女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#3(5)

マルク=ランディッツが死の恐怖に怯えていた夜12時、ノーブル城の王家の間では、イルモードとカルネラが、一部の護衛を側に付け、酒杯を片手に打ち合わせを行っていた。

本日開催された戦略会議では、黒龍の小手、その左手の奪還報告と、ユリウス王子の処遇…廃嫡及び抹殺が決定された。
鎧のほぼ全部位が集まった事を受けて、(帯冠式を予定している聖ジョルジュアにはまだ間はあるものの)、時は来たれりという意見を受けての決定である。

「…しかし、ユリウス王子の抹殺を決定したはよろしいが、いかにして倒すおつもりなのです? 大臣どもの懸念どおり、あの小僧の戦闘能力は、我々の予想以上ですぞ」
「心配は要らん、奴を倒すための材料はもう揃った」
「と、申しますと?」
「分からんか? 我らが持つ、絶対防御の盾」
「盾…。 なるほど、黒龍の鎧! それを装着した者をユリウス王子にぶつける訳ですか!」

カルネラは得心がいったらしく、ポンと手を叩く。

「ああ、『頭』『左腕』『脚』の3部位があれば、奴の貫通弾の連射とて、恐れるにたらぬ。 あの弾丸の嵐を無効化すれば、奴はただの小僧だ」
「しかし、鎧の適性があり、かつ信任厚いものとなれば、かなり数は限られてくると思いますが」
「前も申したが、ヴォーデンを選抜する予定だ。 あの男、なかなかどうして野心家の匂いがするからな」
「…なるほど、ではすぐにでもヴォーデンを呼びましょう」
「呼んだが、城内に居らぬ」
「居ない?」
「ああ、昨日から共を連れて、城外に出ているらしい」
「…どういう事でございましょうか?」
「分からん。 捜索を向かわせたゆえ、間もなく消息は掴めると思うが」
「ふむう」

そう呻くと、カルネラ大臣は酒杯をぐっと空ける。

「なれば、そちらは報告待ちですな…。 それで、クリス王子の方はいかがなさいます?」
「黒龍の鎧の弱点の件だな」
「ええ、こちらでは絶対防御の盾を攻略する訳ですが」
「対策は考えてある。 あの鎧の自動防御、棘という形状がそのまま弱点となるからな」
「と申しますと?」
「あの鎧は、その形状ゆえ、貫通性…いや、透過性の高い攻撃に弱い。 具体的には、炎の中に放り込む、窒息させる、爆破する、など方法は色々ある。 …が」
「多少、大がかりになるのが難点でございますな」
「その通りだ。 かと言って、簡単な罠ではすぐに逃げられる」
「して、どうするおつもりなのです」
「これだ」

イルモードは、なにやらカサカサに乾いた繭のようなものを、テーブルの上に置く。

「何でございますか、これは?」
「卵だ。 もう中身は死んでいるから、剥いて見てみろ」

カルネラがパリパリを中身を剥くと、

「ひっ!?」

その不気味さに、思わず卵を取り落とした。
中に居たのは、白い胴体に、大きく裂けた口。
目も鼻も、手足すらない異形の生物。
その乾燥した死体だった。



「な、何ですか、これは!?」
「フルフルベビーだ。 ハンターズギルドから調達させたものだが、さすがに文官の貴様は知らんか」
「ふ、ふるべび…?」
「そう、飛竜種フルフルの幼体でな、親はポポの体表などに卵を産みつける」

そして、イルモードは異形の死体を摘まむと、

「これの餌は血液でな、卵から孵化すると、宿主から吸血を繰り返すことで成長する」
「なるほど、同じく血液を動力源とする、黒龍の鎧との相性は最悪ですな」
「ああ、こいつを駆除するために、鎧の力を発揮すれば、ますます死が近づくだけだからな」
「しかし、簡単に潰されたり剥がされたりするのでは」
「数は用意してある。 全部潰されるまである程度は削れるだろうし、まだ別に策がある」

そう言って、イルモードは胸元から黄色い液体の入った小瓶を取り出す。

「それは、何ですか?」
「これも、ハンターズギルドから取り寄せたものでな」

蓋を空けると、中の液体をそっとテーブルに垂らす。
すると、クロスが白煙と共に音を立てて焦げた。

「砦蟹シェンガオレンの溶解液弾を採取したものだ。 強酸性で、砦を護る弓兵の一団を全滅させた事もある」

みるみるうちに、テーブルに盆状の穴が穿たれた。

「粘度と揮発性がやや高いのが難点ゆえ、フルフルの唾液と、呑竜パリアプリアの胃酸も混ぜてある」
「おお…! これならば、鎧の防御を透過して、致命傷を与え得ますな…!」
「だろう? 効果的な使用ができるよう、既に下準備は済ませている」
「素晴らしい! さすがは宰相でございます…!」
「後は、いつ決行するか、だが」

その時、王家の間にノックの音が響き、扉の外から声が聞こえた。

「夜分遅く申し訳ありません。 イアニスでございます」

「…ワルプルギスの夜、風は舞い」イルモード。
「木立は唸る、死の迫りくるが如く」イアニス。

「入れ」
「失礼致します! 夜分お疲れの所、大変申し訳ございませんが、緊急のご報告です!」
「何だ、どうした」
「ヴォーデンの件でございますが、クリス王子と結託している様子です!」
「…何だと」


  *   *


「ねぇ、さっさと起きなさいよ」
「もう、疲れたんだよ…。 寝かせてくれよ、外になんて出たくねぇよ…」
「何言ってるのよ、さっさと起きて外に出るわよ! 今日は買い物に出る、って言ってたでしょ!」
「うるせぇなぁ、今更ちょっとした防具を買い足したって、そんなに差はねぇだろ?」
「わずかな差が勝負を決める事はあるわ! 武器防具の扱いを疎かにすると、かならず戦場で裏切られるから!」
「俗信じゃん…。 それに、『果報は寝て待て』っていうだろ」


ここは「荊竜の微睡」亭の2階、シャルルの個室。
上半身を引っ張って俺を起こそうとするシャルルと、頑強にうつ伏せて抵抗する俺。

…だったが、いきなりパッと手を離されて「おがっ!」と、床で顔面をしこたま強打した。
そんな俺の姿を見て、シャルルは嘆息する。

「貴方のダメな部分は、それね」
「あ?」
「常識という言い訳で、自分の限界を決めちゃってる」

防具の買い足しが…わずかな差って言った事?

「いや、これは妥当な判断だろ?」
「真の強者には、そんなもの必要ないわ」

絶句した俺に、彼女は二の句を告げる。

「自ら強者たらんとするなら、普通では考えつかないような事を、あえて積極的にやるべきよ。 言ったわよね、これ」
「なんかそれ『普通』じゃダメって言ってるみたいだな」
「ええ、そうよ。 強者は常にマイノリティだから。 大多数の人と同じ考え方をすれば、知らず『そちら側』に属する事になるわ」
「…。 強者には、常識なんて必要ない、か」

その、僅かな差でしかないようなモノのために、時間や労力を掛けるのは、酷く無駄な気がする。
…だが、それこそが強者と弱者の差を分かつものなのだろうか。

「そうよ! 貴方はもっと、自分の可能性を信じなくちゃ! 貴方の未来を!」
「可能性、って…」

なんつー俺にふさわしくない言葉だ。
だが、シャルルは熱っぽく続けた。

「未来は、少しづつ変えていくものよ。 自分の可能性を信じて、動いて、そうやって積み上げていった果てに、結果が残るわ!」
「明日の戦闘だってそう。 少しでも、生き残る可能性を探しましょう? 万が一、が本当に起こるかもしれないから!」
「もしも明日を乗り切れば、この経験は、きっと貴方の中での財産になるわ。 大軍に臨んでも自分は負けない、って!」

いやいや、大軍相手に負けないとか、いくら何でも壮大すぎるだろ。
確かに、ヴォーデンとの対決は明日の朝、否応なしに来る出来事だけど、それに勝つなんてあまりにもリアルじゃない。
それに…。 実際の所は、援軍で勝つんだよな、俺たちは?

「いいえ、もし貴方が、ある程度自分の実力に自信があれば、そうは思ってないはずよ」

しかし、シャルルの話の流れからは、援軍の様子は微塵も感じられなかった。
本気で俺たちだけで戦う気なのか。

「ま、まぁ、俺がもうちょっと強ければ、そう思えるかもしれないけど…」
「そうよ!」

しかも断言された。
っていうか、シャルルの熱意に押されてるな、俺。
昨晩、妄想に負けて泣いてたのが、なんか恥ずかしく思える。

「どんな未来も幸福も、自分が決めるものよ。 辛い訓練の日々だって、あぁ、充実した一日だったな、自分は強くなれたな、って思えば辛くなくなる」

「…自分が、決める」
「そうよ。 引き合いには出したくないけど、街に住む大抵の人は、スラムに住む孤児たちより幸福のはずよ。 普通に生きられる…そのありがたみに、自分で気づいていないだけ」

それは引き合いというか、比較対照になってないだろ…。
まぁ、明日をも知れぬ人々と比べれば、確かに俺の人生だって幸福なのかもしれない。
ただ、周囲と比べてそう思えないから、相対的に不幸に感じるだけで…。

「だから、行きましょう? 同じ一日は一度しか来ないわ。 もし、貴方の言うように最後の一日なのなら、なおさら良い日にしたいのよ」

そう言って、シャルルは俺に手を伸ばす。
俺は、ちょっと戸惑いつつも…。 自らの手を伸ばしていた。

「最後の日が貴方と過ごせてまんざらでもなかった、って思わせてよ」

…いや、そこはお世辞でも「貴方と過ごせてよかった」だろ。 本音出てんぞ、ぉぃ。

「…分かった。 お前の説得聞いてたら、ちょっとはやる気が出てきたよ」
「でしょ?」
「ところで、やる気ついでに、ちょっと聞きたい事があるんだが…。 クリス王子って、どんな声なんだ?」

それを聞くと、シャルルの表情がふと強ばった。

「まさか、鎧から声が聞こえたの?」
「ああ、昨日の晩な。 でも、若者じゃなく、老人みたいな声でな…。 とにかく気味が悪かった」
「老人みたいな声?」

首を傾げたシャルルは、「クリス王子は、男性にしては結構高い声だけど…」と返事する。

…なら、俺の聞いた声は、どうやら別人らしい。
あるいは何かの理由で、同じ人物の声が変質しているのか。

「で、その老人の声は何て言ってたの?」

内容から王子本人かを確認しようとしてか、シャルルはそんな事を聞いてきた。

「何て、って言われても…」

この鎧は、「俺の本当の欲望を思い出すな」と言ってた。
心当たりはない、というか、この状況でそんな事に心を砕いている余裕はないのだが、

「いや、特段意味のある言葉は発してなかった」

なんとなく本当の事を言うのが怖くて、俺は言葉を濁した。

「うわ、意味をなさないうめき声だけ? それは怖いわねぇ」
「ああ、かなりビビったぜ…。 そういや、じぇ…ユリウス王子は、この小手を『呪われし王者の小手』って言ってたんだけど、何か意味あんのかね?」
「何それ? そんな表現、初めて聞いたわ」
「例えば、この鎧、文字通り呪われてるとか」

何せ装備したら外れないしな。

「…そうね、そうかも。 もしかしたら、王の霊魂がその鎧に宿っているのかもね」
「ファッ!?」

だが、シャルルの予想外の返事に、俺は変な声を上げてしまった。

「その右腕は、先代の三国王、アルムード公が生涯を通して身につけてたものなのよ。 先王は短命だったけど、その夭折は、鎧に命を吸いつくされたから…と皆に噂されたわ」
「ま、マジで?」
「ええ、だからその鎧の中に居たのは~、きっと先王の幽霊よ~」

シャルルは調子に乗っているのか、手をブラブラさせながら俺にそう説明する。

「ちょっ、そんな話は勘弁してくれよ、マジで!」
「あら意外、そんなのダメなの?」
「理屈で納得できない出来事は苦手なんだよ!」

だが、悲鳴を上げる俺の姿を見て、シャルルは笑うばかりだった。

「実際は、きっと心労で倒れられたと思うんだけどね…。 『弾薬庫』と呼ばれたこの国、外交に臨まれる先王の御尊顔には、いつも深い皺が刻まれていたわ…。 父の悲運の姿を見て、呪われた…と表現したのかもしれないけど」
「へー」
「…でも、まじめな話、その右腕にアルムード公の意識が残っててもおかしくないわ」
「だから、そういう事言うな、って!」
「血こそが、命の源泉だから。 『竜の魂は、血と共に蘇る』…ってね」


  *   *


場面は、同時刻のノーブル城…。
クリス王子と、彼を捜してやってきた、イルモードとカルネラとの邂逅へと移る。

城の廊下で、唐突に邂逅した3人。
だが、イルモードは、基本的に些事でクリス王子に面会しようとはしない。
まして、政務で忙しいはずの白昼に、堂々と姿を見せた事は何かある。
そう直感し、クリス王子は警戒で身を固くした。

「ここにいらっしゃいましたか」
「どうした、わざわざ僕を探しに来るなんて、何か用か」
「緊急の案件で、王子にお伺いしたい事がございまして」
「何だ。 …今更、僕に何を聞きたいって言うんだ」

「ヴォーデンの件です。 何を企んでおいでですか」
「!」

イルモードは、躊躇する様子もなく踏み込んできた。
その直球すぎる質問に、目を見開き驚愕する王子。

「…何のことだ?」

イルモードとカルネラは、その反応で確信を得たか、微笑を浮かべて質問を継いできた。

「ごまかしは効きませんぞ、王子。 こちらは、二人が結託しているという確証は得ておるのです。 ヴォーデンを使って、何をしようとしているのです?」イルモード。
「もしかすると、黒龍の鎧…。 その最後の部位、右腕の事ですかな?」カルネラ。

イルモードとカルネラの推測は、正鵠を射ていた。

「…だとすれば、何だと言うのだ」
「今日は、素晴らしい日だと思いませんか」 
「…何がだ?」
「一時は諦めかけた鎧の収集が…。 今ここに、現実のものとなる予感が、濃厚に薫ってくるのですよ!」

そう宣言した。
それは誰がどう見ようとも、明らかに王権簒奪の意思表明だった。

「貴様…! それが臣下の態度かッ!」
「うっは、ハハハハッ!」

だが、イルモードは王子の激昂を哄笑で返す。
そして、クリス王子を初めて正面から見据え…。

「黙ってろ、クソガキ」

艶のない漆黒の双眼で、王子を射すくめながらそう言った。

「クリストファ。 もう貴様などに遠慮する必要は無くなった。 この国は、俺が貰うぞ」
「貴様ァ!!」

いずれ来ると思っていた日が、遂に来た。
しかも、予想より遙かに早く。
王子は震えながらも、剣の柄に手をかける。
今、こいつらをここで殺さなければ、自分が殺される。

「うっおぉ…。 おおおおおおぉぉっ!!!」

自分の身に迫る命の危機、その直感は、直接攻撃されていなくとも、黒龍の鎧の力を起動させるに十分だった。
クリス王子は、腰の片手剣を抜きながら、イルモードに襲いかかっていく。

…鎧を起動させるのは最小限度に。
「絶対防御」さえあれば、がむしゃらな剣撃でも、いずれ奴の喉に刃は届く!

「おおおオおッ!!」
「イアニス! ダフト!」

だが、イルモードはクリス王子と斬り合うつもりはないのか、いつの間にか背後に控えさせていた部下と入れ替わった。

「がンラんス…!?」

前に出てきた部下二人は、共に鋼鉄の重装備だった。
ハイメタシリーズ一式と、近衛隊正式銃槍か。

「そレガ、どうシタッ! 退けッ!!」

剣を大上段に掲げ、疾風と化して特攻する王子。
だが、先制攻撃はガンランス側だった。

バァン、バァンというくぐもった炸裂音と共に、眼前で炸裂する、爆炎の華。

「(…!!)」

同時に、脚を灼く激痛。
脚から力が抜け、バランスを崩したクリス王子は、無様にも転倒した。

「その調子だ! 王子の足を止めろッ!」
「グ…!」

転倒した王子は、すかさず両腕で体を起こしつつ、廊下をゴロゴロと転がって距離を取る。
なりふり構わぬ回避行動だが、よもや黒龍の鎧を装備していて、ダメージを喰らうとは思っていなかったのだ。
回避しなければ次の攻撃でやられる、という直感がクリス王子を突き動かした。

「(ダが、何だ、今ノ攻撃は…?)」

黒龍の鎧は、地上最強のはず。
全ての攻撃を防御できるはずなのに、なぜダメージを負わされた…?

廊下中に、もうもうと立ちこめる白煙。
その白煙を吐いているのは、ガンランスの砲身だった。

「(…!? 僕ハ、アレで撃たレタのか…?)」

「どうだ、『砲撃』の味は」
「ほうゲキ…?」
「知らんのか? エイグリル将軍が導入していた、この武器の機構を」

ガンランスの事は知ってはいる。
砲撃の事だって知っている。
モンスターを灼く炎。
だが、その砲撃とて、自分は完全に防御したはずだ。

「無知は罪だな! 『砲撃』はただの火炎ではない! あらゆる防御を無効化する攻撃だ! それは黒龍の鎧とて、例外ではないのだよッ! ハハハハッ!」


----------------------------

ここで、筆者からガンランスの砲撃が、黒龍の鎧の防御を透過した理由について少し触れておきたい。

第二次世界大戦中、戦車の装甲を破壊するために生まれた兵器があるが、それらを成形炸薬弾(HEAT)と言う。
RPG7などの対戦車兵器、その円錐形の砲頭の部分と言えば思い出せる方も多いであろう。

あの兵器が戦車装甲を破壊できる理由は2つ、モンロー効果により、円錐形の窪みを持つ爆薬を後方(円錐の頂点がある方向)から起爆すると、爆発は円錐の中央部で収束し、指向性を持つ高温高圧の衝撃波となる。

加えて、炸薬の内側に張られた合金が、爆轟(爆発)によってユゴニオ弾性限界を越える圧力にさらされると、金属は流動性を持ち、マッハ20の速度で打ち出され、このメタルジェット、流体金属の槍によって戦車装甲を破壊する事が可能となる。 この現象をノイマン効果と言う。

モンスターハンターの世界においては、ガンランスの砲撃は爆圧を利用した攻撃と設定されており、純粋にモンロー効果のみを利用していると考えられる。
だが、それでも生物に対しては十分すぎる破壊力を持つ上、その穿孔力と焼殺効果が、透過ダメージと火属性ダメージとして表現されている、と解釈するのが最も妥当であろう。
作中でもこの解釈に準拠し、爆圧による衝撃波と高熱のジェット噴流が、鎧の防御を透過して王子の脚にダメージを与えている。

なお、強風の日に女子高生のスカートが翻り、ぱんつ見えそうになる例のアレは、マリリンモンロー効果と言われる。 こちらも覚えていて損はないのでよーく覚えておくように。

       (※出典:モンスターハンター大辞典より)

----------------------------

「うおオっ!?」

クリス王子は「砲撃」の、さらなる効果を思い知らされる事となる。

長い。 
砲撃のリーチは、予想以上に長いのだ。

片手剣で飛び込むべくフェイントを掛けようとも、ゆらゆらと揺れるバヨネット(銃剣)が王子を威嚇し続ける。
トリガーのワンアクションで放たれるロングリーチの砲撃に加え、鋼鉄の巨盾、さらには隙のない鎧。
砲撃をかいくぐって一気に飛び込んだ所で、あの二人共に致命傷を負わせられる確率は低い。
良くて相打ちだった。

「(ぐ…!)」

少なくとも、この狭い箇所においては、距離を取る以外に対応方法がない。

「いいぞイアニス、グフト! そのまま、王子の脚を殺してしまえ!」

砲撃とリロードを交互に繰り返しながら、ジリジリとにじりよって来る、ガンランス二人組。

「(そうか…。)」

脚を殺す。
この狭い場所で、正面切って戦おうとするからガンランス如きに遅れを取るのだ。
冷静になれば、一見で分かるではないか。
ガンランスの最大の弱点は、致命的なほどの機動力の低さ。
イルモードが足を撃たせたのは、機動力を奪って、ガンランスと同じ土俵に立たせるために違いない。

そこまで判断したクリス王子は、その場を逃げ出す事を決意した。

目指すは、城の武器庫。
あそこから、何かライトボウガンを持ってくれば良い。
爆発には爆発をもって制する。
鈍重なガンランス相手なら、距離を取って拡散弾でもブチ込んでやれば、連中は火だるまになって息絶えるに違いない。

そう考えた王子は、イルモード達に背を向け、脱兎の如く駆けだした。

「こっちだ!」
「追え!」

だがイルモードは、城の隅々に兵を忍ばせていたのか、あらゆる所から王子を追う声がする。

「くっ!」

クリス王子はそれを避けつつ廊下を突っ走り、遂に武器庫への扉へと繋がる、その通路の角を曲がろうとした。
だが、その瞬間。

「ああっ!?」

急に、体から重力が消え失せた。
床が崩れ、廊下の中にそのまま飲み込まれていく。
刹那の浮遊、そして転落。

「(…何だ!?)」

全身を酷く強打し、バラバラと降る石に打たれ、天井の穴を見上げた後、ようやく王子は事の次第を理解した。
この城は、太祖レニチェリアの設計で、あらゆる箇所に脱出用の抜け穴が仕込んである。
それを利用した「落とし穴」に掛けられたのだ。

「…!」

イルモードがわざわざ「脚を狙え」と言ったのも、周到に兵を配置していたのも、全てはこのためか。

脱出しようにも、穴の深さは5mほどもあった。
壁面は漆喰で固められており、十分な体重を掛けられそうな傷や凹みはない。

こうなったら、鎧の力を解放して無理に脱出するかと考えた時、頭上でガッガガッという軍靴が集合する音と共に、あの声がした。

「クリストファ」

イルモードの声だった。

「質問に答える気はないか」

何だ、と言おうとしたが、王子の喉からは変な音の息が漏れただけだった。

「改めて聞く。 ヴォーデンを使って、何を企んでいる」

「…」

「目的は、黒龍の右腕だろう? 知っているのか、その場所を」

「…」

王子は、酸欠の小金魚のように、口をぱくぱくさせていた。
そして、なんとか大きく息を吸い込むと、やっと…。
小さく、声を出した。

「き…。 共感性、だ…。 ゴッドフリートが、言ってた、マルクは、鎧を装備している…。 それで、居場所が…」

だが、イルモードからの返事はない。

「そういう事でしたか」

代わりに答えたのは、カルネラだった。

「良く分かりました。 鎧の共感性に気づかなかったのは、我らの不覚としか言いようがありませんな、宰相」
「ああ、全くだ」
「これで、ヴォーデンの裏切りも確定しましたな」
「そうだな…。 おい、場所はどこだ」

「しゅ、シュゲール、平原」

「…そうか。 クリストファ、よく話してくれた」

予想外のイルモードの言葉。
その意外さに、クリス王子の口の端に、わずかに笑みが浮く。

「褒美をやろう」

もしかして、助けてくれるのか…。

王子がそう思った瞬間、頭の上に、白いモノがポトポトと音を立てて落ちてきた。
それは、寸胴の体に裂けた口を持つ、異形の生物だった。

<続く>
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*Comment

3日連続更新! 

クリス王子を見ていると、装備だけG級の寄生地雷ハンターに思える。
鎧や権力が真の強さではない。もちっと策略を働かせるかと思いきや……
  • posted by ユラ 
  • URL 
  • 2013.10/11 07:30分 
  • [Edit]

 

ええ、クリス王子は人間的に未熟な若造という設定なので、やることなすことツメが甘いのです。

しかし甘過ぎですかね?
いいようにやられてる様子はおバカな感じに受け取られるでしょうか?
  • posted by 丼$魔(管理者) 
  • URL 
  • 2013.10/13 20:56分 
  • [Edit]

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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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