女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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リヴァイアサンズ・メルヴィレイ(19)

ムラサメ氏優位のまま戦闘は続き、俺はデッドラインに先に到達しようとしていた。

「(…ダメだ、マズい! このままじゃ負ける!)」

両者共に、全身全霊を込めた戦いを繰り広げるが、隠し持った一発逆転の秘策は共にない。
そんなものがあれば、もうとっくに出しているであろうからだ。
このままでは、予定調和でムラサメ氏が順当に勝利を納めるだろうが、何かないのか。

この場からできる、もっと別の逆転の秘策。

…てか、なんかこのシチュエーション、昨晩も味わったような気がする。

この状態から出来る事って、たった一つしかないよな。

俺は激戦の最中、彼のキャラをタップし、シングルチャットで話しかけた。

「なぁ、ムラサメさん、アンタのそのコンボ…。 『ブレードアーツ』って言うんだろ?」
「…それが?」
「どうやって登録するんだい? よかったら教えてくれよ」
「…ギブアンドテイク。 君が勝ちを譲ってくれるなら、教えて上げても良いよ」

…なるほど、勝ちを譲る代わりにブレードアーツ。
トーナメントで勝ち抜くなら、八百長という方法もあるのか。 しかし、それはまた別の話だ。

「いや、代わりに良いことを教えて上げようと思ってさ。 このゲームにおける、コンボの秘密」
「…何? コンボの秘密?」
「そう、コンボの秘密。 それはね」

ちょっと気が引けるが、仕方ない。
俺は自分のプライドを犠牲にしつつ、マキアの時よりも大声で歌った。

「上段狙いの 袈裟斬り♪ 袈裟斬り♪
 下段狙いの 足払い♪ 足払い♪
 コンボの起点は水平♪ 水平♪」

相手は無言だった。
俺…何やってんだ、とは思った。
でも歌い続けた。

「こんぼ三兄弟♪ こんぼっ!」

「…」

相手は無言だった。

「今度復活する時も♪ 願いは PK 止めてくれ♪
 できれば課金で 復活は~♪ やめて欲しいよこの運営♪」

「…」

相手は無言だった。

「こんぼ♪ こんぼ♪ こんぼ♪ こんぼ♪
 こんぼ3兄弟~♪ こんぼぅっ!」

これは明らかに失敗だったな、と思ったその瞬間。

「…ぷっ、ぷぷぷ…うっひゃひゃひゃ」

と、ムラサメ氏の低い笑い声が聞こえた。
と同時に、ここが最後のチャンス! と決めて切りかかった。

「…ゆ、指が!」

狙いどおり、相手は笑いにハマったせいで、操作ができなくなったらしい。 中学時代、体力測定の前に悪友から笑わされて、握力の数値が散々だった事を思い出す。

「く、くそっ!」

ともあれ、相手の精密な操作を乱す俺の作戦は成功し、動きがガタガタになった所で、俺は下段斬りを連発で入れた。

「汚いぞ! そんな方法を使うなんて!」
「俺だってやられた事あるんだよ! 口三味線くらいで動揺すんなよ!」

というか、あんな寒いギャグソングに笑ってくれた素直な彼に、俺はちょっと好感を持った。

「お前には…絶対に負けないからな!」

まぁ、相手からの好感度は最悪に落ち込んだようだけど。

回転起き上がりで距離を取りつつ立ち上がろうとするムラサメ氏。
それを察知し、追いかける俺。
その起き上がりに、上段袈裟斬りを重ねる。

「何ッ!?」

と見せかけて、空振りキャンセルの下段斬り。
そして遂に、「鋼鉄戦鬼ムラサメ」氏の顔アイコンの横に「長靴に×」マークが点灯した。

「ああっ!?」
「貰ったぜ!」

部位損傷…これこそが俺の本当の狙い。
俺はガードされないように、ダウンした相手の背後に回り込み、起き上がりを狙って、見よう見まねのキャンセル剣法で、メッタ斬りに斬りまくった。

「YOU WIN!」

そして画面に飛び込んできた、勝利のサイン。
体力差を跳ね返しての逆転勝利だ。

「よっしゃー!」

そう叫ぶと同時に、画面は勝敗結果を告げるリザルト画面へ移行し、マイアバターは光に包まれ、闘技場からワープした。 そして、カノンちゃんのアナウンス。

「おめでとうー! 本戦の第1回戦は、『レオ』さんの勝利です! 皆さん拍手ぅー! それでは…」

闘技場からワープした先は、元いた観客席だった。
画面は花吹雪と「うわーっ! パチパチパチ…」という歓声のSEがデコレートされ、俺の勝利を祝ってくれた。

「おい、やったな! ギリギリだったが、課金装備の相手に、よく勝ったじゃないか!」

近寄って来た龍真が、労いの言葉を掛けてくれる。

「ああ、でもスゲェ疲れた…。 ほんの何分かだけの闘いだったけど、メチャ消耗したぜ」
「そうか、でも優勝するまで、あと3回戦わなくちゃいけないんだぞ。 大丈夫なのか」
「…マジかよ、あと3回も?」

こんな闘いをあと3回も繰り返して、勝ち残って5万円か。
そう考えると、あまりお得ではないような気がする。
てか、思っていたよりも精神的な消耗が激しい。
予想外に厳しい闘いだな、これ…。

眼下で残る参加者が剣を撃ち合わせる最中、俺は「レンタル回復薬スーパー」で体力を回復させ、龍真との雑談に興じていたが、そんな矢先に、俺たちに近寄ってきたアバターが居た。

「見つけたぞ! おい、お前、あんな闘いで勝ったと思っているのか!? 恥ずかしいと思わないのか!?」

エリアチャットでそんな事を叫びながら近寄ってきたアバター、それはあの「鋼鉄戦鬼ムラサメ」氏だった。

「誰ですか、貴方は?」

龍真が俺の代わりに、彼の問いかけに応じる。

「そこの男の対戦者だ! 見ていただろ、さっきの闘いを! そいつの罠にやられたんだ!」
「…罠? さっきの闘いで、そんな展開があったのか?」

龍真が俺に問いかけてくる。
ま、シングルチャットの内容は、観客には聞こえないしな。 外から見たら、相手が調子を崩した所にラッシュを掛けて倒したようにしか思えないだろう。

「罠、って言われるほどじゃないと思うけど」

と、俺は前置きしつつ、さっきの戦闘で、俺が逆転した理由を説明した。 「こんぼ3兄弟」の歌で、相手を笑わせて操作を乱したという事を。

「…なるほど。 ムラサメさん、経緯はレオの言った通りですか?」

平等を期すためか、龍真は俺だけじゃなく、ムラサメ氏からも話を聞きはじめた。

「こんな卑劣な手で勝って、恥ずかしくないのか!? そんな勝利に何の意味がある? お前はすぐにログアウトしろ!」

ムラサメ氏の怒りの舌鋒に、そこまで言わなくてもいいだろと思った俺は、反論しようとしたが「ここは僕に任せてくれないか」と、龍真からシングルチャットが飛んできたので、黙る事にした。

「まぁ、そうですね。 ムラサメさん、貴方の言うとおりだ」
「だろう? 話を聞けば、卑怯だと分かるだろうが!」
「確かに卑怯です。 その件、レオには僕からよく言い聞かせておきますので、怒りを納めて貰えませんか?」
「それで、どうするんだ? ログアウトして、勝ちを譲るのか?」
「まさか。 システムに勝者と認定されたのは、ウチの『レオ』です。 それは揺るがない事実です」

ログアウトなんて無意味ですよ、と、龍真は小さく添えた。

「だけど、そいつは汚い手段で勝利したんだぞ!」
「汚い、汚くないは貴方の主観ですよ、ムラサメさん」
「な…!?」

そして、少し間を置いて言った。

「貴方は、モンポリーとかのボードゲーム…その世界大会の動画を見たことがありますか?」
「え…? な、何のことだよ」
「駆け引きのある対戦ゲーム、その究極の姿を見たことがあるか、と聴いているんです」

だけど、ムラサメ氏は無言だった。
まぁ、ネットジャンキーの俺もそんなの見たことないし、普通の人間はそんなの見ないよな。

「これは、僕の経験ですけど」

と、龍真は前置きをして言う。

「ボードゲームを含む対戦ゲームは、大なり小なり、騙し討ちの要素があります。 テレビゲームをあまりプレイしない僕ですら、その事を知っています」
「だけど…!」
「対戦ゲームでの騙し討ちなんて、実際に人間と対戦していれば、日常茶飯事のはずですよ」

そう。 まさにその通りだった。
俺が言いたい事を、龍真は余さず代弁してくれた。

ムラサメ氏の主張は分からないでもないが、「対戦中に歌う」のなんて、家庭用ゲームの対戦途中で、相手のわき腹をつつくのに比べたら可愛いもんだろ。
こんなんで卑怯認定されてたら、ゲーセンの対戦ゲームでハメ技使う連中はどうなるんだよ、っと。

「貴方は、そんな事すらご存じなかったんですか? もしかして、そんな環境下でゲームをされてきたと?」

なので、龍真は「お前、もしかして友達いないだろ。 だからそんな事も知らないんだろ」と暗に問いかける作戦に出た。
ここで「知らなかった」と言えば、この喧嘩を見ている周囲の面々から、寂しい奴扱いされる事は間違いないからな。

「それは…」

だが、ムラサメ氏が何かを言う前に、龍真は速攻で結論を被せた。

「ウチの『レオ』が不作法だったのも不幸の一つ。 そして、貴方の対戦のあり方が、清廉潔癖すぎたのもまた不幸の一つ。 今回のは、二つの不幸が重なった事故でした。 ムラサメさん、ゲー

ムを進めれば、こういう手合いに他の場所で逢う事もあるでしょう。 それを考えれば、今回の件は授業料、と捉えても良いんじゃないですかね」

「くっ…」

ムラサメ氏は、ついに黙り込んだ。
これで納得してしまったらしいが、龍真の弁舌は流石だった。
もしかして、法学部だけに弁護士とか、そっちの方も目指しているのだろうか…?

「そうそう、それに、俺は貴方のそういうまっすぐな部分、嫌いじゃないッスよ」

俺は龍真のフォローのつもりで、そんな言葉を継いだが、

「お前…。 今日の所は見逃してやる。 だけど、次はないと思え」

ムラサメ氏は、当初の気弱そうな様子からは想像もできないほどの、怒りに満ちた捨て台詞を残して去っていった。

え…。 ま、マジで?

「レオ…。 お前はよくよく、人とトラブルを起こすな、本当に」
「今の俺、どこか悪かったのかよ!?」
「一言余計なんだよ。 他人にはもっと気を使え」
「わ、悪かったよ…」
「でもまぁとにかく、お前はよくやったよ」
「卑怯な手を使わなければ、だろ」

「いや、戦闘中に歌ったのが事実だとしても、卑怯なんて事は全然ない。 むしろもっと狡猾な手段だったとしても、使える手は全て使って戦うべきだ。 ムラサメ氏の手前、お前を卑下させても

らったが、実の所、お前の取った行動は全く正しい」

その龍真の発言に、俺はちょっと絶句しかけた。
余裕がなかったとは言え、後から振り返れば、あの口三味線はやっぱちょっと汚いかなぁー、とは思っていたのだ。

「むしろ、少し嬉しかったほどだ。 僕の言ったとおり、なりふり構わず勝利にむかって突き進んでくれた事がな」

それが、まさかの全肯定だなんて。
でもまぁ…。 確かに、勝利を強引にもぎ取った事は、龍真的には評価されるべき事だったのだろう。
約束を守ったと思えば、これは…これでいいのかな。

「さっきの事など気にするな。 世の中、綺麗なだけじゃ生きていけない。 それを教訓として体感できたのは、彼にとっても悪い事じゃないはずだ」
「ちょっと後味は悪いけどな」
「そんな事に後ろめたさを感じていたら、この先勝ち進めないぞ。 当たり前の事だが、勝つという事は、イコール他人を負かすというだからな」

まぁ、それはそうなんだけど…。

「ところで、さっきのモンポリーの世界大会のアレって…そんな極悪なのか」
「ああ、あの話か? うん、利害が一致した時の駆け引き、特に3対1になった時などは、実に悲惨だぞ。 目の前で自分を破滅させる相談が飛び交うのは、傍目で見ていてもかなり精神的に堪え

る」

あの凄惨な空気は実際に自分の目で見てほしい、と龍真は付け足した。

そこで、ちょうど一回戦終了のアナウンス。
と同時に、8分割されたインフォメーションウインドウには初戦を勝ち抜いた剣士の紹介がなされ、ベット(賭け)開始となる。

そして、俺の顔画像の下(てか、これ、リアル顔面晒しだろ…いいのかよ…)には、小さな白い数字がもにゅもにゅと加算されていく。
あの数字が俺に賭けられた口数だろうけど…他の連中と見比べても、間違いなく加算速度が早い。
見る間に賭け金額が増えていく。

うーん、16位の俺が、第5位のムラサメ氏と闘って勝った訳だからだろうか? 
それでこいつ(俺)は期待大かもしれない、と?
雑談ばっかりしてた割には抜け目ないというか、みんな案外良く見てるもんだな。

対して、俺たちは場外乱入のムラサメ氏のせいで、誰がどんな闘い方をしたのか、全く見ていなかった。

…課金しないとは決めたが、勝ったらどういうアイテムが手に入るのかは気になるんだよな。

「…あれ、これ自分にもベットできるんだ」

試しに、自分に賭けてみたら、ちゃんと受け付けてくれた。

「おい、賭けるな。 例えゲームの上でも、将来犯罪行為に認定されるような事はするんじゃない」
「いや、分かってるけど、景気づけだよ。 自分に賭けて必ず勝つぞ、っていう」

龍真の指示通りに従うとは言ったものの、龍真の行動基準も結構謎だよな。

「それではぁー、いよいよ2回戦を開催いたします!
これより先は、トーナメント方式の闘いになりますので、一度、対戦相手をシャッフルさせて頂きますね!」

すると、さっきの8人の顔画面がバラバラに吹っ飛んで、あちこちに飛んでいったかと思うと、画面奥からこちらに向かってくるトーナメント表の最下段に、シャキシャキシャキーンと貼りこまれ

た。

そしてそのままズームアップ。

「第2回戦、第1試合は、『レオ』! オッズは3.87! 対するは、『ユーズ』! オッズは2.72! 皆さん拍手ー!」

「ユーズ…!?」
「おやおや、相手さんも勝ち残ってたのか。 これは因縁の決戦だな」

<続く>

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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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