女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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Ende der welt(5)

「ヴォ、ギャオオオッーーーーーーーーーッッッ!!!」

火山地帯に轟く、魂斬る咆哮。
それは、獣というよりも、もはや動く一つの火山そのものだった。

炎王龍、テオ・テスカトル。
古代から生きる、現在の分類に当てはまらない謎の龍。
その能力は、頭の角で火炎を自在に操り、近寄る者を炎の鎧で弾き、焼き尽くしていく。
弱い生物は、この偉大な王の近くにすら寄ることができない。

業火の鎧、それが、テオ・テスカトルを地上最強の生物と謳わしめた理由であり、狩人が奴を狩るのを最も困難にしている理由であった。

「ご、ご主人…マジでこいつを狩る気かニャ?」
「ちょうど良いわ…あたしの、最後の戦いにふさわしい相手よ!!」

乾坤一擲、アスカが気合を入れると同時に、猛る闘気がラヴァXの鎧とドラゴンブレイカーGを包み込んだ。

だが、目の前の相手は、古龍テオ・テスカトルの中でも、ギルドから特に強力な個体と認められたもの…ジャンプテオだった。
そして、そのジャンプテオの中でも、ひときわ大きく、そして隻眼の個体。
つまり、数多くのハンターと戦って生き残ってきた、歴戦の猛者、強者中の強者の証。
今まで狩ってきた、G級テオや上位ナナとは比較にならない相手と言えた。

リュウの目には、今日のご主人の闘気は半端ないように見えた。
普通ですらG級テオをあっけなく下すのであるから、その威圧感は凄まじいものがあった。
しかし、凄まじさで言えば、目の前のジャンプテオも同格、あるいはそれ以上に思えるのだ…。

「とにかく、いつも通りやるわよ! アンタは敵の目を引いて!」
「…!! わ、分かったニャ!!」

戦場で躊躇していても始まらない。
リュウは即座に思考を切り替え、テオの注意を引くことに全身全霊を傾けた。
今回の戦いにあたり、リュウは「体力増加の術」「防御力アップの術」「高速回復の術」と、テオの一撃を喰っても戦闘を継続できるように修行を積んできた。
もちろん、どれだけテオの攻撃を凌げるか分からないが、とにかくやるしかない。
最後の戦いに参加するために、彼は囮作戦をあえて受け入れ、それが成功するように努力してきたのだ。

「リュウ、そっちに行ったわよ!」
「オーライニャ! ほれほれ、敵さんこっち!」

幸いにして、テオ・テスカトルの最大の攻撃方法である、突進と炎の鎧は作戦の段階で既に封じている。
炎の鎧は、同じく溶岩の中に生息する魚竜・ヴォルガノスの鎧を着ることで無効化できるし、そもそも突進を喰らわないために、頭ではなく足元を狙う戦法を考案したのだ。
リュウがきっちりテオの注意を引いて囮に徹し、アスカが丁寧に戦いさえすれば、勝利は半ば約束されている。

…そのはずだった。

「おぎゃー!」
「!?」

ところが、そのジャンプテオが、リュウの方を向かない。
尻尾で軽くリュウを叩いて捌きながら、常に脅威の存在であるアスカの存在を警戒するのを忘れない。
ジャンプテオは体躯が巨大な個体が多いため、前転のような簡単な回避行動では、その巨躯から放たれる攻撃を避けられない。
前面からの安易な攻撃は、反撃による死を招く。
これでは、うかつに攻撃できない。

「バーカバーカ、お前のかーちゃんでーべーそ!! いい加減こっち向くニャ!! 僕の必殺パンチでぶっ殺すぞニャ!」

リュウも必死でテオの注意をひこうと挑発しているが、肝心のテオはガン無視だ。

「(くっ…これ、どういう事!?)」

これでは、脚を狙う作戦が使えない。
周囲を旋回しながら、チャンスを伺うが、テオは頑なにアスカの方を向いたまま、決して後ろを見せようとはしない。
…もしかして。

「リュウ、爆弾投げて!」
「!?」

アスカは、出来もしないことをリュウに投げかけた。
が、その言葉に反応し、ジャンプテオがリュウの方に視線を向けたのを、アスカは見逃さなかった。

「(…こいつ、まさか人語を理解できる…?)」

そこまでの高等知能を持つ個体がいるとは聞いた事がない。
だが、ハンターたちとの長い闘いの中で、「爆弾」「閃光玉」くらいのキーワードを覚えた可能性はある。
だったら、会話で戦闘の連携を取るのは無理だ。 
こちらの作戦をあらかじめ伝えているようなものだから。

「リュウ、こいつは人語が分かるわ! 今からジェスチャーだけで! 周囲を回りながら、適宜爆弾もよろしくね!」
「!? 分かったニャ!! バンバン爆弾投げ込むニャ!」

リュウは爆弾を投げられないが、アスカの意図を瞬時にくみ取ったリュウは、テオが「爆弾」という単語を理解していると信じ、あえて爆弾を投げると宣言し、それでテオの注意を引くことにした。

2人は周囲を旋回し、ある時は頭を狙うそぶり、ある時は爆弾を投げるマネをしながら、アスカのハンマーがジャンプテオの後ろ脚に徐々にダメージを与えていった。
もちろん、無理をしないで戦う事を第一義にはしていたが、さすがにジャンプテオと言うべきか、一撃かすっただけでも、意識が吹っ飛ぶほどのダメージを受けた。

「(無理せず…冷静に、冷静になるのよ、アスカ…)」

逸る気持ちを抑え、氷点下の炎を心に灯して、紅蓮の炎を打ち砕いていく。
湾曲突進を避け、納鎚する。
そして相手の様子を見ながら走って適切なポジションに寄り、相手が再度突進か、粉塵爆破か、近接攻撃か、炎ブレスかを見極めて攻撃。

粉塵爆破は、黄色なら顔面を殴りに行き、赤なら2回転した所で待機。
攻撃はしたい所だが、ジャンプテオなので、確実に安全な時以外は控える。

近接攻撃の際は足に一撃。尻尾にも攻撃判定があるので注意すること。

後ろから粉塵爆破後に攻撃する場合は、テオの尻尾先までが爆破が届くので、それが一応の目安になる。
振り向きに合わせてスタンプを入れ、回避。
回避しきれなかった時は、一か八かで前腕を潜り抜ける。

突進は、通常の場合、タメつつ待って突進を避け、振り向きに一撃がセオリーであるが、アスカはガンナー時代の経験を生かし、壁を背にして突進の距離を抑え、その振り向きに一撃を当てていった。

がっぷり噛み合う二匹の獣。
それは目に見えぬ火花を散らし、お互いの魂を極限まで削り合う戦いだった。

「(ああ…懐かしいわね、この感覚…)」

アスカの脳裏に「武神闘宴」「絶対零度」の依頼を受けたときの事が蘇る。
あの時も、こんなに、真っ白になりながら戦った。
狩人としての、最も充実した一瞬。
例の、時間が遅くなる錯覚に身をまかせながら、彼女はテオの隙を見て、頭にハンマーを撃ち込んだ。

「グォ、オオオオッッ!」
「やったニャ!ご主人!!」

ジャンプテオの頭冠が砕けた。
テオ・テスカトルは、この頭冠の角で炎を制御している。
炎王龍の周囲を覆っていた、全てを焼き尽くす炎の鎧が、大気に溶けるように消えていった。

元々ラヴァXを着込んでいるアスカにはなんの意味もなかったが、炎の鎧は弱らせないと解除できない。
つまり、角を折ったという事は、折り返し地点まで来た…。そういう意味を持つ。

「(いける…。 勝てるわ…。)」

勝利を確信したアスカは、さらに身体を昂ぶらせながら、ジャンプテオに撃ちかかっていく。
だが、その時、炎王龍は大きく翼を広げ、あっという間に遠くに飛び去ってしまった。

「ああ、もったいなかったニャ…。」
「大丈夫、エリア移動しただけよ…。 たぶん、火口近くに居るはずだから、そっちに行こう」
「了解ニャ! じゃあ、早速行くニャ!!」
「ちょっと待って、せっかくだから、武器を研いでいくわ…。ちょっと、落ち着いて」

さすがのご主人も、息が荒い。
武器を研いだ後、ヘルムを外してクーラードリンクを飲む。
ぷは、と一息ついた顔は、この後迎えるであろう、勝利への期待と歓喜に満ち溢れていた。

「(ああ…、良かったニャ…、やっぱりご主人との狩りは、最高ニャ…)」
「(もうこれで、終わりなのは残念だけど、最後の戦いがこれで、満足ニャ…)」

「さ、行こうか、リュウ!」
「オッケイニャ! 僕にまかせるなのニャ!」

遂に、この旅の終わりが来る。
そのフィナーレを目指し、2人が、火口近くにエリアに移動し終えた時。

…眼の前に展開されていた光景は、信じがたいものだった。

「ぎゃははは!! この水冷弾の嵐を喰らうフスフスフス!!!」
「死ねッ!! 無様にのたうち回って死ねッ!!」

眼の前で、自分たちが追いかけていたジャンプテオが、蜂の巣にされていた。

「!!」
「な…何よ、あいつらッ!?」

「フスフスフス!! さっさと倒れて、俺達に大宝玉を寄こせ、フス!」
「まだ生きてやがるのか…とっととくたばりやがれッ!!」

2人の奇面を被ったハンター達は、最強のヘヴィボウガン「老山龍砲・極」を装備し、スキル「自動装填」で、岩陰から弾丸を撃ち込んでいた。
ジャンプテオは、ハンターの姿を視認できぬまま、あっというまに弾丸で表面の装甲をボロボロにされていく。

「あ、あ、あ…!!!」
リュウがその光景を見た時、目の前が真赤になった。
まるで火山のマグマが、どっと体内に流れ込んできたような気分になり、気付けばリュウはその2人の仮面ハンターに向かって走り出していた。

「何するニャーッ!! ご主人の戦いを汚すことは、僕が絶対に許さんニャーーーッ!!」
「うがぁっ!! こ、こいつ、足に噛みつきやがった!!」
「兄貴、テオがずれる!」
「分かった、任せろッ!!」

アスカたちのお陰で、仮面ハンターたちを視認できたジャンプテオだったが、哀れにも閃光玉の光を喰らって眼つぶしされた。

「どけ、この畜生!!」
「ブニャ…!」

老山龍砲・極の通常弾がリュウ目がけて打ち込まれる。
連続して落雷に撃たれたような衝撃を受け、リュウははるか遠くまで吹き飛ばされて転がった。
顔を撃たれたせいか、口の中が多数切れている。額も削られたのか、血が右眼に入ってきた。

そして、リュウの残った片目が見た光景は…。

2人の仮面ハンターの一斉射撃を受けたジャンプテオが、地響きを立てて倒れこむ姿だった。

「…何してんのよ、アンタたちッ!!」
「ああ?何だテメェは? そこのクソ猫の主人か?」
「そうよッ! っていうか、何なのよアンタたち! 人のクエストに勝手に入り込んできて! 契約違反でしょ!? ギルドに訴えるわよ!」

それを聞くと、2人の仮面ハンターたちは、下卑た笑い声を上げた。

「ハハハハ!! やるならやってみろ、ギルドに『ジャンプテオ横取りされちゃったー』って、泣きながら訴えてみろよ」
「ギャハ!! その代わりに古龍の大宝玉は俺達が美味しく頂くフス」
「てめぇもハンターならよ、力で勝利と獲物をもぎ取ってみろよ! 俺達みたいにな! それとも誰かの力を借りないと何もできねぇか? この寄生ハンターが」
「なんですって!!」

アスカが、怒りのあまり、ハンマーをその2人に向かって振り上げようとした時…。
これが返事と言わんばかりに、二丁の「老山龍砲・極」の銃口が火を噴いた。

「ぐぅッ!?」

通常弾の嵐に押し飛ばされ、吹き飛ぶアスカ。
対人戦において、ガードができないハンマーで、ボウガンを相手に勝つのは不可能に近い。

「ああ?そんなチンケなハンマーで、俺たちをどうかできるつもりだったのかよ?」
「くっ…。」

アスカが起き上がった瞬間、弾の衝撃か、それとも装着が甘かったか、ラヴァXヘルムが地面に落ち、素顔があらわになる。
怒りと火山の熱気で上気した頬に、玉のような汗、そしてうなじにへばりついたおくれ毛。
必要ない時に無駄に色っぽいご主人だった。

「…!」
「ほぉ…。」
仮面ハンターたちがぐびり、と喉をならす音が聞こえる。

「嬢ちゃんよ、あのジャンプテオは俺たちが頂くぜ。強い者こそがハンターとして相応しい。だからアレは俺たちの獲物だ」
白い仮面の男は、顎で瀕死のジャンプテオを指して言った。

「だがなぁ、俺達に怪我させて迷惑掛けたからにはよぉ、相応の謝罪をしてもらわねぇと割にあわねぇな」

そう言って、さっきリュウに噛まれた脚を見せる。
怪我したと言っても、傷はほんのちょっぴりだ。

「そう!そうだフス! お前、俺達に謝れフス!」

なんという理不尽な発言。
しかし、力こそが全てを支配するこの場において、アスカは絶対的に不利な状態だった。
ここで反論しても、自分たちは再びボウガンの弾で撃ち抜かれ、キャンプ送りになるだけだろう。
どうする。
どうすれば良い?

一瞬だけ逡巡したアスカは、すぐに答えを出した。

「…謝るって…どうやって?」

仮面の男たちが、小さく奇声を挙げた。
そして、銃口をアスカに向けながら一言。

「そうだな、まずは脱いでもらおうか…。生まれたままの姿で土下座すれば、許してやらん事もないぜ」

<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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