女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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Ende der welt(8)

夢を見ていた。

1年前以上の頃、アカムトルムを倒しに行く直前の夢。
それは、今となってはあまりにも懐かしい、切なさすら伴うほどの郷愁…。

「ねぇねぇ、今度ガンチャリオッツ作ったんだけど、アカム倒せるって思う?」

夢の中で、ザザミSシリーズを着込んだハンター、「煌竜・アスカ・ダールグレイ」が、オトモアイルーである「リュウ」に語りかける。

「大丈夫だニャ。アカムとガンスは相性良いし、ザザミSも明らかにアカム向けの装備だから、ご主人が今来てる装備がほぼベストだニャ、多分勝てるニャ」
「多分って何よ!? アンタあの巨大なバケモン見たの?今までのモンスターの常識からかけ離れてるって!! ああ~、どうしよ…」

リュウは苦笑する。
十分に相手に通用する装備を持って臨んでも、この弱っちいご主人は、いつも五分五分、ギリギリの戦いになる。
そして、次には、お決まりのあのセリフを吐くのだ。

「ねぇ、リュウ…。やっぱ不安だから、付いてきてよ…。あたしのために、盾になってくんない?」
「願い事が直球すぎるニャ! …しょうがないニャ、ご主人のためニャ、マタタビ10本で手を打つニャ」

「…。」

「? どうかしたかニャ、ご主人?」
「いや、マタタビを10本も渡すなら、別にオトモとか要らないわ」
「…え? え?」
「ほら! だって私、実はこんなに強いもん!!」

そう言うと、アスカの頭からバリバリと音を立てて巨大な角が生えてくる。
それだけでも十分にスプラッターだが、腕や足が見る間に筋肉が付いてきて、鎧を内側から弾き飛ばす。
白い肌にはどんどん剛毛が湧いてきて、それは見る間に黄金の輝きを帯び始めた。
そして一言。

「グニニンのことかーーーッッ!!」
「ら、ラーぢゃんッ!?」

そこで、目が覚めた。

「おぎゃーッ! な、なんちゅう夢だニャ!!」

リュウはベッドから飛び起きると、思わず自分の夢に一人ツッコミをしてしまった。
しかし、本当にとんでもない悪夢だった。
あのご主人が、化け物になってしまうなんて、想像もつかない。
なんであんな夢を見たんだろう?

「(…。化け物、かニャ…。)」

リュウの心の中に影が落ちる。
思い当たる事はあった。

アスカは、既に起きてどこかに行っているのだろう、ドアが開けっ放しになっている。
昨日の主人の姿を思い出して、リュウは切ない気持ちになった。
結果は無茶苦茶になったものの、途中まで、アスカはジャンプテオを圧倒する戦闘能力を見せていた。

「(地上最強の生物すら、ご主人の敵じゃなかったニャ…。…もう、本当に…。何も、何もかもが終わるんだニャ…。)」

彼はヨロヨロとベッドを片付けると、外に出かけた。
多分、彼のご主人も外のどこかに居るはずだ。
特に何があるという訳ではないが、彼はご主人に逢いたかった。

…だが、そこで見たのは、とんでもない光景だった。

「さぁさぁ、今日は武器の大特売日だよッ!『角王鎚カオスオーダー』がたったの1000zだッ!」
「これがあれば君もポッケ村の英雄だぞ! 『鬼哭斬破刀・真打』! ティガレックスだって全然余裕だからなっ!」
「おっ、お兄さんどうだい!?『金華朧銀の対弩』! 万能武器だよ!? この1本で、ハンター生活オールオッケー!!」

武器屋のオヤジが、恐ろしい破壊力の武器群を大特売価格で販売していた。

「うおわーーーッ!! ゴルゥア、武器屋のオヤジ何やってるニャ!! お前戦争でもおっぱじめる気がニャ!?」
「おっ黒猫さん、ご機嫌麗しゅう」
「僕のご機嫌は超斜めだニャ! なんなんだこりゃ!? 大体、レイジングテンペストが100zって、ナメてんのかニャ!?」
「いやね、武器の入荷が多すぎてねぇ…。売れないから安くしないと仕方ないじゃん」
「入荷? どっから…?」

自分で質問しておいて、リュウはすぐにその答えに気が付いた。
これは、多分、彼のご主人の…。

だが、その答えは、彼の後ろから降りかかってきた。

「あたしが売ったのよ、全部」

そこには、アスカが派手な姿で立っていた。
少しエスニックっぽい、まるで旅芸人のような格好。

だが、雰囲気が違う。
いつもにこやかなご主人なのに、今日はまるで、自分を獲物として見るような、冷ややかな目をしている。
その眼光は狩人のそれで、慣れているはずの自分ですら、すくみ上がるほどの鋭さだった。

「ご、ご主人…。でも、昨日テオを狩って、今日でいきなり武器を全部売っぱらうなんて…。」

冗談交じりに言ってみたが、恐ろしい勢いで一蹴された。

「あたしのやる事に文句があるっての!? ハンターは止める、って言ってたでしょ? だったら武器とか要らないじゃない!」

な、何これ!?
恐ろしい剣幕に、リュウは心底すくみ上がった。
こんなご主人を、彼は見たことがない。
昨日まであんなにご機嫌だったのに、この急な心変わりは、一体何なのか?
だけど、彼は眼の前の状況に付いていくことができず、とりあえずその場を取り繕った。

「ご、ごめんニャ…。で、でもそこまで怒らなくても…。」

だが、ご主人は彼を睨むと、返事を返すことなくくるりと踵を返して、そのまま立ち去ってしまった。

「なーんか不機嫌だねぇ、わが村の女神さまは…。」
「お、オヤジ…。僕、何か悪いこと言ったかニャ…?」
「いや? 俺の目にも、特にお前さんが悪いことを言ったようには聞こえなかったけどなぁ…。」
「じゃあ、何で…。」
「つーか、今朝、武器を売りに来たときから、あまり機嫌は良くなかったぜ? 昨日、何かあったんじゃないのかい?」

昨日って…。
ジャンプテオと戦った。
その時で機嫌が悪いと言えば。
多分、あの仮面の二人の出来事に間違いない。

あの二人の事で不愉快になるって言えば…。

不安と共に、もやもやと、心の中に像が結晶する。
いくつかのイメージは浮かんだが…。

「何よこの足…!? 傷だらけじゃない! こんな足じゃ、美少女踊り子なんて、やれる訳ないじゃないの!!」

やはり、このイメージが一番強かった。というか、多分これだろう。
彼の心に、ズキリと痛みが走る。

結果的にあの仮面の二人組を呼び寄せたのは、自分だ。
そのせいで、ご主人のジャンプテオ戦はメチャクチャになってしまった。
だが、その事を、自分はご主人に謝っていない…。
ずっと、白々しく隠し通したままだ…。

どうしよう、と思ったが、彼はすぐに決意を固める。

謝ろう。

遅きに過ぎているし、このタイミングでこの事を言えば、相当怒られる。多分メッチャ怒られる。
今までのご主人だったら、怒った後に許してくれそうな気もするが…。
なんか、今のご主人は読めない。

「(僕は、許してもらえるんだろうかニャ…? いや、そんな事問題じゃないニャ、僕はちゃんと謝るべきなんだニャ…!)」

そう思ったリュウは、村じゅうを探し始めた。
村人に話を聞いたところ、アスカは武器を売った金で、二頭立ての籠突き馬車を買ったらしい。
本気でジプシーする気だ。
そして、それを村はずれの空き家に繋留してから、どうも集会所に酒を飲みに行ったみたいよ…と聞いた。


おそるおそるリュウが酒場を覗くと、そこには、恐ろしい勢いで酒を空けているアスカの姿があった。
その姿は、どう見ても楽しく酒を飲んでいる姿ではなく、明らかにやけ酒に見えた。

「ご、ご主人!? 何やってるんだニャッ!?」
「何よあんら。酒盛りに決まってるひゃない」

そういうと、ジョッキに注いだブレスワインをぐびぐびきゅぃーっと喉に流し込む。酔うぞ。

「姉さん、もう一杯」
「はいはい、待っててね~♪」
「ちょ、ちょっと待ってニャ! ご主人!」
「あによ」
「あ、あの僕…。 ご主人に言いたい事があって…。」
「言いたい事?」

そう言うと、ご主人の冷たい眼差しが、少しまろやかになった。
アスカは斜めにしていた体をリュウに向けると、

「言いたい事って何? 話してみなさいよ」

と言った。

その瞬間の表情は、彼が良く知るいつものご主人。
いつも破天荒で、馬鹿で自堕落だけど、優しくて明るい、彼の大好きなご主人の表情だった。
これなら話せる。
多分、話して許してもらえる。
あの冷たい目線は、何かの間違いだったのだろう。

それに勇気づけられたリュウは、ジャンプテオの事から、仮面の男たちに会うまでの経緯を余さず喋った。

「本当に、ごめんニャ…。僕が弱かったせいで…。 でも、僕、本当はご主人にハンターを止めて欲しくなかった…」

だが、そこまで喋った所で、リュウの謝罪は、バーンと机を叩く音に遮られた。

「ひゃっ!?」

店内に居た他の客や、ギルドの受付嬢までもがこちらを見た。

「…!!」

アスカの、あまりにも凄まじい目。
青い炎が燃え盛るような、静かで、でも触れがたいほどの覇気を漂わせた目。

怒っている。
ご主人は、どう見ても物凄く怒っている。
でも、何で!?

「ご、ご主人…。僕が本当に悪かったニャ、謝るニャ…! だけど、何で其処まで怒ってるニャ…!?」
「そんな事も分からないの? 自分で考えてみれば良いじゃない!」
「(わ、分からないから聞いてるんだけどニャ…)」

しかし、そんなセリフは当然吐けず、リュウはうろたえるばかり。

「分からないの? あたしが何で怒ってるか! そんなんじゃ、今まで培ってきた2年間、心が通いあってるって思ってたのも、単なる誤解だったみたいね!」

その言葉は、リュウの脳髄に突き刺さった。
眼の前が、急速に真っ暗になっていく。

「出て行って! アンタを見てると、イライラするだけだから!!」



「うぇ、うぅ、うニャァァァア…。」

リュウは、村外れの大木の上で、人知れず肩を震わせ泣いていた。

何で。何で、ご主人はあんなに怒っているんだろう?
全く分からなかった。

やっぱり、脚に消えない傷を負った事を、気にしているのか。
それとも、ハンター最後の生活が、メチャクチャになった事に怒っているのか。
あるいは、自分がそれをずっと黙っていた事か…?

しかし、そのどれでも、あそこまで怒るような事ではないような気がした。
でも、それは今までのご主人であったならの話。

想像するに、多分、リュウはまだご主人の全てを知っている訳ではなかったのだろう。

だから、あれのどれかが多分、彼女の逆鱗に触れたのだ。
だけど、それがどれで、どうすれば許してもらえるのか、さっぱり分からない。

「分からないの? あたしが何で怒ってるか! そんなんじゃ、今まで培ってきた2年間、心が通いあってるって思ってたのも、単なる誤解だったみたいね!」

その通りだった。
どうやっても、彼には、ご主人の意図がまるで掴めない。
寝食を共にし、共に戦いぬいてきた仲だ。
本当に心が通い合っているつもりであったし、その自信もあった。
だけど…。

分からない。
最後の、この時になって、彼女の意図が分からない。

「(僕は…。あの人のオトモで居られたこと自体、過ぎた幸福だったんだニャ…。ご主人の事なら何でも分かるって思ってたなんて、単なる思い上がりだったんだニャ…!)」

そう思うと、余計泣けた。
彼以外のオトモアイルーたちの悲惨な末路。
だが、それは今の彼にとって他人事ではなかった。
その然るべき結末が、今こうして、彼の目の前にやってきただけなのだろう。

リュウは内心、そう結論づけたが、そう思うと、余計に泣けた。
泣いて、泣いて、涙も枯れ果てる頃、慟哭することにも疲れきったリュウは、静かに眠りに付いた。

なのに、彼が思い浮かべるのは…。

「ねぇ、リュウ~、今度さぁ、ナズチ狩りに行くから、解毒笛の術まふたー… うぐぅむ! もごもご!」
「ちゃんと食べ終わってから喋るニャ! ちゃんと解毒笛はマスターしておくから、心配しないで良いニャ!」

今はもうない、彼のご主人との、楽しい食事の夢だった。
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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