女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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リヴァイアサンズ・メルヴィレイ(18)

…そして、遂に決戦の時が来た。

中空に浮いているカノンちゃん、そのインフォメーションウインドウが画面内に飛び込んでくる。

「ではではぁー、遂に『剣闘士の祝宴』本戦を開始しまぁーす! 参加者の皆さん、剣士の皆さんにご声援をー!」

わぁー、という歓声が会場を埋め尽くす。
しかしこの歓声も、その実際は単なるサウンドエフェクトであり、実際に観客席に居るアバター…生身の人間は、応援ではなく雑談に興じていた。
ま、そりゃそうだ。

「それでは、第1回戦を開始します! 最初の闘いは…第16位、『レオ』さんと、第5位『鋼鉄戦鬼ムラサメ』さんです!」

うわ、いきなりかよ!
しかも、なんかとんでもねーネーミングの奴とだ。

カノンちゃんのアナウンスと同時に、俺は闘技場の中にワープし、そのままオートデュエルのダイアログが表示される。
「鋼鉄戦鬼ムラサメ」とかどんな奴だよ、と恐々としていたが、インフォメーションウインドウに表示されたムラサメ氏の素顔は、意外にも普通のメガネ青年だった。

なんだ、強そうなのは名前だけかよ。
てか、この神経質そうな雰囲気…。
どこか鶴羽先輩に似てるな。

「DUEL START!」


だが、強そうなのは名前だけ、という俺の印象は根本的に間違っていた。

「…。」

「鋼鉄戦鬼ムラサメ」氏は、全くの躊躇なく、様子見なしで剣を繰り出して来た。
その装備は、レンタルソード(赤)とアーマーの(赤)という、スピード3倍になりそうなお手軽課金装備。
様子見なしで切り込んで来るとか、俺の装備が(黄)なのでナメてるのかと思ったが、少し剣を合わせただけで、ただ者じゃないという事がビリビリと伝わってきた。

「(なんだこいつ…!?)」

マジでスピード3倍かよ、と思うくらいに動きが早い。
とにかく手数が多く、そして早く、かつ変幻自在で、ガードしたと思ったらすぐさまどこかを斬られる。

試合は最初から一方的なペースで、俺はムラサメ氏の剣撃の嵐から逃げ出せず、瞬く間に2割の体力ゲージを削り取られた。
なお、このデュエルでは、体力が残り2割を切ると判定負けになるので、実際は見た目以上にダメージを負っている。
ムラサメ氏の躊躇のない切り込みは、自信の現れだったのだ。

「(…そうか、これも…『ブレードアーツ』か!?)」

散々に攻撃を喰らってようやっと目が覚め、俺は相手の圧倒的なスピード、そして変幻自在の攻撃が「ブレードアーツ」によるものだと、今更ながらに思い至った。

既存の剣技を組み合わせ、マクロで登録する事によっていつでも再現を可能とするコンボ、「ブレードアーツ」。

ムラサメ氏の使っている技、その一つ一つは俺と同じものだが、単発で使うのではなく、踏み込んでからの「水平斬り」をガードさせて、「上段袈裟斬り」から「下段足払い」と、流れるように斬

り分ける攻撃を頻繁に使ってきた。
ガードが中段、上段、下段と振られるので、極めてガードしにくいのが嫌らしい連携だ。

だが、この連携は俺も野良デュエルで使っていた。
しかし、俺のお手製連携よりも動きが明らかに早い。
それは何故なのかと疑問に思ったが、再び繰り出された「ブレードアーツ」を見て、理由は分かった。

それはいわゆる「キャンセル技」だった。

「上段袈裟斬り」の後、アバターの体勢は、剣を振り切った後のフォロースルーによって体勢が流れ、やや前傾姿勢となる。
だがそこで「下段足払い」を先行入力すると、同じく前傾姿勢から繰り出される「下段足払い」の一部のモーションへと途中接続され「上段袈裟斬り~下段足払い」が、まるで一つの技であるかの

ような滑らかな連携となる。

このモーションの途中接続による「高速化」の技術を「キャンセル技」と言い、2D時代の格闘ゲームではおなじみの要素だったが、どうやらこの作品でも取り入れられているらしい。
てか、同じ株式会社カプリコンだしな。

ムラサメ氏のそれはマキアのと違って、一発くらえば最後までボコられる…というような極悪なものではなかったが、その代わりに変幻自在で、ガードのしにくさに重きを置いていた。
それは明らかに対戦用として作成されたコンボであり、同時に、それは彼が対人戦の熟練者である事を意味していた。

ムラサメ氏の外見が気弱な感じだったので侮っていたが、彼は本当に手強かった。

でも、それはそうだ。
ゲームの世界では、えてしてこういう連中が最も強い。
体格がデカかったり、強面だったり、髪を染めたりして威圧するのなんか、この世界では何の意味をも持たない。
肉体的限界なんかに束縛されない、魂と精神だけの世界。
そこでは、純粋な意志力と、反復練習のみが強さを決める。

だからこそ、俺もこの世界に魅せられ、のめり込み、戦い抜いて来た。
当時のハマリっぷりを語ると、周囲の人間にはどん引きされるが、常人とは違うレベルでゲームをプレイし続けてきたのだ。
だから、そう簡単には負ける訳にはいかない。

そして、しばらく剣撃を続ける最中で、俺はムラサメ氏の欠点…あるいは癖のようなものを、朧気に発見しつつあった。

それは、ムラサメ氏は、単発では下段攻撃を使わないという事だった。

おそらく、下段足払いは出が遅いので、反応が早い相手なら、見てから反応できる。
そこにカウンターを合わせられたくないので、連携にしか使わない…という事なのだろう。

多分、ムラサメ氏は出の早い攻撃に依存するタイプだ。
ならば、狙いは中段の「水平斬り」。

「…うっ!?」

ムラサメ氏が、そんな声を漏らす。

俺の狙いすました反撃は、見事にクリーンヒットした。
ムラサメ氏の「水平斬り」を「ジャストガード」で弾きとばし、派生攻撃の「シールドパリング」で一撃。
相手の体勢を崩した所に、追撃の「下段足払い」もクリーンヒットさせた事で、ちょっとはダメージを与える事ができた。

さらなる追撃を仕掛けるべく、俺はダッシュで距離を詰めたが、ムラサメ氏は、「回転起き上がり」という、俺の見たことのない技で距離を取り、体勢を立て直すと再び「水平斬り」で牽制してき

た。

今度も「ジャストガード」で弾いてやるぜ、と思った刹那、ムラサメ氏はなんと「前蹴り」で、俺の盾を蹴りとばした。

「何っ!?」

そして、その空いた隙に水平斬りからの上段袈裟斬り。

「くっ!」

袈裟斬りはなんとかステップで避けたものの、まさか相手がガードブレイク技を持っているとは思わなかった。
おそらく、「ジャストガード」系は持ってないからこその「前蹴り」なのだろうけど、これでまた新たな駆け引きが生まれてしまった。

ムラサメ氏は、水平斬りにジャストガードを合わせようという俺の狙いを、先ほどの攻防で悟ったらしい。
なので、ガードを崩すべく前蹴りを混ぜこんで来た。

だが、そのガードブレイク技は、リーチが短い。
ならば、先に俺の「水平斬り」で先手を取ろうとしたら、相手も同タイミングで「水平斬り」を被せてきた。

剣同士が激突して火花が激しく散り、ノックバックで両者の体勢が同様に崩れる。

ノックバックの回復後、次に繰り出される攻撃は何か。
俺は一瞬しゃがんでフェイントを入れると、「上段袈裟斬り」を繰り出す。
相手は釣られて上段ガードをするが、それはギリギリでスカる。
もちろん距離が足りないのは承知の上で、俺の本当の狙いは、リーチのある下段足払い。

「よっし!」

フェイントが功を奏し、見事にクリーンヒット。
だが、追撃はガードに阻まれてしまった。

こうして、幾手にも及ぶ読み合いが繰り返され、俺とムラサメ氏は、予想以上の息詰まる戦いを繰り広げる事となった。

「(くそっ…! このままじゃ…)」

ムラサメ氏との駆け引きには付いていけるし、キャンセルのタイミングもおおよそ分かってきた。
だが、最初にブレードアーツを喰らいまくったのが痛すぎた。 
リードを許したせいで、このままだと俺の方が先に、残り2割のデッドラインに達してしまう。
回復薬を使おうにも、安易にそれを許してくれる相手ではないのは明らかだった。

「君、結構強いね? 何で…」

剣撃の最中、ムラサメ氏が語りかけてきた。
結構トーンの低いボイスだった。
「何で」の後には「僕の行動が読めるの」と続くのだろう。

「経験で」

と俺は短く答え、相手は無言だった。
俺の予感は正解で、それできっと納得したのだろう。

だがしかし、ムラサメ氏優位のまま戦闘は続き、俺はデッドラインに先に到達しようとしていた。

「(…ダメだ、マズい! このままじゃ負ける!)」

両者共に、全身全霊を込めた戦いを繰り広げるが、隠し持った一発逆転の秘策は共にない。
そんなものがあれば、もうとっくに出しているであろうからだ。
このままでは、予定調和でムラサメ氏が順当に勝利を納めるだろうが、何かないのか。

この場からできる、もっと別の逆転の秘策。

…てか、なんかこのシチュエーション、昨晩も味わったような気がする。

この状態から出来る事って、たった一つしかないよな。

俺は激戦の最中、彼のキャラをタップし、シングルチャットで話しかけた。

「なぁ、ムラサメさん、アンタのそのコンボ…。 『ブレードアーツ』って言うんだろ?」
「…それが?」
「どうやって登録するんだい? よかったら教えてくれよ」
「…ギブアンドテイク。 君が勝ちを譲ってくれるなら、教えて上げても良いよ」

<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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