女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#3(6)

ミナガルデの昔、まだ銃槍というものが存在しなかった頃、「工房試作品ガンランス」という名の火属性のランスが存在した。
一部のランサーには人気があった、この「火を噴く槍」に、工房はさらなる火属性を持たせるべく試行錯誤を繰り返していたが、そんなある日、内部に搭載していた炸薬の成形失敗から、偶然にも超高圧のジェット噴流が吹き出す事が発見された。

相手の防御をほぼ無効化する穿孔力と焼殺効果、この発見はただちに「ガトリングランス」や「正式採用機械槍」の火属性の強化機構として採用されたが、その設計上、どうしても衝撃による暴発の危険性が懸念されており、実際に使用したハンター達からも「この火炎機構は、独立した攻撃として分離してはどうか」という意見が相次いだ。

安全な炸薬管理…。 その方法の確立までには、まだしばらくの時間を要したものの、研究者の間では、この時こそが正しい意味での「砲撃」、そして武器種としての「ガンランス」の誕生の瞬間だと解釈している者が多いと言われている。




「どうだ、『砲撃』の味は」
「ほうげき…?」
「知らんのか? エイグリル将軍が導入していた、この武器の機構を」

ガンランスの事は知ってはいる。
砲撃の事だって知っている。
モンスターを灼く炎。
だが、その砲撃とて、自分は完全に防御したはずだ。

「無知は罪だな! 『砲撃』はただの火炎ではない! あらゆる防御を無効化する攻撃だ! それは黒龍の鎧とて、例外ではないのだよッ! ハハハハッ!」

まさか、黒龍の鎧を無効化する攻撃が存在していたとは。
エイグリルは、これを見越してガンランスの導入を強力に押し進めていたのか…!?

「うおオっ!?」

だが、クリス王子は「砲撃」の、さらなる効果を思い知らされる事となる。

長い。 
砲撃のリーチは、予想以上に長いのだ。

片手剣で飛び込むべくフェイントを掛けようとも、ゆらゆらと揺れるバヨネット(銃剣)が王子を威嚇し続ける。

トリガーのワンアクションで放たれるロングリーチの砲撃に加え、鋼鉄の巨盾、さらにはハイメタシリーズという、隙間なく全身を覆う鎧。
砲撃をかいくぐって一気に飛び込んだ所で、あの二人共に致命傷を負わせられる確率は低い。
良くて相打ちだった。

「(ぐ…!)」

少なくとも、この狭い箇所においては、距離を取る以外に対応方法がない。

「いいぞイアニス、グフト! そのまま、王子の脚を殺してしまえ!」

砲撃とリロードを交互に繰り返しながら、ジリジリとにじりよって来る、ガンランス二人組。

「(そうか…。)」

脚を殺す。
この狭い場所で、正面切って戦おうとするからガンランス如きに遅れを取るのだ。
冷静になれば、一見で分かるではないか。
ガンランスの最大の弱点は、その機動力の低さ。
イルモードが足を撃たせたのは、僕の機動力を奪って、ガンランスと同じ土俵に立たせるために違いない。

そう判断したクリス王子は、その場を逃げ出す事を決意した。

目指すは、城の武器庫。
あそこから、何かライトボウガンを持ってくれば良い。

爆発には爆発をもって制する。
鈍重なガンランス相手なら、距離を取って拡散弾でもブチ込んでやれば、連中は火だるまになって息絶えるに違いない。

そう考えた王子は、イルモード達に背を向け、脱兎の如く駆けだした。

「こっちだ!」
「追え!」

だがイルモードは、城の隅々に兵を忍ばせていたのか、あらゆる所から王子を追う声がする。

「くっ!」

クリス王子はそれを避けつつ、廊下を次々と駆け抜け、遂に武器庫へ通ずる廊下の角を曲がろうとした。
だが、その瞬間。

「ああっ!?」

急に、体から重力が消え失せた。
床が崩れ、廊下の中にそのまま飲み込まれていく。
刹那の浮遊、そして転落。

「(…何だ!?)」

転落で全身を強打し、バラバラと降る石に打たれ、天井の穴を見上げた後、ようやく王子は事の次第を理解した。
この城は、太祖レニチェリアの設計で、あらゆる箇所に脱出用の抜け穴が仕込んである。
それを利用した「落とし穴」に掛けられたのだ。

「…!」

イルモードがわざわざ「脚を狙え」と言ったのも、周到に兵を配置していたのも、全てはこのためか。
ガンランスの砲撃で勝てばよし、仮に逃げられても罠へと誘導する、二重の布石。

脱出しようにも、穴の深さは5mほどもあった。
壁面は漆喰で固められており、十分な体重を掛けられそうな傷や凹みはない。
こうなったら、鎧の力で無理に脱出するか、と考えた時、ガッガガッという軍靴が集合する音と共に、頭上からあの声がした。

「クリストファ」

イルモードの声だった。

「質問に答える気はないか」

何だ、と言おうとしたが、王子の喉からは変な音の息が漏れただけだった。

…怯えているのか、僕は!?

「改めて聞く。 ヴォーデンを使って、何を企んでいる」

「…」

「目的は、黒龍の右腕だろう? 知っているのか、その場所を」

「…」

王子は、酸欠の小金魚のように、口をぱくぱくさせていた。
そして、なんとか大きく息を吸い込むと、やっと…。
小さく、声を出した。

「き…。 共感性、だ…。 ゴッドフリートが、言ってた、マルクは、鎧を装備している…。 それで、居場所が…」

だが、イルモードからの返事はない。

「そういう事でしたか」

代わりに答えたのは、カルネラだった。

「良く分かりました。 鎧の共感性に気づかなかったのは、我らの不覚としか言いようがありませんな、宰相」
「ああ、全くだ」
「これで、ヴォーデンの裏切りも確定しましたな」
「そうだな…。 おい、場所はどこだ」

「しゅ、シュゲール、平原」

「…そうか。 クリストファ、よく話してくれた」

予想外のイルモードの言葉。
その意外さに、クリス王子の口の端に、わずかに笑みが浮く。

「褒美をやろう」

もしかして、助けてくれるのか…。

王子がそう思った瞬間、頭の上に、白いモノがポトポトと音を立てて落ちてきた。
それは、寸胴の体に裂けた口を持つ、異形の生物だった。


  *   *


「じゃーん、どお!?」
「おおー」

ヴォーデンとの対決まであと半日、夕方4時頃、俺…マルク=ランディッツとシャルルは、「荊竜の微睡」亭の近くの工房に居た。

シャルルはその日、どこからか調達してきた鉱石を惜しみなく投入して、ハイメタS装備を一気に新調したのだ。
ハイメタシリーズの特徴は、スティールシリーズなどと同様、刃や弾丸を通さないように設計された構造にある。
ただ、男性用ハイメタの「一枚板で作れば防御問題なくね?」的な野暮ったさに対し、女性用のハイメタシリーズは「体に密着させる構造で隙を無くそう!」的なアイデアなのか、割と体のラインを反映する。

頭装備の優美な作り、美しい銀髪もあいまって、実に統一感のある出で立ち。
今のシャルルの姿を例えるならば、白銀の騎士姫…とでも表した方がふさわしいかもしれない。
我ながらこんな表現が素直に出てくるあたり、美人は得だなと思わざるを得なかった。

…あれ?

「…おい、よく見れば、頭がガンナー用のキャップじゃねぇか」
「だって、剣士用のはあまり可愛くないし」
「そういう問題かよ、頭撃たれたら死ぬぞ」
「バケツも買ってるから問題ないわよ」
「サイズ合うのかよ」

ちなみに「バケツ」とは男性用ハイメタU装備(頭)の隠語だ。

「…にしても、貴方は良いの? 結局、何も買わなかったけど」
「これでベストなんだよ。 幸運に恵まれるという、黄金の雌火竜、そのご加護つきなんだぜ。 …上位だけどな」

俺はゴールドルナレジストの胴を叩きつつ嘯くが、シャルルは「ふーん」と疑わしそうな表情で、俺の下半身…クロムメタルの腰と脚を見ながら言う。

「生死を賭けた戦いなんだから、運頼みじゃなくて、もうちょっと実戦的な装備に変えた方が良いと思うんだけど」

それは良く言われる。
野良パーティの際に、「お前ゴルルナかよ」と嫌な顔される事は良くあった。

「大丈夫だよ、頭装備だって防弾性の高い奴持ってるんだからよ、心配すんな」

だからって、俺は別な装備に着替えたりしない。
安易に他人の意見に左右されるのは、俺の流儀じゃない…し、この防具での動きに慣れてるって事も大きいしな。

「まぁ、貴方が良いなら良いけど…」
「悪いな、俺なりにもう覚悟してるから、勘弁してくれや」
「分かったわ、そこまで言うならしょうがないわね。 じゃ、晩飯を食べて、ゆっくり休みましょう。 明日は決戦よ」
「おお」

最後の腹ごしらえに、俺たち二人は最寄りのレストランで食事をする事にしていた。

しかしながら、その道中に、隣の黒龍騎士団長さんが圧倒的な騎士姫オーラを振りまくもんで、野良ハンターだけじゃなく、周囲の一般人も次々と振り返り見る。
中には手を合わせて拝む奴までいる始末だ。
そんな貴人の傍に侍る事に多少気後れしつつ、俺は豪勢なレストランへ向かって、シャルルの背をコソコソと付いていった。


  *   *


「ひゃっ、あひゃああっあっ!」

同時刻、場所はノーブル城。
落とし穴の中のクリス王子を襲っているものは、蠢く多数の白い生物。

クリス王子が、それが生物だと気づいたのは、自分の体に張り付かれ、吸血が始まった時だ。
これは血液を吸い尽くして自分を殺すための罠だと、直感した。

「ふひぃい、いいぃいっ!」

恐怖で半狂乱となり、全身に食いつこうと這い上ってくる無数のフルフルベビーを払い落とそうと、精神錯乱者のような挙動をする王子。
その奇怪極まる舞踏に、周囲の兵士から失笑が漏れた。
だが、イルモードとカルネラは表情を全く変えない。

「おっと、これは意外ですな」
「さすが、黒龍の鎧と言ったところか」

寄生主の危機とみるや、黒龍の鎧はその「自動防御」の能力を十全に発揮し、食らいつくフルフルベビーを「棘」で次々と、かつ的確に串刺しにし、見る間に朽ちさせていく。

「モンスターの体液でも、鎧の動力源になるようですね」
「その割に、体に付いた物だけを狙い撃ちしているのは気になる所だがな」

上で観察していたカルネラとイルモードは、めいめい勝手に感想を呟くが、イルモードの言うとおり、黒龍の鎧は、フルフルベビーが王子の体に取り付いて初めて攻撃を加えていた。
床を這いずっているフルフルベビーにまで積極的に攻撃をしないという事は「敵に攻撃の意志があるかないか」が、鎧の「自動防御」を発動させるトリガーであろうと推測される。

「フルフルベビーは思ったより役に立たなかったか…。 おい、次だ」
「はい」

イルモードは部下に命じ、例の巨大な瓶を持ってこさせる。
穴の中の王子が、フルフルベビーを殆ど死滅させるのを見計らってから、イルモードは声をかけた。

「王子。 最後のチャンスをやる。 よく考えて答えろ…」
「!?」
「もう黙っている事はないか? 竜操術の事とか、口伝されていないか?」
「り、竜操術…? し、知らない」
「我らが本気という事は分かっただろう? 隠した秘密を吐くなら今だけだぞ」
「し、知らない! 本当に知らないんだ!」
「…そうか」

ここで、駆け引き上手ならば、嘘でも「知っている」と答え、ハッタリで時間を稼ぎ、交渉に持ち込むのが最善手だと気づくだろう。
しかしながら、人生経験浅いクリス王子は、バカ正直に「知らない」と事実を述べた。

「再度、確認する。 本当に知らないのか。 鎧の秘密だけじゃない、エイグリル将軍の事でもいい」
「知らない、本当に僕は、何も知らないんだ…!」
「そうか。 なら、もう用はない」

口が堅くて喋らない、あるいは本当に知らないのか。
いずれにしてもこの状態で情報が引き出せないのなら、もう本当に王子から得るものはない。
そう判断したイルモードは、

「投入しろ」「はっ!」

部下に命じて、シェンガオレンの溶解液を穴にめがけて投入させた。

しゅう、という音と共に感じたのは、最初は熱感だった。

「くあっ!?」

穴の中に投入された酸が、王子の全身に一気に降り注ぐ。
髪の毛が一瞬にして雷光ゼリーのように溶けたが、溶解液を浴びると同時に黒龍の鎧の自動防御が発動、全身の皮膚を瞬く間に隙なく覆い尽くす。

「そのまま続行しろ! 一気にだ!」

黒龍の鎧が全身を覆い尽くしたのを確認してか、溶解液は、どうどうと音を立てて頭上から降り注がれる。
ボコボコと泡立つ足下、次々と再生と展開を繰り返す黒龍の鎧の「棘」。

鎧が溶解液に対し、ここまで俊敏かつ的確な反応を示すというのはクリス王子とイルモード、双方にとって予想外だった。
絶対防御のおかげで、溶解液は隙なくシャットアウトされ、皮膚を溶かされないで済んでいる。
眼や粘膜、足の火傷に溶解液が触れていたら、多分激痛で身動きもできなかったろう。

だが鎧は、溶かされる全身の棘を再生させるために、クリス王子の血液を容赦なく使用した。
体力と気力が、それこそ恐ろしいほどの勢いで、根こそぎ奪われていく感覚が、クリス王子を恐怖させる。

「た、助けてくれ! イルモード! 僕は、もう、ダメだ!」

絶望したクリス王子は、遂に叫んではいけない一言を叫ぶ。

「頼む! このままでは、死んでしまう! 早く! 手を貸してくれ!」

そう言って頭上を見上げたが、イルモードは何をするでもなく、ただマントで穴を覆い、溶解液を静かに流し込み続けた。

それは部下に王子の死に様を直視させないことで、志気の低下を防ぐ配慮だったが、それは当の王子にとっては、絶対的な拒否、それを示すサイン以外の何者でもなかった。

「ああ…!」

なんで。 何故こんな事になってしまったのか。
エイグリルの言うことを聞いて、じっと耐えて待っていたのに…。

「(いや、状況の悪化に耐えられずに、僕はヴォーデンを動かしてしまった…)」

だが、身動きせずにはいられなかったのだ。
座して待っていて、勝利の道筋が掴めるのかという疑念もあった。
ただ、この悪化し続ける状況に耐えられなかっただけ…。

「イルモード! 後生だ! 何でもする! だから、ここから出してくれ!」

溶解液の水位は、既に胸元まで達しつつある。
僅かにでも身動きをすると、鎧の棘に隙間ができて、そこから激痛が侵入してくるのが分かる。

逃れようもない死と絶望が自分を覆い尽くす前に、クリス王子は、あらん限りの力を込めて訴えた。

「イルモードォオォオーーッッッ!!!」

だが、頭上からは何の返事も返ってこなかった。

「(くそ…くそぉおおっ! 恨む、恨むぞ、貴様ら…!)」

イルモード。
カルネラ。
エイグリル。
ユリウス。
城に居る全ての人間ども。

皆が、僕を貶め、抹殺しようとしている。

「(何が静かにして待て、だ。 その結果が、これか!)」

「(何が素晴らしき王子、だ。 貴様らの都合の良いように僕を使いたかっただけだろう!)」

「(その結末が、これかッ…!!)」

「(恨むぞ、僕は…。 貴様等の存在、その全てを!!
イルモード、貴様はまともな死に方ができると思うな。
必ず僕が、貴様をもろともに、地獄に引きずり込んでやる!)」

クリス王子の感情が、憎悪の頂点に達したその瞬間。

溶解液の水面に、ボコッと水泡が浮かぶ。
王子は、それを視界の端で捉えていた。

  *   *

「ひゃっ、あひゃああっあっ!」

ほぼ同時刻、場所は「荊竜の微睡」亭近くのレストラン。
ヴォーデンとの最後の決戦のため、腹ごしらえをしようとしていたシャルルとマルクであったが、食事の最中、突如マルクが立ち上がり、奇怪な舞踏を始めたのだ。

「ふひぃい、いいぃいっ!」

その姿は、精神異常者のそれとしか思えなかった。
突如の奇行に、騒然とするレストラン内。

「おふぉおお、おおおっ!」

「ど、どうかされましたか、お客様!?」
「連れの様子がおかしい! 悪いが、離れを用意してくれ!」
「わ、分かりました!」


<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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