女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(12)

「…そう。 一度、貴女とは、はっきり決着を付けなきゃ、って思ってたのよね」

だが、言葉どおり「泣かす」と挑発されたシャルルは、怒気を全身に漲らせながら、腰の片手剣に手を掛けた。

「…なんや、たったあれだけで激おこぷんぷん丸か? 沸点低いな! ええで、どっちがマルクを連れていく資格があるか、今から決めようやないか」

そして、ビアンカも背負った弓を展開する。

「良いの? 私に剣を握らせて」
「ウチの弓矢の前には、藁人形が竹槍持ったのと大差あれへんわ」
「…言ったわね!」

この二人の激突はこうして唐突に始まったのだが、これより二時間後、この勝負は、当人たちにとっても全く予想外な形での結末を迎えることとなる。



この日は、ユリウス王子がカッツェとウィルに鎧を譲り、シャルルとビアンカが出会い、ゴッドフリートの包囲を打ち破って脱出した激動の一日であったが、同時に、イルモードとクリス王子の居るノーブル城においても変化があった。

時刻は夜、廃闘技場へ赴こうとするイルモードとカルネラ。

「本気で、実験を強行するのでございますか」
「ああ、やる」

イルモード宰相とカルネラ大臣によって行われていた、非道の人体実験。
鎧の装着者の戦闘能力を計る実験は、ある理由によって一時中断されていた。
だが今宵、イルモードは中断していた戦闘実験を行うと名言したのだ。

「しかしながら、結果はクリス王子にも知られますぞ…! その結果によっては、王子が有利になる、という事も!」
「…かもしれん」

イルモードは、自分の経験から鎧の「共感性」の事を知っていた。
そのため、王子に実験結果を知られぬよう、食事に昏睡毒を仕込んでいたが、鎧を装備するとあらゆる毒物への耐性が大幅に向上する事が判明。
強烈な刺激を与えると王子は容易に覚醒し、実験の結果を知られるという弊害があった。
これが戦闘実験を中止した理由である。

「だが、『頭』『脚』の2部位を手に入れた以上、どうしても行うべき実験がある」
「何でございますか、それは」

イルモードは、囁くように言った。

「鎧に適性を持つ者同士が戦闘を行った場合、その結末はどうなるのか、という事だ」
「…なるほど」

イルモードが知る限り、この事例は今までにクリス王子とシャルルの1戦しかない。
しかし、あの結果が果たして妥当な事例か、という疑問があった。
何せ、鎧の適性が低い方が勝利してしまったのだから。

「そのためには、危険を冒してでも実験するべきだ」
「確かに、来るべきその日には、王子との直接戦闘は避けられませんからな」
「ああ、準備は確実であるべき。 仮に不利な結果が出たとしても、それはそれで対応策が打てる」
「御意、それでは、私もご一緒に策を練る事と致しましょう」

ここに至るまで、囚人たちを犠牲にした実験の結果、この鎧がどういう性質を持つものか、かなり細かく判明しつつあった。

(1)鎧との適性に、血筋(王族であるかどうか)は関係ない

(2)好戦的、強欲な者に適性の高い者が比較的多い

(3)うち、より適性の高い者は、自動防御の「棘」の挙動が変化し、自発的に動き出すようになる

(4)一見鉄壁かと思える自動防御だが、完全ではない。
「棘」という形状ゆえ、貫通性の高い攻撃には弱い。
   また、属性弾の中では(生物だからか)火炎弾が多少有効の様子。
   なお、状態異常弾は完全無効。麻痺させて捕獲、昏睡させて捕獲、などの方法は一切無駄だった。

(5)鎧の動力源は血液。
   そのため、鎧の装着者が死亡すると鎧は外れる。 
   低適性の者は、人間あるいは動物の血を浴びても外れるが、高適性の者はモンスターの体液、あるいは古龍の血が無ければ外れない。

(6)鎧を持つ者同士で、お互いの五感と感情を共有できる。 
具体的なイメージを脳裏に描く、実際に言葉を発するなどの工夫により、遠距離通信も可能。


イルモードとカルネラは、調査によって適性を持つ囚人たちのリストを作成していた。
その中から、まずは適性の低い者同士を戦わせてみたのだが、その展開は酷いものだった。

鎧の超絶的な力を以て殴りあわせても、致命傷となると、すぐに互いの自動防御が発動し、いわゆる「千日手」状態になってしまう。
それは武器を持たせても同じで、あらゆる攻撃が棘で止められる状態となってしまい、やがて二人は戦闘の意欲を失ってしまった。

「よし、止め! 二人とも、退場してよし!」

イルモードは廃闘技場の観客席から声を掛け、場内に居る係員の兵士に命じて、二人にモンスターの体液を浴びせかける事で鎧を外す。
兵士二人と被験者二人は何事か喋っている様子であったが、兵士二人は鎧を回収すると、イルモード達の方へと寄ってきた。

「宰相、大臣、ちょっと不可思議な事がございます」
「何だ」
「お互いに…というか、あちらの劣勢だった囚人の方が特に、なんですけれども」
「どうした?」
「『気分が悪い』と申しておりました。 この鎧を装備すると、相手の殺意が伝わってきて、精神的に参ってしまう、と」
「その通りだ。 この鎧を装備すると、お互いの意志が筒抜けになる」
「そ、そうなのでございますか…! それで、劣勢側が戦闘を止めたい、と訴えかけた所、相手からも同意に似た感覚があったそうなんです。 意志が萎えた、と言いますか」
「…何? 途中で意欲が無くなったのは、疲労とかではないのか」
「ええ、降参に応じた、という形のようです。 しかし、あの鎧…何なのでしょうか? どういう理屈で、お互いの意志を伝え合うという現象が…」
「そんな事よりも、次の実験だ! 準備を急げ!」
「は、はいッ!」

適性の低い者同士で結果が出なかった以上、次は適性が中程度の者と、適性の高い者に武器を持たせて実験を行う。

「おい、今度は適性の低い者にはボウガンを、高い者には片手剣を持たせろ」
「了解いたしました!」

このシミュレーションは、「イルモードvsクリス王子」戦をイメージした戦いである。
イルモード役のボウガン使いが「頭」を装備しており、クリス王子役の片手剣使いが「脚」を装備している。
果たしてどちらが勝つのか、と興味深く見守っていたイルモードだったが、これは予想外の展開となった。

「頭者」は指示どおりに、貫通弾を主体にして攻めたところ、「脚者」の自動防御を貫いてダメージを与えた。
胸や腹を貫いた弾丸は致命傷となり、「頭者」は勝利を予感したが、それが隙となった。

「脚者」の自動防御の棘が一気に伸長し、「頭者」の脚を貫いたのだ。

そしてここからが、驚愕の結果となる。
「脚者」の棘は、装着者の傷を癒すために、「頭者」の足部から血液を抜き取り始めたのだ。
身動きできなくなった「頭者」が、至近距離からボウガンを乱射し、再び「脚者」に重傷を負わせると、棘の数はさらに増えて「頭者」を襲った。
だがここで、「頭者」の自動防御も発動、棘同士で細かく絡み合い、お互いの攻撃を阻止しあった。

「な、何だこれは!?」

重傷を負って瀕死の高適性者「脚者」。
その足部からは、無数の棘が、宿主の命を救うため、相手の命を吸い尽くそうと伸長している。
対して、「脚者」から発した棘の吸血攻撃を、同じく棘を絡ませる事で防御している、低適性者「頭者」。

そして、またも予想外の光景。
「脚者」が装備していた黒龍の鎧の脚部が、ズルズルと外れ始めたのだ。

「…これは!?」
「おおッ!?」

これこそ、イルモードとカルネラが求めていた現象。
黒龍の脚部は、「脚者」の足から外れると、棘によって繋がれたまま「頭者」の脚へと移動し、そのまま「頭者」の脚を食い尽くすように、変形しながら装備された。

「ひっ、ひいいいっ!!」

自分の意志を無視して装着される鎧に身悶える「頭者」。
その光景は、まるで死にゆく宿主から脱出する寄生虫、そして新たに寄生される宿主を想起させた。

「実験止め! 『脚者』の被験者に、まだ命があるか確かめよ! 『頭者』! 貴様は下がれ! 早くしろ!」

ここで、鎧を奪われた者に命があるかどうかで、今後の選択肢は大幅に違ってくる。
イルモードとしては、そこは是非とも確認しなければならない所であった。

「うおお、ふごぉ、ひいっ!」

だが、「頭者」の被験者はパニックになっているのか、命令に応じない。
場内の兵士に指示を出して確認させようとするものの、

「だ、ダメです! 『頭者』の自動防御が反応していて、近寄れません!」
「『古龍の血』を持ってこい! 鎧を解除させるんだ!」

対応は後手後手に回った。
観客席からは、銃撃を受けて血まみれとなった『脚者』の胸は、かすかに上下しているように見える。

…だが、『頭者』の暴走状態が収まり、鎧を外した頃には、『脚者』は絶命していた。

「(く…。 生きていると分かれば、強行手段に出られたものを…)」

「うわっ、くせぇっ! どうした、お前!」

兵士の声に振り返れば、「頭者」の被験者は失禁脱糞していた。

「うへ…ああ…あ…」

「頭」の鎧を外された被験者は、まだ若い、短髪の凛々しい青年だったが、舌を出し、視点の定まっていないその様子を見れば、正気を失っているのは一目瞭然だった。

「もうダメですな、この者は」
「ああ。 鎧の共感性による、二重の死の恐怖にやられたのかもな…」
「二重の死、ですか?」
「ああ、自分の死と、今自分が殺しつつある相手の死。 …鎧による精神的な干渉は、適性の高い者と低い者で、差があるのかもしれんな」
「と、申しますと?」
「私も、鎧を二度ほど装備した経験があるが…。 もしかすると、適性が低い方が、高い方の声を『聞かされる』のかもしれんのだ」

「うへ、ぐへ、あああ…」

「ならば鎧を装備した場合、高適性者である王子の心の声を、延々聞かされるという事ですか?」
「かもしれん。 少なくとも、私の時はそうだった」

「ぐひ…けひひ…うふ…」

そして、イルモードは正気を失った青年に背後から近寄ると、顎下にそっと右腕を通し、左腕でしっかりと頭を抱え込んで…。
一気に頭を捻った。
グシャグシィッ、という嫌な音が青年の頸部からして、頭が変な角度で固定される。
そして口元から、すーっと透明な涎が垂れる。
全身のかすかな痙攣の後、「頭者」を勤めた青年は絶命した。

「…この者は、もう人の手を借りねば生きられない。 そして、我が国においては、『消費者』は国民にあらず」
「その通りです。 ましてその者は犯罪者、すみやかに楽にしてやるのが本人を含め、皆への慈悲でございます」

免罪符の一言を吐き、イルモードは立つ。

「この結果は、クリス王子にも知られたでしょうか」
「…多分な。 今頃は城のベッドの中で、悪夢に悩まされているかもしれん」
「ですが、この実験結果は、宰相の仰るとおり、非常に有益でしたな」
「ああ、低適性者でも、やりようによっては鎧を剥がせる事が分かったからな」
「ええ、どうやら鎧を装着した当人が瀕死に陥り、そこにもう一人の高適性者…棘を伸長できるレベルの者が居れば、鎧は自動的に移動するようですな」

それを聞くと、イルモードはしばらく腕組みして天を仰ぎつつ、ボソリと言った。

「しかし、直接戦闘はやはり不安要素が多すぎるな…。 適性者でも溺死したり、土砂で窒息死をするのか、調べたい所だな」

それを聞きとがめ、カルネラは苦笑しつつ返す。

「…そんな方法をお考えとは…。 自動防御など、宰相の前には全くの無意味でございますな」

イルモードも、邪悪な微笑みを口元に忍ばせつつ返す。

「ふふ、人の『知恵』の前には、どんな『力』も無力よ。 どんな強大なモンスターと言えど、生態を研究され、いつかはハンターに狩られる。 それと同じことだ」
「ごもっともでございます。 ですが、誰を『犠牲』になさいます? 王子の自動防御…あの圧倒的な棘の数に対抗できる相手となりますと、それなりの適性を持つ者が必要になりますぞ」

イルモードは、それを聞くとしばらく考えていたが、

「…ヴォーデンにしよう」

リストにはない人選をした。

「ほう」

その心は、と返すよりも早く、イルモードは理由を述べる。

「適性の高さもそうだが、この城にて鎧の秘密を知る人間は、我ら以外、できるだけ少ない方が良い」
「ヴォーデンは豪農の子息、殺せば実家の感情を害し、兵糧の調達に支障をきたさないとも限りませんが」
「何、私はマクステリオンの人間を知っているが、遺産の分配先が減って喜ぶような連中だ。 末端の息子など、名誉の戦死と謳っておけば、あの業突張りどもも文句は言わんよ」
「…そうですか。 案外、世知辛いもんですな」

カルネラの返事に、イルモードは大笑すると、場内の部下たちに、再度の追試を命じた。

(7)鎧は、装着者の生命に危機が生じた場合、近くに別の高適性者がいた場合に限り、移動を開始する

新しく判明した、鎧の特性。
生かしたまま鎧を剥がす事はできると判明した。
だが、それに加えて「装着者を生かしたまま、安全に剥がす」方法を確立する事が急務だ。
そうでないと、結局「装着者を殺さないと鎧を剥がせない」と事になってしまう。

もし、生かしたまま鎧を奪う事ができるのならば、クリス王子の脅威を排除しつつ、傀儡の王として祭り上げ、かつユリウスやエイグリルからの盾として使うことができる。
それに、脱着に「古龍の血」を使わないようになれば、生体兵器としての活用価値も大幅に増す。

仮に、黒龍の鎧を装備した兵士を、ローテーションさせつつ戦線に投入できれば、これは圧倒的な軍事力向上となる。
もはや、「竜操術」など必要ないほどに。

「(…ある。 装着者を生かしたまま、鎧を奪う方法は、必ずあるはずだ…)」

彼にとって、それが残す最後の懸念だった。


<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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