前。何でシェリーと一緒に居る?」

マイノが、青年に向かって怪訝そうに問いかけてきたが、シェリーが代わりに答えた。

「この人ね、老山龍を倒すために、中央ギルドから派遣されてきた、凄いハンターさんなのよ。 あまり、無礼な発言しないでちょうだい」

老山龍、と聞いて、3人の間に緊張が走る。
この青年は、ギルドから来た、本物のハンターか!?
だが、すぐにディキシーは、矛先をシェリーに変えて喰いかかってきた。

「…だから、お前が何でそんなお偉いさんと一緒に居るのか、ってのを聞いてるんだヨ」
「決まってるじゃない。あたしが、この人のお世話を、村長から仰せつかったからよ」

なんだと、と言った雰囲気が、3人の間に流れる。

「…おい、シェリー、お前、昨日俺達に『自分は一人で狩る』って言ってたよな?」マイノ。
「だよなぁ? それに、俺達が、集団でないと狩れないみたいな事言ってたじゃねぇか、この能なしが」
「そうそウ。なのに、今日は自分がパーティで狩りだなんて、どういう心変わりだヨ」
「そ、それは…」

「僕が、お願いしたんだよ」

「はぁ!?」
3人組が、一斉に青年を睨みつける。

「君らのアイドルをお借りして申し訳ないけど、聞いたとおり、彼女からお世話を頂いてるんだ」
「老山龍が来るまで、じっとしてるのも何だから、こうして僕の狩りに同行をお願いしたんだよ、ね、シェリー」
「あ、う、うん」
「…ほ…ホントなのかヨ、シェリー…。」
「…本当よ! だから2人で居ても、全然おかしくないでしょ? 分かったら、さっさと行きなさいよ」

それ以上、3人は何も言えなかった。
自分の雰囲気に全く臆する事のない、この青年…。
見た目はそんな風に見えないのだが、こいつが本物のハンターなら、自分たちはあっという間に捻られてしまうかもしれない。
分が悪い、と判断した3人は、捨て台詞を吐いて去っていった。

「…ふん! 見かけ倒しじゃない事を祈ってるゼ、ハンターさんヨ!」
「せめて、自分たちの狩猟数よりは上回る成果を見せてほしいものだな」
「能なしかどうかは、その時判断させてもらうからな!」


「…まぁ、ホントは僕がお願いした訳じゃないから、別に狩猟数とかどうでもいいけどね」
青年は、3人には聞こえないように、そうつぶやいた。

「…あの、ごめん…。また、嫌な思いさせちゃって…。」
「良いよ、気にしてない。ああいう奴らはどこにでも居るものさ」
「ありがとう…。」


峡谷道を抜け、ようやっと2人は密林に着く。
今日も、このエリアのどこかにイャンクックやゲリョスが居るだろう。
せめて、あまり無様な所は見せないようにしないと…。

…そういや、ギルド所属のハンターって、どんな狩り方するんだろ。

彼女は、殆どソロで戦ってきたため、自分以外のハンターが、どんな闘い方をするのか知らない。
ちょっと興味が湧いたので、本物のハンターは、モンスターをどうやって狩るのかを、青年に聞いてみた。

「採集に決まってるじゃん」
「は?」
「採集、知らない? 現地で、薬草やアオキノコを取って…」
「いや、そんな事は知ってるわよ! こう、なんというのか…。 狩りの前に採集をするのが、強い人の鉄則、な訳?」
「少なくとも、僕はそうだよ」
「…そうなんだ。知らなかった」

何か、こんな所も、シェリーとそっくりだった。
これなら、戦闘中にボコられて薬草を探したって、特に何か言われたりはするまい。
そう思うと、随分気が楽になった。

「それでさ、良かったら、キノコとか取れる場所を教えてくれないかい? 僕、流石にここらへんの地理分からないから」
「あ、うん…。 じゃあ、付いてきて」

一応、シェリーも採取ばかりしていたので、どこに何が生えているかは、大体把握している。
でも、お荷物の自分が主導権を握って、ギルド所属のハンターにあれこれ指示するのは、何か面映ゆい気持ちだった。

「おお、凄い!『毒テングダケ』に『マヒダケ』! 結構数が取れるね!」
「あ、う、うん…。よかったね」
「じゃあさ、『火薬草』取れる場所を知らないかい!?」
「…うん、知ってるけど…。」

「こことか、どうかな」
「おおおー、『火薬草』が取れる取れる! 凄いね、この数! ありがたいよ、シェリー!」
「ど、どういたしまして」

嬉しそうに、青年は次々と採集ポイントを回っていく。
…村長には、役に立たない物扱いされてたのに。
なんだか、彼は自分の事を認めてくれているようで、素直に嬉しかった。
思わず、青年に対する、感謝の言葉が口をついて出る。

「…ありがとう」
「おっ、『はじけクルミ』もある! ラッキー!」

だが、青年はシェリーのお礼の言葉などそっちのけで、採集に夢中になっていた。
…いや、まぁ、いいけど。
もしかして、ガンナーって、皆こんなのばかり?

一瞬だけ、頼りになるのかしらこの人、という不安が彼女の胸をよぎった。

<続く>
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*Comment

 

ボウガン修業中のなので、わくわくする展開です。アルバレスト改で見事老山龍の討伐ができるか、楽しみにお待ちしています。
  • posted by Momo 
  • URL 
  • 2010.04/09 14:38分 
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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