女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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リヴァイアサンズ・メルヴィレイ(25)

ズタズタに切り刻まれ続けるマイアバター。
その惨劇の最後に、キリエが高々と双剣を両腕に掲げ、

「エーックス!!」

二刀によるダブルの袈裟斬りを決めた。

「(…なんだそれ)」

かくして、マイアバターは遂に倒れた。
と同時に、横から流れてくる「YOU LOSE!」の文字、一瞬の間を空けて飛び込んできたリザルト画面。
炎に彩られた二人のファイティングポーズ、それが俺の方だけ急に色あせ、炎に包まれ燃え尽きる。

そして、燃え残ったキリエのドヤ顔がデカデカと表示され、その上にカノンちゃんが飛び込んできて、可愛いファイティングポーズを決めると共にアナウンス。

「こんっぐらっちゅれいしょーん! おめでとうございまーす! イベント『剣闘士の祝宴』優勝者は、キリエさんに決定いたしましたぁー! あらためてぇ、おっめでっとうございまぁーす!」

それを聞いた俺のリアクションは、はぁあ、というこの日一番のため息だった。


負けた。
問答無用で負けた。
圧倒的な力の差、だった。

まさか、こんな強い奴が出てくるなんて。
この「キリエ」、もしかすると「マキア」よりも強いかもしれないなぁ…。
てゆーか、ネージュには「アーツクルス」って廃人プレイヤーも居たんだっけ。

うわぁ、こいつらと戦って勝てる気全然しねぇ。
地方でこれなのに、央都とかでやってけるのかよ…。

「優勝者のキリエくんには、賞金の500、000Cen、準優勝者のレオくんには、100、000Cenが贈呈されまーす! おめでとうございます!」

ちゃりりりーんというSE。
どうも、勝手に所持金がプラスされてるようだ。
…表彰式とかはなさそうだな。

「また、レンタルアイテム類は回収させて貰うと共に、皆様の装備をお返ししますね!」

俺はそれを聞いた途端、即座にステータスウインドウを空け、最後に1つ残っていた「レンタル回復薬スーパー」を急いで飲んだ。

と同時に、闘技場、観客席のアバターが皆発光する。
画像の処理落ちで少し重たくなりながらも、体力ゲージは7割までゆっくり戻る。 どうやら、薬での回復は間に合ったらしい。
トラウムさんが居るから意味はないけど、せっかく買ったんだしな。

そして、アバターの発光現象終了と共に、ステータスには参加前の装備…龍真から貰った、初期の課金装備が装着されていた。

…この装備には、もうおさらばだな。
稼いだ100,000Cenで、装備を充実させるか。
でも、勝てれば500,000Cenだったのにな。

「ありがとう、皆さーん! 『剣闘士の祝宴』、イベントお疲れさまでしたー! 気をつけて帰ってねー!」

すると、ズズズと闘技場の中央に、俺たちが飛び込んできたのとは桁違いのサイズの「オベリスク」が地中から現れた。

あれに飛び込んで帰れ、って事か。
なんだか、イベントの終わりはやたらとあっさりだな。

「よう、レオ」
「?」

そんな事を考えていたら、いきなり誰かに話しかけられた。
顔の下半分が見える、髭面のヘルメット男は…。

「俺だよ俺、『アマダム無双』だよ。 お疲れさん、準優勝おめでとう」

そう、予選終了後に「賭け」の事について教えてくれた、気さくなオッサンだ。

「あ、どうも、わざわざありがとうございます…!」
「…あれ? お前、本当に『レオ』なんだよな?」
「ええ、そうですけど」
「さっきまで、『キリエ』と決勝で戦ってた?」
「そうですけど、それが?」

アマダムさんは、そこで言葉を切ると、

「その装備…。 お前さん、まだビギナーなのか!?」

と感嘆した様子で言った。

「ええ、まぁ、そうです」
「にしては、ウチのキリエと良い勝負してくれたじゃん! 決勝戦はちょっとハラハラさせられたぜ」
「!?」

”ウチの『キリエ』…?”

この人…。 キリエの友人だったのか!?
じゃあ、この人が賭けた人ってのは…。

「おーい、アマダム。 ここに居たのか、早く帰ろうぜ」
「お、キリエ。 ちょうど良い、挨拶していけよ」
「誰とだ」
「お前の決勝の相手だよ」
「ああ…お前か、レオ」

画面の外からやってきたのは、先ほどまで剣を合わせていた、「黒の双剣士」キリエ。
戦闘中、さんざロリコンだのおっさんだの煽っただけに、何を言い返されるか…とちょっと身を固くしたが、

「レオ、決勝戦、なかなか楽しかったぜ。 片手剣使いで、俺にあそこまで食らいついて来たのは、お前が初めてだよ」

案外フレンドリーな口調で、そんな事を言ってきた。

「それは…どうも」
「あ…いや、2人目かな。 とにかく、おかげで良い闘いになったぜ。 盛り上がったし、十分に稼げたしな」

「…稼げた?」
「龍真!?」

いつの間にか、近くに来てた龍真が会話に割り込んできた。

「どういう事です? 賞金以上に課金していた貴方が、なぜ『稼げた』んですか?」
「レオ、誰だこいつ」
「あ、俺の友人です。 バールハイトって言います」
「しかし、賞金以上に課金してたって、よく分かったな」
「質問に答えて下さい、キリエさん、アマダムさん」

その質問に、キリエとアマダムさんは黙っていたが、

「…おい、アマダム」
「んー、これくらいはサービスして良いんじゃないか」

アマダムさんは、そこで「稼げた」理由の種明かしをしてくれた。

「ほら、このイベント、『賭け』があっただろ? で、俺たちはキリエに全額を賭けてたんだよ」
「パーティメンバー全員で、限度額の4万円」

「な…!?」
「…!」

絶句する俺と、息を飲む龍真。

「まぁ、キリエのオッズが低かったせいで、それほど金になりそうなアイテムは出なかったんだけど」と、アマダム。
「ただ、目的の品は手に入った」と、キリエ。

俺は絶句するあまり、何と言えば良いのか分からなかった。
この人たち、最初から自分たちが勝つ前提で計画を練っていたのか。
しかし、何故「賭け」があることを知っていたんだ…?

「インサイダー…。 そういう事ですか?」
「おいおい、そこのバールハイトとかいう兄ちゃん、そんな物騒な事言うなよ」と、アマダム。
「そうだ、俺たちは自分の実力を信じていただけだ」と、キリエ。

インサイダーという言葉の意味はイマイチ分からなかったが、龍真は舌鋒鋭く迫った。

「でも貴方たちは、リスクはほぼ無いに等しいと知っていたんでしょう? それをインサイダーと表現するのに、何のの違和感もないと思いますが」
「言うね、バールちゃん」

アマダムさんは苦笑していた。

「ま、とにかく、事前に知り、対策を練った者が勝った。 ただそれだけさ。 じゃあな」

去ろうとした二人を、俺は呼び止めた。

「ちょっと待って下さい!」
「…何だよ?」
「その、インサイダーって何ですか? 何で事前にイベント内容を知る事ができたんです? それに、目的のアイテムって…!?」

この二人は、おそらく攻略法を知っている。
今日のイベントだけじゃなく、「リヴァイアサン」という、このゲームそのものの攻略を。
これは、ゲーマーとしての勘だったが、今ここでそれを聞き出しておかないと、後々大きく遅れを取るのは間違いない、そう確信した。

「あのな、只で教えると思うか? このゲームのマナーは、何事もギブアンドテイクだぞ」

だが、アマダムさんは、そう言って拒否した。

「なら、俺がたった今稼いだ、賞金の1万を渡します。それで教えて貰えませんか?」
「レオ! お前…!」
「いや、バール、ここは聞くべきだ」
「ほぉ、剛毅だな。…ま、いいか。 それなら種開かししてやるよ」

そう言って、アマダムさんが言った内容は、俺たちにとっては驚くべきものだった。

「これな、そもそも、このネージュ村で『アーツクルス』ってプレイヤーが最初に達成したイベントなんだよ」

そしてキリエが言葉を継ぐ。

「で、俺たちはこのイベントの内容を『アーツクルス』のパーティメンバーに聞いて知っていた」

このイベントは、片手剣がレンタルされる事。
自前の回復薬は許されない事。
予選が開催される事。
賭けが行われる事。

「双剣とブレードアーツを使えば、確実に勝てるイベントだってのは分かっていた。 ただ、そうと悟られないために、ちょっと手加減して遊ぶ必要はあったがな」

キリエが、悪びれもせずにそう言った。

「遊びすぎだろ、お前は。 …ま、バール君の言うとおり、やってる事はインサイダー行為に近い訳だ」

アマダムさんも、淡々とした口調でそう言った。

だが、俺は胸のむかつきを抑えられなかった。
自分たちが勝ちたいのは、誰しも同じだろう。
だけど、確実に勝てるイベントが開催されるからって、わざわざローカルな土地まで出張してくるなんて、ただの弱いものイジメじゃないか。

「あなた達ほどの強さがあれば、稼ぐ方法は他にあったんじゃないですか?」
「? どういう意味だ?」
「何故、皆の楽しみを奪うような事をするんです!?」

このイベントに期待していた人は一杯いたろうに、それじゃ結末は最初から決定していた事になる。
楽しく参加してた何百名もの人たちは、自分達が養分になった事すら知らず、負けて去っていったのだ。

「違うよ、言っただろ? 稼ぎじゃなくて、あるアイテムが目的だって。 このイベントな、優勝者に賭けてると、キャンペーンクエストのフラグアイテムが手に入るんだ」

「…フラグ? 何のクエストのですか?」
「おいレオ、旗を手に入れて何をするんだ? 通信用か?」
「悪い、バール、ちょっと黙っててくれ。 そのアイテムって…?」

キリエは、少し間を置いて言った。

「『大海龍の生息海図』。 大海龍リヴァイアサンの討伐キャンペーンクエストさ」

「「えっ…!?」」

俺と龍真は、二人揃って息を飲んだ。

「このゲームには、そりゃ多数のイベントがあるけれども、『使い回し』のイベントも結構あるんだ。 もちろん、登場モンスターなんかの細部は違うけどな」アマダム。

「で、フラグアイテムをゲットできるこのイベントが復活していないかどうか、定期的に確認しに来てたんだ」キリエ。

龍真が、感服したように呻いた。

「そういう背景があったのか…」

俺も、もう何も言えなかった。
情報量の差による、結果の圧倒的な差。

これは元々、通常イベントではなくリヴァイアサン絡みのイベント。
そして、その優勝者…リヴァイアサンと戦う力を持つ者のみに、その秘密と門戸が開かれるという仕掛け。
蹂躙され、養分にされた事すら気づかない、何百人もの参加者たちを踏み台にして。

「でもこれが『勝つ』事と、『負ける』って事だ」
「そう。 そして俺たちは、勝つべくして勝った。 それだけさ」

まるで、人生の縮図。
それを、目の前で見せられたような気がした。

「貴方たちは…。 それで良いと、思ってるんですか…? 何も知らない人を食い物にする、それが、正しい事だと…?」
「何だよ、俺たちが知った情報を、皆に伝えとけばよかった、ってか?」
「そうです。 そうすれば、こんな一方的じゃない、フェアな戦いになったはず…!」

俺は、そんな事を切れ切れに問いかけたが、二人の返答は、俺の想像外のものだった。

「アホか。 フェアな戦いとか、お前の頭はハッピーセットかよ」アマダム。
「だな」キリエ。

有利な情報を握ってるのに、何故それを自分でバラさなくちゃならない? ありえねぇよ、と二人は言った。

「でも、これはゲームですよ! 皆で楽しむべきじゃ…」
「確かに、これはゲームだ。 だけど、遊びじゃねぇんだよ」キリエ。
「現実の世界ですら、理不尽と不公平だらけ。 『勝つ』奴は、必ず秘訣を握ってる。 だのにゲームの世界ではフェアになれとか、意味分からねぇよ」アマダム。

そう切り返されて、俺は黙り込んだ。
彼らの主張に対する反論が、見つからない。

「なるほど…確かに、貴方がたの仰るとおり、ですね」
「りゅ…バールハイト!?」
「レオ、彼らの言ってる事は正しい。 正確な情報と重ねた推論、その上でリスクを負って、確実に勝利を求めた姿。 勝って当然の結果だ」
「お、分かってるね、お前さん」
「…すいません、インサイダーなんて言って。 我々と貴方がたとの、情報力の差でした」
「いやいや、別にそこまで謝らなくていいぜ。 ってか、俺たちも内心は自覚してるし、勝つためにはどうしても他人を犠牲にしなきゃいけないからな…」

アマダムさんはしみじみとそう言ったのだが、

「じゃ、説明したから1万くれや」

舌の根も乾かないうちにそんな事を言ってきた。
なんなんだこの人、と思いつつも、俺はコマンドアイコンから、「トレードウインドウ」を選ぶ。

-------------------------------------------------

「レオ」が「アマダム無双」に対し、以下の条件でトレードを要求しています。 承諾しますか?

・「レオ」:10,000Cen
・「アマダム無双」:(任意アイテム)

 はい(Y) いいえ(N) 条件の再提示(R)

-------------------------------------------------

「…おい、1万ってのは、10,000Cenのことか、もしかして」
「え? ええ、そうですけど」
「…上手い事やってくれたな、お前。 賞金で稼いだ金って言うから、1万円の事だと思ったじゃねぇか」

あ、この人、もしかして準優勝の100,000Cenが貰えると思ってたのか?
いやいや、それは虫が良すぎだろ、いくらなんでも。

…ってか、これ、意図してなかったにせよ、『ユーズ』が仕掛けてきた詐欺そのまんまだな。

「まぁいいや、このテクニック覚えとくぜ。 いつか使えそうだからな」

アマダムさんは任意のアイテムを選択し(※このゲームは無償トレードはできない)、「はい(Y)」をタップしてくれたらしく、トレードが成立した旨のメッセージが出た。

彼が俺にくれた任意アイテムは、「虫の死骸×7」だった。 いやホント、なんなんだこのおっさん…。

「それじゃ帰ろうぜ、キリエ」
「ああ」
「すいません、ちょっと待って頂けますか」
「ん? なんだいバールくん、まだ何か用事?」
「ええ、アバターカードの交換をお願いできませんか?」
「ほぉ? 何でまた?」
「実は僕、ダグレート海峡を渡って本土に行きたいんです」

ダグレート海峡…って、あのリヴァイアサンが棲んでる海?

「…まさか、お前等もリヴァイアサンを倒す気なのか?」
「いや、僕は本土に渡りたいだけなんです」
「本土に渡りたい理由は何だよ」
「…それは」

その質問に、龍真はしばし黙り込む。
だが、一瞬後に決然と言った。

「どうしても逢いたい人が居るんです。 その人は、央都ザナドゥに居る、って事まで分かってるんです」

…!
龍真が央都に行きたがっているのは、これが理由か。

「へー、女?」
「それはご想像にお任せします」

俺は一瞬、周囲を見回す。
だが、先に帰るよう言っていたのか、龍真の彼女である「石原のぞみ」さんこと、「トラウム」の姿はそこには見あたらない。

ってか、よく考えたら同じマンションに居るはずだよな。この発言、のぞみさんはどう思ってるんだろう。

「じゃあ、別に倒したい訳じゃないんだな?」
「ええ、むしろ協力をさせて頂きたい、と思いまして」
「おい、バール!」

だが、そこで、龍真は俺にシングルチャットを叩いてきた。

「心配するな。 トッププレイヤーとコネを作っておけば、後々こちらも有利になる」
「…本当かよ」
「本当だ。 それに、この二人は『勝つ』事に徹底している。 そういうビジネス的思考のプレイヤーの方が、僕としては対応しやすい」

そう言われると、俺は何も言えなかった。
龍真は、巧み極まる弁舌…というか、おべっかとお世辞のオンパレードで、キリエとアマダムの協力をたちまち取り付けた。

ただ、その協力の代償として、俺たちは資材や情報を提供する、という事になってしまったのだが…。
ねぇ、これ、圧倒的に不利な立場じゃないの?
そりゃ、確かに龍真の言うとおりに戦う、って言ったけどさぁ…。

「じゃ、話はまとまったな。 これからよろしくな、レオくん!」

そう言ってアマダムさんは、にこやかな口調で話しかけてくる。 …なんか、ヤだな。

「はい、よろしくお願いします」

だが、龍真と一緒に居る間は、龍真の言う通りにしよう。
龍真と、一緒に居る間…。 その間だけ、は。

「ところで、キリエさん、アマダムさん、あの噂…。 リヴァイアサンを倒したプレイヤーには、1000万円が手に入る、という話は本当なんですか」

龍真が、いきなりそんな事を聞いた。

「分からないな、何せ情報が手に入ってこないからよ」
「そうですね。 実際に倒して1000万円をゲットしても、そのプレイヤーは口を閉ざすでしょうし」
「ただ、誰かがリヴァイアサンを倒してしまったら、おそらくその時点でイベント終了だろう。 でも、このフラグアイテムが出たという事は、まだ可能性は残っているって事だ」

まぁ、確かにそうかもしれないな。

「今までは、アーツクルスがこのフラグアイテムを持っていたから、俺たちは『ダベルサタン』に挑めなかった」
「ダベルサタン?」
「リヴァイアサンの名前だよ、あの海峡に居る奴」
「ほう」
「で、奴が引退した今、やっと俺たちにチャンスが回ってきたんだ」
「奴のパーティメンバーから、『ダベルサタン』がどんな攻撃をするのか、も細かく聞いているしな」
「それは凄い…!」

龍真は二人に対し、凄い、勇気があるとお世辞を混ぜながら、次々情報を引き出していった。

役に立たない俺はこの話の聞き役に徹していたが、周囲の事が少し気になっていた。
大半のプレイヤーはオベリスクから帰還し、俺たちは居残ってお喋りに興じている訳だが、まるで聞き耳を立てるように、俺たちの側にじっと立って居るキャラクターが居るのだ。

アバター見た目は女性キャラで、髪の毛が珍しくピンク。
このゲームでも、外見をいじれるオプションがあるんだろうか?

「俺たちはやるぜ! リヴァイアサンを倒して、人生を変えてやる!」
「なんせ1000万円だからな、本気でやるしかねぇよ」

この会話、エリアじゃなくてグループチャットだから、このピンク髪のプレイヤーには聞こえていないはず。
なのに、何故じっとここに佇んでいるんだろう?

「(…あ、もしかして、『WWS』の読者?)」

この「偽キリエ」とお喋りしたいのかな、と思った俺は、そのプレイヤーに向かってタップし、シングルで話かけた。

「君、何してるの? もしかして、このキリエさんと話をしたいとか?」
「え? キリ…? あー、いやいや、何でもないです」

声は女性だった。
インフォメーションウインドウに流れてきた画像は、ピンク色の髪と整った目鼻だち。
名前は「ミルフィーユ」。

「じゃ、そこで何してるの?」
「いや、みなさん、さっきの大会で勝ち残った人ですよね?」
「…うん、そうだけど」
「すごいなー、って…」

ちょっとキツそうな感じはあるが、結構な美人だ。
っていうか、この顔、どこかで見た事があるような…。

「それが、どうかしたの?」
「だから、何でもないです。 遠くから見てるだけで十分です。 話しかけないでください」

そう言って、あっちからシングルチャットを切られた。

…え、何この人?

話しかけないで下さい、と久しぶりに真正面から言われ、ちょっとショックだった。
いや、俺…。 このゲームの中での見た目は、そんなキモくないよな。 それとも喋り方に、なんか問題あったのかな…?

「おい、レオ、行こうか。 もうキリエさん達は帰るそうだ」
「あ、ああ…」

傷心落ち込む間もなく、龍真に催促されて、俺はその場を後にする。

「あ、それとな、レオ。 お前にどうしても言っておきたい事があるんだが」
「…なんですか? キリエさん」

「ロリコンは正義だ」

「はぁ…。」

キリエさんの趣味を知っているらしいアマダムさんが爆笑し、龍真も空気を呼んでか、軽い笑い声を立てた。
俺はこういう内輪ノリについていけなくて、苦笑した。

「じゃあな、バール、レオ。 また進展あったら連絡するぜ」
「すいません、よろしくお願いします」

そう言って、彼らは転移門…オベリスクに飛び込み、ワープしてしまった。

「おい、連絡って何だよ?」
「ああ、さっき僕は彼らのギルドメンバーに加えてもらったんだ。 だからフレンドメッセージが貰える事になってる」
「いつの間に!?」
「レオ、お前話を聞いてなかったのか?」

あー、えっと、さっき女の子に話しかけてた時の事だろうな…。

「悪い、聞いてなかった」
「例えつまらないと分かっていても、真剣に聞かないと、相手の心証を悪くするぞ」
「…じゃあ、龍真もつまらない、って思ってたのか?」
「もちろん。 自慢ばかり、かつ屈折した嗜好の話など、面白い訳ないだろう? でも真剣に聞く。 人脈作りはそこから始まるからな」

うわぁ、「人脈」って。
龍真にとっちゃ、人つき合いも攻略手段の一つなのかよ…。
ちょっと寂しい考え方じゃないのか? それ。

「じゃあ、レオが損得抜きで彼らと友人になればいいじゃないか。 同じアニメが好きなのなら、話も合いそうだ」
「いや、同じアニメが好きだからって、必ず友人になれる訳じゃないんだけど…」

そんな事を言い合いながら、俺たちも「オベリスク」に飛び込み、ネージュ村中央広場へと帰還した。


「うおおおおおおおっ!」
「てめぇ! ふざけんなよ、このッ!」


だが、ネージュで俺を迎えたのは、そんな怒号と絶叫だった。
一瞬、目の前で何が起こっていたのか、分からなかった。
目の前の広場には、幾人ものプレイヤーが地面に横たわっている。

そして、オベリスクから出てきた俺の目の前に、唐突に投げ込まれた何かのアイテム。 
黒くて丸くて、導火線が付いてて、火花が散ってる…。

「(…爆弾!?)」

<続く>
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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