女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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Ein Liebeslied(11)

眼の前で、オオナズチが高い悲鳴を上げる。
キャミノがふと上を見上げると、オオナズチの角が根元から折れていた。

「…やった、やったよ、ユーさん! オオナズチの角、砕けたよ! いい感じ!!」

自分は延々とオオナズチの脚に乱舞するチャンスを伺っていたので、ナズチの角を折ったのはユーさんだろう。
でも、たまたま手を出した一撃が、上手くヒットしただけに過ぎないのではなかろうか。

ユーフィアの闘志を鼓舞するために、「砕けたよ!」と大声で叫んでみたが、内心、あまりのダメージを与えていなさに絶望した。
図書館の本では、オオナズチの角は、数度のダウンで折る事ができる…と書いてあった。

最初、調子が良かった頃に、既に何度かのダウンを奪って、頭と角にダメージを与えていたのに、折れたのは、既に戦闘開始から二時間を経過した今頃だった。

回復薬Gは、二人合わせて、残り9個。
秘薬はキャミノが持っている分だけで残り4個、いにしえの秘薬は、残り6個…。

…無理だ。

そんな心の声が、キャミノの胸の内をかすめ過ぎる。
どう考えても、計算が合わない。

ダウンを結構奪っては居たが、「角はすぐに折れる」…その記述を信じるなら、自分たちはまだロクに、オオナズチにダメージを与えていないはず。
多分、頑張って1~2割と言ったところか。
なのに、回復薬系は、半分をとっくに割り込んでいる。
エリア11に保管しておいたバッグから調合素材を取り出し、既に補給を行ったが、それも信じられないくらいの勢いで減っていき、現在に至る。

それも、戦闘開始当初の戦法、双剣ハメをしなくなったため。
安全第一で行こう、というユーフィアの要望を受け入れた結果、効率は大幅に悪くなった。
なのに、ユーフィアは回避に徹しているため、事実上キャミノが一人で戦っているのと同じだった。

さすがに、延々とオオナズチの相手をしている事に加え、回避性能を持つパピメルXのおかげで、大抵の攻撃は回避できるようになっていた。
怒り状態も、すぐさま撤退して怒り状態が覚めるのを待つ、という消極的戦法と、既に立てた作戦のおかげで、例の連続攻撃は回避できていた。

…それも、けむり玉と閃光玉が無くなるまでの話、だが。
音爆弾も、残り5個しかない。
最初は、音爆弾もオオナズチの姿を表すのに使っていたが、致命傷になる連続攻撃を阻害できると分かってからは、大事に使うようにした。

大量の資材に守られた、自分たちの命。
だが、それらがどんどん消費されていくにつれ、焦燥感と恐怖心が、心のうちに湧きあがってくる。

眼の前で、また、ユーフィアが回復薬Gを飲んだ。
まだ持ってたんだ、と思ったが、次の瞬間、ユーフィアは回復した直後の隙に攻撃を受け、地面に転がった。

「ユーさんっ!!」

今、オオナズチは怒っていない。
キャミノはナズチの殺気に合わせて、閃光玉を投げ眼つぶしすると、ユーフィアを抱えて、隣のエリアに逃げ込んだ。


幸い、ずっと気絶するほどの衝撃ではなかったらしく、介抱すると、すぐにユーフィアは眼を覚ました。

「あ…。キャ、キャミさん…。ごめんなさい、私、また気絶しました?」
「ううん、良いんだよ、ユーさんが倒れたら、私がフォローするから。 …立てる?」
「…は、はい、何とか」

そう言って、ユーフィアはよろよろと立ち上がる。

最初に気絶ダウンを喰らった時の、病的な怯えこそ消え去っていたものの、闘志は全く戻っていない。
体には力がなく、視線も所在なさげだった。

「ユーさん、深呼吸して。 うん、そう、気分を落ち着けて…。」

ユーフィアとキャミノは、二人してゆっくり深呼吸する。

気のせいか、ユーフィアの瞳に、少し意志の光が燈ったような気がした。
それが本当であったら、と願いつつキャミノは聞く。

「…ユーさん、行ける? まだ、戦える?」

ユーフィアの目に、少しだけ泣きそうな感情が籠もる。
…まだやるんですか、って言いたげな表情だ。

「…やります。 なんとか…なると思います」

でも、ユーフィアはなんとか健気に付いてきてくれていた。
いつ、癇癪を起してリタイヤする、と言い出すか分からないだけに、結構頑張ってくれているのは本当にありがたい。

二人は、こんがり肉を食べると、砥石を使って、再び隣のエリアに居るオオナズチと交戦を開始した。

いつ終わるともしれぬ宵闇の戦い。
キャミノは気付いていなかったが、蓄積した乱舞の疲労で、ぼんやり意識が薄れかけつつあった。

なんで、私、こんな所で、こんな辛い闘いをしているんだろう。
早くお城に帰って、大きなベッドの中で、ゆっくり眠りたい…。

そう思うと、次々とキャミノの頭の中には、過去の思い出が次々浮かびあがってくる。

街に初めて出てきてお金がなかった頃、歌のコンクールがある事を知り、一か八かそれに臨んだ。
だが、出場のためにはドレスが必要だった。
必死で働いてかき集めたお金で絹を買い、それで必死に縫いものをして、ドレスを作り上げた。
二人で毎日徹夜してドレスのレース部分を作った。

ユーさんが眠気に耐えられず、毎回のように指に針を刺していたので、見ていられなくなり、「血でドレスが赤くなっちゃう」って事で眠ってもらった。
でも、その後、彼女はちゃんと起きて手伝ってくれた。
まぁ大体はキャミノが縫ったのだが、それでも締切ギリギリでドレスは間に合った。
彼女の手伝いが無ければ、間に合わなかったのは間違いなかったから。

飛びこむようにして参加したコンクールで、彼女は見事優勝した。
賞金を貰った彼女たちが、最初にやった事は、宿を取って、二人一つのベッドで泥のように寝る事だった。

その後、彼女らは、宿で食事を取った。
賞金があったから、お祝いにと、好きなものを沢山頼んだ。

…そういや、あの時、ユーさんは初めてマロングラッセを食べて、美味しいって言ってたんだっけ…。

そうか。

さっきから、何故こうも頻繁に、過去の思い出が蘇ってくるのか、分かった。

…これは、走馬灯だ。
幸せだった自分の人生が、徐々に終焉を迎えつつあることを、私は内心で自覚しているんだ。

そう思うと、涙が出た。

…もう、ダメかもしれない。
私は、歌の世界に戻れないかもしれない。

でも、諦めたくない。
あんな素敵だった人生が…。
輝いていた毎日が…。

これが本当の私なんだ、って思ってた、歌姫である私が…。

それが消えていくなんて耐えられない。

もう、いっその事、ユーさんに何もかもブチまけてしまおうか。
次なんて無いんだよ、だから私はこんなに必死なんだよ!って!


無理攻めして乱舞を喰らわすキャミノだったが、そこに彼女は攻撃を喰らい、地面に突っ伏す。
脚が震えていたが、無理矢理に体を起して追撃を回避し、躊躇せず秘薬を飲んだ。

ごめん、ユーさん、もう少し付き合って。

オオナズチの体躯の向こう側に、相変わらず泣きそうなユーフィアの顔が見えた。
及び腰の彼女は、もう本当にちまちまと、触れるだけのような攻撃しかしていない。

…ユーさん、もう少しだけ付き合って。
最後まで、希望を捨てたくないの。
やってやり尽くして…。
後悔しないように、とことんまでやりきって…。

それでも駄目だったら、諦めるから…。

キャミノは、大きな呼気とともに、錬気から調息を行い、鬼人化した。
そして、脚に乱舞を食らわし、無理矢理にダウンを奪った後、尻尾に狙いを変える。

信じたかった。
甘い幻想かもしれないが、自分たちが運よく、オオナズチにダメージを与えていると信じていたかった。
角が折れなかったのは、何かの間違いで、ダウンを奪っていた通りに、ダメージを与えているのだと思いたかった。

オオナズチの尻尾は、残体力がおよそ40%を下回れば切断できると本に書いてあった。

なら、もしも今、尻尾が切れれば、私たちにはまだ希望が残っているはず。
私たちは、本当はもっとダメージを与えているんだ。
きっと与えてるんだ。
上手く戦えていたんだ。

だから…。

切れて! お願い、切れてッッ!!

キャミノは、ダウンしたオオナズチの尻尾に、悲痛な願いを込め、猛烈な乱舞を繰り出した。


場所は変わって、マーシフルの下町の酒場。
そこは、いわゆる街の盛り場であって、煌々とした灯りが人々を照らしている。

食事や刺激を求める夜の住人達。
酒場の喧噪ざわめく中、ある出張馬車の営業所に、その客はやってきた。

「…あの、こちら1台お願いできるかしら」
「…あん?」

夜の酒場では、酔漢を送迎する必要もあり、お抱えの馬車業者を雇っている所があった。
その、馬車の営業所にやって来た一人の女性客。
声で女性とは分かるが、フードで顔を隠している。
あきらかな不審客だ。

だが、詰め所で待機していた御者は、自身も酒を飲んでいて、その事に気がつかなかった。

「申し訳ないけど、急用なの。馬車をお願いできるかしら」
「…ああ、いいぜ」

しかし…。 いい体してんな、コイツ。

その客は、顔は隠しているが、女性特有のお洒落のつもりなのか、胸元や脚の露出は激しい。
その女の白く豊かな谷間に、思わず眼が行ってしまう。

「で、どこまでだい、お嬢さん」
「…の森丘まで」
「おいおい、冗談言うなよな! こんな夜半に、そんな遠くまで馬車を出せる訳ねぇだろ! 暗くって馬が怪我しちまわあ!」
「そこを何とか。貴方、御者でしょ!? …本当に急用なのよ!」

女の声に、さっきとはうってかわって、明らかに苛立ったようなイントネーションが混じる。

「なんだよ、無茶言うなよ! 馬が怪我したらこっちも商売上がったりなんだよ! アンタがその代金払ってくれるのか!?」

すると、女は腰から巾着を取り出すと、御者の前にドサリと投げつけた。

「20000zあるわ、それで足りるでしょ? さっさと馬車を出して」

御者は絶句した。
運賃としては破格の代金だ。
何モンだ、こいつ。
イイところのお嬢様か何かか?

「…悪いけど、これじゃ足りねぇな」

女が投げ寄こした額は、確かに運賃としては破格だったが、馬が骨折した時の代金としては、少々足りない。
普通の乗客は知らないだろうが、馬の脚の骨折は、その馬の死に繋がる。
自分なら、女の提示した場所まで無事辿りつける自信はあるが、万一に備え、馬を買い直すだけの金額は欲しい。

御者はそう女に伝えた。

「足りないって…あといくら要るのよ!」
「そうだな…。」

そこで、御者は女を見る。
正しくは、女の胸元を見た。
大きく切れ込んだ衣装から覗く、白く豊かな胸の谷間。
その白い双丘の全体を想像すると、思わず生唾が喉を嚥下していく。

「…今から、俺と一晩付き合ってくれたら、残りの代金はチャラにしてやるぜ、どうだい?」
「まぁ、朝にはちゃんと目的地まで届けてやるよ、俺にその体力が残っていればな。ヒヒッ」

「…そう、分かったわ」

そう言って、女は御者に近寄って来た。
そして、しなやかな動きで御者の背中に回ると、瞬く間に腕を捻じり上げ、馬車に顔から叩きつけた。

「貴方がどうしようもないクソ野郎って事がね」

腕を捻じりあげられ、くぐもった悲鳴しか出せない御者に、その女は冷徹に命令した。

「殺されたくなかったら、今すぐ馬車を出しなさい。さっき言った、例の森丘まで」


場面は再び、森丘のキャミノ達に戻る。

悲痛な思いを込め、乱舞を繰り出したキャミノ。
当然1度では切れないだろうと思い、それこそ何度も、何度も…。
ダウンを奪って、尻尾に乱舞して、ダウンを奪って、尻尾に乱舞して…を数回繰り返した。


…だが、尻尾は切れなかった。


当然、オオナズチの透明化の能力も未だ健在だった。
ダウンから復帰したオオナズチが、キャミノの願いもむなしく闇に消えた時。
彼女は静かに「その時」がやってきたのを自覚し、隣のエリアに撤退するよう、ユーフィアに伝えた。


「…どうしたんですか、キャミさん? まだどっちもダメージ受けてないのに」

だが、キャミノはユーフィアの問いかけを無視して、資材の残量を確認した。

回復薬Gが3つ。 秘薬2つ。 …いにしえの秘薬、0個。
音爆弾、0。 閃光玉、4つ。 けむり玉、3つ。

…そういや、今になって気づいたが、砥石も足りない。
砥石は残り8つ。 こちらも半数を割っていた。


…ゲームオーバー。

そんな声が、キャミノの脳裏に響く。

オオナズチを打倒するより先に、こちらの資材の方が尽きてしまった。

…ユーさんは、結局最後まで気付かなかった。
まぁ、自分が大部分の回復薬系を管理してたから、無理もないけど。

「…ごめん、ユーさん」
「…何ですか、キャミさん?」

キャミノは、何も言わず、顔をあげて蒼く輝く月を眺める。
ややあって、彼女は自分の中の何かに決別するように、その言葉を口にした。

「…あたしたち、クエストに失敗したみたい」

キャミノの頬を、月の光を宿す雫が、ゆっくりと流れていった。

<続く>
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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