女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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リヴァイアサンズ・メルヴィレイ(5)

DATE : H27.1.19
TIME : 18:15
STID : *UNKNOWN*


「やっと終わった…。 だりぃ…」

仮眠終了後、俺は慌てて大学まで自転車で疾走し、生協(学生食堂)でコンビニで買っておいたパンとジュースを飲むという一人飯をとっととこなし、午後からの講義を居眠りすることなく受けきった。

下宿では朝飯と夕飯しか出ないので、昼飯だけはどうにか自分で都合を付ける必要がある。
コンビニでは驚くほど大量の弁当の廃棄が出るので、それを貰って昼飯に回せたらなぁ…とバイトに行くたび思うのだが、それは厳禁、と本部からキツく指導されているらしい。

なもんで、ちょっとでも点数を稼ぐべく、パン類はバイト先のコンビニで買っていっている。
ま、これでどれだけ店長の心証に影響するかは分からないんだけど…。

そんでもって、午後からの講義は、必修の「経済論Ⅱ」と、一般教養の「歴史民俗学」「倫理学」だった。

一般教養の二つは、進級の必要単位数を埋めるため「これは取りやすいぜ」と鶴羽先輩にオススメされた授業だが、さっぱり訳が分からん。
道祖神とか、永井荷風とか、トマス・アクィナスとか、功利主義とか、今まで見聞きしたこともない人物・単語の羅列で、それが何なのかイメージがさっぱり湧かないのだ。
鶴羽先輩って頭良かったのかなぁ、なんて事を考えながら、とりあえず板書される事を必死でノートに取っていた。

だが、意味不明な単語の連発×90分×3コマは、2年経とうとする今でも結構厳しいものがあり、講義を受けてもあまり理解できていないのが実状だった。
来週あたりには試験範囲か、試験代わりのレポートのテーマが発表されるだろうけど、こんなんで果たして俺は単位取れるのかな。

いや、取らなくちゃ。
取れなくて進級できなかったら、実家に連れ戻されるかもしれないのだ。

「はぁ…。 辛いなぁ…」

俺は、サークル会館に灯る光を見ながら、そんな事を呟いた。
あそこに居る連中は、きっと友達と楽しくやってるんだろうな。

対して俺は、授業が終われば、たった一人下宿に戻って講義の復習をし、叔母さんに気を使いながら食事し、バイトのために休息して、また学校に出てくる日々。

充実しているといえばそうかもしれないが、正直、「やらなくちゃならない事」をこなすためだけの生活が、これほど空しく感じるものだとは思わなかった。

周りを見渡せば、みな楽しそうな表情をしている。
カップル同士で帰宅する連中、サークル会館の方へ向かう連中、まだ夕方だっつーのに居酒屋の方へと向かう連中。

…何で、俺、こんな事になっちゃったんだろうな。

侘びしさを噛みしめながら、俺が駐輪場の自転車を取りに行こうとした時。

「よう、レオ。 どうした、浮かない顔して」

と声を掛けられた。

「龍真…?」

藤宮龍真…。 
俺と高校からの同級生で、宇園大学法学部の2年生。
普段は北キャンパスにしかいないはずのそいつが、何故かここ南キャンパスの大講堂の駐輪場に居た。

「何でお前が、ここに?」

長髪を後ろでくくり、オシャレメガネにロングコートとロングマフラーという格好の龍真は、俺の方に真っ直ぐ歩みよってきた。

「お前を待ってたに決まってるだろ? 多分ここだと思ったから、講義の終わる時間を見計らって出てきた」
「何のためにだよ?」
「三顧の礼だよ。 その1回目」

と、龍真は事も無げに笑って言った。

「三顧の礼」とは中国三大伝記「三国志」の故事で、相手の力を借りるため、礼を尽くして幾度も頭を下げにきた、後の蜀皇帝・劉備玄徳と、その軍師になる諸葛亮孔明の出会いの事を指す。

「お前…そこまでして、俺をゲームに引き込みたい訳?」
「もちろん。 だがタダとは言わない。 ギブアンドテイクでお願いしたいと思ってるんだが、どうかな」
「お前なぁ…」

三顧の礼と言うからには、断られてもまた来るぞ、という腹づもりなのだろう。

正直、ちょうどこの時、人恋しく、またやりきれない気分だったのは認める。
気分転換したくなった部分もあったのも認める。

「…分かったよ、根負けだ」

龍真には、高校生の時に世話になった覚えもある。
だがここまで言われ、足を運んでもらったからには、話を聞くくらいはするべきだろう、と思ったのだ。

「おー、遂にやる気になったか」
「その前に、少し聞きたい事があるんだが…」
「何だ?」

俺は龍真の近くに寄って、耳打ちをする。

「…人から聞いたんだが、ゲームをクリアすると1000万円、って噂はマジなのか?」
「なんだ、その噂、知っていたのか」
「本当の話か!?」

だが、俺がそう問いつめると、龍真は小首を傾げた。

「どうかな。 確かに、公式HPには、最初にクリアしたプレイヤーには、弊社からお礼をしたいとは書いてある」
「それが1000万円?」
「いや、僕自身はその噂をあまり信用していない。 お礼と言っても、ちょっとした商品だろう。 1000万円は、さすがに金額が大きすぎる」
「…だよな、そうだよな」

そりゃそうだ。
やっぱり、そんな夢みたいな話がある訳ない。

「…だが、噂があながち嘘とも言い切れない」
「どういう事だよ」

龍真は、そこで周囲を見回すと、視線をどこか別の場所に向けたまま、俺に問いかけてきた。

「レオ、晩飯はどうする?」
「どうする…って、まだだけど」
「じゃ、お前の目の前で見せてやるよ」
「何をだ?」
「口で説明するより、実際に見た方が早い。 近くにコンビニはあるか」
「オーソンがそこの裏通りに」
「じゃあ、そこで良い。 レオ、今日の晩飯はコンビニの総菜で良いか?」


DATE : H27.1.19
TIME : 18:32
STID : *UNKNOWN*


「さ、何でも好きなもの買ってくれ。 今日は僕が奢ろう」
「…オゴりで良いのか? 一体全体、どういう事だよ」
「いいから気にするな。 まぁ好きなものを適当に買ってくれ」

龍真の奴は、そう言って照り焼きチキン弁当と鳥そぼろ弁当、スナック菓子類とチョコレート、ペットボトルのジュースなどを次々カゴの中へと放り込んでいく。
それなら、って事で、俺もスパゲティカルボナーラを一つ頂かせてもらった。

「それだけで良いのか?」
「ああ、良いよ」
「じゃあまず、これを見てくれ」

龍真がコートの内ポケットから取り出したのは、スマートタブレット。

電源を押すと、スリープ中だったのか、ゲーム画面へと復帰し、先日見た「還魂のリヴァイアサン」の画面が現れた。

「右上のアイコンで、ステータスが見られるんだが…。 この『109008 Cen』という値に注目してくれ」
「何だこれ?」
「所持金だ。 ゲーム内で、僕のキャラクターが稼いだお金だ」

…10万と9千。 うん、それで?

「で、これをな」

龍真はそこで説明を一旦切り、カゴを抱えるとレジへと持っていく。

「ちょうど2000円になりまーす」
「パースお願いします」
「どうぞ」

パースってのは、携帯共通のwebマネーの事だ。
龍真がレジに携帯をかざすと、軽快な電子音と共に「ありがとうございましたー」と、瞬時に精算が済んだ。

「行こうか、礼雄。 ちょうど2000円で助かった。 説明がしやすくなる」
「…? 一体何が、どういう事だよ」

コンビニを出る龍真の背を追いかけて聞くと、龍真はさっきの携帯の画面を見せた。

「こういう事だ。 さっきの所持金欄を見てくれ」
「『89008 Cen』…」

…8万9千? 金額が減ってる?
確かさっきは『109008 Cen』だったはず。

その差は20000。
そして、支払った金額は2000円。

…おい、まさか、これ。

「そう、そのまさかだ。 これな、ゲーム内で稼いだ通貨が、現実で使えるんだよ」

龍真がニヤリと笑いながらそう言ったが、俺はその唐突な言葉の意味を理解しかねた。
脳内で、今の発言を反芻する。

ゲーム内の通貨が…現実で使える?

ちょっと待て。
それはありえない。
一応これでも経済学部だから分かるが、ゲームと現実世界の通貨制度は全く別物だ。
互換性を持つはずがない。

違う理由を挙げろと言われれば、そりゃいろいろ挙げられるが、一番大きな理由は「貨幣」は「財やサービス」との等価交換で得られるもの、という事。
だがゲーム内には「財やサービス」が存在しないのだ。

働くからこそ給料が貰えるのであって、何もしないで金が貰える、そんな錬金術的な論理は成立しない。

「じゃあ…今のレートは?」

しかし事実として、たった今、龍真はゲーム内の通貨を現実の通貨に換金して見せた。
ならば、これは市場原理などではない。

考えられるのは、課金などでプールされているお金を、プレイヤーの稼いだゲーム内通貨の量で案分している可能性。
だが、オンラインゲームにおいては、プレイヤーが所有する資産が目減りしないので、将来的には必ずインフレーションの一途を辿る。 これはどのゲームでも共通だ。

だから、このゲームの通貨交換にも「相場」があるのは想像に難くない。 いわゆる変動性の換金レート、ゲーム内通貨で10000円を稼いでも、徐々に換金率は100円、10円、1円と下がっていくはずだ。

龍真ならこれくらいの事、説明せずとも理解するだろうと思って放った質問で、事実、奴はあっさりそれに答えたのだが、

「今見ただろう? レートは10分の1で固定。 通貨単位はCenだ。 『銭』と覚えると分かりやすいかな」
「…何ッ!?」

その回答は想像外のものだった。
レート固定? そんなはずはない!
それなら、ゲーム内のインフレーションにどう対応する?
そもそも、原資になる大元の金はどこから出てきたのだ?
それらがさっぱり理解できない。

「まさか、やはり、詐欺…か?」
「冗談言うなよ。 ここまで足を運んで、苦学生の君を詐欺にかけて、何のメリットがある? 疑う気持ちは分かるけど、僕は君を騙したりしない。 それは保証するよ」

そこまで聞いて、俺の脳裏に閃くものがあった。
このお金の原資は、ゲームソフトの代金、つまりダウンロード料だ。

『還魂のリヴァイアサン』のダウンロード料がいくらか知らないが、仮に5000円としよう。
ヒット作の目安と言われる10万本で、粗利益は5億円となる。
これを元にして、プレイヤーにお金を払っ…あれ?

そこまで言った所で、龍真が爆笑し始めた。

「それじゃ、企業の儲けが0どころか、開発費でマイナスじゃないか…。 それに、最初の運転資金はどうするんだい?」
「じゃ、じゃあ…。 一体…?」
「安心してくれ、レオ。 理由はちゃんと説明をするよ。 それとな」

龍真は、端正な顔に、いたずらっぽい笑みを浮かべて言った。

「ソフトのダウンロード料は、無料だ」

<続く>
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  • posted by  
  •  
  • 2014.03/02 17:46分 
  • [Edit]

Re: これは… 


> 俺好みになりそうな予感。
ありがとうございます!
実は、拍手もコメントも頂けてない状態に結構凹んでて、モンハンという素材の偉大さと、自分だけの実力のヘボさにグギギ状態でした…。

> サークルの東西南北中先輩あたりは全員あだなとかで名前ださないほうがスッキリする気がする。
> キャラクター紹介がちょっと多くてごちゃごちゃしてる感じ。

ご意見ありがとうございます!
先輩については扱いが雑だと自分でも思ったので、リライトする機会に書き直したいと思います。

他のご意見については、ちょっと今後の展開をご覧くださいませ!
本当にコメントありがとうございます!
  • posted by 丼$魔 
  • URL 
  • 2014.03/04 12:31分 
  • [Edit]

 

これは、、中2の妄想なのか。
ガンナーず完結してから書けば。

ワンピース途中でやめて、新連載始めたって言えばいいか?
  • posted by け 
  • URL 
  • 2014.03/04 22:09分 
  • [Edit]

Re: タイトルなし 

> これは、、中2の妄想なのか。
> ガンナーず完結してから書けば。
> ワンピース途中でやめて、新連載始めたって言えばいいか?

すいません!
ご指摘はもっともです、反論の余地など微塵もないほどに正論なのは、俺自身よーく分かっております!

ですけど、このネタは今のうちにどうしても書いておきたいのです。
創作の神様が、「よしよし、君にネタあげよう」と言って俺の頭上に落としてくれた物を拾わなかったら、いずれ誰かに取られちゃう!
という危機感が凄いので、今のうちに俺が書いちゃう!
という訳なんです。

ご理解頂けないかもですが、こういうネタって、結構シンクロニシティな部分があってですね、この作品描こうとした途端にビットコインが攻撃受けたりして、やめろよハッカー黙ってろよ、ゆっくり書かせろよ、と思うのですが、こんな理由でガンナーズを差し置いてでも書かなきゃ、という訳なんです。

とにかく、リヴァイアサンズは急いで書き上げます!
そのあとに、ちゃんとガンナーズやるよ!
  • posted by 丼$魔 
  • URL 
  • 2014.03/05 12:22分 
  • [Edit]

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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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