女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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Ein Liebeslied(8)

深夜12時過ぎ、凍える満月が中天に位置するころ、キャミノとユーフィアは森丘に居た。
「霞龍の宝玉」をゲットするために、「G級特例申請」を受けてG級オオナズチと戦えるようになったものの、視界が極めて悪い、「夜の森丘」という最悪のコンディションでの戦闘を余儀なくされる。
しかも、これが最初にして事実上の最終戦だった。

「とりあえず、エリア4に行ってみよう。それで、『千里眼の薬』を飲んで、オオナズチの居場所を探そうか」
「分かりました」

2人は、広場になっているエリア4に行く。
高台に登って、他のエリアにオオナズチが飛来していないかを確認しようとした時…。

…オオナズチが、姿を消すことなく、エリア9からこっちに飛来してきた。

「…来た」

まさか、こんなにあっけなく見つかるとは。
幸先は良い。
視界も悪くないし、戦場となる地形も好条件だ。

「…イケるかも」

心臓が高鳴るが、それを抑える。

「ユーさん、『鬼人化』を」
「はい」

手持ちの強走薬Gを飲み、深呼吸する。
そして、調息から錬気。
存分に、完璧な型の「鬼人化」を行い、経絡に気を流す。

…圧倒的な「力」が、奔流となって2人の体を流れ始めた。

目の前に、G級オオナズチの巨体が、地響きを立てて降りる。
こないだの、上位のオオナズチよりも、ふた廻りは大きいだろうか。
明らかに老成した個体。
多分、求める「霞龍の宝玉」を、その身に宿していることだろう。

2人は、その姿を見ながら、曲げた右手の人差し指を、顎に当てる。

「(…ごめんね、貴方には罪はないけど…。貴方の命を、必要としている人が居るんです…。)」
「(…貴方の血と魂に、尊厳と祝福を。そして安らかな眠りを)」

これから奪う命への、冥福の祈りを終えると、キャミノの目に、狩人としての炎が静かに宿った。

ペイントボールを片手に持ち、2人は高台を一気に駆け下ると、そのままオオナズチにペイントし、抜刀した。

「…行くよ、ユーさん! 頑張ろうね!!」
「はい、キャミさん! もちろんそのつもりですよ!!」

幸運にも、最初の難関である、「オオナズチを探してマーキングする」手間は省けた。
後は、図書館で読んだ、「双剣ハメ」が、上位武器でどれだけG級オオナズチに通じるか…!
いや、通じる。通じさせてみせる!!

そう意気込んでオオナズチに斬りかかるキャミノ達。
姿はまだ見えているので、切り払いで接近しつつ、オオナズチの後ろ脚に一撃を加える。

…その瞬間、オオナズチがこちらを見る。
刹那、キャミノの背中を、ぞっとする殺気が通りぬけていった。
こないだ戦った、上位のオオナズチとは、全く質も量も違う殺気。
真冬の河のような冷気が脚元から這い登り、身動きもできず飲み込まれていく感覚が、彼女の全身を包んだ。

…殺される。

そうキャミノの本能が告げたが、彼女はそれを意志の力で振り払うと、「飛天蒼桜」の型から、一気に「乱舞」に入った。
小型・中型モンスターなら、それだけで撃滅させえるほどの威力を持った、連続波状攻撃「乱舞」。
双剣による連続攻撃が立て続けにオオナズチの脚にヒットし、最後に「飛燕流星」で締めるが、目の前のオオナズチの脚にはさほどダメージが入った様子がない。
再度、乱舞を叩きこむが、今度は、ほんの少し表皮が切れただけにすぎなかった。

「くっ…!!」

まるで、岩。
その感触は、例えるなら、絶峰から直接切り出された巨大な岩石だった。
ちっぽけな二つの剣で、この巨魁に挑む様は、素手で岩盤を掘り進むかのような錯覚をさせられる。

「危ない、キャミさんっ!!」

その瞬間、オオナズチが膨大な殺気とともにギョロリとこちらを向き、喉をプクリと膨らませ、「疲労ブレス」を放って来た。

「(…しまったッ!)」

眼の前に襲いかかってくる緑色のガス。
明らかに反応が遅れた…と思ったが、回避行動に入ったその瞬間、自分の体が、まるで空を舞う蝶のような動きを見せ、キャミノは疲労ブレスの範囲から易々と逃れる事ができた。

「あ、あれ?」

あまりの出来事にきょとんとして、もう一度安全圏まで回避を試みるが、まるで体が羽根で出来ているかのように軽い。
スキル「回避性能+2」の効果だ。
…す、凄いこのスキル! これなら、ちょっとくらい回避が遅れたって、全然大丈夫かも!?

「大丈夫、ユーさんッ!! この鎧、凄いから!」
「わかりましたっ!」

オオナズチは、今度はユーフィアを相手と見据え、地響きを立てて突進する。
しかし、ユーフィアも今度は轢きつぶされる事無く、華麗に突進を避けた。
…良かった、これなら行けそうだ!

2人して、突進後のオオナズチを追いかけ、両脚を切り刻むべく追いかけたが…。
次の瞬間、予想を超える出来事が起きた。

「!?」
「!!」

オオナズチの姿が、徐々に夜闇に溶け込んでいき…、全く見えなくなってしまった。
上位のオオナズチの時は、回りの風景のズレ具合から、ある程度場所を把握する事ができた。
今回も、いくら夜とは言えど、月明かりのある所で戦闘を行えば、少々は場所を把握できるだろう、という思惑はあったのだ。

しかし、このG級オオナズチは、上位のそれよりもふた廻りほども上回る巨躯でありながら、完璧に周囲の風景に同化した。
やはり、夜である事がハンデだったのか、それともこれがG級オオナズチの能力なのか!?
想像を超える事態に、2人の接近する足が思わず止まる。

刹那、2人の間に割って入るように、砲弾のようなオオナズチの舌鞭が、空気を裂いて襲いかかってきた。

「!」

攻撃の一瞬だけを視認できたその瞬間、2人は横っとびでその攻撃を避ける。
以前のタイミングなら、確実にヒットしていただろうが、パピメルXの「回避性能+2」はさすがだった。

「ユーさん、大丈夫!?」
「かすり傷です! でも、オオナズチ、全く見えませんよッ!? どうするんですかッ!?」
「心配しないで、任せてっ!」

キャミノは、閃光玉を用意する。
図書館で読んだ資料の中には、オオナズチの居場所を特定できるアイテムは複数存在し、音爆弾・閃光玉・けむり玉などでその位置を特定できるとあった。
それらのアイテムも、調合資材含めて、潤沢すぎるくらい持ってきている。

「(お願いします、先達のハンターの皆さん…。私たちに力を、貸してッ!)」

祈りながら、キャミノは閃光玉を投げる。
小さく高い悲鳴が、先の空間から聞こえた。

すると、オオナズチの頭の上を☆がグルグル…ではなく、ぼうっと亡霊のように、オオナズチの巨体が薄く白く浮かび上がる。
オオナズチは、皮膚の受容体だけではなく、視覚でも透明化の能力をコントロールしている。
閃光玉の光を直視してしまった事で、図らずも光の白さが体表に映ってしまったのだ。

「凄いです! オオナズチの姿が、くっきり分かりますよ!」
「制限時間あるから、急いでね!」

2人はオオナズチの後ろに回りこみ、脚に「乱舞」を次々と仕掛ける。
古龍は、その体型上、後ろ脚に直接攻撃できる方法がかなり限られている。
逆に言えば、正面からでないとまともな攻撃ができない。
ゆえに、オオナズチがこちら…正面を向いたときに、回避に力を注げば、その鈍重な攻撃を避けることは、さほど難しくない。

キャミノがオオナズチの攻撃を避ける間に、ユーフィアが攻撃し、そのユーフィアをオオナズチが攻撃する間に、今度はキャミノが脚に乱舞する。
2人と1体は目まぐるしく攻守を変えながら、連続で攻撃をしている間に、再びオオナズチの姿は闇に溶けていった。

「ユーさん、離れてッ! 次、行くよ!」
「はいッ!」

次は、音爆弾!
オオナズチが攻撃を仕掛ける際に、高周波で怯ませれば、透明化の能力を阻害できる!

…来た!!
 
キャミノは、オオナズチの放つ殺気を待って、音爆弾を併せ投げる。

「ぐっ!?」

ギィン、という音爆弾の高周波でオオナズチがのけぞるが、キャミノも回避が遅れ、砲弾のような舌攻撃を、まともに喰らってしまった。
全身が吹き飛び、地面に叩きつけられる。

…岩石を直接投げ当てられたような、信じられないほどの重みとダメージ。
こないだ、レックスSで被弾した時よりも、遥かに痛い。
防御力は上昇しているはずなのに、それよりも酷いダメージを与えてくるなんて。
これが、G級…!!

怯んだオオナズチは、透明化の能力を一時的に失い、体躯を月明かりの下に曝していた。

「大丈夫ですか、キャミさん!?」
「大丈夫!!」

怯んだオオナズチの脚に乱舞を仕掛けながら、ユーフィアがキャミノに声を掛ける。
自分も、急がなくちゃ!

しかし、立ちあがろうとするも、腰が震えて、脚に力が入らない。
予想外にダメージを喰っているみたいだ。
キャミノは、慌てて回復薬Gを飲む。

「きゃあっ!?」

今度は、乱舞のし過ぎで、ユーフィアがオオナズチの攻撃を喰ったようだ。
どちらかがダメージを受けると、その回復の間、オオナズチの攻撃がもう一人に集中してしまう。
その状況だけは、できるだけ避けないと…!!

回復薬を飲んだキャミノの脚に力が戻る。

「あたしは、こっちよ!」

オオナズチの注意をこちらに向けるべく、叫びながら再び切り払いで接近し、そのまま鬼人化して乱舞に入る。

「すいません、キャミさん!」
「いいのよ!」

ユーさんの、回復の時間を稼がなくちゃ…!
渾身の力を込めて、乱舞する。
すると、その思いが通じたか、オオナズチは高い悲鳴を上げながらバランスを崩し、地響きを立て転倒した。
やったっ! あの本に書いてあることは、間違いじゃなかったっ!

左倒しで倒れたため、翼が邪魔で頭を斬るのは難しい、と判断したキャミノは、尻尾に乱舞した。

…硬いっ!!
刃を弾き返す尻尾の装甲に加え、弾力に富む高密度の筋肉が内在しているのが分かる。
相手を撃滅するために考えられ抜いた「乱舞」の攻撃でも、ともすれば押し返されそうな感触。

…尻尾は、向かない!
図書館で読んだ本に寄れば、オオナズチの尻尾は傷の再生力に富むため、本体の体力自体を奪わないと斬ることができない。
頭の角を壊し、尻尾を切断すれば、この透明化能力を強制解除できるが、尻尾を攻撃しても、硬過ぎてオオナズチの体力は奪えそうにない。

この戦法を考え出したハンターが出した統計によれば、オオナズチの体力がおよそ40%を切ると、再生力が低下し、尻尾の切断が可能になるという。
ならば、脚と頭を集中攻撃して、先に体力を奪った方が得策だ。
キャミノは、尻尾を攻撃した手ごたえから、そう直感した。

「キャミさん、すいません、今行きます!」

ユーフィアも、オオナズチがダウンしている間に無事回復して、二人で乱舞に入る。

「ユーさん、ダウン中は、頭を狙ってね! その方が、ダメージを奪えるって、書いてあったから!」
「分かりました!!」

しかし、オオナズチがダウンから復帰すると、再びその体は夜闇に溶け込んでいく。
これが、少しなりとも姿が分かれば、見当を付けて乱舞を叩きこめるのに、全く見えないのであれば、攻撃を中断するしかなかった。
歯噛みしつつも、次の道具を用意する。

次は、けむり玉。
本には「けむり玉」も有効とは書いてあったが、実際に試してみるまでは、実感としては理解できない。

オオナズチの居た方向に当たりを付け、けむり玉を投げつけると、周囲一帯を真白い煙幕が覆う。

「うわ、何ですかこの白い煙!」

反対側に居るであろうユーさんの声が聞こえたので、簡潔ながら返事をする。

「けむり玉! しばらく真白になるからね!」

…白い煙の中に、今度はうっすらと、本当にうっすらと、夜闇を切り取ったような影が浮かぶ。
閃光玉の時とは反対だ。
先達のハンターの人たちって凄いなぁ、と感心する気持ちがわき起こる。
知ると知らないとでは大違い、というが、道具の適正な使い方を知ってさえいれば、オオナズチが全く見えなくても結構どうにかなるものだ。

よし、脚に向かって攻撃…!! と近寄って行った瞬間、何かにぶつかり、キャミノは転倒した。

「…ったぁー! 何なんですか、これ!?」
「あ、あれ、ユーさん!?」
「キャ、キャミさんですか!?」

そう、キャミノがぶつかった相手は、ユーフィアだった。
パピメルXのデフォルトカラーは「白」。
けむり玉が作る、真白の視界の中ではその中に溶け込んでしまい、お互いの場所を把握する事が困難になる。

「(…しまったぁ~、XZシリーズって、色変えられるんだから、黄色とかピンクとか、違う色にしとけば良かった…!)」

でも、さすがにそこまで予見して気が回るものではないし、しかもギルドに急かされて焦って出てきたのだから、鎧の色に気を回している余裕まではなかったろう。
これはこれで仕方ない。
ユーフィアの場所さえ事前に掴んでおけば、こんな衝突事故は防げるはずだ。

2人がぼやぼやしている間に、煙は薄くなり、後には煙の色を薄く体表に残したオオナズチが残るが、それもまたすぐに夜闇と同化した。

「もう一回行くよ、今度は閃光玉から!」
「はい!」

攻撃は順調に進み、相手の姿を把握しつつ、両脚に乱舞を決めてダウンを奪う。
そして頭の位置を取れる者が頭に乱舞し、ダメージを負わせる…。

このパターンがかっちりとハマり、何度かダウンを奪った。
正直な所、この拘束攻撃の出来具合は見事なもので、G級オオナズチ相手に優勢を保ったまま、キャミノ達は攻撃を加え続けていた。

「(…イケる…!! もしかしたら、このまま最後まで、イケるかも…!!)」

だが、眼の前の現実とは裏腹に、キャミノの心の奥底で「これはおかしい」とさっきから警報が鳴り続けていた。

…角が、折れない。

図書館で読んだ本によれば、尻尾と違い、角には殆ど再生能力がない。
ダウン時にダメージを与えるだけで、角を砕くのは容易…と書いてあった。
その記述からイメージするに、数度のダウンを奪えば、多分角は折れるだろう…と思っていたのだ。

なのに、折れない。
単純に、ダメージが足りないのだろうか?

「キャミさん、ナズチがダウンします!」

今度は、オオナズチがこっちを向いてダウンする。
自分が頭に向かって乱舞する番だ。
さっきの疑問は頭の片隅に追いやって、全力を込めてオオナズチの頭に乱舞を喰らわす。
砕けろ、砕けろ、砕けろッ…!!

剣撃が幾度も角に衝突し、幾つもの火花が飛び散る。
しかし、それでもオオナズチの角は砕ける様子がない。

…ど、どういう事なの…!?

だが、その疑問を抱いた瞬間、何故か、熟れすぎた果実のような甘い腐臭がした。
そして、キャミノは底冷えのする殺気を再び感じ取る。

いや、今までも殺気は感じていた。
しかし、その量が尋常ではなくなったのだ。

そう、オオナズチが遂に怒り始めた。
G級モンスターの怒り状態は、天災のそれにも似る。
オオナズチのそれはまるで、眠っていた火山が目覚めるような感覚。
吹き上げる殺意が、まるで溶岩のように辺りに垂れ流された。

「(ぐぅ…っ!)」

命のやり取りに慣れてはいても、この「殺意」を全身で受け止めるのは本当に堪える。
本能が全身を竦ませるが、それを無理に抑え込む。

この戦法は、上手く行っているのだ。
相手が怒ったのなら、こっちはそれを捻じ伏せるまで…!!

放射される莫大な殺意の中に切り込みながら、キャミノが後ろ脚目がけて走りこもうとした、その瞬間。
オオナズチの舌鞭が、左右に大きく振り回された。

「あぐっ!」

ドズリ、とわき腹に棍棒を叩きこまれたような衝撃が走る。
オオナズチの姿は見えていたが、その攻撃自体が、速すぎて見えなかった…!
わき腹を抑え、キャミノが起き上がろうとしたその瞬間、近寄ってきたオオナズチの前腕が眼前を一閃する。

再びキャミノは吹き飛ばされ、もんどり打って地面に倒れた。

「キャ、キャミさん!? こ、こらっ、オオナズチッ! 私はこっちよぉっ!!」

だが、オオナズチはユーフィアに意識を向けることなく、再度キャミノに攻撃を仕掛ける。
次にオオナズチが仕掛けてきた攻撃は、突進だった。

意識が朦朧としていたキャミノが見た光景は、地響きを立てながらこっちに突っ込んでくる巨魁。
まるで、溶岩や竜巻が、自分を飲み込もうとしているかのような、圧倒的な質量の波濤。

次の瞬間、キャミノは再度吹き飛ばされ、完全に意識を失った。

<続く>
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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