女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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Ende der welt(1)

それは、ある初夏のこと。
ポッケ村にも来る僅かな夏、雪解け水を吸って萌芽する草花たち。
季節外れの福寿草の花が咲いた時に、その話は始まった…。

「ああ~、夏と言ってもポッケ村はまだまだ寒いニャ…ん? ご主人は何してるニャ?」

彼の主人、「煌竜=アスカ=ダールグレイ」の姿が見えない。
あの元気溌剌バカ少女は、朝が遅い、というかスゲエ自堕落なので、大抵昼まで起きてこない。
そのお寝坊さんぶりを揶揄されて、毛布ハンターとかいう情けないあだ名まで先輩ハンターに頂戴している。

…しかし、その日の寝床は空っぽで、しかも毛布は綺麗に畳まれていた。

「なんだニャ!? ご主人に何があったニャ!? あの自堕落娘が早起きだなんて…。天変地異の前触れニャ!?」
「こうしちゃいられんニャ! ご主人を探しに行かニャくては…!」

彼、オトモアイルーの「リュウ」が怪しいものを感じ、扉を開けて外に主人を探しに出ようとした時…。

「あ~、眠ッ」
「おぎゃー!」
バーンといきおいよく開かれた扉に跳ね飛ばされ、台所まですってんころりんと転がるリュウ。

「あれー? どしたのリュウ?そんな所で寝転がって? もう昼だよ?」
「あんたに跳ね飛ばされたんだニャ!? というより、朝から何してたんだニャ…」

彼は、愛するご主人を見た瞬間、言葉を失う。
彼女が小脇に抱えてたのは、冷櫃に輝く鋼色の銃槍。

「それは…」
「ああ、これ? うん、あんま放置しっぱなしだったからさぁ、メンテしてきたのよ。武器屋の親父がさぁ、予約で一杯だから朝から来いって言いやがってね、つーか誰が有名にしてやったのかと」

銀火竜の猛る炎を閉じ込めた、対竜族の必殺の銃槍。

「それでご主人…次は何の狩りに行くつもりニャ?」
「んー? …そうねぇ、次は何にしようかなぁ…っていうか、もうあいつしか残ってないんだけどね…。」

「…。」
「…ん? どしたの?」
「…オトモスキル限界突破技:『セクハラの術』ッ!」

 もみもみ。

「って、ギャーッ!! いきなり何胸触ってんのよ!子猫がジャれてるだけって言い訳は効かないんだかんね!」
「ご主人こそ、そこは『ギャー』じゃなくて、できればもっと乙女らしい悲鳴にしてほしいニャッ!」

そういうと、リュウはアスカが小脇に抱えていたガンランスを口に咥え、四足で駈け出した。

「ちょっ…何してんの、あんた!?」

リュウは返事せず延々と逃げた。

「こら、待ちなさ~い! っていうか待たないと三味線にするわよッ!!」

銃槍くわえた黒猫を追いかけるアスカ。
リュウも必死に逃げるが、ガンスなんぞを口に加えてまともな速度が出せるはずもなく、しばらく追いかけっこをしているうち、ポッケ農場まで逃げた所で地べたにひっ転び、あっけなく追いつかれた。

「ちょっと…どういうつもりよ、あんた!?」
アスカはガンスをリュウの口から無理矢理ひったくり、背後からお叱りの一撃を加えるべく振りかぶったとき。

「う…。 うっ…。 うぇ…。」

「…!?」

うつぶせた彼の背中が、小さく揺れていた。

「な、何、あんた…泣いてんの?」

彼のすすり泣きが、ゆっくり大きくなる。
「嫌だニャ… ご主人、それは止めてほしいニャ…。」
「い、嫌って何がよ!? 何を止めるっていうのよ…」

リュウはこっちを振り返る。
涙を眼に一杯ため、口はへの字型にひんまげて、彼の愛するご主人を見る。

「だって、ご主人は、もう、狩人を引退する気ニャから…。」

「…!」

2人の間に流れる沈黙。

「…気づいてた?」
「当然だニャ…。」
「いつから?」
「少し、前からニャ。 ご主人は、以前みたいに元気に狩りに行くことが少なくなってきたニャ…。」
「そうかー、それに気づかれてたって、意外だったなー…。」
「伊達に2年もオトモしてた訳じゃないニャ! ご主人のご飯を作ってた時からずっと一緒だから…。」

アスカは、ふっきれたように話始めた。

「正直さぁ、もう、狩りに飽きてきたんだよね…。」
「飽きた?」
「っていうかさぁ、もう、どんなモンスターも狩れるようになって、ギルドの全ての依頼も一人でこなせるようになって、やる事なくなっちゃってね~」
「そんな…。でも、ご主人は僕の誇りだニャ!こんな寒村のハンターでも、街のハンターと変わらない、いやそれ以上の功績を出せるって事をご主人は証明してくれたニャ!村のみんなだってそう言ってるニャ!」
「ありがと」
「『武神闘宴』の時だってそうだったニャ!ご主人は決して諦めない闘志を持って戦いぬいたニャ!そりゃあちょっとはヘタレとは思ったけど…、でも、さすが僕のご主人だニャ!万夫不当の勇士だニャ!」
「ありがとう。でもね…。」

「別に、あたしは、『ファイター』になりたい訳じゃないのよ」
「同じハンターでもいろんなタイプのハンターが居るだろうし、実際街の闘技場に集まるハンターの人たちは、そりゃ物凄かったわ…」
「まるで、どっちがモンスターなのよって言いたくなるくらいの戦闘力。あれじゃ逆に中に入ってるモンスターの方が可哀そうだわ」

「…でも、あの人たちは、一体どれだけ、モンスターの事や、先人たちが作り上げてきた道具の事を知っているのかしらね?」
「弱者だから、道具に頼る。弱者だから、戦法をこらす。そして初めて対等。それが、人とモンスターの、正しいあり方と思うの」

そう言って、アスカは空を見た。
「でも、あたしも、自身がね、『ファイター』になりつつあるのを感じるの…。どうすれば武器を上手く使えるか、どうすれば相手の隙をとらえられるか、気付けば考えていることは、そればかり…」

「ご主人…」

「そしてね、段々と…。 段々と、蝕まれるように、モンスターへの畏怖心が消えていったわ」
「遠くない将来、多分、私は、どんなクエストを請けても、もう緊張できなくなる」
「…。」
「その時が、多分、私の死ぬ時…。戦場での油断は、死以外の何物でもないからね」

「だから、ガンランスを」
「そう。あたしが駆け出しハンターだった時、常に命を預けていた武器」
「そうニャ…そしてご主人の、最後の拠り所の武器ニャ…。」

アスカは、ゆっくりとリュウを見る。

「でも、嫌だニャ…。」
「ええ!?」
「ご主人とのこの2年は、かけがえのない、きらめくような日々だったニャ…。それが終わるなんて、絶対に嫌だニャ…。ご主人はその武器を使えば、きっと本当に思い残すことがなくなるニャ…。頼むから、その武器だけは使わないで欲しいニャ…。」
「そんな事、言われたってねぇ…。」

アスカの小脇に輝く、鈍色の銃槍。
「Ende der welt」…東方の言葉で「世界の終り」を意味する、女神の機械槍。
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*Comment

No title 

むむ・・・続報を待ちます・・・
  • posted by 塩 
  • URL 
  • 2009.07/13 22:00分 
  • [Edit]

始まりがあれば 

いつか終わりの時も…
続編楽しみにしてます(^▽^)ノ
  • posted by PECO 
  • URL 
  • 2009.07/14 01:18分 
  • [Edit]

No title 

意味深すぐる。。。
早く次が見たい・・・ような見たく無いような・・・
  • posted by デカつるぎ 
  • URL 
  • 2009.07/14 04:44分 
  • [Edit]

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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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