女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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Ein Liebeslied(18)

ヴェロニカは、予想を遥かに上回る強さを持つハンターだった。
彼女との一騎打ちに臨むキャミノだったが、瞬く間に打つ手がなくなる。
正攻法が通じないのはもちろんだが、奇策のけむり玉も封じられ、閃光玉は効く可能性はかなり低かった。

万策尽きた。
もう、ユーフィアを守るためには、命を掛けてヴェロニカに挑むより、他はない。

…オオナズチの時とは比較にならない、圧倒的な量の死の予感。
彼女の槍の穂先からは、自分の命を求める膨大な殺意と、直視叶わぬほどの悪意が十二分に伝わってくる。

双剣を握って対峙するも、もはや勝つ見込みは全くなかった。
この命を使いきって、ユーさんを守りきれるかどうか、それすら危ういほどだった。

「(やるしか…、やるしかないんだッ!!)」

怯える内腑に喝を入れ、調息して平常心を保とうと努力する。
天地の気を丹田で練り合わせ、錬気し、全身に気を行き渡らせる。
両手の親指で、経絡を開放すると、再び圧倒的な力が、キャミノの全身を巡り始めた。

「ふん、鬼人化ね…。それで、どこまで喰いついてこれるかしら」

少しでも…少しでも、技量の差を埋めるんだ。
その喉笛に食らいつけるように、どこまでも粘ってやる!

「鬼人化」によって、移動速度もアップしたキャミノは、フェイントを混ぜた動きで攻撃を仕掛ける。
今度は左手、槍側ッ!

槍の方に突っ込んできたキャミノを、ヴェロニカは鋭い刺突を数発繰り出して牽制するが、キャミノはいずれもステップで避ける。
定点攻撃の突きは殺傷力こそ高いものの、薙ぎ払い攻撃に比べれば、避けるのは容易。
ヴェロニカの攻撃は信じられないほど鋭い物だったが、スキル「回避性能+2」の力を得て、なんとか回避できていた。

そして、キャミノは、ヴェロニカの突きの戻しに合わせて飛び込み、左手の剣で、スカイスクレイパーの柄を力任せに弾き飛ばす。
…脇が、空いたッ!!

そこに、体勢を低くして右手の剣で斬り込んでいくキャミノ。
狙いは大腿部、脚を狙って戦力を奪えば、こちらに有利になるっ…!!

…だが、その時、ヴェロニカの体が宙に浮いた。
何、と思ったその瞬間、キャミノは空中からの後ろ回し蹴りを喰らい、転がりつつ吹き飛んだ。

「(まさか…!!)」

ランスの鎧と盾を構えた状態で跳躍するとは。
ミズハ装備は金属製ではないからだろうが、それでもあんなに身軽に跳べる重さではない。

「…私も随分ナメられたものね…。格下相手から、戦闘力だけ奪おう、って思われるなんて」

ヴェロニカはそう言うと、ランスとは思えぬほどのスピードで、あっという間に距離を詰めてくる。
そして、体勢を崩しているキャミノに、次々に薙ぎ払い攻撃を仕掛けてきた。

「貴女が、私にかなう訳がないでしょうがッ! 殺すつもりで掛かってきて、程よい手慰みなのよ!」

本来、「突く」武器であるはずのランスを、まるで棍棒みたいに、めったやたらと叩きつけてくる。
だが、そんな乱雑な攻撃でありながら、その威力、速度共に必殺で、両手に武器を持っているキャミノの防御が、全く追いつかない。
キャミノが、その刃圏から逃れたのは、十数手を受け、そのうち数発を喰らった後だった。

「さぁどうぞ、貴女の番よ」

…明らかに、なぶり殺しにされている。
ヴェロニカは、歌姫として格上の相手である、キャミノを暴力で貶める事に愉悦を感じていた。
だが、口惜しい事に、実力に圧倒的な差があり過ぎ、一太刀を浴びせることすらかなわない。
手加減や、策を前提とした攻撃が通用する相手では、ない…。

やるしか…ないのか。

これほどの実力の開きがあれば、殺す気で掛かっても、確かにヴェロニカは死なないだろう。
一瞬だけ躊躇したが、キャミノは、全力を出す事を決意した。

再度、調息から錬気。
気を全身に流し「鬼人化」する。

ここまでの対人戦で、一つだけ分かった事があった。
双剣とランスの戦闘は、おおよその場合、双剣が攻めて、ランスが返す…という形になる、と言う事。

ランスからの攻めは、双剣の機動力が高いことと、キャミノがパピメルX装備を着ている事もあって、その直線的な攻撃が避けられると、それがそのまま隙になる。
さっきは、後ろ回し蹴りで反撃されたが、それでも脇腹まで肉薄できたし、返し技が回し蹴りというのも、相手側にとっては追い詰められての奇策に過ぎない。
それを懸念しているから、ヴェロニカも避けられやすい「突き」ではなく、「薙ぎ払い」を多用しているし、殺すつもりでありながら、積極的な攻撃には出てこない。
あくまでも、圧力と確実な反撃で追い詰めて倒す腹づもりのようだ。
あの盾なら、双剣の攻撃は全て弾く事ができるから、バッシュで態勢を崩して、その隙に攻撃を加えれば盤石。
彼女にとって最善の一手であり、こちらにとっては最悪の手だった。

だから、ダメージを相手に与えるためには、その前提を覆す必要がある。
相手が盾でこちらの攻撃を受けてから反撃…と思っているならば、その盾ごと相手を吹き飛ばしてしまえば良い。

それができる戦法が、キャミノにはある。

…連続波状攻撃、「乱舞」。

伝説のハンター「不死鳥」が編み出したこの攻撃は、どんなモンスターの装甲をも斬り裂く。
相手が頑強なランスの盾であっても、必ず通用するはずだ…!

キャミノは、意を決すると「鬼人化」の効力が消えてしまう前に、ヴェロニカに向けて再度特攻した。
再びフェイントを交えつつ、右に切り込むか、左に切り込むか迷わせて、キャミノは盾側を斬り払いで攻撃する。
さっき、有効打を取れそうだった槍側に攻撃されると思っていたのか、ヴェロニカの反応が微妙に遅れるが、それでも余裕をもってガードされた。

ここだ。
「乱舞」の破壊力、こんな盾で受け止められるものなら、受け止めてみなさいッ!!

キャミノは斬り払いから「飛天蒼桜」の型に繋ぎ、一気に乱舞に入る。
二刃五手の十連撃が、まるで機関砲のような激しい火花を散らして、ヴェロニカの盾に炸裂する。

「ぐうっ!?」

ヴェロニカから、予想外と言わんばかりの声が漏れる。
当然だ。
相手は片手、こちらは鬼人化しての両手攻撃。
どんな化け物であっても、この攻撃を受け切るなんて、不可能だ!

だが、ヴェロニカは片手であっても、その尋常ならざる腕力に加え、盾に細かく角度を付ける事で、微妙に「乱舞」の衝撃を逃し、攻撃を受け続けていた。
乱舞の最中、キャミノはその様子を見て、まさか、と思うと同時に流石だ、とも思った。
彼女だったら、これくらいはしてくるかもしれない、とは予感していた。

最終手「飛燕流星」が終わると同時に…来た、バッシュ!
突きだされた盾を、キャミノは回避して避けると同時に「閃光玉」を足元に叩きつける。
目くらましの効果は望んでいないが、奇襲のための一瞬の隙が欲しかっただけだ。

事実、近距離で閃光玉をいきなり喰らわせたにも関わらず、やはりヴェロニカはその閃光をも盾で遮っていた。
だが、それが目的。
もう一度、至近距離でガードをさせるのが目的だった。
その、体勢が崩れた状態で受け止められる!? 
この「乱舞」を!!

再び、キャミノは全身全霊を込めた「乱舞」を繰り出す。
さっきは、盾に角度を付けて逃げられたが、今度はそうはいかない!!

竜巻のようなキャミノの剣撃が、6手目で遂に、ヴェロニカの盾を弾き飛ばす。
ガラ空きになったヴェロニカの胴体にさらに肉薄し、残る4手を全力で叩きこむ。

「…ぐあっ!!」

ヴェロニカは乱舞の衝撃に押されて吹き飛び、後ろによろける。

遂に、一撃を加える事ができた。

…だが、何だ、今のは。

キャミノの攻撃は、ヴェロニカに確かに届いたが、彼女の鎧は、異様なまでの硬さを誇っていた。
オオナズチの甲殻もかなり硬かったが、それを遥かに上回る異常な防御力。
乱舞を当てたのに、全くダメージを与えた様子はなく、剣を叩きつけて後ろに押し飛ばしただけに終わった。

…何なの、あの鎧…!?

実は、ヴェロニカは、既に崩竜をも討伐している。
その恩恵による技術で、自らの鎧を限界まで強化していたのだ。
だが、その事実は、HR7であるキャミノには知るよしもなかった。

…「乱舞」すら、通用しないの!?

衝撃の事実に呆然とするキャミノだったが、次の瞬間にはさらに呆然とした。
後ろにのけぞったヴェロニカが、いきなり小手を外し、自分の顔を撫で始めたのだ。

…いや、違う。
あれは、撫でてるんじゃなくて、自分の顔に傷が付かなかったかを、確認しているんだ…。 
でも、戦闘中に!?

「キャミノ…」

一瞬、どこから声が聞こえたのかが分からなかった。
いや、この状況で自分の名前を呼ぶ人間は、ヴェロニカ以外いない。
しかし、その声質が全く変わっていた。

…まるで、地獄から吹く風のような、怨念を込めた憎悪の呼びかけ。

ヴェロニカは、小手を再び装着すると、地面に刺していた槍を引き抜き…。
同じ人間とは思えぬ速度で襲いかかってきた。

「何するのッ!! …あたしの顔に傷が付いたら、どうするつもりなのよッ!!」

そう叫んでから、槍を大上段に振りかぶり、一気に打ちおろしてきた。
避けられないと悟ったキャミノは、双剣で十字に受けるが、ガギャァ、と金属とは思えないような衝突音と共に吹き飛ばされる。

「このっ! この!」

激昂したヴェロニカは、恐ろしい速度で間合いを詰めると、滅多やたらと槍を叩きつける。
それは果たして槍使いなのか、と思わせるほどの乱暴さだったが、ヴェロニカの攻撃は巨大な台風のようで、キャミノに息つく暇も与えない。
当たればどこの骨でも砕けるほどの膂力で放たれた攻撃が、次々と襲ってくる。
キャミノはそれを必死で防ぎながら、嵐が去るのを待つ。
なんという異常な腕力。
相手は片手で槍を振りまわしているのに、こっちは両手でないと止められない。
しかも、鬼人化しているのに…!!

幸いにも、体勢を崩された所に撃ちかかられた訳ではなかったので、十数手に及ぶヴェロニカの連続攻撃を凌ぐ事はできた。
だが、ランス側からの攻撃でありながら、反撃するチャンスなど全くなかったし、受けた両手は痺れ、武器は既に切れ味を失っている。

…ここらへんで、一旦撤退するか。
武器が切れ味を失っている以上、乱舞を使ってもダメージは与えられそうにないし、幸いにも、何とか戦っている格好はついた。

だが、息つく暇もなく、再度ヴェロニカが暴風と化して襲いかかってきた。

「(…このっ!!)」

鬼人化の効果は、時間が経った事で切れていたが、それでも同じ太刀筋の攻撃なら、なんとか捌く事ができる。
ヴェロニカの攻撃が、怒り任せの荒い物になっているのを見極めたキャミノは、荒れ狂う暴風の中、狙い澄ました一撃で、槍の柄を弾き飛ばした。

そして、今度はガラ空きになった右の大腿部目がけて、全力で剣を突きだす。
彼女には申し訳ないが、この隙は貰う。
機動力さえ奪えば、こっちは命を奪うなんて事はしない…。

だが、ヴェロニカの鎧は、キャミノの剣を通さなかった。
全力を持って太腿に剣を突きたてたのに、刃先は鎧に1センチも喰いこまなかった。

さっき感じた、異様な鎧の硬さ…。あれは、錯覚なんかじゃない。
この鎧、どういう理屈か分からないけど、信じられないくらい、硬いッ!

自分の想像していた展開と、全く異なる現実を直視していたキャミノの脳天に、ヴェロニカの槍の一撃が見舞われる。
薙ぎ払う一撃を後頭部に受けたキャミノは、一瞬意識を失い、よろけて地面に転がる。
しかし、キャミノは転がりつつも、ハンターとしての本能で、転がり続けて距離を取る。

「(駄目だ、マズイ…! 一度、逃げて体勢を立てなおさなくちゃ…!!)」

だが、起き上がったキャミノの眼の前に、急に緑色の煙が広がった。

「? …うぇっ、コホコホッ!」

突如広がった緑色の煙を吸い込み、むせるキャミノ。

「な、…何これ?」

「…あら、今度は喋れますの、貴女?」

眼の前では、ヴェロニカが荒い息をしながら立っている。
その手には…、何か球状の物が握られていた。

「貴女…。HR7程度とナメてましたけれど、なかなかやりますわね…」
「まさか、『不死鳥』の乱舞を身に付けているとは思いませんでしたわ」
「でも、もう、貴女と撃ち合うのも面倒ですから、これで終わりにさせて頂きましたわ」

終わりに、した…?

「それって、どういう…?」

そこまで喋った所で、キャミノは自分の体の違和感に気が付いた。

「オオナズチは、厳密には二種類居るのをご存じ? 疲労ブレスに声が出なくなる毒を持っているものと、そうでないもの…。貴女達がさっき倒したオオナズチは、後者だったみたいね」

…体が、重い!!
手に握った双剣が、まるで鉛のような重さに変化している。
のみならず、全身に蓄積した疲労が一気に眼を覚ましたように、全身が硬直して動かなくなった。
手も足も、まるで自分の物じゃないみたいな…!!

「疲労玉、って言うんですの」

ヴェロニカは、手に持った球を弄りながら言う。

「あたしがかつて、オオナズチの研究をしていた時に、作った道具ですわ…。」
「モンスターのスタミナを奪う事ができる、画期的な発明だったんですけど…。」
「調合の失敗や、衝撃で中身が漏れただけで、その人が疲労状態になってしまうって欠点があって、ギルドに採用はされませんでした」
「でも、きちんと使いどころを押さえれば、ちゃんと使えるんですのよ、ほら、こんな風に」

そう言って、ヴェロニカは棒立ちになっているキャミノに、無造作な一撃を加え、地面に転ばせた。

「何でみんな…。 私を認めないのかしらね…。」

ヴェロニカはそう呟くと、さらに続いて槍の一撃をキャミノに見舞う。
腕が上がらず、防御する事すらできなかったキャミノは、再度頭に一撃を受け、崩れるように倒れた。

「あら、もう終わり?」

追撃が空振ったのを見てとったヴェロニカは、ダウンして寝転がっているキャミノに近寄り、槍を振りかぶると、めった打ちにし始めた。

「…もう、これで乱舞も使えないわね」

キャミノも、動かない体で必死に抵抗していたのは、最初の数発だけで、すぐになすがままとなった。
キャミノの悲鳴を楽しむように、目一杯の打撃を加えていくヴェロニカ。

それを見たチャチャブーは、明らかなキャミノの劣勢に気づき、奇面族の毒鉈を振りかざしてヴェロニカに背後から襲いかかったが、あっさり袈裟切りに斬られた。
それでも、彼は必死にヴェロニカの脚にしがみついて、離れようとしない。

「…なんなの、コイツ」

斬られてもなお、キャミノが打たれるのを止めようとしているかのようなチャチャブーに気づいたヴェロニカは、脚にしがみついているチャチャブーの頭に、盾を落とす。
チャチャブーが装備していた、頭の焼肉セットが粉々に砕けて、彼もズルズルと地面に倒れ伏した。

…それを、キャミノは横眼で見ていたが、どうする事もできなかった。

もう、勝つどころか、生き延びることすら敵わない。
キャミノの意識は、ゆっくりと、絶望という暗黒の淵に落ちていく。

…ユーさん、ごめん、ダメだった。
ユーさん、ごめん、許して…。

<続く>

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怒涛の展開!
どうなる 次回!!
  • posted by kiyo 
  • URL 
  • 2010.03/12 11:19分 
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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