女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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リヴァイアサンズ・メルヴィレイ(28)

DATE : H27.1.24
TIME : 7:25
STID : 00941724

水曜日、今日の目覚めは最悪だった。
後期試験がボロボロ、単位取れなくて留年、という夢を見て「うひょえあっ!?」と奇声を上げて飛び起きたのだ。

「夢か…良かった」

カレンダーを見、まだ後期試験は始まってないのを確認して、ホッとする。
…にしても、来週提出の福祉総論のレポート、どうしよう。
一人で取り組むなら、教科書(※しかも伊庭教授著)をガッチリ読み込んで、趣旨に沿った物を書くしかない。 
だけど、自分の考えを表現する中で、教授の主張から大きく外れる事を書いたら、減点は必至。
…やはり、誰かにノートを借りるのは必要不可欠だ。

俺はそんな事を考えながら身支度をし、階下に降りていく。

「あ、おはよう、礼雄」
「おはよう、あかり姉。 おはようございます、小夜子叔母さん」
「おはよう礼雄くん、友達のところで勉強はできた?」
「いやぁ、自分としては取り組んでる所なんですけど、あまりに出来なくて叱られました」

俺は軽い感じで、ハハハと笑い飛ばしたのだが、あかり姉と小夜子叔母さんは笑わなかった。

「…ねぇ、礼雄、大丈夫? 私、礼雄のご両親と、生活態度についてちゃんと視る、って約束したの。 その友達…ホントに居るのよね。 前みたいに遊んでないよね」
「いやいや、あかり姉ちゃん、信じてくれよ! 本当だって!」
「じゃあ、そのお友達の名前は、なんて言うの?」

…うわ、そこまで聞かれるのか。
俺の生活態度に対する信用度0だな、これ。

「えっと、藤宮。 藤宮龍真って法学部の奴。 同じ高校の同級生で、超頭イイんだよ」
「リョウマくん、ね。 覚えたぞ」

「…っていうか、勉強の邪魔になって、困ってる問題が別にあるんだけどさ」
「何なの、それ?」
「ほら、恵方海苔巻き。 あれからずっと、知り合いにお願いして回ってるんだけど、全然捗らないんだ。 このままだと、ノルマ達成できないんだよ」
「うー…そ、それは…。 ご、ごめん」

すると、小夜子叔母さんが朝食…味噌汁、出汁巻き卵、卯の花の和え物を次々にテーブルに置きながら、

「礼雄くん、私は学生にノルマを課すようなバイトをするのがどうかと思うけどねぇ」

と忠告してくれた。
でも、ノルマのあるバイトはどこでも結構あるっぽいんですけれど…。

「まぁ、そうだね。 そういう話は良く聞くね」
「それで…ちょっと考えてる事っていうか、叔母さんにお願いしたい事があるんですけど」
「私に? 何かしら?」
「えっと…。 グループホームとか、お年寄りの集まる所を経営してる人に、知り合いがいらっしゃいませんか?」
「どうして? …まぁ、居ないこともないけど」
「本当ですか!? そこで営業させて貰えれば、凄く助かるんですけど」

俺がそう言うと、小夜子叔母さんは驚いた様子で目を見開いて、しばらく考えていたが…。

「うーん、確かに、お年寄りは海苔巻きとか好きそうだしね。 お願いしてみようか?」
「是非お願いします!」
「夕方までに連絡しとくから、晩ご飯までに帰ってきてね」
「分かりました、助かります!」

そういうと、小夜子叔母さんは再び食事の支度へと戻った。

「礼雄、後で小夜子叔母さんにお礼しなきゃダメよ。 叔母さん、本当忙しいんだから」
「分かってるよ、子供じゃねーんだし」
「礼雄のそういう軽い所が、なんか不安なんだよなぁ…」

というか、もしかすると、話は付けてくれるけど、俺一人で営業に行くのかな。
小夜子叔母さんは来ない…んだろうか?

「じゃさ、あかり姉も来てくれない? 俺も、自分一人じゃ不安なんだ」
「ええ!?」
「な、頼むよ。 いとこの学業のために一つ! 節分は恵方海苔巻き、奢るから!」

「うー、じゃあ…。 しょうがないなぁ、礼雄」
「ありがとう! さすが頼りになるよ、あかり姉!」
「そうかな、へへへ…」

そう言って、あかり姉はほわんとした笑顔を浮かべる。
そして俺たちは、小夜子叔母さんの朝食を談笑しつつ頂いた。

「あ、今日の運勢、私最高みたい」

テレビの占いコーナーを見ながら、そんな事をあかり姉が言う。

「へー、俺は…なんだ、獅子座は最悪じゃん」
「そんな貴方のお助け行動は…他人に親切にする事、だって。 叔母さんにはお礼言ってね」
「分かってるって、あかり姉。 …ごちそうさまでしたー」

朝食を済ませると、俺たちは朝の支度を整えた。

「んじゃあかり姉、行ってらっしゃい」
「礼雄もね。 じゃあ行ってきまーす」
「行ってらー。 じゃ、すいません小夜子叔母さん、行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい。 夜には良い報告できるように頑張っとくよ」
「ありがとうございます、よろしくお願いします!」

そんな会話をしながら、俺は今日も大学への道を自転車でひた走った。


DATE : H27.1.24
TIME : 11:45
STID : 00941724


午前の2限目、越智教授の「環境経済論」でまたも波乱が起こった。

「例年は試験を行っていましたが、今回はレポート提出を行います。 テーマは『カーボンニュートラル』について。 地球温暖化、アボガドロ定数、原子力の代替策としての火力発電、メタンハイドレートなど、ホットな要素満載ですので、しっかり書いてきて下さいね」

えー、という悲鳴に似た声が生徒の間から上がる。
俺の心中も似たようなもので、

マ ジ か よ …。

が最初に出てきた感想だった。
環境経済論は身近なネタが多かったので、割と理解しやすい内容だった。
だけど、「カーボンニュートラル」は聞いた事がない。
まだ俺がネトゲに熱中していた頃、昨年の末あたりに講義してた内容だろう。
そして悪い事に、今年からレポートという事は、昨年の例はないよという事に他ならなかった。

「ねぇ、どうするー?」
「やっぱ、ノート誰かに借りようよ、カナコとか持ってないかな」
「あー、ありそうだよねー、カナコに借りようよ」

そんな事を言いながら、学部の皆がゾロゾロと退室していく。

「(塩谷はいないかなぁ…)」

俺は出口周辺の席に座って、鞄の中の携帯を探すフリをしながら、唯一学部で面識のある知人の姿を探すが、見あたらない。

ちなみに「何で友人と一緒に講義受けないの?」と疑問に思う読者が居るかもしれないが、先輩方から単位が取りやすいと言われた講義を、なるべく固めて(=休みができるように)履修登録した、うかつな結果だ。
言わせないでくれ。

だが、最後の一人になっても、塩谷とその友人、根越の姿はなかった。
あいつら、この講義は取ってなかったのか。
それとも、1年の時に早々に取ってしまったのかもしれないなぁ…。

やべー、マジでやべーよ。 これどうすんだよ…。

「きゃ」

誰も居なくなったので、仕方なく戻ろうかとした矢先、誰かが俺の脇を通り抜けようとしてぶつかり、俺たちは荷物をぶちまけた。

…え、まだ人居たの?

「あ、すいません…!」

そこに居たのは、やたら背の低い、小柄な感じの可憐な少女…いや、大学生。
20歳にもなろうかというのに、ふりふりで可愛らしい感じのワンピースと、暖かそうなウールのカーディガンと厚底の靴。
肌はやたらと白くて、巻いた髪は茶色に近いほど薄く、細い。

「すいません、失礼しました!」
「いいですっ!」

だが、その娘(多分俺と年はそんなに違わないだろうけど)は、謝った俺に一瞥をくれるでもなく、床に散らばった自分の教科書とノートだけを拾い集め、網目模様の手提げ袋に詰め込むと、「失礼しました!」と言って、逃げるように出口へと駆けだした。

…。
うわぁ、傷つくなぁ。
謝ってるんだから、もうちょっとリアクションしてくれてもいいだろ…。
俺、そんなキモいかな…?

俺は傷心のまま、床に散らばった自分の教科書とノート、筆記用具を拾い集めるが…。

「あれ?」

俺のノートじゃないのがある。
同じ大学生協で買った奴だから間違ったんだろうか。
しかも、表紙には可愛い字で名前が書いてあった。

「茅原 琴莉」…かやはら、ことり。

さっきの娘の名前か。
ことりちゃん、って言うのか。

…そう思った瞬間、俺は猛烈に中身が見たい、という衝動に駆られた。

別に変な意味でじゃない。
さっきの彼女は、今時の女子大生っぽくなく、格好も割と地味で真面目そうな感じだった。

ならば…この娘のノートには「環境経済論」の講義内容がまとめられているんじゃなかろうか?
これが…この中身があれば、単位はもらったも同然。

でも…勝手に人のノートを見て良いものか。
強烈な葛藤に襲われたが、俺の右手は勝手にスマートタブレットを鞄から取り出し、「カメラ」アプリを起動した。

「(彼女が帰ってくる前に、速攻で接写すれば問題ない)」

心の中で響く、悪魔の誘惑。

「(でも…。 忘れ物に気づいて、彼女が戻ってくるかもしれないだろ? そんな事をして、ノートを写真に取ってる所を見られでもしたらどうする)」

対抗する、天使の囁き。

「(どうせ、面識も何もない相手なんだ、嫌われてもどうってことないさ)」

粘る悪魔の誘惑。

「(どうせこいつぼっちなんだしな、イヒヒヒヒ)」

という声が聞こえた所で、「…ごめん!」と俺は、あの娘のノートを開いた。


「…何これ」

だが俺は、違う意味でそのノートに釘付けになった。

「2056年、世界は核の炎に包まれた。 だが人類は死に絶えてはいなかった!」

そんなタイトル…いや、煽り文? から始まる謎の文章。

「世界は核爆発と地殻変動と火山爆発によって生じた火山灰により、ぶ厚い雲に覆われ、死灰の雪が降り続く暗黒の世界と化した。 無限に広がる銀世界、既に廃墟と化した人類の遺産群を背景に、残された人類と異形天使『天装騎兵(アウゴエイデス)』との生存を賭けた戦いが始まる。 人類は絶滅の一途を辿る中、戦災孤児となった少女は、残骸となった教会の前で、片羽の天使を見つける。 それは見目麗しい、プラチナブロンドの美少年だった…」

な ん だ 、 こ れ … ?

カメラを片手に持ったまま、俺は固まった。
明らかに見てはいけないノートだった。 別の意味で。

でも、俺はうかつにもぺら、とページをめくる。

そこから先はさらに見てはいけないページだった。

その先には、ノートに書かれた小説? 妄想? …の、登場人物の絵が描いてあった。
しかもその主人公らしき、「片羽の美少年天使」の上半身は何故か裸で、その周囲にはびっちりと設定が書き込んである。

うわ、こりゃヤバいわ、ある意味マジで核の炎だわ、と思った瞬間、最悪の事態が起こった。

バターンと大講義室2の出口扉が勢いよく開かれ、「何してるの、貴方…?」という声が教室に響いたのだ。

俺はその声を聞いて、凍り付いた。
「それ、私のノートよね!?」という声が怒りで震えまくっていたからだ。

恐る恐る顔を上げると、これ以上ないほど…。
さっきの可愛らしい感じからは想像もつかないほど眉間に皺を寄せ、まさに悪鬼の形相で、さっきの娘は俺の方につかつかつかと近づいてきた。

そんな厚底の靴で足早に歩くとコケますよ…。

と思ったのも一瞬、「勝手に人のもの見ないで、馬鹿!」とノートをひったくられ、返す刀で、

ぶあぁっちーーーん

と脳内に大音量で響く平手打ちを喰らった。
俺がその勢いに思わずヨロけ、床に崩れ落ちたほどだ。

「…最っ低!」

その娘はそう捨て台詞を残すと、ツッカツカツカと甲高い足音を立てて、またも速攻で大講義室を出ていった。

…こんどこそ、俺は一人になった。


「なんなんだよ、これぇ…」

それが思わず口から漏れた、今日の運勢に関する俺の素直な感想だった。


DATE : H27.1.24
TIME : 17:21
STID : 00941724

その日の夕方、俺は大学の講義が終わるとすぐに下宿に帰宅し、小夜子叔母さんから、恵方海苔巻きの結果を伺った。

「先方さんに話を聞いたらね、実際に見て考えたいって事になっ…何だい、その頬」
「ああ、やっぱり酷いれすか」
「やたら腫れてるけど、どうかしたのかい!? 大丈夫!?」
「ええ、大丈夫れす…。 あてて…。 でも、実際に見て考えたいっても、実物は節分にならないと届かないれすけど」

頬が腫れて、ちょっと喋りにくいのが伝わったか、小夜子叔母さんは冷蔵庫から、ジェル冷却シートを持ってきてくれた。

「これ張っておきなさい。 …チラシとかはないのかい?」
「あ、もうそりゃいくられもあります。 チラシの下が申込書になってるんれすよ」
「じゃあ、それで説明しようかね。 話に行くのはなるべく早い方がいいだろうけど、いつにする?」

…とはいえ、もうあまり時間はない。
時間割を頭に思い浮かべながら考えたが、まとまった時間が取れるのは、明日、25日(木)の授業終了後から、深夜バイトに行くまでの間くらいしかない。

「…しゅいません、じゃら25日の学校が終わってからで良いれすか?」
「学校が終わってから? 午前中は無理なのかい? 下宿生の食事の支度があるからさ」
「あ、しょうですね…」
「ウチのボンクラにもっと甲斐性があれば、カレーで済ませる手もあるけど、配膳すらできないと来たもんだからね」

そう言って、小夜子叔母さんは苦笑する。

後は深夜バイトの終わった後、26日(金)の午前中くらいだが、そこは流石に睡眠に充てたい。
午後からの講義で、試験内容を聞き逃したら致命傷になる。

「すいません、ちょっと無理しょうなんれすが…」
「じゃあ仕方ないね、あかりちゃんと二人で行っておいで。 先方には私からよーく考えるように伝えておくから」
「あ、ありがとうございましゅ!」
「見た目は結構迫力あるけど、中身は良い人だからね。 気圧されず食いついていきなさい」
「は、はぁ…」

そうして、小夜子叔母さんは下宿生の食事の支度をしに厨房へと戻った。

俺は小夜子叔母さんに改めて礼を言うと、18時からのバイトに向かうべくチャリに乗る。

「(レポートあるから、来週からのシフトはちょっと空けてもらいたいな…)」

試験はおそらく2月17日あたりまで続くから、そこまでは軽めのシフトで済ませたい。
週末にシフトの組み替えはあるから、今日言っとかないとダメだろうな。

そんな事を考えながら、俺はチャリで勤務先であるコンビニまでの道をかっ飛ばし続けた。

<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

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