女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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リヴァイアサンズ・メルヴィレイ(37)

DATE : H27.1.27
TIME : 21:31
STID : 00941724,00187632,00187839


そして、俺たちは再びネージュ村へと戻った。
時刻は夜9時半を回っているが、まだやる事が残っていたからだ。
明日のイベントに備えての、課金アイテムの購入。

回復・防御薬:「回復薬」「ヒートドリンク」
捕獲・拘束罠:「足罠【虎挟】」「投網」
戦闘補助道具:「閃光弾」「スローイングダガー」
魔法アイテム:「フレイムスクロール」「魔力石」

「ホント、ネトゲの運営はがめつい事この上ないぜ」
「全くだな、そもそも何を買えばいいのやら」
「名前だけだと全部必要な気もするよね」

各自、アイテムをそれぞれにタップして、アイテムの説明を見ながら、必要そうだなと思われる物を買っていく。
気は全然進まないが、今のうちに購入しとかないと、明日は暴利な値段に変化する、というのが俺たちの共通見解だったからだ。

「のぞみ、礼雄、経費はメモしててくれ。 後で不公平がないように精算するから」
「…分かった。 ところで、50,000Cen返さなくて良いのか? まだ余裕あるけど」

龍真はちょっと考えていたが、

「…受け取っておこう。 明日は、PK合戦になる可能性が高いしな」
「えっ、リョウくん、本当に?」
「多分な。 僕は一番に脱出するが、皆にも『転移の魔法石』を渡しておく。 礼雄、のぞみ、受け取ってくれ」

俺たちは「転移の魔法石」をCenとトレードしながら、龍真の見立てを聞く。

「あのヤツフネというプレイヤーの強さの底が分からないが、本当に最後まで戦い抜く自信があるなら、入山料を取らずに、自分たちでイベントを占拠した方が儲かるはず」
「うん…。 でも、それをしないのは」
「最後まで護りきれる自信が流石にない、あるいは不測の事態に備えて、だと思う」
「でもそれだと、俺たちが山に入る時は、ヤツフネたちは撤退してて、誰でも入れる状態になってるんじゃないのか」
「その可能性は高い。 今日トレードしたアイテムも、もしかすると無駄になるかもな」
「マジかよ…最悪だな」

俺はアイテムストレージを開けて、トレードしたウインドウを見る。
「約束の翼」というアイテムがそこにあるが、これが山に居る連中の所にまで飛ぶアイテムだ。

「ただ、万一ヤツフネ達が最後まで耐えた時の事を考えたら、悔しいがトレードせざるを得ない」
「理不尽だよね。 無駄になるかもしれないのに、あんな人たちの言うことを聞かなきゃいけないなんて」
「暴力は普遍的に存在する『力』の一つだ。 現実にだって、理不尽な事はどこにでもあるものさ」

そう言って、龍真はのぞみさんを諭す。
だが、俺はその「理不尽」という言葉を聞いて、ふと龍真の左手を見る。
何気なくスマートタブレットに添えられているその手だが、まだ龍真の中指は思うように動かないはず。

高校二年の時の…あの日の事件のせいで。

DATE : H27.1.28
TIME : 8:43
STID : 00941724


日曜日、俺は朝食を取ると、2階の自室へと戻った。 
普段なら今日もフリーな日だが、俺にとっては決戦の日だ。
なんせ、「福祉経済総論」「環境経済論」のレポートをある程度形にしなくちゃいけない。

「その前に…」

まず部屋を掃除するか、と俺は散らかった部屋を見回した。
雑然としたコタツまわり。
これは、綺麗にしなくちゃ集中できないな。

俺はそう思って、マンガと教科書、wikiで調べた語句を書き散らしたルーズリーフを片づけていく。
…この、レポートの期限が迫ると、片づけをしたくなる現象って何なんだろうな。 俺だけかな。

「あ、そういやカプリコンからの返事来てねぇかな」

俺は掃除途中で手を止めると、旧型ノートPCの電源を入れ、メーラーを起動した。

「おっ」

返事来てるじゃん、何々?


ーーーーーーーーーーーー

桐嶋 礼雄様

日頃より、弊社の製品のご利用とご愛顧につきまして、心よりお礼申し上げます。
さて、先日メールフォームにて寄せられた質問につきましては、弊社ホームページのQ&Aに回答がございます。

(Q&A:21をご参照下さい)
http://www.capricon.co.jp/livyatans-resurrection/user-information/faq/xxxx.html

補足いたしますと、「還魂のリヴァイアサン」のゲームデザイン面においては、事前に類似作品を徹底研究し、問題とされた分につきましても、既に対応しております。
今後とも、弊社製品のご愛顧をお願いすると共に、桐嶋さまから、また貴重なご意見を頂ければ幸いに存じます。
よろしくお願いいたします。


株式会社カプリコン
ソーシャルゲーム運営部
お客様サポート係 0120ー334ーXXXX

ーーーーーーーーーーーー

あれ、FAQで既に回答済みなの?
俺はリンク先を開いて、カプリコンのHPのQ&Aを見る。

「PKは…」

Q21、ってどこだ?
…あ、あった。 一番下。
ってか、「NEW」って最近回答された質問じゃねーか。

ーーーーーーーーーーーー

Q21:「このゲームのPKの仕様を改善して下さい! プレイヤーを倒したら、全ての装備や所持金を奪えるなんて、おかしいです! バランス崩壊の元です!」

A21:「本作のPKシステムは、あえてご質問のとおりにデザインしています。 理由としましては、ゲームの中においてもリアルな生活感覚を実感して頂くべく、社会・経済システムを現実に準拠して構築したためです。 ただ当然、PKプレイヤーが現実社会と同様の不利益を被るようにデザインしてもおりますので、既成概念に捕らわれることなく攻略して下さい」

ーーーーーーーーーーーー

「…仕様、だと?」

このPKシステムは仕様。
PKプレイヤーの横暴は、既にシステム内で対策済み。
それでもPKに悩まされるのは、自分たちで対抗しようとしないから…って事か?

でも、そうとしか読めない。
PKプレイヤーが被る、現実と同じ不利益…?
って、何だ?

「…警察に逮捕されるとか?」

そんな事を口走ってみるが、このゲームの中に警察組織はない。
…もしかすると、PKKプレイヤーが属する事のできるクラン(集団)とか、クランスキルに対PKのものがあるのかもしれないが、それもネージュ周辺では見た事も聞いたこともない。

「それを探せ、って事かな…?」

でも、それを考えても仕方ない。
結論の出ない検討など、時間の無駄になるだけだ。
そんな事する暇あるなら、レポートの続きをしなくては。

「でも、その前に」

…部屋の片づけの続きをしなくちゃ。


DATE : H27.1.28
TIME : 14:10
STID : 00941724


「あのさ、なんで2時から集合なんだよ? 俺たちの指定時間まで、3時間あるじゃんか」

日曜日の昼、俺は部屋を片づけたあと昼飯を済ませ、「そろそろレポートやらなきゃヤバイかな…」と危機感イグニッションによるエンジンが掛かってきたところで、

「礼雄、悪いがちょっと早めに僕のマンションに来てくれ。 できれば14時あたりが良い」

龍真から、いきなり召還された。
俺は仕方なく作業を中断し、こうしてチャリをこいで奴のマンションへとむかった訳だ。
でも、なんでこんな早く呼び出したんだろうか。

「昨日言っただろう? 僕らの勝利のためには、鋼鉄戦鬼ムラサメ氏が鍵になる、だって」
「それと、こんな早く集まるのと何の関係があるんだよ」
「このゲームは、4人までパーティ登録できるだろう? 彼を4人目に迎えて、戦力の充実を計る」
「…え?」

鋼鉄戦鬼ムラサメの入山時間は16時。
その際、俺たちが彼の仲間として立候補し、17時の俺たちの入山の際には、逆に彼を仲間に加える、という算段らしい。

「ああ、なるほど…」

確かに、それなら他のチームは1時間しか山に籠もれない所を、俺たちは実質2時間籠もる事ができ、圧倒的優位になる。

「でも、それ成功するのか?」
「彼は昨日、あの山に一人で来て帰っただろう? 危険があるのを知りながら、な。 彼がソロプレイヤーの可能性は比較的高いんじゃないか、と思ってるんだ」

まぁ、確かにそう言われれば奴はソロっぽいけど…。
自分で望んで一人で居る可能性だってあるぜ。
それで仲間になったりするだろうか?

「いや、その場合でも多分大丈夫だ」

どういう事?

「礼雄の言うとおり、彼は望んでソロプレイをしてるんだろう。 だが、このイベントは明らかにパーティで挑むのが得策だ。 それに異論はないだろう?」
「まぁ、それは確かに」
「だから、利害関係を丁寧に説明すれば、一時的にでも協力してくれる可能性は高い。 とにかく、彼を捜してくれないか」
「わ、分かった…」

龍真は既にログインしているという事だったので、俺とのぞみさんがスマートタブレットを取り出し、アプリを起動、「リヴァイアサンズ・メルヴィレイ」とゲームにログインする。
龍真が言うには「教会で調べたところ、彼はまだログインしていない」という事が分かっているらしい。

「という訳で、ローテーションでここで待とう」
「マジで!?」
「ああ、彼が万一心変わりして、仲間を探そうかな…と思う前に捕まえたい。 その場合、ベルディスカ山で野良メンバーを募集すれば、すぐ3枠埋まるからな」

じゃあ、それを見越して2時間前に俺を呼び出した、って訳か…?

「その通りだ。 大勢で説得した方が効果的だからな」
「マジかよ、俺、試験勉強してたのに…」
「それは悪かった。 だが僕らだけで事を進めて、ハブられるのも気分悪いだろう?」
「そりゃまぁ、そうだけど…もし、ムラサメに仲間居たらどうすんだよ」
「その可能性は低い。 彼に本当に仲間が居るなら、今回と前回のイベントのどこかで、姿なり見てるだろうからな」
「…分かったよ、もう」

しょうがねぇ、と腹をくくった俺は、テーブルに既に用意してあった美味しそうなパンケーキをありがたく頬張りながら、20分おきのローテーションで、村前の掲示板で粘る。
ただ、このゲームのチャットはエリアチャットがデフォルトのため、ときおり不穏な話も耳に入ってくる。

「何っ! ホークが殺されたって!? 嘘だろ!?」
「嘘じゃないよ、あの殺人ギルドの連中、マジでヤバいよ! ホークさんが何も出来ずに倒されたんだから! どうするんだよ、シルくん!」
「ちっきしょう…! イベントを一人で独占するとか、ふざけやがって! 許せねぇよな、ブルース!」
「だよね!」

しかも話題の大半は、例の殺人ギルドの事だった。
イベントに参加したら追い返された、自分たちだけで独占なんて許せない、腕自慢が刃向かったらあっさり殺された…そんな内容が殆どだった。

俺はヘッドセットのマイク部分を握って声が漏れないようにすると、直接龍真に話しかけた。

「なぁ龍真、これ、かなり危険な状態じゃないか、いろいろと」
「いや、朝からずっとこんな調子だぞ。 でも、腕に覚えのある連中は、殆ど全員返り討ちにされているらしいから、ヤツフネは最後まで山を護りきれるんじゃないか」
「マジで? アイツすげぇな」
「ああ、何時間も継続して、神経すり減らす戦闘に没頭できるなんて、僕には信じられない。 大した集中力だ」
「にしても…」

この状態は、何となく居心地が悪かった。
イベントのカラクリを知っている人間だけが得をして、そしてそれを黙って傍観してる、ってのが。

「何を言ってる? 椅子取りゲームの椅子を増やしたら、そもそもゲームにならないだろ? 彼らはもう負けているんだ、気にするな」
「…おい、龍真」
「それが自然の摂理だ。 それと、礼雄、僕の言うとおりに戦うという約束は守ってくれよ」
「…分かってる、それは言うとおりにするよ」

だが、俺たちがそんなやりとりをしているうち、

「ねぇ、リョウくんたち、ムラサメさんが中に入って来たみたいだよ」

のぞみさんが、「鋼鉄戦鬼ムラサメ」を見つけたらしい。
俺たちも慌てて奴の赤銅色のアバターを確認するが、周囲には誰もいない。
龍真の見立てどおり、奴は一人でログインしたようだ。

「やはり彼は、完全にソロの様だな」
「…あいつ、マジでぼっちなんだな」

俺たちは同時にそんな事を呟いたが、龍真はニヤッと笑うと、

「だが、僕らにとってはベストパートナーだ、のぞみ、行くぞ」

そう言って、躊躇なくムラサメ氏に話しかけた。

「こんにちは、待ってましたよ、鋼鉄戦鬼ムラサメさん」

最初、鋼鉄戦鬼ムラサメ氏は、誰に話しかけられたのか理解できない様子で、しばらく沈黙していたが、ちょっと経って龍真の事を思い出したようだった。

「…お前、レオの仲間の」
「そうです、バールハイトです」
「トラウムです。 あなたを待ってたんです、ずっと」

いや、ずっとって、待ってたのは、ほんの10分くらいだろ。
相手にゃ分からないからって、ハッタリ利かせすぎだろ…と思った時点で、俺は龍真とのぞみさんが、この会話を事前にシミュレーションしている事に気がついた。

「僕に、何の用件?」
「貴方と取引したいんです。 今回のイベントを勝ち抜くために」

そう言って、龍真は俺に説明したのと同様、ムラサメ氏に利害を交えて説明する。

「…なるほど、言いたい事は分かったよ」
「分かって頂けましたか」

だが、そこで奴は、ネットで使い古された慣用句を言い放った。

「だが断る」

「何故です!? 今の話で、手を組むメリットは理解できたでしょう?」

しかし龍真は、普通に狼狽しただけだった。
まぁそりゃそうだ。

「はっきり言って、お前達を信用できない。 確かにパーティを組めば、仲間内でダメージを受けなくなるけど、転落死させられたりする危険性は残ってる。 そうなれば、2時間を確保できるのはお前達だけだろ?」

そう言われて、龍真は得心したように頷く。

「なるほど、ごもっともです。 でも、僕たちには、貴方を害する気持ちは全くありません。 その証明として、『転移の魔法石』をお渡しします。 また、貴方は身の危険を感じたら、好きな所で離脱して構いません」

そして、龍真はトレードウインドウを開く。

「…なぜ、僕を選んだんだい?」

ここまでされて、多少ムラサメ氏の心も動いたようだった。
龍真がのぞみさんにアイコンタクトをして、トラウムがムラサメ氏に、その理由を語る。

「あの、貴方を見込んだ理由は、あの強さです。 貴方の戦闘力があれば、きっとイベントに勝てると思ったので…」

のぞみさんは可愛らしい声で、そう切々と訴えかけた。
うわ、この作戦汚い。
女の子からこんな風に頼りにされたら、女性に免疫のないネトゲプレイヤーはイチコロだろ…。

「…」

「お願いします、ムラサメさんじゃないとダメなんです!」

「…まぁ、そこまで言うなら、力を貸してやってもいい。 ただし、状況次第では本当に離脱させてもらうよ」

その言質を引っ張りだした時に、龍真とのぞみさんは、顔を見合わせて「やったった、うまくいったった」的な表情を作った。

あーあ、ムラサメ氏マジピエロ。
俺はムラサメ氏に話を聞かれないよう、シングルチャットを起動させ、二人に話しかける。

「…おい、バール、本当にスカウトできたな」
「ああ。 昨日、わざわざレオに絡んで来た時に、ちょっと不思議に思ってたんだよ。 彼も内心では、ソロではおそらく難しい、と判断してたんだろうな」

それは、ちょっと意外な発言だった。

「じゃあ、奴は俺たちとパーティを組みたかった、って思ってたのか?」
「そこまではないが、多少気にしてくれたらいいな、程度は思ってただろう。 だから、こっちから頭を下げれば、乗ってくれる可能性はあった」

…ムラサメの奴、酷いツンデレだな。
しかし、龍真の奴、そこまで相手の心理を読み切って、可能性があると分かっていたのに、女性の色香まで使うとは徹底してるよな。
まぁ、今回は結果的にそれが功を奏した訳だけど。

「じゃあ、パーティを組むことになった訳だし、お互い自己紹介しよう。 その時に、自分の好きな物を上げていく、という事で。 トラウムからどうぞ」

えっ?
っていうか、自己紹介とか、何それ?
学校か?

「え、あたしから? えっと、トラウムと言います! 好きな物は子供とお花で、ガーデニングが趣味、学校は教育学部小学課、サークルは茶道部に入ってます。 あと、お菓子作りも好きで、最近は天然酵母のパン作りにハマってます!」

「…。」
「…。」

俺と龍真は絶句していた。
なに、その、まっとう過ぎる自己紹介。 学校か?

「トラウムさん、君、もしかして、宇園大学の学生…?」

ムラサメ氏も呆然とした口調で、そう呟いた。

<続く>

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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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