女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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Ein Liebeslied(15)

「…ぎゃああぁぁああぁああっ!!」

静寂の夜闇を切り裂いて轟く、獣の叫び声。
だがキャミノは、それがユーさんの口から発せられた物だと気づくまで、しばらくの時を要した。

「いやぁ、あああぁ、あぁああっっ!!」

ユーさんが、見た事もないような必死の形相で、いつの間にか自分の右胸に生えた鉄槍を引き抜こうとしている。
いや、押し戻そうとしているのか。
しかし、槍の穂先を掴んでも、ユーさんの手が血に塗れるばかりで、穂先はビクともしない。

ユーさんが体を捩って、刺した相手を見ようと後ろを振り向いた時、彼女は槍に貫かれた状態のまま腹部に蹴りを受けた。
蹴られた衝撃で槍が強引に引き抜かれ、飛び散る鮮血とともにユーさんは地面に屑折れる。

突如、ユーさんの背面から出現した槍…。
あの形状は、「スカイスクレイパー」か。

それが、ブンと音を立てて唸ったかと思うと、屑折れたユーさんの後頭部に鈍い音を立ててヒットし、彼女は顔から地面に激突して、そのまま動かなくなった。

ここまで、一瞬の出来事だった。

「…何が『凄く喜んでくれるだろうなぁ』なのかしらね。…こんな物、腐るほど持っていると言うのに」

暗闇の中から唐突に現れたその影は、ユーさんの手から零れおちた「霞龍の宝玉」を見つけると、まるでゴミを扱うかのように無造作に蹴り飛ばす。
ユーさんが見つけた2つの宝玉は、コロコロと転がって…。
どちらとも、エリア3の端から谷底に転落していった。

「なっ…。」

あまりの出来事に、頭が付いていかなかったが、眼の前に居るその影。
その影は、夜闇よりもさらに濃い闇を伴って実像化した。
本来の白色ではなく、まるでオオナズチの様に周囲の風景を模した、深紫色の「ミズハ・真」装備。
ランス「スカイスクレイパー」を装備し、見眼麗しい美貌と、圧倒的な存在感を持つ、その女性は…。

…「ヴェロニカ・ラ・クォルヴァディス」だった。

彼女が、血の付いたランスを見ながら言う。

「…誤算でしたわ」
「まさか、本当にG級オオナズチを倒してしまうとはね…」
「貴方の強運はやはり侮れませんわ、ミス・キャミノ・フェルプンクト」
「…どういう方法でかは知りませんけど、チャチャブーまでを味方につけるとは」

震える吐息とともに、ヴェロニカはランスをひと振りし、槍にこびりついた血を払った。

そのユーさんは、地面にうずくまったまま、ピクリとも動かない。
彼女のパピメルXは、まるで大きな穴が空いたかのように、流れ出る血液で黒く染まっていた。

「な…何をしているの、貴女ッ!?」

ようやっと、キャミノの意識が、この異常な現実を認識し始める。
その声は、怒りと恐怖で、無様なほど震えていた。

「何をしているのって…バカではありませんの、貴女? …この状況が、殺人以外の何に見えると言うんです?」

―さつじん。

今、言った。
ヴェロニカは、確かに、今、「殺人」と言った。

なんで…!?

「面白い顔ね、ミス・キャミノ・フェルプンクト」

彼女は、その美貌に、薄い嘲笑を湛えて言った。

「もう、『瞳』である事に飽きたんですよ」
「…いい加減に、女王の座を譲って頂けないかしら? もう、十分でしょう、貴女は」

そのまま、彼女はユーフィアに近付くと、その頭を思い切り踏みつけた。

「や、やめてッ!!」

ユーフィアの元に駆け寄ろうとしたキャミノだったが、まっすぐに伸びた槍の穂先に制止された。
ヴェロニカは、いつの間にかキャミノに向けて槍を構えている。
その穂先から放たれる圧倒的な殺気、それがキャミノの足を止めさせていた。

血に汚れた槍の穂先。
それは、ユーさんの血だ。

地面にうずくまるユーフィアの胸元から、じわじわと血が流れ出ているのが分かる。
蒼い月光の下、ユーフィアが倒れこんだ先から、出血が作る黒い染みが、眼に見えるほどの速度で広がりつつあった。

「もう止めてッ!」

その光景を見た瞬間、居ても経っても居られなくなり、キャミノはヴェロニカを力ずくで組み伏せようとして突っ込んだが、あっさり返り討ちにされて転がった。
起き上がったキャミノは、再度ヴェロニカに飛びかかったが、今度は横殴りに槍の一撃を受け、ユーフィア同様地面に突っ伏した。

何で!?

…同じG級ハンターなのに、体に触れる事すらかなわない。
彼女は、上位のオオナズチに苦戦する程度の実力だったはず…。
仲間の協力を得てクエストを進めた、寄生ハンターではなかったのか?

「…いいえ、これが私の実力ですわ。『ミズハ・真』の装備を持っているハンターが、どうして上位のオオナズチとかに苦戦する理由があるんです?」

…あの行動は、嘘だったのか!?

「なんで、こんな事を!? それに、他のハンターに危害を加える事は、ギルドの狩猟法で禁止されているはずよ!? 早く、ユーさんから足を退けてッ!!」

だが、それを聞くと、ヴェロニカはさも可笑しそうに高く笑った。

「…『G級特例申請』が、何故公式には『ない』事になっているのか、貴方は理解されなかったんです?」
「このクエストは、密猟というその性質上、ギルドは中身に一切関与しないし、クエストを監視する気球も居ません」
「故に、僅かですが、そこにはギルドの意図せぬ無法地帯が存在する…。 そこで起こりえるトラブルを避けるため、ですわ」

ヴェロニカは、ユーフィアの傷口を思い切り踏みにじる。

「つまり、今、『狩猟法』は適用されませんの! ここで貴女達が死んでも『モンスターに倒された』事になるだけですわ!」

哄笑の足元で、ユーフィアの体が気絶したまま痙攣した。

「ねぇ、キャミノ…。」
「この状況…『殺し得』だと思いませんこと?」

キャミノは、声にならない悲鳴を上げながら、再度ヴェロニカに突っ込んでいく。
今度は双剣を向けていたが、ランスの盾に阻まれる。
それでもなお、執拗にヴェロニカを狙うが、またも盾でバッシュされた揚句、槍の横薙ぎの一撃を喰って、あっさりと地面に叩き伏せられた。

「キャミノ」

冷徹な声が響く。

「武器を捨てて」

ヴェロニカは、槍の穂先をキャミノではなく、動かなくなっているユーフィアの延髄に向けた。

「従わないと、この子を殺すわ。面倒だから、貴女もとっとと殺されてちょうだい」
「…まぁ、この子の命も、残り10分あるかないかだけどね」

「あ、ああ…やめて!…お願いだから、やめてぇッ!! それだけは、やめて!」
「とっととこっちに来て、さっさと殺されろと言ってるのよッ!」

手を伸ばして、哀願するキャミノに対し、ヴェロニカは殺気混じりの怒声で命令する。

「お願い…止めて、止めて、ユーさんが、死んじゃうッ…!!」

「チャッ!」

だがその時、キャミノの足元を引っ張る感覚があった。
あのチャチャブーが、キャミノの裾を掴んでいる。
彼はキャミノのアイテムポーチを指差し、そして何かを投げる仕草をする。

その姿を見て、キャミノの脳天に、雷鳴のように打開策が閃いた。

キャミノはアイテムポーチから、残り3個となっていた「けむり玉」をヴェロニカに向かって投げつけた。
ヴェロニカの周囲一帯を、真白な煙が覆い尽くす。

奇しくも強烈な既視感。
けむり玉の巻き起こす白煙の中、ヴェロニカの着ている「ミズハ・真」の紫色が浮かび上がる。
だが、パピメルXのデフォルトカラーは白。
その中では偶然にも、キャミノの姿は保護色となっていた。

「なっ…!?」

けむり玉の白煙が周囲を覆い尽くす中、ヴェロニカはキャミノの姿を見失う。
狩人としての本能が、思わず防御行動を取らせた瞬間、彼女は背中からの衝撃を受け、前のめりに転がった。

「(…体当たり!?)」

危険を感じた彼女は、追撃を受ける前に大きくバックステップしたが、その瞬間、全身が凍り付く感覚に襲われた。

すぐ近くから、谷底から吹き上げる冷たい風の感覚がある。
今、この場所は崖の間際だ。
…この状態は、まずいッ!!

視界の効かない今、ヴェロニカはうかつに身動きできなくなった。
もしも、この状態で突進され、谷底に突き落とされたら、あまりにも無様な返り討ちだ。

彼女のミズハ・真は、彼女の意思で自由自在に色を変える事ができた。
本来の色は「白」であるが、夜闇の中での保護色となるよう、一時的に濃い紫色にしていた。
それでユーフィアを強襲したのに、今度は自分がやった事をそのままやり返された。
まさか、けむり玉の中では、パピメルXの「白」が逆に保護色になるなんて…!!

立場が一瞬にして逆転し、ヴェロニカは動揺する。

身動きしてはならない。
もしも気を緩めた隙に、もう一度追撃を受けたら…。
腰を落として盾を構え、集中してキャミノの攻撃に備える。

「(くそっ…、くそ、くそっ…!! オオナズチの姿を捉えるために、準備していた物だったのね…!)」

どこから来られても良いように、集中力を極限まで高めてキャミノの攻撃に備える。
この千載一遇のチャンス、彼女が逃すはずがない。
自分を谷底に突き落とした後、ユーフィアを秘薬で回復させれば、あっさりとこの状況から逃げきる事が出来るから。

来る、必ず来る。
間違いなく、来る。

どこから…? 
どこから来るの、キャミノッ!!

…だが、キャミノの攻撃が来る様子が、一向にない。
油断させて一撃を見舞う作戦か…と思ったヴェロニカは、決して防御を緩めない。


…しかし、白煙が晴れた時、そこにはただ静寂のみが存在するばかりだった。


ヴェロニカの顔が屈辱に歪む。

キャミノ達を殺すつもりで来ていながら、あっさりとお株を奪われ、あまつさえやすやすと逃げられてしまった。
しかも、キャミノは自分を倒すチャンスよりも、ユーフィアの命の方を優先したらしい。

「(私の存在など、どうでも良い、って事なの…!?)」

自分を倒すチャンスはさっきの「偶然の一回」しかなかったのに、人質さえ取られていなければどうにでもなる、というのか。
それとも、怪我人を抱え込んだまま、ギルドが来るまで逃げ切る自信でもあるのか。

ヴェロニカは、スカイスクレイパーを振りかざすと、刹那の吐気と共に、そこにあった大木めがけて一撃を繰り出す。
それは、怒り任せの一撃でありながら、バーンという高く乾いた音を伴って、大木を反対側まで貫いた。

そして、彼女は精神を集中させ、鎧に「語り」かける。
脳裏に、先ほど見た白煙のイメージを強烈に思い浮かべると、彼女の鎧は、見る間に白くなり始めた。
そう、彼女の「ミズハ・真」は、彼女自身が作りだした特注品。
彼女が狩ったオオナズチの魂を宿した、「生きる鎧」だった。

…5秒足らずで、彼女の鎧は紫から、白に変色した。
また、先ほどのようにけむり玉を投げつけられても、相手はこちらの居場所を把握できなくなるはず。

「(次は油断しないわ…。)」

あの策は、二度と通じさせない。
そして、彼女らをやすやすと逃がすつもりもない。

…追い詰めて、狩ってやる。

本来、モンスターに向けるはずの槍を、大木から引き抜いて小脇に抱えると、彼女は薄く笑う。
ヴェロニカの瞳に宿った狩人の炎は、狂気を孕んだ殺意に彩られ、赤々と燃えていた。

<続く>
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*Comment

NoTitle 

すげぇ・・おもしれぇ・・

もう脳内での完結はしてるみたいですし、続きが気になります~
  • posted by 者武 
  • URL 
  • 2010.03/07 21:42分 
  • [Edit]

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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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