女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#3(1)

逃走先のアラティゴ村で、俺たちは紅龍騎士ヴォーデンの奇襲を受けた。
結果、俺達のパーティは分断させられ、残ったビアンカが奴らの策に落ち、連れ去られてしまう。
ビアンカを取り戻す条件は、2日後にシュゲール平原に俺たち二人で赴くこと。

…奴らの条件はそれだけだったが、多分俺たちは、そこで軍隊に囲まれて殺されるのだろう。
本当の事を言えば、逃げたかった。
今すぐにでも国境を越えたかった。
だけど…。

「…なあ」

俺は、部屋の片隅で、じっとうずくまっているシャルル…黒龍騎士団長殿に話しかける。

「何」
「やっぱ、戦うつもりなのか」
「もちろん。 彼女を見殺しにはできないし、逃げても無駄なのは分かったでしょう?」

そう。
右腕に取り付いた「黒龍の小手」がある限り、俺の居場所はずっと探知される。
どこにどう逃げようとも無駄、らしい。

「ビアンカの奴を、取り返せるのか」
「それは不明ね。 ただ、全力は尽くす」
「不明って…。 何か知らないのか、相手の人員とか」
「残念だけど、紅龍騎士団は寄せ集めの軍隊だから、戦力が測りがたいのよ」
「ちっくしょ、それじゃただの特攻じゃねぇか」
「でも、黙って待てば、100%死ぬわ。 延々追跡されて、終わらない持久戦に持ち込まれるだけよ」
「分かってるよ」



ビアンカがさらわれた後、シャルルはアラティゴで馬を借り、ここノーブル城近く、彼女が元々根城にしていた場所、「荊竜の微睡」亭の近くまで戻ってきたらしい。

「らしい」というのは、俺は馬に乗っている間、目隠しと耳栓を装備させられてたから、本当の事は分からないのだ。
鎧の『共感性』によって、居場所を察知される事を防ぐためらしいが…。

その話が本当なら、何故シャルルがわざわざノーブル城下まで戻ってきたのか、という疑問はある。
まぁ、居場所を探知されないための方便だろうから、詮索したところで無意味だが。

時刻は既に夜明け近く、ここまで街道を馬で飛ばしてきた。
お互い結構な疲労と睡魔に襲われているが、今後の事を考えると、眠る気にはなれない。
俺は室内のテーブルに突っ伏しつつ、シャルルは部屋の片隅、ベッドにもたれながら、益体のない話を続けていた。

「なぁ、何で鎧を身につけると追跡されるんだ? てか、『共感性』って何なんだよ」

そう問いかけると、シャルルはしばらく思慮を巡らしていた様子だったが、ほどなくして口を開いた。

「私が体験した限りの話だけど、その鎧を身につけていると、相手の思考が伝わるのよ」
「…思考が? …伝わる?」
「ええ、思考と言うより、五感と感情が」

…五感と感情?

「そう、動物的というか、ごく原始的な感覚が。 今回、王子とヴォーデンは、貴方の見た光景と、ビアンカの話から、あの場所がアラティゴだと察知したの」

じゃあ、俺の考えてる事は、全部筒抜けなのか?

「全部、って訳じゃないわ。 私が経験した限り、策略や計算みたいな、高度な精神活動は伝達不可能よ」
「でも、どこらへんからが高度な精神活動なんだ? 地名や人名を思い浮かべるのもアウトか?」
「うっ、ど、どうかしら…。 頭に思い描いたイメージは伝わるんだけど…」

シャルルは、たっぷり時間をかけて、次の言葉を紡いだ。

「その人の知性を越えるものは、伝わらないと思う」
「ふー、…曖昧だな。 どうせなら、もっとしっかり確認しててくれよ」
「その時、そんな余裕なかったのよ、戦闘中だったから」

何にせよ、それが事実なら、非常に困るぞ。

「それが本当なら、2日後、俺達は無策で乗り込まないといけない訳か」
「…そうね、対応策を練ろうもんなら、王子に筒抜けだもの」

王子に対抗するために小難しい策を練ろうとも、用意する道具や装備などで、結局は内容を推測されてしまう。

「ちきしょう、気持ち悪いな、知らない間に心を読みとられるって」
「…? 読みとられる…?」

エッチな妄想も出来ねーじゃねーか、と俺がヤケクソ気味に漏らすと、シャルルは不思議そうに首を傾げた。

「ねぇ、さっきから不思議に思ってたんだけど…。 貴方には、クリス王子の声が聞こえないの?」
「え、俺? 王子の声? 聞こえるって、今?」
「鎧を初めて装備してから、今日まで」
「いや、特に…。 ってか、そんな頻繁に聞こえるのか」
「常時聞こえるわよ。 特に、鎧の力を励起してる時は、お互い筒抜け、って感じになるし」

…なんか、それは変だな。
俺は、王子の声なんて聞いた事はない。

「それなら、聞こえた事はないな」
「ええっ、本当!?」

…いや、待て。
そういやガノトトス戦で、溺れた時に誰かの声が聞こえたような気もする。
しかし、そう伝えるも、シャルルはさらに首を傾げた。

「それだけ? もっとこう、頭にわんわんと響くんだけど」
「いや、むしろ遠くから囁きかけてくるような感じだったぞ」
「何故…? 私の装着した時とは違うの…?」
「さぁ、どうなんだろな」

しばらくシャルルは考え込んだが、彼女の口から、答えが出てくる様子はない。
痺れを切らした俺は、次の質問を投げかけた。

「で、あのヴォーデンって男…。 奴はどういう思惑で、俺たちを平原に呼び出したと思う?」
「…そうね、ヴォーデンが言った2日という余裕は、多分、兵と銃器を準備するための時間と思う」
「じゃあ、やはり物量作戦だな」
「そうね、彼はおそらく、貫通系ボウガンで取り囲んで一斉射殺、という方法を取るでしょうね」

…だろうな。
おそらく、奴は俺たちが策を練ろうが何しようが、確実に必殺できる体制を整えてくるだろう。
俺だってそうする。

「奇襲は、無理そうだな」

俺の「自動防御」でシャルルの盾となって突っ込み、一気にヴォーデンの首を取る、という作戦はある。
というか、それが唯一有効な策だ。
だが、敵もその状況を想定しているからこそ、だだっ広い平原に俺たちを呼び出して、大軍で取り囲む事にしたのだろう。

「…どうしたもんかな」

鎧の力を盾とした、力押しは不可能。
ならば策に頼るしかないのだが、二人での相談はもちろん、俺個人の対策も無意味だ。
…と、なれば。

「つまり、私が単独で、何か策を用意するしかないんだけど…」

そこで、シャルルはまたも黙ってしまう。

「…どうした」
「正直、何も思いつかないのよ」
「何でだよ!」
「策を練るのは苦手なの!」
「マジかよ…」

おいおい、ちょっと勘弁してくれよ。
可憐な顔してイノシシ武者なの?
百戦無双の黒龍騎士団長さまでも、大軍相手に剣で勝つのは無理だろ。
今の俺達に必要なのは策、なんだぞ。

「それは分かってるわ、もうしばらくしたら、参謀が帰ってくるから、彼らに案を求めてみる」
「参謀? 誰だよ、そんな奴居るのか!?」
「内緒。 王子に聞かれるから」
「…まぁ、そうだよな」

くそ、話が全然進まねぇ…。
シャルルの前提が本当なら、王子が寝ている間は、こういう思考は読みとられないのだろうが、彼の声が確認できない今、俺の考えが読みとられていないという保証はない。

「ところで、何でビアンカは、私と来るのを嫌がったののかしら…」
「さぁな」
「貴方と二人きりになりたかった訳じゃないみたいだし」
「うっせ」

そういうワケで、自然と会話は雑談へと移行していく。

「ビアンカがアレだからかもしれないな」
「アレ? アレって何?」

笹神の孫…と言おうとして、俺は思いとどまった。
俺の精神が盗まれているのなら、ビアンカの出自も当然知られるだろう。
うかつな発言や思考は、ビアンカを危険にさらす。
とりあえず、俺は笹神龍心っぽく、ジェスチャーで豪快に弓を引く真似をする。

「これだこれ」
「何の踊り?」
「踊りじゃねぇよ!」
「じゃあ何よ」
「…それは…言えねぇ」

雑談すら、肝心な所は話せないときたもんだ。

「正直、今出来る事は何もないわ。 とりあえず、仮眠を取って、鋭気を養いましょう」
「…男と女が、一つ屋根の下でか?」
「あら、まだカラ元気ありそうじゃない? 怖かったら、添い寝してあげても良いのよ?」
「冗談だ、遠慮する」

軽口を叩きつつも、眠りにつこうとする俺たち。
だが、俺はどうしても眠れそうにはなかった。

じっとしていると、恐怖心が全身を蝕んでくるのだ。
幼い頃、畑で蛇に噛まれた時のように。

本当に毒が浸透しているかの如く、四肢が震える。
こめかみがジンジンと痛む。
脳がめまぐるしく動いているのが分かる。
息苦しくなり、冬なのに全身がじっとりと汗ばんでくる。

どうすれば生き残れるのか。
考えても無駄だと分かっているのに、考える事は止められなかった。

「(…そうだ)」

もしかしたら、自分で腕を切り落とせば、命だけは助かるかもしれない!

そう思った俺は飛び起きると、ポーチからモンスター解体用のブッシュナイフを取り出し、右腕に当てたが、

「!?」

右腕にナイフを軽く押し込んだだけで、例の「自動防御」が発動した。
鎧から萌芽した「棘」は、俺の左腕に絡みつくと、あっさりナイフを奪い取って、豪快に投げ捨てた。
ガキィィーーン、という音が予想以上に室内に大きく響く。

「貴方…」

シャルルが、今の物音で目を覚ましたらしい。
半身を起こした彼女は、驚いた表情でこちらを見ていた。

「ダメだ…。 命だけは助かるかと思ったのに…」

俺の声は、何故か震えていた。
あれ? これ、涙声?

「…残念だけど、その鎧自身にも意志があるから、自害行為は無駄よ。 望まずとも、勝手に宿主を守ろうとするの」
「…? それは、クリス王子の意志とは別の、か?」
「…え? ええ、そうね…?」

そう言うと、シャルルはまたも小首を傾げた。
何か疑問を持ったのかもだが、俺は彼女の様子に気を払う余裕は、もうなかった。

死ぬのか。
俺はもう2日後に死ぬのか。
抵抗する事も許されず、死ぬのか…。

「畜生…。 俺、まだ、こんな所で死にたくねぇ…。 まだ、やりたい事沢山あるのによ…」

絶望のあまり、そんな言葉が漏れた。

「バカ、そんな事を考えるんじゃない! 生きるんだ! 生き延びる方法を考えろ! 方法は必ず、きっとある!」
「だって…。 だってよう、もう詰んでるじゃねぇか、俺…。 俺の人生、もう終わりだ…」
「自分から心を折るな! 思い出せ! やりたいこと、沢山あるんだろう!? 家族や、恋人や、友人! それを思い出せ! お前は、まだここで死ぬ訳には行かないはずだ!」

それを聞いて、俺はその的外れさに思わず失笑してしまう。
だって、恋人とか家庭とか、そんな人間としてまっとうな物から、俺は最も縁遠い存在だからだ。
彼女の励ましが親身かつ真剣だっただけに、余計やるせなかった。

ヤケクソになった俺は、もう自分の中のドロドロした物を全て吐き出したい気分になり、シャルルの奴に言ってやった。

「違ぇよ!! 俺はな、単に強くなりてぇんだよ! そして英雄になって、有名になって、それで金持ちになってな、美味い料理沢山食べて、美女に囲まれて暮らしてぇんだよぉぉ!!」

そう叫んだら、シャルルの奴は、鳩が豆鉄砲喰らったような顔してた。

「そ、そう…。 な、何だか低俗過ぎる理由だけど、よ、要は強くなりたいの?」
「そうだよ! 強ぇハンターになりゃ、何でも手に入るだろうが! それを何も味わってないうちに、死ねるかよ!」

だが、俺がそう言い返すと、シャルルは微妙な笑みを浮かべた。

「まぁ、そうかもしれないけど…。 必ずしも、強者が全てを持っているとは限らないわよ」
「悪いがな、『強者の理屈』は聞く気ねーぜ。 人はパンのみで生くるにあらず、されどパンが無ければ生きてはいけぬ! 俺たち持たざる者に必要なのは、強さ、金、飯! どんな御託を並べようが、まずはそれなんだよ!」

俺はそう鼻息荒く答えたが、シャルルはため息を一つ付くと、俺に質問をしてきた。

「じゃあ、聞くけど…『強さ』って、何だと思う?」


<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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