女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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リヴァイアサンズ・メルヴィレイ(10)


DATE : H27.12.25
TIME : 13:24
STID : 00941724


「ちはーす、お疲れさまでーす」
「おいーす」
「うーす」

サークルに行ったら、やっぱり南原先輩と西川先輩が居た。
もちろん2人で「リヴァイアサン」。
年中無休、不眠不休のゲーム研究。
それが我らの「デジタルメディア研究会」だ。

俺はリュックを下ろしながら、コタツに入らせてもらう。

「鶴羽先輩の事、何か連絡ありました?」

二人の表情は鬼気迫ってないので、話しかけても大丈夫だろう。

「いや、連絡ない」

二人はゲーム画面を見ながら簡潔に答えた。

まぁ、そうだよな…。

「ところで、俺もリヴァイアサン始めちゃったんスよ」

「何ッ!?」
「レオもリヴァイアサンにキタコレ!」

二人同時に、ガバッと顔を上げた。
おお、リアクション早いなー。

「そうかそうか、レオも遂に始めたかー」
「お前も、ソシャゲの潮流には逆らえなかったな」
「それで、お願いがあるんですけど」
「何だよ」
「…操作方法を教えてもらいたいんですけど」
「何でまた、そんな基本的な事を?」

言うべきかどうか迷ったが、昨晩のPKの事を言った。




すると、先輩二人は爆笑しはじめた。

「ゲーム開始早々、いきなりPKかー」
「そりゃ災難だったな、レオ」
「本当、とんでもない目に逢いましたよ。 っていうか…」

昨晩の事を思い出すと、フツフツと怒りがこみ上げてくる。

「…このゲームでPKされると、何だか妙に、精神的に来るものがありません?」

もちろん、他のMMOでもPKされた事はある。
嫌な気持ちになるのは同じなのだが、『リヴァイアサン』では、それが桁違いなのだ。

「あー、あるある。 多分ボイチャ(ボイスチャット)で煽られるからだろうな」
「…そうですね」

確かに、肉声で対話するだけで、画面の先…。
いや、画面内のアバターの中に、血の通った人間が確かに居る、という感覚が強く感じられた。
文字に変換されていない、掛け値なしの悪意と侮蔑。

「だろ? 対人戦でもそうだけど、ヘッドセットから、たまに相手のうめき声が聞こえる時があんだよな」
「ああ、相手を殴った時だろ? 『うっ』って声。 もうゲームのキャラになりきってるのな」
「あれ、何とも言えないよなー」

南原先輩と西川先輩は、笑いつつ体験談を語ってくれた。

「あと、真剣度が段違いだからだろうな」
「真剣度?」
「ほら、ゲーセンでの格闘ゲームの対戦と同じだよ。 家庭用で対戦するのとは、熱が全然違うだろ」

アーケードの格闘ゲームでは、コインというか、プレイの続行権を賭けて戦うことになる。
「リヴァイアサン」のバトルの場合、リアルマネーに換金可能な資産(装備、アイテム、所持金)を賭けたも同然。
真剣度はアーケードの格ゲー以上だぜ、というのが西川先輩の意見だった。

「なるほど…」

言われてみて、ストンと納得できた。

「で、レオはどうしたいんだよ? リベンジでPKK(プレイヤー・キラー・キル)すんのか?」
「いや、せめて自在に動けるようになりたいんですけど…。 そもそも、PKKなんてできるんですか?」

他のMMOの場合、「やられたらやりかえす」というのはまず無理だ。
そもそも、PKプレイヤーは、異様に強い場合が多い。
仮に相手を倒せたとしても、目を付けられて粘着(※ネットストーカー)されたら、もうゲームにならない。

「超課金して、相手より強い装備を買えば多分余裕」
「いや、課金なしで」
「なら無理。 自衛手段を取った方が良い」
「ですよね…」

そして、その経験則はこのゲームにも該当した。

「それで、自衛手段って、何があるんですか?」
「課金アイテム」

その返事を聞いて、俺はズッコケた。

「自衛手段まで課金!? マジですか?」
「ちょっと待ってろ…。 ほれ」

西川先輩は、自分のゲーム画面を見せてくれた。

ーーーーーーーー

・けむり玉 80Cen
(※消費アイテム。 白煙を発生させ、視界を遮断する。)

・クライムアラーム 200Cen
(※レッドプレイヤーが同じ画面に居ると、アラームがなる)

・ネオクライムアラーム 500Cen
(※イエロー・オレンジ・レッドプレイヤーが同じ画面に居ると、アラームがなる)

・妖精のお守り 1000Cen
(※消費アイテム。 他プレイヤーからの初撃を完全に無効化する)

・飛行の魔法石 1500Cen
(※消費アイテム。 移動魔法「エア・ウイング」で魔力が尽きるまで空が飛べる)

・転移の魔法石 2000Cen
(※消費アイテム。 移動魔法「テレポート」で直前に居た街へとテレポートする。 ただしダンジョン内では無効)

ーーーーーーーー

「普通に購入はできるけど、PKの後だと所持金を奪われるからな、結局は課金して買う事になる」
「アコギすぎる…」

しかも大半が消費アイテムじゃねーか。
何だこの鬼設定は。

「まぁ、クライムアラームだけでも持っとくと結構違うぜ。 ダンジョンの影とかにPK野郎が潜んでたりするしな」

しかし、倒される側がお金を払って防御策を講じる、というのはなんか納得がいかない。
無課金で何か方法がないもんだろうか。

「それだとな、俺たちがやってるみたいに、常時パーティを組むしかないぞ。 クライムプレイヤーは、大抵の場合、ぼっち…いや、ソロプレイヤーを狙うからな」

一人で行動しない、怪しい所には行かない…か。
こりゃ現実と同じだな。

「あの、それと…。 所持金も装備を全部失ってるんですけど、どうしたら良いんでしょう?」
「宿は教会で代用できるけど、装備はどうにかして買え」
「いや、買えって…。 所持金を奪われてるんですけど…」
「課金すればいいだろ」
「え? じゃあ、無課金だと復活不可能なんですか?」

すると、南原先輩は「無課金でか…?」と、首を捻りつつ答えた。

「うーん…。 ゲームの中に、誰か知り合い居ないのか?」
「一応、友達に誘われてます」
「なら、同じネージュ村に居るんだろ? そいつと協力した方が早いぞ。 俺たちは先の街に居るから、ネージュまで戻るの手間だし」
「戻るのが手間…。 って事は、このゲームには、街をまたぐ移動魔法がないんですか?」
「ある。 馬車も魔法もある」
「じゃあ、何で」
「全部有料なんだ。 無料は徒歩のみ」
「…なるほど」
「だから、今すぐ援助は無理だ。 勘弁してくれや」

…しかし、このゲーム、ネージュ村から始まるにしては、人が少ないような。
他のMMOだと、拠点になる街には凄い数の人が居るもんなんだけど…。
もうみんな、とっとと先に進んでいるって事なんだろうか?

「ところで、先輩方はどこの街に居るんです? そこって稼げるんですか?」

だが、その質問をすると、南原先輩と西川先輩は顔を見合わせ、口に指を当てて「シーッ」という仕草をした。

「残念だが、その質問には答えられねぇ」
「何でですか?」
「ちょっと面白いことをやってる。 だが、ライバルは少ない方が良い。 だから教えられない」
「もし、これ以上の情報が欲しかったら、ギブアンドテイク、だ」
「えー、マジですか!?」

先輩二人は肩をすくめる。

「マジも大マジ、マージマジマジだ。 でも勘違いすんなよ、お前が嫌いだからとか、俺たちだけが儲けたいからとか、そういう理由じゃないぞ、なぁ西川」

いや、今ライバルが…とか言ったじゃないですか。

「南原の言う通り、お前に意地悪したい訳じゃない。 レオ、お前このゲームのwiki見たことあるか?」

ゲームwiki。
有志によって攻略法が提供され、まとめられた総合データベース。
有名どころのゲームは、大抵の場合、これを見れば最後までつまづかずにクリアできる。
昨日のPKの件ですっかり失念していたが、最初からこれを見とけばよかったんだな。

「すいません、そっちを先に見るべきでしたね」

「ググレカス」と暗に言われたような気がして、俺は西川先輩たちに謝った…が、先輩はそういう事を言いたい訳ではなかった。

「はっきり言って、スッカスカだぞ。 コメント欄が『クレクレ厨はタヒね』で埋まってる」
「もうwikiとしての存在価値ないよな、あの砂場」

…wikiが役に立たない?
何故?

「さっき言ったろ? このゲームな、有益な情報を提供すると、パクられて自分が不利になるんだよ」
「みんな自分が相手を出し抜きたいから、見つけた攻略法は、相手には伏せとく」
「だから、情報が欲しい時は、ギブアンドテイクを徹底するのがマナーになってる」

公平な取引を推奨。
クレクレ厨は絶対禁止。
利害関係が絡むと喧嘩になるから。
それがリヴァイアサンプレイヤーのゲームマナー、という事らしい。

「もしくは、無償でも信頼できる仲間がいないと、このゲームは進められないぜ」
「なんせ、あの鶴羽ですらパーティ組んでたからな」
「あの鶴羽先輩がですか!?」

それは驚いた。
鶴羽先輩は、ことゲームにおいては、絶対の自信を持ってた。
なのに、ソロプレイをとうに諦めて、人に頭を下げて、パーティ組んでもらってたなんて…。
本当かよ。

「だよな、アイツのことだから、良好なパーティ関係なんて、全然想像できねぇ」
「…そうですね」

俺は苦笑いして同意する。
まぁ確かに、あの先輩の極端なゲーム至上主義についてこれる人は少なかろう。

「分かりました、じゃあ次はギブアンドテイクで…。 あ、ところで、アクションの登録だけは教えてもらっていいですか」

てか、これが本題だった。

「いいぜ。 ちょっと手順が分かりにくいから、ムービー撮っとけ」
「あ、はい」

俺は携帯のカメラで、ムービーを起動する。

「こんにちはー! 『チャンバラチャンネル』です! 今日は後輩・レオくんのために、パレットの操作とマクロの操作を実演する事にしてみました!」

と、まるで「ワハハ動画」の実況プレイみたいな感じで、南原先輩は操作の実演を始めた。
後輩の俺が言うのもなんだけど、実に分かりやすく丁寧な解説で、ムービーを撮ってリプレイするまでもなく、その場で十分に理解できた。

「…以上です! 使いこなせばマクロは強力なので、是非使って下さいね! それではまたー!」

俺はムービー撮影を終わると、南原先輩に礼を言う。

「ちゃんと何度も見直せよ」
「ええ、分かってます」

俺は苦笑しながら返事する。

「しかし、このゲームにもマクロあったんですね。 ライトユーザー向けのソシャゲかと思ってたのに」

マクロってのは、表計算ソフトや画像ソフトに実装されてる、「一連の動作を登録する」コマンドの事だ。
MMOにもよく実装されており、戦闘後の体力回復など、頻繁に発生する面倒くさいルーティンを一発解消するためによく登録される。

「俺たちも、マクロは鶴羽から教えてもらったんだよ。 てかアイツ、とてつもない連続技持ってたぜ」
「そういやそうだったな…。 俺とか『ひのきのぼう』で瞬殺されたし。 相手にすらならない、って酷評されたな」
「だなー。 俺たちをボコるだけボコって、どんな技のマクロなのかは教えないんだもんな」
「ま、教えてもらったら、それで鶴羽の奴ボコるつもりだったしな」

と、南原先輩と西川先輩は声を揃えて笑う。

てか、鶴羽先輩、サークルメンバーをコンボの実験台にするとか、いくらなんでもやり過ぎだろ…。
もしかすると、実験台のお礼としてマクロの存在だけを伝えたのかもしれないけど、こりゃ絶対に伝わってないぞ。

「ま、力にはなれないけど、くつろいでいけや。 どうせ誰も来ねぇし、北大路が良いの置いてってるしよ」
「良いのって何ですか? 『まじかる☆あーじゅ』のDVDすか?」
「惜しい、それはまだ2巻までしか出てねぇ。 これだよ、『Words Worlds Swords』のDVD全巻」
「うおスゲー! 北大路先輩、円盤全部買うとか流石っすね! デジ研会のブルジョワやー!」
「アイツのおかげで俺らも助かるんだよ~」

俺はそんな訳で、ありがたく部室でDVD見ながらくつろがせて頂く事とした。
別に下宿の自室でDVD見ても同じかもだが、オタ仲間と一緒に見るのは楽しさが一段上に感じる。

「その話、作画監督が香川久志なんだぜ。 『聖徒の剣』の。 バトルシーンの動きがいいだろ?」

こんな注釈が漏れなく付いてくるしな。
なお、『Words Worlds Swords』ってのは、深夜枠でやってた、比較的大きなお友達向けのファンタジーアニメだ。

主人公がとある事件により異世界に召還されるが、そこは紛争地帯であり、戦争の惨禍にて男性は殆どが戦死、村には女性しか残っていなかった。
主人公も戦争に巻き込まれるが、村に伝わる伝説の魔剣と心を通じ合わせることで魔法の力に目覚め、伝説の魔法剣士となり、皆のために戦うというストーリー。
そして村を救った結果、村の若い女性からモテモテになって困っちゃうという、よくあるチーレムものだ。

そしてヒロインの一人が、主人公と一緒にお風呂に入るか入らないか、という重要なシーンで携帯が鳴り出した。

相手は「藤宮 龍真」。

おい、またこのタイミングでか…。
これは、「お前暇?」コールだろうな。
そして、実際に電話に、出てみると電話の内容は俺の想像どおり、

「レオ、時間に余裕はあるか? よければ、昨日の続きで、リヴァイアサンをプレイしないか?」

という、空気を読まないお誘いだった。

<続く>

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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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