女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#3(4)-1

場面は「荊竜の微睡」亭。
その2階、シャルルの部屋にて、黒龍騎士団長のシャルル、笹神龍心の執事ハンカーン、G級ハンターのヤチヨ、ディルガーウェン、フレンディの5人は、ヴォーデンとの平原戦闘に対抗するための策を巡らせていた。

「ちょっと待つにゃん、けむり玉を投げたら、こっちも相手の場所が分からなくなるにゃん? それに、敵はすぐ効果範囲の外に出ようとするはずにゃん」
「なら、ペイント弾で狙撃すればどうか? けむり玉の効果範囲から逃れようとするなら、逆にけむり玉で追い立てる事も可能なはず…!」
「いや、この地形で、遠距離狙撃が可能な地点はなかろう? それにそもそも、これではビアンカ殿の配置も重要でござらんか? ヴォーデンが騎馬を使っていたり、ビアンカ殿を人質としていれば、こちらは手も足も出ないでござる」

ところが、3人組は普段の態度に反し、あれこれと積極的な献策をしてきた。

「こ、こらっ! そんな一遍に言われたって、整理しきれないわよ!」

一瞬、何を言われたのか理解できなかったシャルルは、3人の意見を理解すべく制止を掛けたが、

「なるほど、あなた方の意見も至極もっともですな」
「えっ…?」

ハンはむしろ3人組に同意し、作戦会議をどんどん進めていく。

「言われればそうにゃあ…。 ビアンカちゃんがどういう状況に居るのかを把握するのが肝心かもにゃん」
「左様、人質を盾に降伏を迫られたら、打つ手なしでござる」
「つまり、目的は二つ。 ビアンカ殿の奪回と、ヴォーデン打倒は、別に考えねばならんという事だな」
「ならば、こちらも二手以上に隊を分ける必要がござるな」
「うむ、それには貴方が指揮を取るのがふさわしかろう、ハン殿」
「むろんよ…! ビアンカ…様は、儂が必ず取り返してみせる!」

結局シャルルは、作戦会議が飛ぶように流れていくのを、呆然とした様子で眺めるだけだった。

「ちょ、ちょっと待ってよ…。 せっかく私も作戦に参加したいのに…。 ふぇぇ…」



俺、マルク=ランディッツは、その日の昼過ぎごろに目を覚ました。
隣では、何やらワイワイと語り合う声が聞こえる。
壁に耳を当ててみると、ああでもないこうでもない、と言っている声が聞こえるから、どうやら例の参謀たちが帰ってきたようだ。

「…頼むぜ、シャルル」

これ以上の盗み聴きは、うっかり作戦を知ってしまうかもしれない。
俺は壁から耳を離すと、とりあえず腹ごしらえに階下へと向かった。
まともに食事ができるのも、今日の昼夜、明日の朝昼晩。
あと5回だけかもしれねぇのか…。

階下は、ちょうど昼飯時という事もあって、それなりに盛況だった。
俺は適当なカウンター席を見定めると、ウェイトレスの姉ちゃんを呼んで、

「お姉ちゃん、キングターキー。 肉のソースはキングトリュフで、あとサラダにシモフリトマトとロイヤルチーズのスライス、黄金芋酒もよろしくな」
「かっしこまりましたー☆」

と、ガノトトス戦で稼いだ金が一気に消え失せるレベルで昼飯を注文した。
死にたくはないが、覚悟はしとこう。
心残りがないように、喰いたいモンは遠慮なく喰っとく。

「お姉ちゃん、君のスマイルはおいくら?」
「こちら、お勘定置いときまっすねー☆」

ついでにやりたい事もやっとこうと思ったのだが、サラッと逃げられた。 ま、そりゃしょうがねぇか。

食事後、俺は黄金芋酒を何本かテイクアウトする。
もちろん部屋飲み用だ。
泥酔すれば、王子から精神を読まれずに済むしな。
…俺、完璧! 自堕落人間の本領発揮だぜ!


  *    *


「まさか、僕を裏切っておいて、おめおめと戻ってくるとは思わなかったぞ、ヴォーデン」
「裏切り…? はて、何の事でございましょう?」
「シラを切るなッ! 何故、シュゲール平原にシャルルを呼び出した!? 覇道を護るのが騎士の役目、と放言したのは誰の口だッ!!」

場面は、ノーブル城の城庭の一角。
クリス王子が、部下の裏切り行為に悶々としていた最中、こともあろうか、その当人であるヴォーデンは、堂々と王子の前に姿を見せたのだった。
事のいきさつを問いつめるべく、王子は人気のない城庭にヴォーデンを呼び出した。

「ああ、なるほどですね…。 ご安心下さい、それは王子の誤解です」

激昂する王子に対し、ヴォーデンは狼狽するでもなく、静々と頭を垂れる。

「誤解…だ、と…!?」
「はい。 王子の仰るとおり、シャルル将軍を呼び出す必要はございませんでした。 しかし、あの場でマルクのみを呼び出そうとも、当然のように将軍は同道してくるでしょう」
「…」
「縁の深い貴方様ならば、シャルル将軍の気質をよくご存じのはずです。 思い出してみて下さいませ。 一人呼び出すも、二人呼び出すも同じ結果となります」

確かにその通りではある。
その性質、騎士の鏡の如きシャルルは、マルク一人を呼びだした所で、決して見捨てたりはしないだろう。
その辺り、ヴォーデンの憶測は正しいと思えた。

「そして、覇道を護るのが騎士と申しましたのは、クリス王子の印象を傷つけぬためでございます」
「何? 僕の印象…?」
「ええ、マルクの鎧を奪うために、我々は人質作戦を実行しました。 ですが、それをクリス王子の指示と知られては、シャルル将軍からの印象は良からぬ物となりましょう…。 故に、あの作戦はイルモード宰相の指示と偽ったのです」
「…」

王子には、返事ができなかった。
ヴォーデンの屁理屈は、一応筋が通ってないでもない。
だが、あの突発的な強襲の最中に、そこまで気を回す事ができるのかと問えば、それは極めて疑わしかった。

「しかし…。」

その疑念をぶつけた所で「王子がが未熟だからご理解頂けなかっただけです」と切り返されれば、返事のしようもない。

王子の躊躇を見たヴォーデンは、密やかに嘆息しつつ言う。

「まだお疑いですか? そもそも、マルクが逃亡し、シュゲール平原に来なかった場合、王子の「千里眼」がなくては、マルクのその後を追跡できません。 故に、この状態で王子を裏切るなど、ありえない事です」

今度は、利害を絡めて説明してきた。
確かに、それもそうなのだが…。
どうしても、胸にくすぶる危機の直感を拭えない。

「…では、貴様は今後どうするつもりなのか」
「この好機を逃しては損です。 必ずやシュゲール平原にてマルクを叩きつぶし、黒龍の鎧を奪還いたします」
「どうやってだ? 黒龍の鎧は手強いぞ」
「いえ、もう既に対応策はいくつか考えております。 例えばの話ですが、爆弾で吹き飛ばすという方法もございます」
「貴様!」
「もちろん、シャルル将軍がいらっしゃる以上、その方法は使えませんが」
「じゃあ、どうするというのだ」
「現在、考えているのが『状態異常弾』です。 これで二人を狙撃し、麻痺あるいは睡眠状態にして確保します」
「待て…」

一瞬、鎧の秘密を伝えるかどうか悩んだが、どうせいずれは知れる事、と覚悟を決めると、クリス王子はヴォーデンに忠告した。

「鎧を身につけていると、状態異常に対して耐性が備わる。 その方法ではマルクを捕らえられん」
「…ほう、そうなのですか」

ヴォーデンの目が怪しく光る。

「耐性と言うと、どれほどの? まさか、状態異常弾の集中射撃にも耐えるほどの?」
「僕思うに、多分全ての状態異常を無効化する」

王子が「多分全て」という表現をしたのは、イルモードが用意する食事の味が毎回変わっていたからである。
思い出してもゾッとしないが、多分様々な毒が、様々な配合で混ぜ込まれていたのだろう。

致死性の毒は使われなかったと信じたい。
もしそうならば、自分が生きている事だけで、鎧の耐性の全容は、既にイルモードに知られているはずだから。

それを懸念しつつ、王子は相手の反応を待った。
ヴォーデンは「状態異常無効化」の発言を聴くと、思わず息を飲み、頭を振って思索する様子を見せるが、

「なら、有効なのはシャルル将軍に対してのみ、ですね」
「…そうだな。 それに、状態異常弾は貫通性が低い。 鎧の防御を貫くのは、まずもって無理だ」

確かに、シャルルにとって状態異常弾は有効であろうが、もしもマルクが身を挺してシャルルを庇えば、鎧の防御によって命中率は大幅に下がる。

「いえ、その場合の対応法はございます。 既に、貫通性が低い弾丸でも、場合によっては命中させられる事を確認しております」
「どうやってだ」

「それはお答えできません」

予想外の答えに、クリス王子はしばし固まる。
何故、と問うよりも早く、

「黒龍の鎧を装着した者同士では、意志の疎通が可能。 私がその方法を伝えれば、貴方様からマルクを通し、シャルル将軍にも知れるやもしれませんゆえ」

と釘を刺された。

「今回の作戦、必ずや成功させなくてはなりません。 秘密の漏洩は失敗に繋がります」

「しかし…。 今、マルクは、酒を飲んでいるんだ」
「酒?」

予想外の話題に、怪訝な顔をするヴォーデン。

「ああ、僕に思考を読ませないためか、作戦の立案はシャルルに任せて、マルクは一人酒を飲んで寝ている」
「…なるほど、面白いですね」
「だから、今なら大丈夫だ」
「お気持ちは分かりますが、やはり、謹んでご辞退いたします。 私も酒は嗜みますが、意識を失うほどの下衆酒をした事はありませぬゆえ」
「貴様…!」

秘密を打ち明けたにも関わらず、徹底した秘密主義。
クリス王子は、怒気をもはや隠そうともせず、ヴォーデンに掴みかからんばかりの勢いで睨みつける。

「(やはり、この男は自分を裏切るつもりだ…。 鎧を手土産に、イルモード達へと改めて取り入る気だ!)」

だが、ヴォーデンは王子の怒気など、そよ風のように受け流し、

「王子、これも確実を期しているゆえとご勘弁下さいませ。 つきましては、軍備を揃えるため、さらなるご援助をお願いしたく思うのですが」

あろうことか、怒り狂っている相手に兵と金を寄越せと、そう放言した。


  *    *


「マルク、マルク…! 起きなさい、もういい加減ゆっくり寝たでしょ? …うわっ、酒くさっ!」
「うるせぇなぁ、母ちゃん、もうちょっと寝かせてくれよぉ…」
「誰がアンタの母ちゃんよッ!」
「おごがッ!」

すやすやと心地よい安息を貪っていた俺。
その顔面に、いきなりの鉄拳制裁が加えられ、俺は泣きながら目を覚ました。

「痛ぇッ! てめ、シャルル、何すんだよッ!」
「あのね、いつまで寝てるの!? もう夜よ! 猶予はあと1日よ!」
「へっ!? マジで!?」

部屋の置時計を確認したら、本当に夜の10時だった。
昼から寝てたから…まる8時間以上か。
酒を飲んでいたとはいえ、よほど疲れてたんだろうな、俺…。

「で、何で起こした? 何かあったのか?」
「何も」
「…え? 何も? ってどういう意味? 作戦が出来たから、俺を起こした訳じゃないのか?」
「悪いけど…」

シャルルは薄暗がりの中、沈痛な面持ちで言う。

「作戦は、ない事になったわ。 だから、早めに貴方にも覚悟して欲しくて」
「…はぁ?」

どういう事だよ、皆と作戦を練ってたんじゃねえのか? 自慢の参謀はどうしたんだよ、と俺が反駁すると、シャルルは言いにくそうに返事した。

「確かに、今朝方から、知り合いのG級ハンター何人かで、ビアンカの救出作戦を練ってたの」
「ああ、それで!?」
「それで、圧倒的に戦力が足りない、って結論になったのよ。 それで皆は『勝ち目なし』と判断して、去っていったわ」
「去ったぁ…? それって、誰も居ないって意味?」
「そう、私と貴方以外には」
「おいおいおい、ちょっと待てよ! お前、必ず策を練ってみせるって言っただろ! その挙げ句が特攻かよ!」
「ごめんなさい、こんな結果になって…」
「お前…」

シャルルは黒龍騎士団長とは思えないほどに、しおらしい表情を浮かべ、弱々しく俺に謝罪した。

「本当に…。 貴方には何と謝ったら良いか…」

それはまるで、年相応の小娘のような、か弱い姿。
歴戦の騎士にはあまりにも似つかわしくなかった。

そう思った時、俺の脳裏に天啓が走る。

「(…あ、もしかして、これが作戦?)」

そう。 そうだよ! そうに決まってる!
俺は突如閃いたアイデアに、思わず変な声が出そうになった。

本当は参謀たちが、会心の作戦を立案したのだ。
しかし、俺にそれを伝えると、鎧を通して、王子にも聞かれてしまう。
なので、特攻する事になった…と嘘を付いて、油断を引き出す作戦に違いない!

じゃあ、これ以上の思索は危険だな。
ちょっと不安だが、言われるがまま戦場に臨むのが最上の対応のはず。

「…分かった。 確かに、ボウガンの大軍に挑むとか、正気じゃねぇもんな。 …ビビっちまうのも当然だ」

内心の興奮を隠し、俺は理解したそぶりの演技をしてみせる。
どうだ、これで俺も作戦を把握したのが伝わっただろ、シャルル?

「ごめんなさい。 特攻する事になるけど、覚悟を決めてね」

だが、その返事に対し、シャルルは俺を正面から見据え、身を乗り出して両手をガッシリと握ってきた。

…おいおい、何だよ、あまりに迫真に迫ってるじゃねーか。
不安にさせんなよ、と思いつつ、俺も演技を続けた。

「…分かった。 よろしくな、シャルル」
「こちらこそ、よろしく。 まさか、最後の一日を貴方と過ごす事になるとは、思わなかったわ」

細かい部分まで、演技が徹底してるなぁ…。

「じゃ、行きましょう」
「どこへ?」
「隣の部屋。 もう特攻しかないから、『盤戯』であらゆるシミュレーションを重ねましょう? で、明日になったら、防具を買いに行きましょう」
「…防具!?」
「ええ、できるだけ上等な物を。 可能な限り、生き延びる可能性を高めるために」

ちょっと待て。
これ、演技だよな?
本当に特攻する訳じゃねぇよな?

あまりに真剣な、シャルルの表情。
その真摯さが、もしかしてという疑念を抱かせる。
彼女の小さな背に付いていくことに、俺は底知れない不安を感じた。

だが、だからと言って他に取る方法がある訳でもなく…。
俺はただシャルルの後を追うしかなかった。


<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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