女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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Ein Liebeslied(2)-4

地図は支給されていないが、頭には入っている。
キャミノは、精神を集中して、レックスSシリーズのスキル「千里眼」で、オオナズチの場所を探る。

…いた。

オオナズチはエリア9に居る。
気は乱れていないので、特に交戦状態ではない。
と言う事は、ヴェロニカはそこには居ないという事になる。
まぁ、さすがに上位のオオナズチでも、ヴェロニカ一人で戦ったりはしないだろうけど…。

「どうですか?」
「エリア9」
「あの見晴らしの悪い通路ですかー。嫌な所に居ますね」
「とりあえず、二手に分かれて探そうか。私は、エリア6-5-4と探すから、ユーさんは見晴らしの良い、1-2-3と探してくれる?

最後はエリア4で待機、もしそこにオオナズチが移動してきたらエリア3で待機。OK?」
「了解です」

この森丘の地形は、エリアの繋がりがほぼ3つに分かれる。

平地部の、エリア1-2-3。
山岳部の、エリア6-5-4。
そして森林部の、エリア9-8-10。

これらは全てがエリア3で繋がり、そこから何処にでも行けるようになっている。
オオナズチが平静な状態で森林部に居るので、多分ヴェロニカは平地部か、山岳部のどちらかに居る。

「ヴェロニカさん見つけたら、信号頂戴ね」
「了解です、キャミノさんも気を付けて」

キャミノは、ユーフィアと別れ、エリア6の山岳部へと向かう。
エリア1裏手の崖を登って、岩棚の間をくぐりぬけると、そこにはゴツゴツとした岩肌が連なる絶壁が存在していた。
と言っても、ここはその岩質のため、頂上までなんとか登れるようになっている。
もしも、オオナズチがエリアを移動しても、ユーさんの移動ルートは平坦なので、確認も撤退も容易だろう。
スキル「千里眼」を持っている自分が、難儀するルートを選ぶべきと思ってこちらに来たのだ。

「(ヴェロニカさんに逢ったら、何て言おうかな…)」

岩棚に手を掛けつつ、キャミノはそんな事を考えた。
謝罪はしたい所だが、まずは自分の事を良くわかってもらいたい。

命は、継ぐことによって繋がっていく。
そして、命は、奪った者こそが継がなくてはならない。
理由はないが、彼女は常々そう考えていた。

「(だけどなぁ、これをどうやって理解してもらえば良いんだろう…、彼女、モンスターを「物」としてしか見てないみたいだし)」

しかし、そんなキャミノの考えも、どんどん尻すぼみになっていった。
というのも、最初は調子よく岩棚を登っていたが、10メートル、20メートルと登るに連れて、風が強くなり、それに連れて崖下の光景がどんどん遠くなる。
足元はしっかりしているので落ちることはまずないが、はっきり言って、あまり好き好んでキャミノはここに登りたいとは思わない。

この山岳部の頂上は、飛竜の巣になっているが、ギルドの斡旋するクエストで、飛竜の卵を盗んでくる依頼があるらしい。
熟練のハンターは、卵を抱えたままこの岩場を危なげなく降りてくるらしいが、キャミノには、卵なんて持って…つまり、手を離してこの岩場を降りるなんて想像つかない。
多分、自分だったら、足元が震えだして、歩くことすら覚束ないだろう。
転落しないように、しっかりを岩肌を捕まえて、次の一歩を踏み出そうとした時。

「…えっ!?」

キャミノの意識に強く訴えかけてくる物があった。
自分のはるか頭上で、まるで突風のように荒れ狂う「気」。
いや、それは本物の風ではなく、スキル「千里眼」が与えた感覚。

誰かが、飛竜の巣で戦っている!

だ、誰!?
一瞬混乱するキャミノだったが、オオナズチの気は相変わらずエリア9にある。
ユーさんは一人じゃ戦わないだろうから、これは間違いなくヴェロニカだ。

「(ヴェロニカさん…!? まさか、また!?)」

さっきのアプトノスの件が脳裏をよぎる。
キャミノは勇気を奮って必死で崖を登り始めたが、すぐにその気は消えてしまった。
気が消えてからしばらく経って、キャミノはようやく絶壁を登り終えた。

山岳裏側から、飛竜の巣である、エリア5に入ると…。

何もいない。

いや、「何か」がエリア4に繋がる出口の方で蠢いている。
そこに駆け寄って、正体を確かめた所…。

「!!」

はっと息を飲むキャミノ。
そこには、無数の刺し傷を与えられて絶命した、キングチャチャブーの死骸が無残に横たわっていた。
そして、その隣には、子供のチャチャブーが切り裂かれ倒れていた。
さっきの戦闘は、これだったのだ。

「なんて事…。」

また二つ、命が奪われた。
自分がヴェロニカを怒らせたせいもあるかもしれないが、今日はネコ狩りに来たのだから、別にわざわざ倒していく必要はないではないか。
非常に居たたまれない気持になったキャミノは、せめて埋葬だけでもしてやろうと思い、近くに寄ったところ、

「(…この子、生きてる!?)」

チャチャブーの方はまだ生きていた。
わずかだが、胸が上下している。
キャミノはアイテムポーチから、「回復薬G」と「いにしえの秘薬」を急いで取り出すと、ハンカチに回復薬を染み込ませて傷口に当て、仮面の下半分からはみ出ている口の中に手を入れてこじ開け、鼻をつまんで秘薬を飲ませた。

…よかった、みるみるうちに傷が癒えていく。

「…チャ…チャ…。」

たちまち、子供のチャチャブーは何事かうめき始めた。
凄い生命力ね、とキャミノが感心した、その時。

「…チャギャーッ!!」
「きゃあっ!?」

チャチャブーが叫んで跳ね起きる。
そして、キャミノを見ると、足元に落ちていた鉈を拾って襲いかかってきた。

「ちょ、ちょっと待ってよ! お父さん…、いや、お母さんかな!? 殺したのは、あたしじゃないってば!」
「チャッ!! チャッ!!」

ぶんぶん、と鉈を振りまわしながらチャチャブーが追っかけてくる。
必死になりながらキャミノは逃げ回り、飛竜の巣を3周ほどした所で、2人とも息切れして立ち止まった。

「はぁ、はぁ、はぁ…。」
「チャッ…。チャッ…。チャッ…。」

相変わらずチャチャブーの目には殺気がこもり、こちらをギラギラと睨みつけている。

「だから、あたしは、違うって…。」

ふとキャミノは思いつき、さっき焼いた「こんがり肉」を取り出した。

「…これ、食べる? 君、お腹空いてない?」

そう言ってこんがり肉を投げ渡すと、途端にチャチャブーの眼の色が変わった事が分かった。
そのチャチャブーは、眼の前の肉をマジマジと見つめると、キャミノを覗きこみ、また肉を見ては、キャミノを覗きこんだ。

「毒は入ってないから、食べていいよ」

苦笑しつつそう言うと、キャミノの意図する所が分かったのか、チャチャブーは凄い勢いで肉にかぶりつき始めた。
みるみるうちに、アプトノスのこんがり肉が小さくなっていく。
まるでピラニアが牛を喰いつくす場面みたいだなぁ、という感想を抱くほどの健啖家っぷりだった。

「もう一つ、食べる?」

チャチャブーがかじり付いていたこんがり肉が小さくなった所で、もう一つ投げて渡す。
彼はその肉をダイビングキャッチし、衰えない食欲で二つ目の肉にかぶりついたが、途中でピタリと食べるのを止める。

「どうしたの?焼けてなかった?」

だが、彼は、その肉を肩に担ぐと、キングチャチャブーの遺骸に近寄る。
そして、骨から肉を一切れむしり取って…。

…遺骸の口元に押し込んだ。

ぐいぐいと肉を口に押し込むその姿を見て、キャミノの胸が締めあげられるように痛む。

「チャッ」

ぐいぐい。

「…チャッ!」


彼は、何と言っているのだろうか。
「食べて」か。
それとも「美味しいよ」か。
それとも…。

「(君…。君の大切な人は、もう、起き上がってこないんだよ…)」

思わず、鼻孔がツンと痛み、涙が眼尻に浮かんでくる。

眼の前では、必死にチャチャブーの子供が、遺骸に寄り添って肉を口元に持っていこうとしている。
体を揺すってもいるが、当然キングチャチャブーが起き上がったりはしない。

「(あぁぁー…)」

その姿を見ていたキャミノは、口の中で、静かに古代語のイントロダクションを唱える。

「(その昔、我々は小さな命だった…)」

…静かに、あくまでも厳粛に。
彼女の詩「母なる海」を歌い始める。

この子には、言葉は通じない。
しかし、古代文明を記した本から解読した、この歌なら。
言葉が通じなくても、その意図する所は伝わるかもしれない。

「(…命は命を紡ぎ、やがてこの世界を彩る)」

無残に散った魂に対し、鎮魂の祈りを込めてキャミノは歌いあげる。
彼の肉親の魂が、理想郷に届きますように。

「(…躍動せよ、命よ! この峻烈なる、命よ! その運命は、あまりに! そう、あまりに!)」

…キャミノが歌っているうち、やがてその意思が伝わったのか、彼…チャチャブーは、いつしか肉を遺骸の口元に運ぶことは止めていた。
ただ、ひたすらに、彼の親であろう遺骸を見つめて。

「(病める時も、苦しみの時も、命は貴方と共にある)」

「(何故なら、全ての命は巡っていくから)」

「(この命は、海と共にあるから)」

…君が、その人の魂を継いであげて。
生きていられたはずの未来。
そこにあったはずの幸せを、貴方がその眼で確かめて。

「ああぁぁーーー…。」

パイプオルガンの代わりの、キャミノのアカペラの響き。
彼は、肉親の遺骸に突っ伏して、声にならない響きを漏らすだけだった。

「…。」

あまり、ここにじっとしている訳にも行かない。
きっとユーさんが待っているだろう。

「…じゃあ、あたし、行くね。元気でね」

キャミノは、手元に持っていた、回復薬Gや秘薬、さらにはこんがり肉までを彼のそばにそっと置くと、静かに飛竜の巣を出た。


「やばいなぁ…結構時間かかっちゃった」

手元の時計を見ると、結構時間過ぎている。
ユーさん、相当ご立腹だろうな。

キャミノがエリア4の平原に出ると、案の定ユーフィアがぷんすか怒りながら近寄って来た。

「遅いですよ!! エリア3にも来ないで、一体何やってたんですか!? 何かあったのかと思って、エリア11の方まで探しちゃいましたよ!」
「ごめんごめん、ちょっといろいろあって…。そうだ、ユーさん、ヴェロニカさん見なかった?」
「いえ?こっちでは見かけてないですけど…。」
「そうなの? こっちで、ヴェロニカさんがモンスターと戦った跡があったから、きっと落ち合うと思ったんだけど」
「そうなんですか? いえ、でもやっぱり…見かけてないです、多分」

ユーフィアが自信なさそうに答える。
おっちょこちょいで計算苦手なユーさんだが、さすがにヴェロニカを見落とすことはないだろう。

「(でもなぁ…。さっきは、巣に居たことは間違いないと思うんだよなぁ…。)」

山岳地帯を抜け、平地から来たユーさんと逢っていないという事は、ユーさんより一足先に、森林地帯に行ったって事だろうか。
だがそれだと、ヴェロニカはオオナズチの所に居る事になる。
「千里眼」で、オオナズチの気を確認しても、オオナズチの気は相変わらず平静な状態を保っている。
ヴェロニカが森林地帯に居るのなら、オオナズチと交戦してもおかしくなさそうなのだが…。

「とりあえず、行ってみよう。ヴェロニカさん、多分森林地帯に居るよ」
「ホントですか!? でも、オオナズチもまだそこに居るんですよね!?」
「うん…。まぁ、あそこがネコの湧く所だから、そこで私たちの来るのを待っているのかもしれないんだけど…。」
「でも、G級ハンターだったら、一人でも戦っててもおかしくなさそうですよね」
「だよね」

キャミノとユーフィアもG級ハンターなのだが、下位~上位ハンターだった経験が長すぎて、そんな事実は二人とも頭から吹っ飛んでいた。

「…大丈夫かな、ヴェロニカさん。まさか、本当に寄生ハンターだったって事はないだろうけど」
「なんだか、あの人が一人じゃ怖くて狩れないから、待ってるとかイメージしにくいなぁ」
「だよね、ユーさんじゃあるまいし」
「キャミさんに言われたくないですよ、そんな事!!」

2人は、ヴェロニカの事を散々言いながら、森林地帯入口のエリア9に来る。
ここは、手前が円形の広場になっており、その奥に一直線上になった通路がある。
その奥には、モンスターの水飲み場になっている泉が湧いている。

ネコとオオナズチは、この通路に居る事が多いのだが…。

「キャミさん、どうです? オオナズチ、どこに居るか分りますか?」
「ごめん、分かんない。さすがに、『千里眼』でも、オオナズチの細かい場所までは把握できないよ」

近くに居るのは分かるんだけど、とキャミノが言おうとしたその瞬間。

「…た、助けてーッ!」

高い悲鳴が響き渡る。
まさか、ありえないだろうと2人が思っていた可能性。
だが、その悲鳴は、間違いなくヴェロニカの物だった。

<続く>
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  • 2009.09/17 23:33分 
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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