女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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Ein Liebeslied(17)

ヴェロニカの強襲を受け、一時は死の危機に瀕したユーフィアだったが、なんとか一命は取り留めた。
しかし、ヴェロニカは自分たちを殺すために、今も森丘のどこかを探しまわっている。

キャミノは、ユーフィアを助けるため、別々に行動する事を決意した。
ユーフィアを抱きかかえながらでは、彼女の機動力の方が圧倒的に上だし、逃げ場所のない所に隠れていたら、見つかった時点でアウトになる。

ユーフィアを隠して、自分がヴェロニカの前に姿を現わせば、その間だけでも注意を引きつけていられる。
さすがのヴェロニカでも、ユーフィアを探しながら、自分と闘うという離れ業は無理だろう。
付かず離れずの戦闘を繰り返し、逃げ回りながら、ギルドを待つ。
これが最上の策に思えた。

「(…それを彼女が許してくれれば、だけど)」

付かず離れず、が理想的な展開だが、キャミノが一方的に倒されてもアウトだ。
彼女は、2人の死を望んでいる。
キャミノが倒れれば、彼女は悠々と、ユーフィアを探しに行くだろう。

「(…守らなくちゃ。絶対に、ユーさんだけは、守らなくちゃ…!)」

硬い決意を胸に、キャミノは、再びエリア3に戻った。
付かず離れずの戦闘をするなら、逃げ道の多いエリアである、ここがベスト。
逃げ道が少ない所よりも、多い所に陣取っていた方が、逆に安全なのだ。

付いてきたオトモチャチャブーと共に、ぬかりなく周囲を見回す。
いつ、彼女が現れるだろうか…。

幼い頃、ユーフィアと鬼ごっこをしていた事を思い出す。
逃げ道が多い所で待ち、ユーフィアの姿を見たと同時に、別方向にダッシュして逃げてたな…。
この、相手の姿が見えるまで、待つのが長いんだ…。

体が、熱を持っている。
自分を殺そうとしている相手と対峙しようとしている昂揚感もあるだろうが、彼女の体は、疲労に加え、オオナズチとの激闘で痛んでいた。

「痛…」

激闘の余韻で、体の節々が痛み、思わずそんな声が漏れる。
それだけでなく、ヴェロニカから受けた槍の一撃も相当痛かった。

…そういえば、何故あの時、彼女は、自分を槍で一突きするのではなく、薙ぎ払ってきたのだろう…?
彼女の技量でなら、心臓を一撃するだけで、自分を殺せたろうに。

そんな疑問を抱いた時、足元にとんとん、という感触。
見れば、またもあのチャチャブーが、今度は回復薬Gを二つ差し出していた。

…自分が、「痛い」と言ったからか。
そして、この回復薬も、あの時キャミノが、彼に渡した分だろう。

「ありがとう…。君には感謝してもし足りないくらいだよ」

キャミノは、回復薬Gを一つ飲み、もう一つも開封しようとしたが、その時、ふと気がついた。

「…そういえば、君の分はあるの?」

その質問を投げかけると、オトモチャチャブーは首を振った。

「…じゃあ、これは君の分。もしも、の時のために持っておいて」

だが、オトモチャチャブーは再度首を振り、キャミノに飲むよう促す仕草をした。

「凄いね、君…。本当に言葉が分かってるんだね」
「…じゃあ、私が後で飲むから、君が預かっといてくれるかな」

そう言って、キャミノは回復薬Gをチャチャブーに返す。
本当に自分が後で飲むなら、自分のポーチに入れるはず。
わざわざ返す必要はない。

「…ね?」

だが、彼はそれとキャミノの顔を見比べた後、渋々、と言った感じで、自分のポーチの中に回復薬Gを戻した。

貰った回復薬Gの薬効が、体に沁みとおるように効いているのが分かる。
みるみるうちに疲労と痛みは遠ざかり、わずかにではあるが、全身に力も戻ってくる。
キャミノは、溜まった疲労と痛みを吐き出すように、大きく息をつく。
おかげで、幾分かは楽になった。

後は、彼女…。
ヴェロニカが、いつ来るか…なのであるが、彼女はまだエリア3に姿を見せない。
どこか見当外れな場所を探しているのかもしれないが、どこを探すにせよ、大抵のエリアの中継地点となる、ここに帰ってくるのは間違いない。
いっその事、夜が明けてギルドが来るまで、彼女には見当外れな場所を、ずっと探していてもらいたい。

…だが、それは儚い望みだった。

「チャギャッ!」

オトモチャチャブーが、鋭い注意音を発する。
すると、目の前の空間に、あの槍…。
スカイスクレイパーだけが姿を現わした。

「…そういえば、チャチャブーはオオナズチの匂いが分かるんでしたわね」

ヴェロニカの声が、唐突に響く。
そして、盾が現れてからややあって、闇の中から浮きあがるようにヴェロニカが姿を現す。
彼女は、キャミノのほんの数メートル先に居た。

「気づかれないように、『隠密』で気配も殺していたんですけど…。保護色での奇襲、はなかなか難しそうね」

…気付かなかった!
あの鎧、色を変える事ができるのか!?
チャチャブーが注意を促してくれていなければ、確実に強襲されていた。
キャミノは双剣を構えるが、どっと全身から油汗が噴き出てきた。

「ふふ、貴方が顔を白黒させてどうするのかしら…。そう、この鎧は『生きている』の」
「『古龍の血』を鎧に含ませる事でね、素材となった組織の生命活動を、ある程度維持する事ができるのよ」
「だから、私の意思で自在に色を変えられるわ。さっきは、貴女の機転にまんまと一杯喰わされたけど…」

ヴェロニカは盾を右手に構え、左腕の小脇に槍を掲げる。

「もう、油断しないわ…。逃がさないわよ、キャミノ=フェルプンクト」

オオナズチとは全然違う、自分だけに向けられた、尖鋭化した殺気。
一流のG級ハンターが放つ、圧倒的な覇気を前にして、体が本能的にすくむが、負けてはいられない。
何せ、ユーフィアの命がかかっているのだから…!!

「…それは、こっちのセリフよッ!! 貴女のせいで…、貴女のせいで、ユーさんは死んだのよッ! 絶対に、許さないわっ!!」

双剣を両手に構え、脚を踏みならして絶叫する。
もちろん、ユーフィアは死んでなどいない。
自分の策略…。「ユーフィアを隠して、自分は遊撃に徹する」という狙いがバレないように、「仇打ちのためにエリア3に来た」と思わせるのが狙いの一言だ。
これで、ヴェロニカが、ユーフィアは死んだと思いこんでくれれば最上なのだが。
だが、

「…何よ、貴女、あの子を助けられなかったの?」

…彼女からは、意外な印象の答えが返ってきた。
まるで、あれならユーさんを助けられるはずだろう、と言わんばかりの。

「そ、そうよ! 貴女のせいで、出血が酷くてッ! もう絶対に、許さないわっ!」
「ふぅん、そういう事…」

だが、彼女は別の事実に思い至る。

「…貴女達、回復薬系を切らしていたのね。これで、エリア9に居なかった事に、合点が行ったわ」

そう、仲間にあれだけの重傷を負わされて、すぐに回復させないはずがない。
それはヴェロニカも覚悟していた事実。
なのに、回復に至らなかったという事は、低い可能性ではあったが、回復薬を持っていなかったという事に他ならない。

「…!!」
「…図星ね。貴女、顔色が分かりやすくて助かるわ」

ヴェロニカの推測は偶然ではあったが、事実を言い当てていた。

「あの子の始末は、面倒になるけど…、まぁ、構わないわね」

そういうと、ヴェロニカは、足取りも軽く、一気に距離を詰めてくる。

「回復薬が無いのなら、貴女を一度倒すだけで良いんだもの!」

彼女の初手は、無造作な横薙ぎの一撃。
だが、素人のそれとは全然力も速度も比べ物にはならない。
生半な鎧で受ければ、骨が簡単に砕ける勢いの攻撃だ。

だが、キャミノは「回避性能+2」の力を得てそれを避けると、ヴェロニカに一撃を加えんと、ダッシュで接近する。
「斬り払い」で、ヴェロニカの脚を狙うが、彼女はそれをランスの盾で軽々と防御する。
キャミノの刃はあっさりと弾かれ、火花が飛び散った。

「そこっ!」

受けた盾で再びバッシュ。
ヴェロニカは攻撃を受けたその瞬間に、盾でキャミノを突き飛ばした。

突っ込んだのを反対に押し飛ばされ、思わずキャミノの脚がもつれる。
そこに、再度横薙ぎの一撃が襲いかかってきた。

「(…避けられない!)」

そう思ったキャミノは、右腕に力を込めて、体を縮め、側頭部をガードする。
次の瞬間、ヴェロニカの槍が、狙いどおりガードした腕にヒット、ガァシィという衝撃音と共に、右腕に砕けんばかりの激痛が走る。
G級オオナズチの攻撃にも匹敵するほどの破壊力…!!
防具が、全く役に立たないッ…!!

衝撃を逃がしきれず、キャミノは吹き飛ばされて転がる。
起き上がろうとするが、痺れる右腕に力が入らない。

だが、そこにも刺すような殺気を感じたキャミノは、なりふり構わず転がって距離を取る。
キャミノが居た空間に、再びヴェロニカの一撃が振り下ろされているのが、視界の隅に見えた。

…勝てない!!

たった1回の攻防だが、キャミノの技量はヴェロニカのそれとは比較にすらならない事が、あっさり露見した。
「回避性能+2」を付けているからこそ、何とか攻撃を避ける事ができているが、それでも全てを避けきる事は無理だ。
それほど、ヴェロニカの攻撃は鋭く研ぎあげられていた。

「…どうしたの? やたら無様だけど、私の事、許さないんじゃなかったのかしら?」

ゆらゆらと、ヴェロニカが正眼に構えた槍の穂先を揺らして、誘いを掛けてくる。
まるで、蛇が獲物を捉える時の動作のようだ。

「(くっ…!!)」

迂闊に攻撃圏内に入ると、あっという間にやられる。
だが、逃げ腰だと、こちらの目論見がバレてしまう可能性がある。
こちらが、逃げまわってギルドが来るのを待っている事が分かれば、ヴェロニカは、ユーフィアを人質に取るのを優先してしまうかもしれない。
それだけは、絶対に避けなくては…。

だが、どうやったら、安全に攻撃が出来るのか…?

…盾だ。

盾を持っている、右手側を狙うしかない。
右手側なら、左手に持っている槍の攻撃は、届くのが一瞬遅れる。
盾でバッシュされるのが分かっているなら、踏ん張れば逆に相手を押し返せるはずだ。

キャミノは、ゆらゆらとステップを踏むと、左手を攻撃すると見せかけて、右手の盾を攻撃した。
ヴェロニカも、フェイントに一瞬だけ反応が遅れたが、それでも無難にキャミノの攻撃をガードする。
…攻撃が届かなくても良い。攻撃している振りさえできれば良いのだから。

次、バッシュが来る!

キャミノは、盾に押されまいとして足腰に力を入れたが、逆にヴェロニカはバックステップすると、そこで踏ん張っているキャミノに、またも横薙ぎの一撃を加えた。

「あぐっ!!」

左の大腿部に、信じられないほどの衝撃が走る。
そこに、再度頭を狙った一撃が奔るが、キャミノはそれを強引に体を捻って避けた。
バックステップで距離を取るが、キャミノの心を、圧倒的な量の絶望が埋め尽くしていく。

…ダメだ、勝てない!

さっきから、彼女は突きを使わずに、薙ぎ払いばかりしているが、突きだと避けやすくなるからだろう。
こちらのパピメルXのスキルが「回避性能+2」である事は、一流ハンターなら誰でも知っている。
殺傷力は低くとも、ヒットさせやすい攻撃を彼女は選び、そしてその一撃は確実にこちらにダメージを与えていた。

「…貴女、それでも仇打ちのつもり? いくらG級なりたてのハンターと言っても、酷過ぎるわよ」

しかも、たった2手で、目論見はバレようとしている。
技量が低いのは仕方ないが、戦うフリさえすれば良い…という心中すら見透かされつつある。
もっと、死ぬ気で掛からないと、彼女を騙せすらしないのだ。

…だが、彼女相手への捨て身の攻撃は、死を意味する。

そのジレンマに悩まされたキャミノは、思わずアイテムポーチに手を伸ばし、けむり玉を投げつける。
さっき、チャチャブーの彼が教えてくれた、必殺の戦法。
白い煙の中では、自分の姿は、保護色になって見えなくなる。
その隙に、相手の戦闘力を奪うだけの一撃を与えられれば…!!

白煙立ち上る中で、キャミノはヴェロニカの姿を探す。

…?

居ない!? 彼女の姿が、見当たらない!?
さっきは、紫色の彼女の姿が、煙の中に浮かびあがっていたというのに…!?

「…無駄よ、その戦法はもう通じないわ!」

再び、煙を裂いて、横薙ぎの一撃がキャミノを襲う。
左肩に一撃を受け、再度キャミノはもんどり打って倒れた。

白煙が晴れ、ヴェロニカの姿を見たキャミノは驚愕した。
彼女の鎧が、全身白一色に変化している。

…しまった、そう言えば彼女は「鎧の色を変化できる」って言っていたような…。

「その通りよ、もうけむり玉なんて、小賢しい戦法は効きませんわ」

そう言うとともに、ヴェロニカは鎧の色を、今度は白から夜闇に溶け込む深紫色に変えてみせた。

だが、白い煙の中で、白い防具をつけていれば、視認できないのはお互い様のはずだ。
何故ヴェロニカだけが、キャミノの位置を特定できたのか?

「チャッ」

キャミノの少し後ろに、離れてチャチャブーが居た。

…そうか、多分「この子のそばにいる」という曖昧なアタリで攻撃してきたのだろう。

「…ごめん、君、危ないからもう少し離れてて」
「チャチャッ!?」

…これで、けむり玉は使えない。
こっちも、煙の中で相手を視認する方法がない以上、後は脱出の際の目くらましくらいにしか使えない。

それに、今気が付いたが、視界が悪くとも、ある程度移動すれば、けむり煙の効果範囲から逃れる事ができる。
ユーフィアを助けた時、けむり玉に包まれた彼女が身動きしなかったのは、たまたま崖際に居て、転落を恐れたからだ。
今、わざわざ鎧の色を変えて反撃してきたのは、さっきの脱出に対する意趣返しなのだろう。

…ダメだ。

反撃の方法が、ない。

閃光玉…も考えたが、相手はモンスターではなくハンター。
視界の広いモンスターと違い、人間は視界が前面にしかないので、視線が一致していないと、閃光玉を決める事は困難なのだ。

しかも、相手の武器はランスだ。
こっちが閃光玉を持っていると分かれば、盾で光を遮られ、二度は通用しない。
いや、一度でも通用するかどうか…。

キャミノは、絶望に心を浸されながらも、それでもなお双剣を握って、ヴェロニカの前に立つ。

もう、ダメだ。

ユーさんを救うには、私の命をかけるしか、ない…。

<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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