女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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リヴァイアサンズ・メルヴィレイ(35)

「それでは、入山試験を始める! 明日のイベントに参加を希望するものは、我々にハーフデュエルで挑んでみよ! それ以外の方法を選択するものは、全て反逆行為と見なす!」

ハーフデュエル…。
体力半減で決着の付く戦闘か。

「おいどうする、り…いや、バール、やるのか」

俺はタブレットから顔を上げて、龍真に問うた。
てか、リアルでアバターネームを呼ぶの、マジで恥ずかしいな…。

「頼む、レオ。 まず試験で勝たない事には、道も開けないからな」
「…怖いよ、バールくん。 何なのこの人たち」
「心配するな、トラウム」

…よし。

「じゃあ、その試験、俺がやるぜ!」

俺はヘッドセットのマイクを摘んで、口元に寄せ、そう叫んだ。

「良いだろう。 おい、誰か相手してやれ」

すると、サムライじゃなく、騎士系のアバターが俺の前に現れた。
こいつらレッドプレイヤーは大抵そうだけど、顔を覆う装備を好んで装着する。
実際に対戦してみるまでは、どんな奴なのか分からないのが不気味だ。

「…調子良さそうじゃないか、レオ」

だが相手は、俺の名前を知っていた。



「!?」

一瞬動揺したが、シングルチャットで語りかけてきた、相手プレイヤーの名前は…。

「Bara」。

まさか、南原先輩!?

「何で、ここに…!?」

以前とは全く異なる装備を纏い、だがいつもと同じ口調で、南原先輩は飄々と答えた。

「ま、いろいろあってだな。 一時的に、俺たちもこのギルドに入れてもらう事にしたんだよ」

「何で、ですか…? 先輩、マジでプレイヤーキラーだった、んですか…?」

驚愕のあまり、思わず漏れたうかつな発言。
それを聞いた南原先輩の口調が、堅く変化した。

「何だお前、俺の素性知ってたのか? それなのに黙ってたのか? 意外と食えねぇなぁ」

ま、いずれはバレるもんだけどな、と南原先輩は呟いた。

「じゃー話は早い。 レオ、俺たちの邪魔はするなよ、アイツみたいにな」
「先輩…!」
「だけど、先輩としてのよしみだ。 山には入れてやる。 お前のお仲間さんもな」
「…何が、目的なんですか? この人たちにくっついてて、何かメリットがあるんですか」
「それをお前が知る必要はねぇよ」

今まで聞いたことがない、南原先輩からの拒絶の声。
何で。
なんで、たかがゲームで、こんなにマジになってしまうんですか…?

「…おい、どうした、デュエルしないのか」

周囲では、俺たち以外にもデュエルが始まっていた。
だが、一番最初に名乗りを上げた俺がデュエルを始めないので、レッドギルドのリーダーであろう、例のサムライアバター「ヤツフネ」が語りかけてきたのだ。
彼に南原先輩が、明るい口調で返す。

「いやぁ、ヤツフネさん、こいつ見た顔だと思ったら、前回のイベントの準優勝者だったんですよ」
「準優勝者?」
「ええ、前回のイベントが、PVPのバトル大会だったもんで。 だからわざわざデュエルする必要ねーな、って分かって」
「ふぅん…」

だが、そのヤツフネというサムライアバターは、予想だにせぬ申し出をしてきた。

「なら、俺と戦ってみるか、小僧」

…小僧て。
てか、サムライになり過ぎって言うか、キャラ作り過ぎだろ、コイツも…。

「おい、ヤツフネさん、デュエルの必要は!」
「それだけ強い奴なら、むしろ戦ってみたい。 お前が怖じ気付いているのなら、俺が代わろう」

庇ってくれたつもりが、最悪の展開じゃん、先輩!

「でも、アンタと戦っても、俺にメリットないんだけど」
「あるとも、山に入れるぞ」
「負けたらどうなるのさ」
「その時は、山に入れない」

…マジで最悪だな、コイツ! 
っていうか、レッドギルドのリーダーとかにマトモな奴が居る訳ねーんだけど!

「分かった。 …デュエルは、ハーフだよな?」
「デスペナルティモードでも良いぞ」
「冗談言わないでくれよ、俺、まだ装備が貧弱なんだぜ」

相手の装備の統一感からして、おそらく、かなり強烈な性能の装備である事は疑いがない。
さっきのアバターが即死した事から考えても、圧倒的過ぎる攻撃力を持っているはず。

「まぁ、よかろう。 失望だけはさせてくれるなよ」
「…分かった」

「おい、礼雄、大丈夫か」
「礼雄くん、大丈夫?」

俺たちのやりとりを聞いていた龍真たちが、リアルで心配してくれる。
龍真たちも、まさか敵のレッドギルドの中に、俺の知り合いが居て、敵ボスと戦闘になるとは想像もしてなかっただろう。

「分かんね。 でも、やるしかねぇ」

画面には、既にデュエル申請の画面が出ている。

「悪い、ちょっとしばらくの間、声を掛けないでくれな」
「…?」
「集中したいんだ。 戦闘に」
「…分かった、存分にやってくれ」

俺は頷くと、デュエル申請の「はい(Y)」をタップする。

「DUEL START!」

ゴーサインが出ると同時に、俺の意識はスマートタブレット内の世界に集中し、同化した。

敵の侍アバター「ヤツフネ」の武器は、日本刀を模した両手剣。
つまり、キリエと同様にガードが不可能。
懐へと入り込めばダメージを与えられる。

ただ、キリエと異なり、奴はリーチが圧倒的に長い。
当然、敵としては付かず離れずのヒットアンドアウェイが基本戦法となるだろう。

「どうしたもんかね…」

俺は周囲を旋回しながら様子を見る。

「どうした、こないのか!? ならば、こちらから行くぞ小僧!」

だが、相手は圧倒的なリーチ差を持つにも関わらず、間合いを詰めて切り込んできた。

…え、コイツそういう性格なの?

突き攻撃をガードしようとする…が、タイミングが遅れ、一撃を喰らう。

「!」

「突き」一発だけで、体力ゲージの1割が減る。
だが、次弾の「小手」はガードが間に合った。
奴はそれを見ると、立ち位置を変えてからの「面打ち」、「抜き胴」へと繋いで来て、最後には実際の剣道にはない「太股斬り」へと連携させてきた。

ガッガガガと盾に火花が飛び散るが、俺がそれ以上ダメージを喰うことはなかった。

…っていうか、今の太股斬りは下段攻撃だったんじゃないか? よくガードできたな、俺。

「マルチシールドか、貴様!」

…ああ、やっぱりそうか。
この課金装備「ナイトシールド」は、「上段+中段」「中段+下段」と、二カ所を同時に防いでくれるんだ。
さっきの曖昧なガードで、よく防御できたと思ったんだよな。

ビュビュビュ、ヒュゴアアアアッ

「これでも喰らえ!」というヤツフネの言葉と共に、さっき新参を即死たらしめたブレードアーツが襲う。

上・中・下段の突きと両袈裟斬りと切り上げ、そして止めの突き。

「(…おっと!)」

ガガガガッ、と再び激しい剣裂音が盾を鳴らす。
敵の剣筋の判断には多少危うい部分もあったが、またもナイトシールドのおかげで、無事ガードしきった。

「(にしても、こいつ…)」

ネトゲの中には本当にいろんな奴が居る。
俺は今まで、侍キャラのなりきりっぷり、独占というネトゲの慣例にいち早く気づいたことから、こいつは効率を優先するベテランゲーマーだと思っていた。

「ならば、これはどうだ!」

今度は、変測的な6段攻撃のブレードアーツ。
ガードのし過ぎでスタミナが大幅に削られる。

だが、ベテランとは思えないほどに闘争心が強い。
こいつは、他人と戦いたいからこそPKプレイヤーになり、そしてレッドギルドを指揮する事になったのではないか、と思わせられた。

俺は、敵のブレードアーツ終了の隙を見計らい、手持ちの技の中で最も出の早い「喉元突き」で反撃する。

「(…何ッ!?)」

攻撃はヒット。
追撃で「水平斬り」も入れようとしたが、わずかに届かず空を斬る。
その隙に、「ヤツフネ」はバックステップで距離を取った。

攻撃は当たったはずなのに、ごく僅かしか削れなかった。
やはり、敵の防御力は想像以上に半端ない。
なのに、俺が一発で1割減ってるんだから、ガードをミスれば一撃で勝負は付く。
こりゃ、ほぼ勝ち目はねぇな。

再びヤツフネは、嵐のような攻撃を繰り出し、俺はそれを凌いで隙を見いだす事に集中する。

「(…この侍ヤロー、調子にのりやがって!)」

この「ナイトシールド」、マルチガードなのは本当にありがたいのだが、「大きいので重い」という設定も付いているのか、ガードするまでに少しモーションラグがある。

初っぱなに突きを喰らったのはそれが原因だが、モーションラグが俺の時間感覚とマッチしなくて、さっきから「ジャストガード」を試みているのだが、全く発動してくれない。

「(…まさか、マルチガードだと『ジャストガード』できない、って事はないよな)」

敵の攻撃の終了後に、反撃の一撃を出すが、確定できるのは一発だけで、追撃までは届かない。

「はっは! どうした、全く効かんぞ!」

やっぱり、まとまったダメージを与えるためには、ジャストガードからのカウンターしかない。
あの連続攻撃に対して、ガードのタイミングをズラすのは自殺行為に等しいが、やるしかない。

「(フレームを手に入れろ)」

…かつて、鶴羽先輩がよく言っていた言葉。
60分の1秒。 その世界の時間感覚に介入し、動き、相手を制してアドバンテージを握る。

俺はさらに過集中すると、ブレードアーツ最中の敵の連携…。 その最後の大技に合わせて、ガードを入力し直した。

キィン、と高い音と立てて、ナイトシールドの「ジャストガード」が成功する。
ゲーマーとしての感覚で、ナイトシールドのジャストガード入力受付時間は、3フレーム以下だと直感する。

もう、このチャンスは逃せない。

指が反射的に盾アイコンを叩き、連携技「シールドパリング」で、体勢が泳いだ相手の武器を盾で弾き、さらに体勢を崩す。

…ここだ!

俺は、ついに登録していたマクロコンボ、ユーズが使用していた「ブレードアーツ」を発動させた。

喉元突き、水平斬り、逆水平斬り、上段袈裟斬りの4連続攻撃。
コンボが終わっても、俺は下段足払い斬り、逆水平斬りと連携を続ける。 

「やるな、小僧!」

だが俺の連携は、ノックバックから立ち戻った、ヤツフネの小技に弾かれ相殺される。
俺は慌てて距離を取るが、今のまとまった攻撃で、なんとか小技1発ぶんくらいは減った。

「この俺の攻撃に、初見でここまで対応し、なおかつ反撃できるとはな! 見上げた奴! だが、遊びはこれまでだ!」

…ここからが本番だな。
今までは舐めプしてたけど、ちょっと本気を入れて遊んでやろう、って気が満タンだ。

「いざ受けよ! 転位! 抜刀! 自在斬り!」

ヤツフネが浪々と述べあげた、必殺技発声。
何が「転位抜刀自在斬り」だよ、と思ったが…。

「…!?」

それは、俺の想像外の動きだった。

俺を突きで固めると同時に移動し、フェイントをかけつつ移動、そこから斬りに派生し移動。

「(…何だ、これ!?)」

斬り、移動、斬り移動斬り移動斬り移動。

周囲をめまぐるしく旋回しながら、断続的にあらゆる剣撃を見舞うという、新種のブレードアーツ。

…そうか、これはショートダッシュとキャンセルを混ぜたブレードアーツなのか。
それを複数個組み合わせることで、途切れる事のない、高速の移動攻撃を実現している。

後ろに回り込まれてからの下段攻撃、側面に回っての上段攻撃。 いずれも、片手剣の攻撃範囲外の間合いをキープしつつ斬り込んでくる、嫌らしい攻撃だ。

「どうした! 俺の『転位抜刀自在斬り』には、手も足も出ないようだな!」

だから何だよそのネーミング、と思いつつも、俺はこいつが羨ましく、多少悔しかった。
こいつはレッドプレイヤーだが、本物のゲーマーだ。
自分の作り上げた、オリジナルのブレードアーツを他人に試したくて、誇示したくて、幼稚な名前まで付けてしまう。

そういう「遊び方」なのだ。 こいつの。

それだけに、やられる側としては、悔しくてたまらない。
これほどまでに好き勝手に、意のままにやられるというのは、格闘ゲームでパーフェクト負けを喰らわされるのと同じくらいに屈辱で…。
でも、羨ましかった。

「…く!」

「ナイトシールド」を持っているのに、相手の攻撃を受けるだけで精一杯だ。
無理に反撃しようとして、体勢を崩しかけると、すかさずあの即死ブレードアーツが飛んでくる。
それはガードして凌ぐものの、相手の手数が多すぎて、徐々にスタミナが削られていく。

…『モンスターバスター』では、スタミナがなくなると、ガードが不可能になる。 同じ会社で作られたこのゲームでも、その可能性は極めて高い。

スタミナがなくなる前に、もう一度、「ジャストガード」を決める!
俺は意図的に僅かな隙を作り、敵のブレードアーツを誘う。

「死ねッ、小僧!」

…ここだ!

「凄 い ね 、礼 雄 く ん の 表 情 。 鬼 み た い だ ね」
「こ ら 、黙 っ て ろ と 言 っ た ろ」

だが、その一瞬、意識の埒外からそんな音が聞こえ、集中が途切れた。

「(…あ)」

敵の上段斬りをジャストガードで弾き返すつもりが、マイアバターの顔面に、深々とヤツフネの日本刀が食い込む。
そのまま返す刀で逆袈裟を斬られ、

「貰ったッ!」

最後に、あの新参を倒したのと同じ突き技で、豪快に吹き飛ばされた。

「…あ!」
「…!」

自分たちが声を出したのとほぼ同時に倒れるアバター。

「YOU LOSE!」

最後は、あっけないほどの幕切れだった。


<続く>

リヴァイアサンズ・メルヴィレイ(36)

「凄 い ね 、礼 雄 く ん の 表 情 。 鬼 み た い だ ね」
「こ ら 、黙 っ て ろ と 言 っ た ろ」

だが、その一瞬、意識の埒外からそんな音が聞こえ、集中が途切れた。

「(…あ)」

敵の上段斬りをジャストガードで弾き返すつもりが、マイアバターの顔面に、深々とヤツフネの日本刀が食い込む。
そのまま返す刀で逆袈裟を斬られ、

「貰ったッ!」

最後に、あの新参を倒したのと同じ突き技で、豪快に吹き飛ばされた。

「…あ!」
「…!」

自分たちが声を出したのとほぼ同時に倒れるアバター。

「YOU LOSE!」

最後は、あっけないほどの幕切れだった。

俺と、龍真と、のぞみさん…。
誰も何も言わなかったけれど、おそらく、皆全く同じ感覚を共有していた、と思う。

しくじった、と。

「ご、ごめんなさい、礼雄くん」
「すまない、礼雄…!」

龍真たちの驚愕した表情。

「いや…」

俺は放心したまま、続けた。

「今のは、偶然だよ。 たまたま、タイミングが一緒になった、だけさ」

「…」
「…」
「…」

だけどそんなはずはない、と、2人共に思っていた。
そう思っていたのが、俺には分かった。

「…」
「…」

微妙な空気が、居間に漂う。

…やっぱり俺は、リア充の前では、本気出せないな。
どんな表情をしてたのか知らないが、みっともなさ過ぎる。

だが、そんな空気などつゆ知らぬ「ヤツフネ」は、俺に近づいてくると、言った。

「おい、小僧…。 レオ、とか言ったか?」
「…何だよ」
「合格だ」
「は?」

え、合格? 俺? 山に入って良いの?

「もちろんだ。 多少戦い足りないが、面白かったぞ。 特別に許可してやろう」
「…そりゃ、どうも」
「何か、別のゲームで鍛えていたのか?」
「いや、そういう訳じゃないけど…」

龍真たちの前で、バリバリ生粋のゲーマーでした、とは言いにくい。 自然、俺は言葉を濁した。

「まあ、よかろう。 夜9時に、またここに来い。 その時に、貴様等の登頂時間を伝えてやろう」

だが、そこで龍真が割り込んできた。

「ちょっと待ってくれ。 入山料というが、その言葉をどう担保する? 金だけ払って逃げられる可能性を、どうやって払拭したら良い?」
「心配するな、入山料の代わりに、移動用の課金アイテムを渡す。 我々の仲間の所にワープするアイテムだから、入山は可能だし、我々も逃げられない」

なるほど、それならOKだな。
明日、山の麓が戦場になってるのをかき分けて進まなくても良さそうだし。

だが、別な意味で龍真も同じ事を考えていたらしい。

「では明日、何も知らずに集まってきたプレイヤー達はどうするんだ? 僕らが勝手に入山の順番を決めたとしても、一般プレイヤーは山に入れろ、と大挙して攻め込んでくるぞ」

だが、その妥当な推測を、ヤツフネは鼻で笑い飛ばした。

「このイベントのカラクリに気づきもしない奴が、何人群れて来ようと、物の数ではないわ」
「…」

俺たちはその発言を聞いて押し黙ったが、本当にそんな事ができるのか、は疑問だった。
確かに、明日集まる連中は、ネトゲ慣れしてない奴らだろうけど、数百人近いプレイヤーを鎮圧できるとは、とても思えないのだが…。

「まぁ、分かった。 じゃ、また9時にここで良いんだな」
「ああ。 遅れずに来るんだぞ」

南原先輩達は、別な誰かとデュエルしていた。
デュエル時はシステム的に保護されていて、外から見るとその場で半透明状態になっており、当たり判定が全て消失しているので、全く干渉できない。

…しかし南原先輩、ソロでも強いな。
まぁデジ研の人間だから、並の人より強くて当然だけど。

「おい、礼雄、行こう。 村に戻って準備をしよう」
「ああ、分かった」

行きはダッシュを駆使して走り続けた俺たちだったが、帰りはまったりと…途中でイノシシ等を狩りつつ戻る。

「なあ礼雄、ああいう独占は、本当にネトゲではよくある光景なのか」
「あるよ。 酷くなれば一部のプレイヤーが延々と陣取ってて、もう二度と入れない、ってこともある」
「本当か…まさに『囲い込み』だな。 で、こういう場合にはどう対応するんだ?」
「まぁ、運営に報告して、BANして貰うのが一番かな」

俺はそう言いながら、道中でイノシシに対し、無造作にユーズのブレードアーツを繰り出す。
イノシシは、その4連撃でピッタリ沈んだ。

「そうか、じゃあPKも含め、無法者を取り締まる警察組織は本来、システムの外側、運営の対応に依るのか…。 それは困ったな」
「何が困るんだ?」
「ゲームの進行が運営対応に左右される、って事だ。 例えば、運営は今日みたいな限定イベントに、細かく対応してくれるもんなのか?」
「いや…」

それは無理だろうな。
そういうマメな運営には、お目にかかった事がない。

「だろう? 僕もそう思う。 何万人ものプレイヤー、その全ての要望に耳を傾ける事はまず不可能だ。 だから、ゲーム内の外側じゃなく、システムの中に、ああいうPKプレイヤーをどうにかする方法があると思ったんだが…」

そういや、こないだもゲーム内に警察機構がないとおかしい、って言ってたな。

「そうだ。 システムの内部に調停機構がないと、こういう細かいトラブルに対応できない」
「それもそうだな。 ってか、前に運営に要望メール出してたから、家に帰ったら、返事が来てないかチェックしてみるよ」

カプリコンへの要望は、オリオンの爆弾テロがあった次の日に、下宿のノートPCで出している。
どうしてもPK重視になるシステムを根本的に改善してくれ、ゲームにならない、とそう書いて。

「ああ、そうしてくれ。 でないと、また今回みたいに、PKプレイヤーが幅を効かせることになる」
「確かにな」

てか、今回のイベント、誰でも入れるインスタンスマップにすれば、こんな事起こらなかったと思うんだけどなぁ…。 運営は、何考えてんだか。

俺たちが黙った時、のぞみさんが割って入ってきた。

「あ、あの…礼雄くん、さっきはごめんね、変な事言って」
「いや、のぞみさんのせいじゃないよ、相手の攻めが厳しくて、受けきれなかっただけなんだ、本当に」
「…本当に?」
「本当だよ」

龍真の目の前じゃ、「ちょっとは動揺した」とか間違っても言えねーしな。

「でも凄いね、礼雄くんの動き。 ゲームの中で、あんなに自由自在に動けるなんて、ちょっと驚いちゃった」
「…そうだな、礼雄。 僕もこないだから驚かされてるんだが、ゲーマーってのは、皆、あんな反応速度で動けるもんなのか?」
「反応速度?」
「そうだ。 ゲームの中で敵の攻撃を瞬時に判断して、受けて反撃とか、普通の人間にできる事じゃない」

…え? ある程度練習すれば出来るだろ。

「いや、無理だ」
「うん、どう考えても無理だよ」

あ、えーと、一般の方はそうなのかな…。
てか、そこらへんはあまり真面目に考えたこと、なかったな。

「…そこらへんは、野球選手やボクサーと同じじゃねぇかな、ゲームで動態視力や反射神経が高まった結果、みたいな」

俺が曖昧に返事するも、龍真は訝しげだった。

「ボクサーは、パンチが打たれる前の筋肉の予備動作…『おこり』を読んでるから避けられる、という話がある」

龍真が言うには、ボクサーのパンチは0.05秒で相手に届くから、完全に見てからは絶対に避ける事ができない、んだそうだ。

「だが、ゲームキャラの予備動作は、人間のそれと比べても、極端に短いだろう? 比較にもならないぞ」

動態視力だけじゃ説明がつかない、と龍真は言う。
いや、言われてみれば、そうかもしれないけど…。

「で、実際、あの攻撃をどうやって捌いてるんだ?」
「どうやって、って…。 そうだな、ずっと対戦していると、なんとなく分かるんだよ。 相手の考えが。 なんというか、この時この場では、この技を出すしかない、みたいな…」
「本気で言ってるのか、それは」
「本気だけど」

龍真は、苦笑しつつ言う。

「相手の考えが分かるとか、まるでエスパーだな」

僕らが真似できる領域じゃなさそうだな、と龍真は言い、俺も止せよ、と苦笑いしつつ言った。

でも、対戦の要訣は「読み合い」と言う。
だから、相手の考えを察知するという意味では間違ってないはずだけど…。

「ま、とにかく9時まで、装備を整えてようぜ。 多分すぐに時間経ってしまうからさ」

そんな喋りをしている間に、ネージュ村に着いたので、俺たちはイベントの攻略準備をする事にした。


<続く>
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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