女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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Ein Liebeslied(1)

このお話は、モガの村が狩り場として有名になる、その半年前にさかのぼる。

王都ヴェルドの北端に存在する、小都市マーシフル。

一時期、新しい飛竜が観測された事で有名になった「ポッケ村」の麓に位置する都市国家であり、旧来の狩猟街として名を馳せた「ドンドルマ」からも、比較的交通の便がいい場所にある。
地形は全体的になだらかな丘陵が広がり、巨大な湖や針葉樹林が広がるその土地は、夏季には絶好の観光避暑地として人気を集めていた。

その観光避暑地の一角に、白く小さな城がある。

城の周囲を、小さいながらも塹壕と城壁で囲った、極めて簡素な作り。
しかし、その敷地内には花壇用の通路と設備を配し、各所には薔薇をメインとして色とりどりの花が植えてある。

まるで、おとぎ話に出てくる妖精の城そのままといった風情。
事実ここは、城主の二つ名から由来して、領民から「天使の住む城」と呼ばれている。
そして今現在、その城主は、友人と一緒に、応接室でくつろいでいた。

「すっごいよ~、ユーさん、このお話とっても面白い!」
「何がです? また、新しいペーパーバック買って来たんですか?」
「そうなのよ~、最近出たシリーズでね、あるG級ハンターと、オトモアイルーのお話なの」
「へぇ~、どんなストーリーなんです?」

巨大なソファにくつろいでいた女性が、手に持ったペーパーバック(文章を活版印刷してひとくくりにした読み巻物)をまき散らしながら、興奮した様子で言う。
年の頃は20代前半で、髪型は蒼みがかったココットロング、白いワンピースを着た痩身の女性。
荒い印刷のペーパーバックを撒き散らしながら、うっとりとした表情で言う。

「そのハンターさんがね、引退を決めて、オトモアイルーと共に最後の戦いに挑むんだけど…、それがもう凄い泣けるの」
「泣けるって…ハンターさんが討ち死にしちゃうとか?」
「違うよ! このオトモアイルーさんがね、とにかくご主人の事を愛してて、それ故に2人の思惑はすれ違いっぱなしなんだけど、最後に2人は本当に理解しあうの」
「なんだか、よく分かんないんですけど…。」
「ええっ、凄い面白いんだよ!? このオトモ、凄くけなげなんだから! ユーさん、是非読んでみて! 」
「嫌ですよー! ギルドの文書でも頭痛くなるのに、そんな文字ばっかりの紙、読んでられないですよ!」

もう一人は、「ユーさん」と呼ばれた、10代後半の女性。
髪型をクックウイングにしている、茶髪の小柄な体躯。
くりくりとした眼が印象的な、好奇心旺盛な子供がそのまま大きくなったような感じの女性だった。
事実彼女は、籠に入れたお菓子と飲み物をむさぼりながら、大きい挿絵入りの絵本を読んでいた。

「本当に面白いんだけどなぁ…。 最後には、引退を決めたハンターさんがね、歌姫目指して旅立つんだよ」
「へぇ~、ハンターから歌姫。それは面白いですね、何でその人は歌姫になろうってしたんです?」
「自分が可愛いからだって」

そう言うと、「ユーさん」と呼ばれた女性は、お菓子を口から吹き出しながら大笑いした。

「うわっ、汚なっ!」
「あっはっはっは! それ面白いですね! 可愛いから歌姫になりたいって、すっごい安易!」
「あたしもそう思うけど、そこ以外は本当にお勧めなんだけどなぁ…。 読まない?」
「やですよー。そんな文章読むなんて、王立書士隊に入れとでも言われなきゃ、したくないです」
「そう、残念…」

そう言うと、蒼い髪の女性は、ぼふっとソファーに横たわる。
サイドテーブルの上にあったハンドベルを鳴らすと、寝そべりながらペーパーバックを読み返して言う。

「あ~あ、あたしもこんなオトモアイルー欲しいな…」
「それ、本気で言ってるんですか? キャミさん、ネコはもう十分すぎるくらい飼ってるじゃないですか」

すると、部屋の扉に設えてあるドアベルが軽妙な音を立て、コックコートを着たキッチンアイルーの一団が入ってきた。

「マスター、お呼びにより参上しました。 本日のランチをお持ちしましたですニャ」
「うわぉ」

ユーさん、と呼ばれた女性が感嘆する。
キッチンアイルーの一団が、次から次へと料理を運んできて、テーブルにクロスを張り、ワインを準備して、瞬く間に豪華な食卓が眼の前に現出した。

「ありがとう、サルサ」
「マスター、ご友人との会食も素晴らしいとは存じますが、たまには食堂に来席致したく望みますニャ」

そう言って、キッチンアイルーの一団は引き揚げていった。
後に、王宮料理かと見まがうほどの豪華な食卓を残して。

「…あんなに良くできたアイルーたちが居るじゃないですか。それでもなおですか」
「うん、サルサはサルサで可愛いんだけど、もうちょっと、あたしは別の物を求めてるの」
「別のもの?」
「ほら、オトモアイルーって、ネコバァちゃんが斡旋してくれるじゃない?」
「はい」
「でも、オトモスキルが気に食わなかったり、色が変だったり、果ては名前が『トンヌラ』だったりするじゃない」
「そんな名前は聞いたことないですけど、確かに、ネコバァのオトモ育成センスは、正直どうかと思います」
「でしょ? 正直、雑すぎるよね! 名前も自分で付けたいし、もっと良い色合いのネコだったら素晴らしいと思うの!」
「ああ、やっと言いたいこと分かりました…」

そう言って、ユーさんは嘆息した。
対して、キャミさんと呼ばれた女性は、意気揚揚と宣言する。

「そう、あたしだけの『究極のオトモアイルー』が欲しいの」
「やっぱりそれですか…。」
「そうよ、自分の理想のオトモが居たら、この話みたいに、心から通じあえる気がするの」
「それは分かります、私も自分の理想のオトモ欲しいですもん」
「でしょ?」
「『招きネコの激運』『招きネコの金運』『ネコの防御術(大)』みたいなのが居たら最高ですよね」
「…まぁ、それもアリだと思うけど」

キャミと呼ばれた女性は、再び胸の前で手を組み、目を閉じてうっとりと語りだす。

「でもやっぱり、一番は見た目と名前なのよね…。毛なみがペルシャンブルーで、『エリーゼ』とか『フォンティーヌ』とかって名前を付けられたら最高なんだけどなぁ」
「そんなオトモアイルー見たことないですよ…。」
「そうよ。だからね、ネコバァちゃんには頼まずに、子ネコの状態から自分で育てたいと思うの」
「子ネコの時からですか!? まぁ、それなら、名前も自分で付けられると思いますけど」
「だから、今からネコ狩りに行かない?」

キャミさんは、逆に自分がネコになったかのように、眼を細めて猫なで声で、ユーさんにお誘いの言葉をかける。
しかし、ユーさんはスカートのポケットから手帳を取り出すと、その申し出を一蹴した。

「ダ・メ・で・す・よ」
「えー、何でー!?」
「だって、今夜は定例会があるじゃないですか」

手帳を見ながらそう答える。

「え、嘘、今日だった!? 何時から!?」
「夕方の6時からです」
「じゃあ、もう出発の準備しないと間に合わない! 教えてくれてありがとう、ユーさん!」
「いえいえ、多分そうだと思ってましたから」

2人は急いで身支度を済ませると、今夜の定例会の準備をして馬車に乗り込んだ。
この馬車もキャミさん自身の所有物であって、御者も年度で契約を結んでいる。
ここから、今回の定例会会場・城塞都市ワイズに向かう。

馬車で片道4時間の道中を終えると、既に日が傾きかけていた。

「ユーさん、今日の会場はどこ?」
「ベルジュラック・ド・ロワイヤル座です」

城塞都市ワイズの中心部に設立された、市立の公共娯楽施設。
名前にあやかり、普段は撃剣の演武を見せる舞台が主な公演項目になっているが、今日は定例会のための装いになっているはずだ。
事実、彼女らが馬車で会場に近付いていくと、獣油を使う巨大な街灯でふんだんにライトアップされており、開催を待つ観客の姿がそこかしこに見える。

その数は会場に近付くにつれどんどんと増え、彼女らが座に到着した時には、既に人ごみでごった返していた。

「おーい、退けて! ちょっと退けてくれよッ!」

御者が大声をあげ馬鞭を振りながら、座の裏手に馬車を付けようとして、人ごみをかき分けていく。
会場が見えてから、馬車が座の裏手に付くまでに、たっぷり30分はかかった気もする。

「はぁ~、参ったね、いつもの事だけど、やっぱり凄い時間かかった~」
「しょうがないですよ、今回は特に花形の人ばかり集まってますしね」

そうだね、とキャミさんが相槌を打とうとした時、一人の若い男性が物影から出てきた。
手に、薔薇の花束と包みを持っている。
その男性は小走りで近付くと、息も荒く2人に話かけた。

「あ、貴方がキャミノさんですかッ!? 始めまして、僕、マルクって言います!」
「わ、何々?」

マルクという男性は、キャミノに薔薇の花束と包みを手渡すと、顔を上気させながら話しかけてきた。

「あ、あの…、実はですね、自分、キャミノさんも、ドンドルマのギルド所属のハンターだとお聞きしたんですよ!」
「そ、それで…。よろしかったら、自分と一緒に、狩りにに行って頂けませんか?」
「う、腕にはそこそこ自信があるんです! 『絶対零度』でも『武神闘宴』でもお付き合いしますよ!」

2人はふぇー、と声にならない感嘆の声を上げた。
眼の前の優男は、こう見えても結構な練達の狩人らしい。
どちらも、ギルドから斡旋を受けるクエストの中では、最高級の難易度だと聞き及んでいた。

「ごめんね、あたし達、つい先日G級に昇格したばかりだから、そんな凄いクエスト行けないんだ」
「え…。え? ドンドルマ所属なのに?」

ギルドカードの履歴には、ハンターランクの他にも、初めてハンターとなった所属ギルドの履歴も書きこまれている。
最も古参の者は、ミナガルデのギルド所属であるが、ドンドルマ所属もなかなかの古株であり、このギルドカードを持っている者は、一般的にはベテランハンターと解されるのが通例だった。

「うん、ほら」

そう言って、キャミノはマルクに自分のギルドカードを見せる。
履歴を読むたびに、マルクの目が驚きに見開かれる。

なんと驚くべき事に、ドンドルマでは、彼女はキノコ狩りにしか行っていなかった。
当然ハンターランクは1。

そして、ポッケ村のギルドに所属を変えても、しばらくの間彼女のハンターランクは1だった。
それがランクアップしたのはここ1年ほどの話であり、現在のハンターランクは7だった。

「(これは…。)」

マルクの額に汗が流れる。
正直、全然想像外だった。
彼女の名誉のために、あえて婉曲な表現を使うが、ここまでのんびり屋さんだったとは…。
でもまぁ、広い世間には、こういうハンターだって居て当然なのだろう。
人間が出来ていたマルクは、彼女の誇りを傷つけないように誘い方を変えた。

「じ、G級に上がったばかりなら、鎧なども新調しなくてはなりませんよね? お金や資材など、足りないのではないですか?」
「ううん、お金なら沢山あるから大丈夫だよ。それに、あたしにはパートナーも居るから、資材も困ってない」
「そ、そうなんですか…」
「うん、心配してくれてごめんね、ありがとう」

そういうと、キャミノは花束だけ貰って包みを返し、ユーさんの手を引いてロワイヤル座の裏口に向かった。

「いいんですか? 彼、プレゼント持ったまま呆然としてますよ」
「しょうがないじゃない、いちいち真面目にお返事してたら、いくら時間あっても足りないし」
「そうですね」
「それに、お誘いの相手全員と狩りに出たら、一個師団ができちゃうよ」

2人は苦笑しつつ、座の裏口から入場した。
衛兵にそれぞれのギルドカードを見せて関係者である事を証明し、控室の方に向かう。
ロワイヤル座は、基本的に撃剣の舞台なので、個々の控室はない。
舞台の脇に小ホールが並ぶ作りになっていて、そこに他の出場者が合同で自分の出番を待っていた。

「ごきげんよう、ミス・フェルプンクト」

眼の前に座っていた女性が、キャミノを見つけると、こちらに向かって会釈し挨拶した。
紫色の露出の多いドレスを身に纏った、透きとおるほど白い肌の肉感的な女性。
背が高く、まるでモデルと言っても差支えないほどの女性的魅力を放っている。

「ごきげんよう、ミス・ヴェロニカ。 よかった~、ヴェロニカさんもゲストだったんだ」
「どういたしまして」
「今日は何の場所? 翼? 瞳?」
「瞳です。ミス・フェルプンクトの直前ですよ」
「あ、それならちょっと時間ある?」
「何でしょう?」
「えっとね~、実は、ネコ…」

「こら、ミス・ヴェロニカに何言ってるんですか」

ヴェロニカに話しかけていたキャミノを、ユーさんが引っ張って引きとめる。

「何よ、どうしたの、ユーさん?」
「調子こきすぎですよ、キャミさん!『情愛の黒薔薇』に、慣れ慣れしくし過ぎですよ」
「いいじゃない、ヴェロニカさんだって親切にしてくれるんだもん。それに、彼女もG級ハンターなんだよ?」
「だからって、さっき言ってたネコ狩りに連れてこうなんて! G級ハンター連れていく必要ないじゃないですか!」
「だって、知りあいと一緒に狩りに行くのは楽しいんだもん」
「…。 まぁ、今はとにかくマズイですよ。彼女だって準備があるんですから。私たちも早く準備しましょう」
「はーい、分かりました。ミス・ヴェロニカ、また後でね」
「はい、了解しましたわ」

2人が荷物を持って、更衣室に近付くと、同じ出演者たちが彼女らのために道を譲る。
微笑んで礼を言うと、荷物を更衣室の中に運び込んで、デカいケースから、ステージ衣装を丁寧に引き出した。

「じゃあキャミさん、着付けの方は一人で大丈夫ですね? それと、隊の方々に演目を伝えときたいんですけど、何にします?」
「いつもの『母なる海』で」
「またそれですか? 今日あたりは別のにした方が良くないです?」
「大丈夫大丈夫。手は抜かないよ」
「…じゃあ、先に2階に行ってますから。成功祈ってます」
「うん、ユーさんありがとう」

ユーさんこと、「ユーフィア・イクスティングリィ」は指揮隊に演目を伝えると、次は2階の照明の方に向かって行って、説明を行った。
既に何度もやった演目なので、そこらへんはお互いに勝手知ったる状態だった。

関係者しか入れない2階の特等席で、彼女は舞台を見た。

既に会場は満員。
3千人ほどは居るかもしれない。
それらの観客が、目の前の演奏と、歌姫の美声に聞き入っていた。
「シュエルド・ハウド・オーケストラ」。
月に一度、定例で行われる音楽祭であり、演劇と並び圧倒的な人気を誇る娯楽の一つだった。
特に今回のは、各地の有名な歌姫がゲストとして招かれており、普段では見られない歌姫たちの饗宴とあって、凄まじい集客ぶりを示していた。

眼の前で、「翼」の歌の披露が終わった。
万雷の拍手が、会場を埋め尽くす。

次の順番は、「瞳」。
ミス・ヴェロニカの出番だ。

会場に深紅の花弁が舞ったかと思うと、いつの間にか舞台上にヴェロニカが居た。
スポットライトを浴びて、華々しく一礼する。
それから、彼女は演奏に合わせ、じっくりとそのハスキーな歌声を披露する。
女性の性と愛情を詠んだその歌は、会場の女性に憧憬のため息をつかせた。

「(…あたしも、あんな風に胸あったらいいなぁ)」

ユーフィアが別な方向にため息を付く。
会場の男性は、歌う度にそよぐ、ヴェロニカのドレスから覗く足や躍動する胸元に釘付けになっていた。
女性の性と愛情をテーマにした歌は、男性にはある一種の淫靡さとなって伝わり、別な意味で非常な評価を得ていた。

高い叫びとともに、ヴェロニカの歌が終わる。
この日一番の拍手が起こり、ヴェロニカは満足したように、一礼して退場していく。
さすが「情愛の黒薔薇」、他の歌い手ではなかなかこうはいかないよね…。
…とユーフィアが感想を抱いたとき、この日一番の本命が現れた。

同時に、舞台袖に講釈師が現れ、最後の歌姫の説明を始める。

「皆さま、大変お待たせ致しました…。今日は、この歌声を聞きたくて、遠方よりお越しのお客様もいらっしゃるでしょう」
「彼女は、きっとその期待に、答えて下さいます」会場から拍手。
「出身は、この王都ヴェルドのマーシフル。その歌声は、遠く天上の世界まで響き渡るという美声」
「人呼んで『天使の詩(うた)』、ミス・キャミノ・フェルプンクトの入場です!」

<続く>
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次のが始まりましたね

楽しみにしております。
  • posted by kiyo 
  • URL 
  • 2009.09/07 09:18分 
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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