女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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リヴァイアサンズ・メルヴィレイ(13)


DATE : H27.1.20
TIME : 20:20
STID : 00941724


「ただいまー」

下宿に帰ると、食堂からあかり姉ちゃんが出てきた。
どうやら小夜子叔母さんの手伝いをしていたらしい。

「あ、礼雄、お帰り。 今日はコンビニは朝だけじゃなかったの?」
「ちょっと、学校の友達と合う予定が急に入ってさ」
「友達って、昨日の夜に喧嘩してた人?」
「え? あ、ああ、そう」

実際は違うけど、適当に話を合わせた。

「…なぁ、あかり姉ちゃん、以前言ってたじゃん」
「何を?」
「ほら、日本の会社は人情で出来てるとか、譲歩が大切だ、とか。 人に合わせるのって、コツみたいなもんがあるのかな」
「そうねぇ…。 まずは我慢して、人の話を聞いてあげることかな。 建前や面子もあるけど、本当に相手が言いたい事は何なのか、を真剣に聞くのが大事なんだって」

お父さんが言うにはね、とあかり姉は付け加えた。

「俺も今日な、一応、人の話聞いたんだぜ」
「お、偉いぞレオ。 頑固者の君がよく譲歩したね」

いやぁ、実際はあまり譲歩してないんだけどね…。
結局、課金しないという意志は突き通したし。

「あかり姉のおかげで、何とかなった。 ありがとう」
「いえいえ、友達とは仲良くね。 人との繋がりって、財産になるって言うから」
「それも、お父さんの受け売り?」
「そうよ。 頑張ってね、礼雄」


そう言って、あかり姉は小夜子叔母さんの手伝いに戻った。
俺は自分の部屋に戻りながら、さっきふと思った事を考える。

課金に対する嫌悪感。
だけど、俺は何で課金がイヤなんだろう?

「…。 わかんね」

自分の内に問いかけるも、その答えは漠として帰ってこなかった。
まぁ、このゲームを進めるうちに、段々形になってくるだろう。
明日は日曜日、久しぶりの完全オフだから、予定を気にしないで過ごせる。

俺はコタツに入ると、携帯で「還魂のリヴァイアサン wiki」と入力し、検索する。

…南原先輩に言われたとおり、wikiはスッカスカのガッラガラだった。
一応、PvPのページも見たが、見事なまでの白紙で笑ってしまった。

なら、個人の攻略サイトがないもんか…と思って探したらググループラスの検索先頭に、「ゆういちのリバイアサン攻略!」なんてブログがあった。 やった!

…? 
あれ、企業広告が出てる。
一ヶ月以上更新されてない証しだ。
いや、このゲーム、まだ発売されて何ヶ月も経ってないよな?

理由が分からず、俺は先頭のページに移動して、ざーっと経緯を追っていくと、更新が止まった原因はすぐに分かった。

「何だこりゃ…」

このブログの管理人は、「ゆういち」なる人物だった。
現実ではどこだか分からないが、彼が居る場所は、ゲームの中では、「央都ザナドゥ」という所らしい。

それで彼はある日、捜索もののイベントで優勝した、という記事をアップしていた。
喜び満面の記事には、驚くほど大量のお祝いと、装備が知りたいというコメントがあった。

それに気をよくした管理人は、次の日の記事で装備の詳細をアップした。
コメントは「ありがとう」「参考にして装備組みます」という内容のものばかりだった。

だが、さらに次の日の記事は、PKされた事に対する怒りに変わっていた。

「僕はPKされるために、装備記事を書いた訳じゃありません! こんな馬鹿な真似は、今すぐやめて下さい!」

しかしコメントは、前日までの好意的なものとは打って変わって、「晒し乙」「馬鹿乙」で埋め尽くされていた。

この「ゆういち」なる管理人は、イベントで勝ったことと、装備を晒したことで、PKの対象になったらしい。
彼は対抗装備を組まれてPKされ、優勝した時の賞金はもちろん、スペア装備まで根こそぎ巻き上げられた。
それでも彼は課金して復帰しようとしていたが…。

「もう引退しろよ」
「そんなに復帰しちゃ、らめぇ!」
「ネットの上で個人情報を漏らす奴がどうなるのか分かったろ」
「こないだの喚き声は最高だったぜ」

PKで儲け損ねた連中が、腹いせにこの「ゆういち」なる管理人をストーキングして、復活する度に殺害し、復活する度に殺害し…を延々と繰り返し、その散り様を鑑賞して楽しむという、反吐が出そうな遊びへとシフトさせていた。

それから2週間ほどして、白紙の記事がアップされた。
もしかして、と思って反転したら、その記事には案の定、PKプレイヤーに対する恨み言が一面に書いてあり、リヴァイアサンを引退する事にしました、と締めくくられていた。


「うわぁ…。 下手なホラー映画より、怖いもん見た…」

俺は、思わずコタツ布団に突っ伏す。
これが、「リヴァイアサン」で、いつまで経ってもwikiが充実しない理由か。
そうだよなー、やっぱ自分から好き好んで散財したり、PKされたいプレイヤーとか、居るわけないもんな。

…でも、賞金が出るだけで、ゲームの質がこれほど違ってしまうなんて。
改めて、人の本性って恐ろしいな、と思いながら、俺はブラウザを終了させる。

そして、帰りにコンビニで買ってきたヘッドセットを装着し、「リヴァイアサンズ…メルヴィレイ」と、再びゲームを起動させた。

明日の剣闘士大会、勝ち抜くことは…多分無理だ。
装備云々より、俺に絶対的な対戦経験が足りない。
付け焼き刃でもいいから、まず対戦の練習をしとかないと、無様を晒して龍真から愛想尽かされちまう。

それに、明日は対モンスター戦よりも、対人戦に慣れた連中が大勢出てくるはずだからな。

「…待てよ」

そこまで反射的に考えて、ふとイヤな予感が俺を襲った。
対人戦に慣れた連中、つまりPKプレイヤー。
あの「オリオン」みたいな連中が、大挙して出場してくるかもしれないのか。

…「クライムアラーム」、買った方が良いんだろうか。

街の外れにある課金ショップ「オークションハウス」で課金すれば、上限こそあるものの、「Cen」を大量に交換できる。
確かに何百円かくらいなら、来月の携帯の請求が膨れたって、そんな気にする事はない…と、思う。

…いや、やはり買うべきだ。
これが龍真なら、PKプレイヤーを避けるための投資は、損害を考えれば必要不可欠、と判断するはずだ。
確か、クライムアラームは、20円とか50円だったはず。 

…20円。

…なら、イノシシで稼ぐか。

そんな訳で、俺は再び、ネージュ村の近くの平原にポップするイノシシ「ワイルドボア」を狩りに出かけた。

だが、最初に龍真から貰った装備の威力は絶大だった事が、今になって身に染みた。
昨日はコンボ1セットだけで倒せたイノシシが、2セット3セット…と入れないと倒せなくなっていたのだ。
しかも、攻撃を食らった時のダメージがやたら大きく、うっかり囲まれた時には死を予感した。

「あっぶねぇ…」

なんとか2匹だけを倒し、命からがら村へと帰ってくる。

…確かに、これは効率が悪い。

今の俺だと、あのワニさんはおろか、イノシシでも稼げない。 缶ジュースすらままならない。
課金しないと決めていたけど、それだと、本当にゲームが進まないかもしれないな、これは…。

俺は宿に泊まると、イノシシの素材を売り払い、200Cenを作って、オークションハウスで、レッドプレイヤーを見分けられる「クライムアラーム」を購入した。

たかが、20円のアイテムを買うのにこんな苦労すんのか…。
明日のレンタル剣(赤)を買うのですら、イノシシ20体が必要になるってのに。

「…課金すべきなのかな」

モンスター狩りなんて本当に無駄な作業だぞ、という龍真の声が聞こえたような気がした。

俺はとりあえず、「クライムアラーム」を装備する。
これでPK対策はとりあえずOK。

次の目的は、対戦の特訓。
誰か手頃な相手を見つけて、デュエルを申し込もう。
そう思って街を出ようとしたら、唐突に話しかけられた。

「ねぇ君、今ヒマ?」
「…え?」
「良かったら、ちょっと話し相手になってくれない?」
「え、俺ですか?」

聞き返したのも無理はないというか、俺に話しかけてきた相手は、またも重装型のアバターだった。
その素顔と体型は、鎧に覆い隠されて、全く分からない。

だが、オリオンの無骨なプレートメイルとは違って、今度は白銀一色で統一された、流麗かつ可憐な装備だ。

…そして、ヘッドセットから伝わる声も、若い女性のものだった。

「そうそう、君。 このネージュ村の出身だよね?」

しかも、凛として耳通りの良い声質。
丁寧で明朗なイントネーションは、まるで声優さん。
その只ならぬ雰囲気に、俺はちょっと気圧されてしまった。

「そ、そうですけど…。 貴女は?」
「初めまして、あたし、マキア。 ちょっと人探しをしてるんだけど」
「人探し、ですか?」
「うん、アーツクルスっていう剣士さんを探してるんだけど、知らない?」

え、何これ?
もしかして、明日の剣闘士大会の参加者?
こんな強烈なのが出てくるの?

「い、いえ…知らないです」
「そうなの? 凄腕の廃人プレイヤーだったから、結構有名人なはずなんだけど。 この村出身なのよ?」
「すいません、俺、このゲーム始めたばっかなんで」
「あ、初心者なんだ? じゃあ、彼を知ってそうな人、誰か知らない?」

知ってそうな人…。
あ、そうだ。
そんな有名人なら、龍真のノートに書いてあるだろ、多分。

「ちょっと待ってて下さいね」

俺は一度ログアウトし、龍真に電話する。

「どうした?」
「いや、ちょっと知りたいことがあって。 『アーツクルス』ってプレイヤー、知ってるか?」
「礼雄、情報はギブアンドテイク、ってのを忘れるなよ。 …そのプレイヤーは相当に有名だぞ。 性格に難アリだが、多分このネージュ近辺では、対人戦で最も強いプレイヤーの一人だ」
「マジか」
「ああ、正直、僕ではどれほど強いのか分からないほど飛び抜けていた。 …それがどうした?」
「いや、ちょっと人から聞かれて」
「またソロプレイか」
「今度は十分に気をつけるよ、クライムアラーム買ったしな。 じゃあ、またな」

そして、俺は再ログインし、ネージュ村の中央広場の掲示板前でブラブラしていた彼女…マキアを見つけ、話しかけた。

「聞いてきましたよ、アーツクルスさんの事。 何だか、凄く強い剣士って話ですけど」
「知ってるわよ、そんな事」
「え?」
「だって、昔ねー、アイツに殺されたのよ。 もう信じられない! 女性相手に手加減の一つもないし、挙げ句の果てに言った言葉が『雑魚は死ね』よ! この私が雑魚扱いよ!? どう思う!?」

いや、どう思う? って言われたって、俺も困ります。

「でね、あたしも強くなったから、ちょっとリベンジしてやろう…って思ったの。 そしたら、彼、引退したって噂が流れてるじゃない」
「引退?」
「そう。 で、私が知りたかったのは、その噂が本当かどうか。 彼の出身のここなら、彼のリアルを知ってる人が居るんじゃないかなー、って思ったんだけど」

あ、そこまでは聞かなかったな…。

「うーん…。 それは分からないです、スイマセン」
「そうかぁ、仕方ないなぁ…。 まぁ、彼の事、誰かに聞いておいてよ。 あたしも、あんなイヤな思い出抱えたままじゃ、なんかしっくりこないからね」

というか、その凄腕剣士・アーツクルスとやらと戦おうとするあたり、この人もメチャクチャ強いのか。
ってか、本当に女性? ネカマじゃなくて?

「…ところで」
「はい?」
「さっき、そこの掲示板見たんだけど、なんか面白そうなイベントあるじゃない?」
「そ、そうですね」
「君も、アレに参加するの?」
「一応は」
「良かったら、稽古付けてあげよっか」
「え?」
「だってねー、アーツクルスと戦うつもりで来たのに、全然空振りじゃない。 なんか、こう、ムラムラしちゃって」

それはモヤモヤの間違いではなかろうか?
とにかく、正体が何であれ、デュエルの相手をしてくれるというのなら願ったり叶ったりだ。

「あ、じゃあ、是非お願いします!」
「おっけー。 じゃ、街の外に出ましょうか」

街の中はバトル不可なので、デュエルする際には外に出る必要がある。

ピピピ、ピピピ、ピピピ…

最初、俺はそれが何の音か分からなかった。
街の外に出た途端に、突如鳴り出した電子音。

…まさか、これ、クライムアラーム!?

その可能性に思い至り、俺は慌てて距離を取る。

「マキア…。 アンタまさか、PKプレイヤーか!?」
「そうだけど? よく分かったわね」

女性という事で油断させ、後ろからバッサリというパターンか…と思ったのだが、当のマキアは何か行動を起こす訳でもなく、ただそこに佇んでいた。

「あ、もしかしてクライムアラーム装備してたの?」
「そうだ! PK野郎が、何のつもりで俺に話しかけてきた!?」
「いやねぇ、PKプレイヤーが全て犯罪者みたいな言い方しないでよ。 あたしの場合は不可抗力なんだから」
「不可抗力?」
「うん。 ファンの一人に、あまりにしつこいストーカーが居たから、斬って斬って斬りまくって、引退に追いこんでやったの。 それでPKプレイヤーになった訳」

…。

なんかいろいろとツッコミたい部分はあるけど、とりあえず、俺をPKしたい訳じゃなさそうだ。

「当たり前でしょ? あたしは強い人と戦いたいの。 貴方みたいな初心者斬っても、何にもならないじゃない」

斬る意味すらない、と申されますか…。
というか、このお姉さん、相当に過激な性格だな。

「じゃあ、早速デュエルしようか? 何を賭ける?」
「か、賭け? このゲームって、賭けないとデュエルできないんですか?」
「できるけど、気合い入らないじゃない」

…いや、賭けようって言っても、俺、何も持ってないし。

「んー、それならさぁ、何かモノマネしてよ。 テレビの芸人のネタでもいいから」

いや、俺、テレビ見ないし。
てか、テレビ見るくらいならネットかゲームしてるし。

「本当に? …まぁいいわ、気は乗らないけど、賭けなしで闘りましょうか」

すると、画面の上半分に、デュエル申請のウインドウが現れた。

「あたしも初期装備の『こんぼう』で戦うから、勝負はお互いの体力を半分減らすモードでね。 あと…」

なんとマキアは、頭以外の全装備を解除した。
そのビジュアルは、まさに怪人・ヘルメット裸女。
(※もちろんインナーは装備してるよ)

自称女性にしては、随分とアナーキーな格好だ。
現実にこんなのが居たら、確実に都市伝説になるレベル。

「これで防御力も互角かしら? じゃあ、行くわよ」

爆笑しそうなのを必死でこらえ、俺はデュエルの承諾ボタンを押す。

「DUEL START!」

<続く>
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*Comment

NoTitle 

何故かあかり姉との会話が
懐かし気なアドベンチャーゲーム風に
脳内再生されたでゴザル
  • posted by  
  • URL 
  • 2014.04/12 03:21分 
  • [Edit]

NoTitle 

確かに、イノシシ狩ってる時間をリアルのバイトにあてて課金するほうがまだマシそう。
  • posted by  
  • URL 
  • 2014.04/12 21:09分 
  • [Edit]

Re: NoTitle 

> 何故かあかり姉との会話が
> 懐かし気なアドベンチャーゲーム風に
> 脳内再生されたでゴザル

こう、ブランド・ニュー・ハートな雰囲気でか。
今ここから始まるでか。
夢のような世界が始まるデカッ!? デリート完了!(何

いやまぁ、「あかり」という名前が悪かったのかなーなんて思うよ、うん。
俺的には「仮面ライダーウィザード」の、ユズル君のお姉さんがモデルなんだけどね…。
  • posted by 丼$魔 
  • URL 
  • 2014.06/08 20:54分 
  • [Edit]

Re: NoTitle 

> 確かに、イノシシ狩ってる時間をリアルのバイトにあてて課金するほうがまだマシそう。

そう、そう思ってもらう事がこの作品の焦点なのでございます!
ありがとうございます!

でもリアルだったら、ネトゲのためにバイトなんてしないよねー!(ぇ
  • posted by 丼$魔 
  • URL 
  • 2014.06/08 20:55分 
  • [Edit]

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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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