女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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リヴァイアサンズ・メルヴィレイ(38)

「じゃあ、パーティを組むことになった訳だし、お互い自己紹介しよう。 その時に、自分の好きな物を上げていく、という事で。 トラウムからどうぞ」

えっ?
っていうか、自己紹介とか、何それ?
学校か?

「え、あたしから? えっと、トラウムと言います! 好きな物は子供とお花で、ガーデニングが趣味、学校は教育学部小学課、サークルは茶道部に入ってます。 あと、お菓子作りも好きで、最近は天然酵母のパン作りにハマってます!」

「…。」
「…。」

俺と龍真は絶句していた。
なに、その、まっとう過ぎる自己紹介。 学校か?

「トラウムさん、君、もしかして、宇園大学の学生…?」

ムラサメ氏も呆然とした口調で、そう呟いた。

だよな。
分かっちゃうよな。
のぞみさん、個人情報漏えいし過ぎだよ…。
ネットの中で自分の素性を喋るとか、情弱にもほどがあるでぇ!



だが、のぞみさんのその素直な態度は、思わぬ方向に結実した。

「…じゃあ、僕も。 『鋼鉄戦鬼ムラサメ』です。 トラウムさんと同じ、宇園大学の1年生、理工学部です。 サークルには入ってません。 好きなものは、鉄道の撮影とパソコンです。 パソコンっていうか、ゲームかな。 アバター名もそこから来てます」

はぁ!?
こいつも俺たちと同じ、大学生!?
しかも1年生、だって!?

龍真が顔を挙げて、俺を見た。
その表情は「彼のアバター名の由来を知ってるか」と聴いているのだが、俺の推測どおりなら、このアバターの元ネタは、エロ…いや、18歳以下お断りの紳士ゲームだ。
なので俺は首を振って「知らない」と答え、それを見た龍真は、再び視線をタブレットに戻した。

「じゃあ、次は僕が。 バールハイトと言います。 皆と同じく、宇園大学の学生です。 法学部なので、サークルには入っていません。 好きなことは勉強で、最近の趣味は、データベースソフトで、生産力や経済効果を反映した人口動態モデルを作ることです、よろしく」

「…。」

ムラサメ氏はノーリアクションだった。
だろうな、意味分かんないよな。
俺だって全く意味分かんねぇもん。

「…えー、じゃあ最後に俺ですね。 レオ、と言います。 よろしく」

と、俺は簡潔に済ませた。 ところが、

「好きなものはゲームとマンガです」
「最近はアニメも好きって事が分かってます。 あの、まじかるなんとかいう、小さい女の子が好きそうなの」

龍真とのぞみさんが猛烈な補足を入れてくれた。

「ちょっとぉおぉぉお!?」
「お前だけそんな簡単に済ませようとするな」
「そうだよ、自分をオープンにしないと、人と仲良くなれないよ」

いや、自分をオープンっても、限度ってもんがあるじゃん!

「ははっ、ゲーオタで、アニオタで、ロリコンか。 こりゃ救いようがないね。 首括って親に詫びたらどう?」

案の定、奴は仲良くどころか、わざわざシングルチャットで煽ってきやがった。

うっせーよ、この撮り鉄エロゲマンが!
お前だって似たようなもんだろが!
龍真達が目の前に居なかったら、顔真っ赤になるまで煽ってやる所なんだぞコンチクショウ!

「よし、じゃあ、自己紹介も終わった所で、そろそろ山に向かおう…と言いたいところだが、その前に、作戦を決めておきたいんだが」

作戦?

「今回のイベントは純粋な狩りになる訳だが、効率の良い狩り方とか、あるかな? お二人方」

それは俺とムラサメ氏に振ったものだろうけど、敵モンスターの素性も分からないのに、作戦もクソもない。

「「いや、別に」」

俺とムラサメ氏の返答は、一言一句、しかもタイミングまで揃って同じになった。

「そうか、じゃあ隊形だけ決めておこう。 君ら二人が前衛になるのが良いかもしれないと思ってるんだが、どうかな」

「「こいつとか」」

またも綺麗にハモった。
のぞみさんが声を殺して笑ってるが、画面の中のムラサメ氏は、前衛を依頼する龍真の説得に応じる様子はない。

「ん…じゃあ、僕とレオが前衛になろう。 悪いが、ムラサメさんは、トラウムの護衛をお願いできないか?」
「護衛? 自分で戦わないのか?」
「彼女はゲームに不慣れだから、オートでしか戦闘できないんだ」

普通、ネトゲでは後衛の人間もそれなりに殴りに参加したり、補助魔法掛けたりと自分の役割に徹する。
護衛なんて戦力を削く事は普通しない。

だが、ムラサメ氏は『オートでしか戦闘できない』…つまり、トラウムさんが全くの初心者だと聞いて、納得したようだった。

「なるほど、了解した。 …よろしく、トラウムさん」
「こちらこそよろしくね、ムラサメさん」

気のせいか、ムラサメ氏の声には、どこか恥ずかしがってる様子が感じられた。
まさかとは思うが、いきなりトラウムさんに変な感情を抱き始めたとかじゃないよな、コイツ…。

「じゃあ、そろそろ山に向かおう。 ムラサメさん、申し訳ないが、最初のリーダーをよろしく頼む」
「ああ、任せてくれ」

ムラサメ氏はそう力強く答えてくれた。

だが、俺はコイツとの同行に、どこか不安な印象を拭えなかった。


DATE : H27.1.28
TIME : 15:50
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「どうだった? バールハイト」

ムラサメ氏が、バールハイトにそう聞いた。

「遠目で見ただけだが、あまり良くない展開だな」

俺たちはイベントに参加するため、ベルディスカ山の麓まで向かったが、その途中、武装して山に向かう連中と幾人も出会った。
だがそいつらの目的は、俺たちとは違って、山を占拠するレッドギルド「クリーピング・コインズ」を排除するためだ。

現実で、ガラの悪い輩がたむろする場所には近づかないのと同様に、レッドギルドが占拠する場所には近づかないのがネトゲプレイヤーの常識だ。

だが、龍真が偵察を請け負い、(そして俺たちが龍真のタブレットを覗き込んだ結果)確認した光景は、その常識からとはかなりかけ離れていた。

「一言で言えば、戦争だった。 地獄の黙示録みたいな状態だったな」
「そうか…そんな状態になってたんだね」

と、龍真がムラサメ氏に説明する。

「ああ、ヤツフネたちは強いが、彼らを数で押し殺せ、みたいな雰囲気があった。 …それに、流石の彼らも、疲れてきているようだった」
「そう…もしかすると、連中、稼ぎを終えたら撤退するかもね」

ムラサメ氏がそんな予想を述べるが、それは龍真も考えていた事。
もちろん、ここでの「稼ぎ」とは、PKで得た相手の武器防具の事だ。

「そうなったら僕も撤退するけど、それで構わないかい」
「ああ、構わないとも。 それは先に言ったとおりだ」

ムラサメ氏が龍真に念を押す。
実際そうなったら、俺たちも一緒に脱出することになるんだろうけどな…。

「じゃあムラサメ氏、パーティ申請をよろしく頼む」
「分かった」

すると、龍真とのぞみさんの画面には、パーティ申請のウインドウが出てきたが、俺の画面には、何も出てこない。

「…おい、ムラサメ、俺の所に申請が来てないんだけど」
「お前も加わる気か?」
「4人パーティだって聞いてたろ? さっさと申請しろよ」
「まぁまぁ、そこらへんにしてくれ。 ムラサメさん、レオの戦力も必要なんだ。 申請お願いできないか」

と、龍真がタブレットから顔を上げて「むやみに事を荒立てるな」的な視線を投げかけてきた。
いや、今のは相手が悪いだろ、どう考えてもただの嫌がらせだし。

そして、ちょっと経ってから、パーティ申請の画面が出てきた。 
俺もしばらく待ってから返答しようかな、と一瞬思ったが、子供じみた事をしても意味ないし、素直に「はい(Y)」をタップ。
すると、俺もパーティに招き入れられた旨のメッセージが出てきた。

「…。」

龍真が「礼くらい言え」とジェスチャーで言ってくる。

「…よろしくな、ムラサメ。 申請してくれてサンキュ」
「ふん、足手まといだけにはなるなよ」

カーッ、ムカつくぜこいつ!
人がせっかく下手に出てりゃ、調子こきやがって!

「じゃあ、『約束の翼』を使うよ。 皆、準備は良いかい?」
「いいとも」
「はい、大丈夫です」
「はいはい、オーケーオーケー」

時刻は16時直前。
「鋼鉄戦鬼ムラサメ」がアイテム「約束の翼」を使用すると、パーティ申請をした皆のアバターがまとめて光に包まれ、画面が一瞬で切り替わり、俺たちは雪原へとワープした。

「お、『鋼鉄戦鬼ムラサメ』だな。 待ってたぜ」

そこには、弓を背に担いだ、レンジャーっぽい姿のアバターが待っていた。
「約束の翼」は、彼の所に飛ぶよう設定されてたんだな。

「…貴方、下に居るレッドギルドのお仲間さん?」

ムラサメがレッドギルドのメンバーに話しかけるが、

「そうだ」

会話ウインドウに浮かんだアバター名は「GunーBlaze」。

…西川先輩だった。

そして、西川先輩は、ムラサメの会話のサブウインドウに表示された俺に気づいたようだった。

「あれ? レオ? 何でお前がここに? お前も『約束の翼』を持ってたはずじゃ…? ああ、ふうん…。 そういう事か」

そして、それだけで俺たちの目論見に気がついたらしい。

「…先輩、貴方までもが、これに参加してたとは思ってませんでしたよ。 これ、もしかしてウチの人間が主導してるんですか?」
「まさか。 俺たちは別の目的のために、協力しあってるだけさ。 Baraの奴も今日は待機組だよ」

だが、そこでムラサメが会話に割り込んできた。

「おい、レオ、そいつはお前の知り合いなのか?」
「…そうだよ。 ってか、年上なんだから、『そいつ』とか言うな」
「ふーん、リアルの知り合い? てか、レッドギルドの先輩とは恐れいるね。 で、『あんた』、別な目的って、何?」

こいつ…!
西川先輩のネームカラーは一応「白」だろが!
わざわざ挑発すんなよな!

だが、西川先輩は煽りを無視して受け流すと、

「じゃあ、そろそろ狩りの時間だぜ、皆様方。 死なないように頑張ってくれ」

と、事務的にそう告げた。

「はっ、無視かよ」
「おい、ムラサメ、行くぞ!」
「今のリーダーは僕だぞ、お前が命令するな!」

くっそ、コイツ、マジで腹立つなぁ…!

「おいおいレオ、そんなカッカするな」
「そうだよレオくん、皆仲良くしようよ」
「いや、人の身内をバカにされて、黙ってられるかよ…!」

俺はそう小声で反論するが、

「でも、そこの『GunーBlaze』さんも耐えてるじゃないか。 先輩の彼がこらえてるのに、お前がそれを無駄にするのか?」
「う…」
「ここは、この場をさっさと離れた方が良い。 さぁ、行こう」

そして龍真は、ムラサメ氏に向かって「じゃ、行きましょう。 時間は少ないんだから、道草食ってる訳にも行きませんし」と促した。
ムラサメ氏はまだ何か言いたそうだったが、龍真の説得には「まぁ、そうだね」とあっさり同意した。

俺はまたもシングルチャットで、

「…なんでこいつ、お前の言う事には素直なんだよ」

と龍真に話しかけたが、

「そりゃ、僕ら全員を敵に回したら、いきなり転落死の可能性が出てくるからだろ」

と返事がきた。

つまり、計算ずくで俺だけに悪態ついてる訳か。
もうホント、どこまでも嫌らしい奴だな…。

俺たちは、耐寒用のヒートドリンクを飲んで体を暖め(※スタミナの最大値の減りが鈍くなる)雪山の道を登る事にした。
この平地には敵が居なさそうなので、洞窟を登った、この上からが本番だろう。

<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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