女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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Ein Liebeslied(7)

キャミノとユーフィアは、ギルドからの送迎馬車に乗り込み、夜の森丘に向かっていた。

夜道を走る馬車は明かりを付けながら走っているが、御者は仮面を被っており、馬にまで仮面が被せられていた。
御者側の座席に座るのは、竜人族のギルドマネージャー。
その両隣に、何の護衛なのか、ギルドナイトの紅と蒼が、羽付き帽を目深に被って座っている。

対面に座っているのが、キャミノとユーフィア。
しかし、誰も一言も発することなく、一行を乗せた馬車は、ただ森丘への道をひた走っていた。


この日の昼、キャミノ達は、同じく森丘で、対オオナズチのために、乱舞の練習をしていた。
その時、ギルドの伝書鳩がG級特例申請の結果を伝えに来た。

「どうしたの、ユーさん!? 何て書いてあるの!?」
「G級申請…許可されました」
「それで、相手は? G級? 上位?」
「…G級のが、見つかったそうです」
「それで、クエスト開始はいつなの? 明日? 明後日!?」

ユーフィアは、吐き出すように言った。

「…今夜…だそうです…。」

あまりに唐突な宣告。
キャミノ達は大慌てで城に戻り、防具屋の親父から、卸したてのパピメルXを譲り受け装備する。
オオナズチ攻略メモに書いてあった、強走薬、閃光玉、けむり玉、その他の資材を準備するだけで定刻になってしまった。

出発の前に、キャミノは、大慌てでユーフィアと共にヴェロニカのお見舞いに行き、「G級特例申請」を受けた事を告げ、宝玉を必ず持ってくる事を伝えた。
ヴェロニカは放心した様子で2人を見ていたが、時間がなかったので、それ以上の説明はせず療養所を出た。
特例申請の件、ギルドからは口外を禁止されていたが、これは言うべきだろうと思って、あえて禁を破ったのだ。

2人が急いで城に戻ると、既にギルドからの馬車は来ており、慌てて飛び乗るというていたらくだった。

「(これが、あたしの最後の戦いになるかもしれない…。)」

そう思うと、迂闊に口を開く気にはなれなかったし、ギルドにも、もう少し手際良くしてもらいたかった。
…いや、一応全ての準備が整ってから連絡が来ただけでも僥倖のはず。
これ以上を望むのは、ワガママだとは分かっていたが、急に来た「死刑宣告」への不満を誰か…、そう、目の前のギルドにぶつけたいだけなのだろう。

…余裕が、ないのだ。自分に。


「着いたわよ」

ヒヒヒン、と馬がいななくと共に、ガクガクと馬車が荒々しく止まる。
衝撃で、キャミノとユーフィアは思わず中腰になる。
図らずも、今にも外に出ようとする格好だ。

「…さて」

重く止まっていた馬車の中の空気が、ゆっくりと動き出す。

「…最終確認をさせて頂くわ。どうぞ、外に出て」

2人は、馬車から降り立ち、そろそろと外に出た。

「…何なんですか、これはッ」

ユーフィアが、耐えかねたように、遂に不満を爆発させた。
いや、誰もが分かっている事だが、外は夜…。

どこまでも深い闇の中、蒼い満月が、冴え冴えと世界を冷たく照らしていた。

「オオナズチのクエストは…普通、昼にやるものなんじゃないですかッ!? 分かっているのに、何で夜のクエストなんかを斡旋するんですッ!?」

ユーフィアが叫ぶ。
ギルドの文官である、彼女の意見も最もだ。

オオナズチのクエストは…村から含めると、HR7までに受けられるクエストは8つ。
そのうち、夜のオオナズチ戦は、8つのうちたった一つ、村上位「宵闇に消ゆ」しかない。
昼ですら視認が困難なオオナズチ戦だが、夜のそれはさらに困難を極める。
それが歴然なだけに、ハンターの安全を管理しているギルドも極力、日中のクエストを斡旋しているはずなのだ。

「…理由は、貴女も分かっているでしょう? 無茶言わないの、ミス・イクスティングリィ」

そう、理由はシンプル。
夜のオオナズチクエストを斡旋してきたこと、そして唐突にギルドから連絡が来たこと…。

つまり、ギルドも、余裕がないのだ。

逆に言えば、ギルドの皆が総出、かつ大急ぎで、オオナズチのクエストを探してくれたのだ。
結果、確認できたのが今日のこのクエスト。

ギルドも、自分たちのために、一生懸命になってくれているのは分かっているのだ。
ただ、結果が最悪なだけで。

「だって、だって…。だからって、こんな…」

ユーさんも、本当は分かっているはず。
行先を無くした怒りが、彼女の中で支離滅裂な言葉になって漏れている。

「…このクエスト、受けたくないなら、まだ止められるわよ? さっきも言ったけど、今から『最終確認』をさせて頂くつもりだから」

「…。 キャミさん…。」

ユーさんが、所在なさげにこちらを見る。
言いたい事は分かる。

状況は一見、最悪だ。
だが…よく考えると、状況はまだ「最悪」に至った訳ではない。

「…ユーさん、このクエスト、受けよう」
「…本気ですか、キャミさんッ!?」
「あのね、確かに一見、状況は最悪よ…。でも、もし、このクエストをスルーしたら、どうなると思う?」
「…え?」

G級申請を行ってから、ギルドがオオナズチを最速で見つけるまで、3日かかった。
最も運の良い選択肢は、このオオナズチがずっとこの森丘に明日の昼まで居ることだが、その可能性は低い。
餌を一通り探し終えたら、次の餌場に行ってしまう可能性の方が高いからだ。
それを追跡し終えるだけでも、最低1~2日はかかるだろう。
別の個体を探すなら、また今から3日以上かかる可能性も否定できない。

だとするならば、このオオナズチを見逃したら、エトワール音楽祭までのあと4日…今ではもう後3日だが、その間に次のオオナズチと戦うチャンスは、あと一度きりと考えるのが妥当だ。

そして、この状態ならば、ギルドは条件に関わらずオオナズチのクエストを斡旋してくる。
その条件が、仮に無作為とすれば、次のクエストは…

(1)G級で昼のクエストを引く確率 …およそ25%
(2)G級で夜のクエストを引く確率 …およそ25%
(3)上位で昼のクエストを引く確率 …およそ25%
(4)上位で夜のクエストを引く確率 …およそ25%

(1)を引くのが、最も望ましい結果だが、それすら25%。
(3)、(4)は上位クエスト。宝玉の出る見込みは極端に下がる。

「でも、現状は(2)じゃないですか」
「うん、でもね、今は『選べる』んだよ」
「…?」

確かに状況は最悪のようだが、もし、実際に戦ってみて、全く通用しなかったら、キャンプに撤退して、ギルドの迎えを待てばいい。
なんでもありなのだから、「全く通用しませんでした」って結果もアリのはずだ。

…だが、もし、今回のクエストをスルーし、次に(2)を引いてしまったら、次は嫌が応にも戦わざるを得なくなる。
つまり、次のクエストで、今回のクエストよりも悪条件のクエストを引く可能性は75%なのだ。

なら、今、踏みとどまって戦うべきだ。
キャミノは、そうユーフィアを説得した。

「…そう、そうですね、確かにキャミさんの言うとおりです…。分かってなかったけど、まだ今は『最悪』じゃないんですね」
「そうだよ、成功と破滅はコインの表と裏みたいなもの…今が踏ん張りどころと思うよ、ユーさん」
「わかりました…じゃあ、やりましょう、キャミさん!」

このクエストで死ぬ事はないと分かったせいか、ユーさんに笑顔と気力が戻ってくる。
内心、キャミノはホッとした。
彼女が闘う気を起こしてくれないと、自分だけでは間違いなくオオナズチに勝てない。
キャミノとユーフィアは、今、文字通り一心同体だった。

「…じゃあ、最終確認をさせて頂くわね」
「はい。お待たせして、すいませんでした」

ギルドマネージャーは、一息吸い込むと、一気に口上を述べ上げた。

「今回のクエスト…状況は周知の通りです。森丘の夜、相手はG級オオナズチ」
「ギルドは、これから次の朝、ここに送迎に来るその時まで、ここで起こる全ての結果に、一切関与しません」
「救出、支給品はなし。報奨金もなし。譲渡品は『霞龍の宝玉』のみ。他入手した資材は、ギルドに全て提出のこと」
「…以上の契約内容について同意し、参加を行いますか?」

「…キャミノ・フェルプンクト、同意し参加します」
「…ユーフィア・イクスティングリィ、同意し参加します」

「よろしい、以上をもちまして、G級限定解放クエスト…『黎明』が、ここに成立した事を認めます」

「ギルドナイト・紅、立会人としてクエスト成立を確認しました」
「ギルドナイト・蒼、立会人としてクエスト成立を確認しました」

ギルドナイトの二人が、後ろ手に組んで物々しく立会報告をする。

…遂に、始まってしまった。
この運命の夜が。

「迎えに来る夜明けまでに、ベースキャンプに戻ってなかったら、クエスト失敗として扱うから、そのつもりでね」
「…分かってます」
「…じゃあ、貴女達の武運を祈ってるわ。 …明日の朝日が見られるといいわね、『天使の詩』さん」

そう言い残して、ギルドマネージャー達は馬車で去って行った。

「…。」
「…キャミさん、どうしたんですか?」
「…あ、ごめん、ちょっとボーッとしてた。 …遂に、この闘いが始まったんだな、って思って」
「やだなー、何大袈裟になってるんですか? さっきキャミさん自身が言ったじゃないですか、『まだ最悪じゃない』って。一緒に頑張りましょう!」
「…そう、そうだね! ボーッとしてて、ごめんねユーさん! 一緒に頑張ろう!」
「はい!」

「(…ごめんね、ユーさん)」

ベースキャンプを抜けながら、心の中で、キャミノはユーフィアに謝る。
実は、さっきの説得…「この状態が最悪ではない」というのは、全部、嘘だ。

いや、嘘ではないのだが、言ってない事がある。

確かに、全くG級オオナズチに歯が立たないと分かれば、キャンプに逃げ戻って命を長らえる事は可能だ。
だが、今回の戦いは、資材…強走薬を始め、閃光玉やけむり玉、秘薬などの資材を大量に消費する。

歯が立たないと判断した時は、多分、資材の大半を消費し終えた頃だろう。
そして、キャミノの城には、これだけ大量の、「次」の資材を準備できるだけの資金は、もう残っていない。
また、オオナズチを倒せず逃げ帰れば、ヴェロニカは回復できず、シエロの圧力によって自分は歌姫の座を追われるだろう。

…生き延びる事だけは、確かに可能。
でも、その先に待っているのは、彼女らにとっての破滅への道。
つまり、今回のクエストが、最初にて事実上の最終戦。
「次」なんてないのだ。

ユーフィアも、さっきはこの事実に気付かなかったが、この戦闘中、資材が少なくなるにつれ、「次」なんて無い事に気づくだろう。
その時、彼女は何て言いだすだろうか…。

…怒るだろうな、やっぱり。

彼女がその気になってくれなかったら、このクエストそのものが成立しない。
だから、半分騙すような形で、彼女のやる気を促したが…。
これで、良かったのだろうか…?

だがそこで、キャミノは、考えを中断した。
不安材料は、正直多すぎる。
G級オオナズチを打倒できる可能性は、かなり低い。
でも、やるしかない。
現状を打破できるのは、この手元にある二つの剣だけ。
今あれこれ考えてたって、しょうがないのだ!

「…あの、キャミさん、質問があるんですけど…。」
「え、何? 何かな、ユーさん?」
「…資材の事なんですけど」
「…し、資材がどうしたの? ま、まさか足りないって?」
「何言ってるんですか、キャミさん? 足りないどころか、とんでもない量じゃないですか」

確かに、今回は凄い量の資材を持ってきている。
こんがり肉とか、現地調合用も含め持ってきているので、ポーチとは別に予備のリュックを持ってきているのだ。

「こんなリュック背負ったままじゃ戦えないから、どっかに置いておきません?」
「そ、そうだね、じゃあ、どうしようか…」

オオナズチの森丘における行動範囲は、主に平地部のエリア2-3-4。
そして、森林部のエリア9。
その巨体ゆえ、ここ以外のエリアへオオナズチが行く事はめったにないとされている。

エリア3が全てのエリアに行くのに都合がいい場所なので…。

「…隣のエリア11に置いとこうか、ユーさん」
「あそこですかー。 なんかランポスとかに齧られたら、やですね」
「茂みが多いから、その中に隠しとこうよ」
「そうですね」
「必要になったら、エリア11に随時取りに来よう」
「はい」

2人は用心しながら、エリア11に向かう。

「あのね、ユーさん、今回の作戦だけど…。」
「はい」
「主戦場は、エリア2-3-4だけで。エリア9にオオナズチが逃げ込んだらスルー。視界全滅状態だからね」
「分かりました、ここなら月の光でなんとか…見えなくもないレベルですから」
「うん、光のある所に戦闘を限れば…なんとかなると思う」

エリア11を目指し、用心しつつ1-2-3と通ってきたが…。
…オオナズチの気配はなかった。 
エリア4か9に居るのだろうか。
2人は、エリア11の茂みに調合用資材を隠し、とりあえず手持ちで使うものだけをポーチに詰め、身軽になってエリア3に戻ってきた。

「どうしますか」
「とりあえず、エリア4に行ってみよう。それで、『千里眼の薬』を飲んで、オオナズチの居場所を探そうか」
「分かりました」

2人は、広場になっているエリア4に行く。
高台に登って、他のエリアにオオナズチが飛来していないかを確認しようとした時…。

…オオナズチが、姿を消すことなく、エリア9からこっちに飛来してきた。

「…来た」

まさか、こんなにあっけなく見つかるとは。
幸先は良い。
視界も悪くないし、戦場となる地形も好条件だ。

「…イケるかも」

心臓が高鳴るが、それを抑える。

「ユーさん、『鬼人化』を」
「はい」

手持ちの強走薬Gを飲み、深呼吸する。
そして、調息から錬気。
存分に、完璧な型の「鬼人化」を行い、経絡に気を流す。

…圧倒的な「力」が、奔流となって2人の体を流れ始めた。

目の前に、G級オオナズチの巨体が、地響きを立てて降りるのが分かる。
2人は、その姿を見ながら、曲げた右手の人差し指を、顎に当てる。

「(…ごめんね、貴方には罪はないけど…。貴方の命を、必要としている人が居るんです…。」
「(…貴方の血と魂に、尊厳と祝福を。そして安らかな眠りを)」

これから奪う命への、冥福の祈りを終えると、キャミノの目に、狩人としての炎が静かに宿った。

ペイントボールを片手に持ち、2人は高台を一気に駆け下ると、そのままオオナズチにペイントし、抜刀した。

「…行くよ、ユーさん! 頑張ろうね!!」
「はい、キャミさん! もちろんそのつもりですよ!!」

…ごめんね、ユーさん。

<続く>
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*Comment

NoTitle 

どうも、姫神です。
創作講座や小説など、丼$魔さんに惹かれっぱなしです。
文才がすごいので、奥が深いです。
俺も、こういう記事を書いてみたいです。
ついに戦闘ですか、楽しみに待ってます。
  • posted by 姫神 
  • URL 
  • 2009.11/10 16:43分 
  • [Edit]

NoTitle 

☆姫神さん
遂に戦闘でございますよー。
でも、実はここのシーンだけ、どうするかを全く考えてないんです(ぉ
・・・書いてから考えよう(ぇ
  • posted by 丼$魔 
  • URL 
  • 2009.11/14 00:41分 
  • [Edit]

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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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