女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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Ein Liebeslied(あいのうた)~Das ende~(1)

舞台は、マーシフルの湖畔そばに佇む、白亜の小さな平城。
その城の外壁は、夕暮れの陽を受けて、鮮やかな橙と紫に染まり始めていた。

この、キャミノ・フェルプンクトが城主を務める、通称「天使の城」では、ファン感謝デーの真っ最中だった。

城門を抜けて、中庭に入ると、そこは城主の趣味なのか、薔薇を主体にした色とりどりの花が花壇にひしめいており、その間を縫うように沢山のテーブルが敷きつめられ、立食形式で大量の料理と飲み物が提供されている。
そこはもう大混雑であり、居並ぶ人々の陽気さと喧噪が、一種異様なまでの盛り上がりを見せていた。

「…なぁ、この豪華な料理が、タダだって、本当か?」
「ホントらしいよ、何でも、いつも来客してくれる皆に、感謝を込めて…って事みたいだけど」
「凄いな! キャミノさんって、単なる歌の女王さまかって思ってたけど、意外に太っ腹じゃん! クールだよな!」
「うん、俺もそう思うよ…。しかもな、この後、夜になったら、彼女が出てきて、歌ってくれるんだって」
「え、マジで!? どこで!?」
「ほら、あの噴水の近くに、ステージが設えてあるじゃん? あそこで歌ってくれるみたいだぜ」
「へぇ~、でも、俺、金ないから、聞くの無理だなぁ…。」
「いや、そっちもタダだってよ」
「ホントに!? それじゃあ、聞かなきゃ損じゃねぇか!!」
「ああ、だから、その噂を聞いたあっちのテーブルの連中、もう料理がないのに、ずっと陣取ってるだろ? 今のうちにいい席を確保するつもりらしいぜ」
「じゃあ、飯ばっかり食ってる訳にもいかねぇじゃねぇか! おい、俺たちも、場所取りしに行こうぜ!」
「イテェ、待てよちょっと! …無理だって! あの人ごみに紛れるなんて、正気かよお前!」
「正気も正気だよ! お前、知ってるか? 一か月前にあった、エトワール音楽祭で彼女の新曲が出たの!」
「本当か!? なんて曲!? どんなだった!?」
「凄い感動したぜ! …えーと、なんて曲名だっけか…。 ああ、確か『生誕の焔』って名前だった」

陽が暮れ、立食パーティが盛会を成す頃、参加者たちの噂通り、噴水の前の簡易舞台に、正装した音楽隊が出てきて、次々と座席に座り、楽器を用意する。打楽器、弦楽器、管楽器…。
彼らが全員座席に着き、楽器を準備し終えてしばらくしてから、奥の第二城門が空き、そこから、ドレス姿の女性が二人出てくる。

壮麗なドレスを着込んだその女性は、城主であるキャミノ・フェルプンクトと、マネージャーを務める、ユーフィア・イクスティングリィだ。

「天使の詩」の二つ名を持つ、キャミノが登場し、演台に座する。
それだけで、場内の興奮は、期待で最高潮に達した。
手を振ってキャミノが答えるが、その後、舞台袖で進行役を務めるユーフィアが、城内の観客に、静かにするよう合図を送る。
すると、瞬く間に潮が引くように、城内は静かになった。

これだけの大人数であるにも関わらず、聴衆の中に、私語やざわめきを立てる様子は見られない。
一言言ってはあるのだが、一糸乱れぬ様子でマナーを守ってくれる聴衆に、キャミノは感謝した。

「こんばんは、キャミノ・フェルプンクトです…!」
「「こんばんはー!!!」」

まるで地鳴りのような轟音が返ってくる。

「今日は、私の主催する、パーティに出席してくれて、ありがとう!」
「「いえいえー!!!」」

…そんな所まで何故かハモっている。

「先日の、『エトワール音楽祭』ではごめんなさい、唐突に新曲を発表した事で、びっくりした人もいるかと思います…」
「それに、毎回遠くまで脚を運んで下さって、ありがとう。 私が、歌姫として、こうして歌っていられるのも、皆さんのおかげです」
「今日のこの宴で、ささやかではありますが、皆さんへの、私の感謝の気持ちを、形にさせて頂きました」

「「こちらこそ!!」」
「「ありがとう、キャミノさーん!!」」
「「料理、美味しかったでーす!!」」
「「俺と結婚してくれー!!」」

観客から、めいめいに反応が返ってくる。
一通り感想を貰った後で、またユーフィアが進行のために、合図をして会場を静かにさせる。
その表情は、皆一様に、歓喜と期待の表情に満ち溢れている。

その姿を見て、キャミノは思った。

…ああ、やはりこの宴を催して、良かった。
やはり、自分の考えは、間違いではなかった…。

そんな確信を胸に、キャミノは言葉を続ける。

「先日の音楽祭で、広告していなかったために、お聞きいただけなかった人も多いかと思います」
「今日のこの日に用意させて頂いたのは、かねてから、お待たせしていた新曲…」
「『豊穣の雨』『冬光の丘』『母なる海』に続く、第4の詩…。」

そこまでキャミノが喋った所で、演奏隊が、静かに序曲に入る。
同時に、城内に潜んでいた黒子たちが、舞台に明かりを灯し、観客に向かって、大量の薔薇の花弁を投げ散らす。
舞い散る花弁の優美さと、燃え盛る炎の荘厳さに、観客たちの間からどよめきが走り、溜息が洩れる。

華麗な演出を兼ねた、キャミノの魔術歌導入のための、簡易催眠術。
彼女の歌に没入してもらうための、ささやかな「世界」の演出…。

「世界は、ここから生まれ出る…。 お聞きください、『生誕の焔』!!」

…永かった。 ここまで来るのに、凄く永い時を費やしたような、そんな気がした。


話は、1ヵ月前に遡る。

G級特例申請が生みだした僅かな無法地帯の中、必死の思いでヴェロニカを倒したキャミノ。
夜明けと同時に来るはずだった、ギルドの馬車がやってきたのは、太陽が昇って少し過ぎてからだった。
深夜未明、ギルドに侵入者があり、その処理に追われていたから遅れた…との事であったが、ベースキャンプ内にヴェロニカを見つけたギルドマネージャーは驚愕する。
ギルドは既に、被害にあった受付嬢の話を元にして、被疑者を何人かに絞りこんでいたのだが、その候補の一人が、ヴェロニカだったからだ。

G級特例申請を斡旋するパーティは、1申請につき1チームのみ。
ヴェロニカの、特例申請への乱入が現場で確定したため、マネージャーとギルドナイト達は、ヴェロニカをその場で犯人として逮捕した。
マネージャーはキャミノに捕縛協力を感謝したが、「ヴェロニカの逮捕」というなりゆきに慌てたキャミノは、自分がうかつにもG級特例申請の事を喋ってしまったからだ、と弁明した。

しかし、マネージャーは首を振る。
キャミノのG級特例申請の違反は、当然後に処罰するが、彼女の乱入は彼女自身の責任。
それぞれ別個に沙汰をする、と釘を刺され、全員がギルドの送迎馬車で、ドンドルマの街に帰りついた。
もちろん、あのチャチャブーも一緒だった。

「キャミさん、その子、連れていくんですか?」
「うん、この子…。 あたし達の命の恩人だし、それに、どうしても気に掛かることがあって」
「何です?」
「…この子ね、多分、凄く頭が良いと思うの。あたし達が想像してるよりも、遥かに」
「はぁ」
「だから、この子が普段、何を考えているのかが知りたいの。 言葉を教えてあげて、会話ができるようになれば、きっと素敵なお友達になれる…そんな気がするから」
「本当ですかー。 …うーん、何というか、遂にオトモチャチャブーが実現しちゃいましたね」
「ねぇ君…。 君、よかったら、あたし達と一緒に街に来ない? いろんな珍しい物あるし、お肉もあるよ」
「チャッ! チャッ!」
「来るって」
「ホントですか? 肉に釣られた訳じゃなしに?」

こうして、チャチャブーも、キャミノの城の住人となった。

それから、丸一日の間、3人はお城の寝室でずーっと眠り続けていた。
途中一回起きて、全員がサルサから作ってもらったクリームパスタとマルガリータピッツァを大量に食べると、また寝た。
ユーフィアとチャチャブーは、それからさらにまる一日寝ていたが、キャミノは途中で起きだすと、お風呂に入って書斎に籠った。
彼女が書斎に籠ったのは、作曲をするためだった。

あの森丘で見たイメージ…。
あまりにも神々しい、命溢れる太陽。
あれこそが、次の曲のテーマにふさわしい。

というか、彼女の中では、次の曲のテーマは、あれ以外ありえなかった。
解読中の古代語の魔術歌の曲に、韻を踏み間違えないようにして、オリジナルの歌詞と伴奏を載せていく。
自分でもびっくりするくらい、どんどんイメージが湧きあがってくる。

この胸の中に、鼓動となって存在する命。
数多い奇跡を経て、今ここに、自分が存在する事への感謝。
生きていられる事そのものの、純粋な素晴らしさ。
両親が育んでくれた、この命とその愛。
共に過ごせる人が居ることの、共に生きていられる事の喜ばしさと尊さ。
神が賜った、この世界の命の美しさ…。

それらを、心が語りかけるままに歌詞として表現し、アイデアもそのままに、羊皮紙に何枚も何十枚も書き連ねていく。

…この曲が完成したら、みんなどんな顔するだろう。驚いてくれるかな。喜んでくれるかな。
…うん、この曲、自分で言うのもなんだけど、凄い素敵。早く、自分でも歌ってみたい…。
…よし、また、良いフレーズ出来た。今日の私、すっごい冴えてる…。天才かも…。

恐ろしい勢いで、楽曲は組み上がっていく。
曲を作ることが面白くて面白くて、気付けばキャミノは、徹夜して新曲を完成させた。

タイトルも、おそろしいくらいすんなり決まった。
あの太陽の命と炎のイメージを改めて思い浮かべた時、まるで用意されていたように、曲名がスルリと出てきた。
…曲名は「生誕の焔」。

明日開催されるエトワール音楽祭に、彼女はその楽曲を携えて、無理矢理出場した。

通常、楽譜は最低でも音楽隊へ2週間前には提出しておかなければならないのだが「これ、とても素敵な曲だから」という、とんでもない理屈で、音楽隊に無理矢理演奏をお願いした。

最初は渋っていた音楽隊だったが、徐々にその曲「生誕の焔」が持つ、太陽のような狂熱に打たれはじめ、気付けば音楽隊までもが、徹夜して演奏をマスターするという、とんでもない展開になった。 また一つ、キャミノに伝説が加わった。

そうして、予定にはなかったはずの、エトワール音楽祭でのキャミノの新曲が発表された時、聴衆の驚きは相当であったが、またその曲の出来栄えにはさらに驚かされた。

一度きりの、この命の大切さ。
それを家族愛に、恋人に、運命に、そして世界の美しさに例えあげて歌ったこの楽曲は、まるで会場全ての聴衆に、太陽の熱が宿ったかのように伝播した。
それは、いつも「瞳」の座を努めるヴェロニカが不在であった事を、誰もが忘れてしまうほどの熱狂ぶりだった。


「…だったですよね」
「はい?」
「…何をぼーっとしてるんですか、キャミさん!? さっきから話かけてるのに、全然うわの空なんだから」
「あ、ああ、ごめん、ユーさん何だっけ?」
「いえ、今日もキャミさんの舞台凄かったなー、って言ったんですけど」
「うん、皆喜んでくれてよかったよ~」
「…でも、正直言って、サービスし過ぎじゃないですか? あたし、正直疲れましたよ…」

そう、今日のファン感謝デーで、「生誕の焔」を歌い終わった後、キャミノはメドレーで全曲を披露し、その後はファンとの握手会まで開催した。
ユーフィアはもちろん、城の雇用人たちまでもが対応に全員駆り出され、果てはチャチャブーや、キッチンアイルーまでもが、お客の給仕や列の整理、待って退屈している客の相手をしていた。

「本当、『ネコの手も借りたい忙しさ』でしたニャ、マスター」
「本当です、でも、なかなかできない貴重な体験をさせて頂き、ありがとうございますっチャ、ご主人さま」
「ごめんね、貴方達にまでお仕事させて…」
「いえいえ! 我が一族が喋れるのを証明できた事が、はしたないとは思いますが、痛快でしたっチャ」

キッチンアイルーのサルサと、かのオトモチャチャブー…「リスト」が返事する。
キャミノが命名した名前で、古代語で「知恵」という意味の言葉だった。

「しかし、この子、こういうキャラだったんですね…」
「私もちょっとビックリしたよ」
「あ、私の言葉使いですかっチャ?」
「うん、語尾はともかくとして、1ヵ月でそこまで喋れるようになるとは思わなかった…。」
「いえいえ、ご主人さまの教えが丁寧だったからです。それ以外にはありませんっチャ」

キャミノが作ったプーギーの仮面を揺らしつつ、リストは答える。
だが、彼は2週間ほどで大方の語彙を理解し、後はキャミノの書斎で知識を深めたのだ。
逢った時から頭が良いとは思っていたが、ここまでの天才児とは予想外だった。

「でも、キャミさんがあそこまで身を削ってファンサービスに努めるのって、何かあったんですか? 以前は、何か貰ってもスルーしてたじゃないですか」

「…あれが、私に『足りないもの』だったの」
「…? 足りないもの?」

「ええ。 以前の私はね、ちょっとどこか傲慢だったと思う」
「…皆から声をかけられるのを、人と繋がっていると勘違いしていて、自ら人との繋がりを求める事をおろそかにしていた…そう思えるの」
「気が付けば、私は、いろんな人の気持ちが、分からない人間になってた」
「それが…今回みたいな出来事を引き起こしたんじゃないかって、思ってる」

「…考えすぎじゃないですか? キャミさんは、よくやってると思いますよ」

「私も、そう思います。ご主人さまは、本当よくやってらっしゃるっチャ…。でも」
「ご主人さまが、私に気を掛けてくれて、嬉しかったのも、また事実ですっチャ…。」
「斬られた私を助けてくれたのみならず、父を埋葬して頂き、こんなによくして頂いて…まるで夢のようですっチャ」
「この方に付いて行ってみよう、と思った私の直感は間違いではなかったですっチャ」

リストが、自分の気持ちに正直なところを述べる。

「ありがとう…。でもね、私が元々、ネコ狩りの時にヴェロニカさんを怒らせたりしなければ、こんな事にはなってなかったと思う」
「誤解を放置していた事が…やがて憎しみの種になって、それが何かのきっかけで爆発したんだと思う…」

「いや、もうどうでも良いですってば、あんな奴」

ユーさんが、心底嫌そうに手をひらひらさせる。
そう、結局、ヴェロニカがG級特例申請に乱入、強襲してきた動機は不明なまま、ギルドに連れていかれた。
犯人がヴェロニカと知ったユーさんの驚きと悲しみは相当なものだったが、ユーさんは彼女を「そんな人間」と結論した事で、心の整理を付けたらしい。

ヴェロニカはハンターズギルドに連行されていったが、王都ヴェルド、共和国家リーヴェルの中央ギルドなどではともかく、ここマーシフルのような地方の小都市では、ハンターズギルドが軍隊と警察を兼ねている場合も少なくない。

なので、彼女はハンターズギルドから、狩猟法による処罰と、刑法による処罰の両方を受けることになった。

まず、狩猟法による罪状は、ギルドの兵士と受付嬢への業務妨害、恐喝、暴行罪。
この罪により、彼女の行動は、ギルドへの反逆とみなされ、ギルドカード剥奪という処分を受けることとなった。
つまりハンターズギルドからの除名であり、彼女はハンターとして生きる事は実質上不可能となった。
略式裁判で、刑は瞬く間に確定し、懲役10年か、罰金刑1,820,000zが科された。

だが、まだ裁判は続いた。
ギルド側としては、「G級特例申請」への乱入も処罰する必要があったのだが、そもそもこの制度は存在しないことになっているため、代わって、刑法での処罰が適用された。
つまり、キャミノ達は「G級特例申請の最中」ではなく、「日中の街中」で襲われた事になった。

罪状は、殺人未遂が二件。
ギルドによって作られた架空の調書、「ヴェロニカはキャミノ達を日中の街中で襲った」事件に、ヴェロニカとキャミノが、それぞれ加害届と被害届を出せば、それで事件として成立し、またも近日中に略式裁判が行われる。
ギルドへの反逆罪が既に前科として登録されているので、執行猶予はない。
裁判が始まれば、確実に懲役刑、それも30年以上のものとなる…というのが、ギルドの文官でもある、ユーさんの話だった。

余談だが、キャミノがG級特例申請に違反した罪は、12,000zの罰金刑で済んだ。
自主申告をしたせいもあろうが、その内実…口止め料も含まれているのだろう。
「…罰金少なめにしとくから、特例申請の事は言わないでね♪」という。

「…30年は、長いよね」
「短いですよー、監獄から出てくるまでギリギリ生きているかもじゃないですか。復讐に来られたらたまんないですよ」

そうじゃない。
監獄の中では、過酷な強制労働と、人として生きていくだけの最低限のものしか与えられない。
仮に、無事出てこれたとしても、その時彼女は50歳過ぎ…。
自分の美しさに我執している彼女が、その現実に耐えられるのか。

「いっその事、死ぬまで牢屋に居てくれた方が安心しますよー。そういや、キャミさん、被害届はもう出したんですよね? 上の人が、遅いから早く提出してくれ、って言ってましたけど」
「え? ああ、うん、出したよ」
「なら、もうバッチリですね。 前の裁判も罰金刑がなかったら、即座に監獄行きなのになー」
「そうだね、罰金刑だったら、納付までの猶予期間が与えられるからね」
「ええ、あの人、罰金刑選んだんでしょ? その間にまた襲ってこられたら、どうしようかって思いますよ…」

ユーさんのドレスの肩口から、ちらちらと、ヴェロニカに貫かれた胸の穴の痕が見える。
秘薬のおかげで、大部分は治癒しているが、それでも引きつれたような傷跡になって残っている。

「…どうしたんですか、キャミさん? …まさか、この傷のこと、気にしてるんです?」
「ううん、相変わらず胸ないな、って思って」
「余計なお世話ですよッ!!」

キャミノは、時計を見る。
そろそろ、夕方7時を回ろうとしている頃だ。
だが、例の客は、まだ来ない。
遅いな、と思ってた時に、階下からパタパタと足音がして、従者のパッサンが、息を切らせて走ってきた。

「お、お嬢様! あ、あの方がやってきたのですが…!!」

「…ああ、遂にいらしたの? 良かった、来てくれないかと思ったわ…。 こちらに、丁重にお通ししてもらえる?」
「…は? と、通すって、よろしいのですか!? どなたかお呼びになる必要は…」
「大丈夫、私一人で問題ないわ」
「さ、左様ですか…」
「ええ、心配せずに、呼んできて頂戴」
「か、かしこまりました…」

パッサンは、汗を拭きつつ階下に戻っていく。

「な、何ですか、キャミさん? 何か、凄いお客さんが、来たみたいですけど…」
「ええ、今日の宴に、来て頂けるように招待していたのよ」
「…でも、こんな夜に来るって、変なお客ですね」
「あちらがね、この時間しか空いてなかったらしいの。こんな席には来たくなかったかもしれないけど、都合付かなかったから」
「へぇ、何て方なんです?」

だが、キャミノはそれに返事をしない。

「ユーさん」
「はい?」

「…悪いけど、席を外してもらえるかな。…みんなも」

「…は?」

その場に居た全員が、あっけに取られた。

「ちょ、ちょっと待って下さい、キャミさん…。何でですか? 何で、私たちをのけ者にするんです?」
「…少し、事情があって」
「事情があるからって、そんなんじゃ分かんないですよ! もっと、詳しく説明して下さい!」

キャミノは、軽くため息をつくと、説明を始めた。

「…うん、私はね、その人と話がしたくて、ここにおいで頂いたの」
「はい」
「多分…。 多分だけど、私とその人は友達になれると思う。 …なれたらいいな、って思ってる」
「はい、凄い人なんですね」
「うん」
「じゃあ、問題ないじゃないですか! キャミさんが友達になりたい人なら、私もOKですよ!」

「…ユーさんは、多分無理」

突如、2人の間に、冷たい空気が流れ始める。
その雰囲気を感じ取ったサルサとリストは、気を使って退室した。

「…なんでです? 何でそういう事言うんですか、キャミさん…!? 今でも、いつまでも、一緒だったじゃないですか!」
「ああ、ごめんごめん、泣かないでよ、ユーさん! そういう事じゃないんだって!」
「そういう事じゃないんなら、どういう事なんですか!? もっとちゃんと、教えて下さいっ!」

「…あのね、下に居るお客さんはね、かなり高い確率で、ユーさんと相性が悪いわ…。」
「でも、私はその人と、友達になれるって、そう思ってる…。 そうなりたいの」
「はい…。」
「だから、コレ」
「? 何ですか? …ハンドベル?」

キャミノは、サルサを呼ぶ時のハンドベルを持っていた。

「うん、ユーさんも友達になりたい…っていうんなら、その言葉を信じるわ」
「信じてくださいッ!」
「わかったわ、だからね…。私とその人が、会話する時に、とりあえず、その衣装棚の中に、隠れていてくれる?」
「何でですか!? 同席させてくれないって、やっぱり、私、信用ないんです!?」
「…ごめん、ユーさん、ここは私を信じて。 お願い」

「…。 分かりました…。 キャミさんがそこまで言うんなら、信じます」
「ありがとう」

そして、ちりん、とハンドベルを鳴らす。

「後はね、話の中で、私がこのベルを鳴らした時、ユーさんにさりげなく質問するから、イエスなら、『にゃーにゃー』って言ってね。ノーなら『わんわん』で」
「…何ですか、その合い言葉」
「…。」
「あ、『にゃーにゃー』」
「…うん、そんな感じでよろしくね」

そうして、ユーフィアは衣装ケースの中の衣装を押し詰めて、中に隠れた。
居間には、一人キャミノだけが残される。

…やがて、少し時間が経ってから、部屋の中に誰かが入ってくる。
ノックも、挨拶もなしだ。

誰が入ってきたのか、見てやろうと思って、ユーフィアは衣装ケースの空気窓から、居間の中を覗きこむ。

…だが、そこには、信じられない相手が居た。

「…!?」

だが、驚愕するユーフィアを余所に、キャミノはその相手に向かって、にこやかに話しかけた。

「…ごきげんよう。 …『ミス・ヴェロニカ・ラ・クォルヴァディス』」

<続く>
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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