女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(11)-6

「お願いいたします…! これは我々に、将軍を救い出すために与えられた、もしかしたら最初で最後のチャンスなのかもしれないのです…!」

しかしながら、もう状況に変化が起こりつつあるのかもしれない。
例えば、宰相がハンターズギルドの力を使って、鎧の素性を知る人間を捜し当てたため、エイグリル将軍の知る知識は不要になったとか…。

「王子、何とぞお願いいたします!」

カッツェは膝を折り、地面に座り込む。

「…おい、何をしている!? カッツェ、ウィル!」

そして、カッツェは頭を泥土に擦りつけ懇願した。
ウィルもそれに倣い、頭を泥に擦りつけ土下座する。

この瞬間、王子は、完全にやられたと直感した。
イルモードが、この二人を刺客に選んだのは、その実力もさる事ながら、年上の武人達への「情」を引きだそうと狙ってのものだったのか。

王子は、しばらく雨の中で土下座する二人を見ていたが、それも長い事ではなかった。

「二人とも、頭を上げろ」

だが、二人は玩として頭を上げようとはしない。
その姿を見て、王子は遂に自ら折れる事を決意する。

「…鎧を賜わす」



顔を上げた二人の顔は、滑稽なほどに泥だらけだった。
だが、それよりも武人ならではの愚直な忠誠に、むしろ憐憫の情の方が先に立つ。

王子はひざまづいて、彼らの顔の泥を拭う。

「男が…。 『戦士』が、そんな簡単に、頭を下げるものじゃあない、カッツェ、ウィル…」

そして、カッツェの手を取り、「黒龍の鎧」の右腕を握らせ、その上から自らも堅く握る。

「バルベキア三国王第二王子、ユリウス=イェルザレムの名において命ず。 この国宝を持ち、賊との交渉に挑み、必ずやエイグリル将軍を救い出してこい」
「王子…! 王子、ありがとうございます!」

滂沱と流れる涙が、カッツェの頬の泥を洗い流していく。

だが、王子は内心でため息をついていた。
かなり高い確率で、彼らの交渉は無為に終わるであろう事が予感できたからだ。

「(貴様らにはやられたぞ、イルモード、カルネラ…。 だが、譲るのは今回限りだ!)」

ユリウス王子はすっくと立つと、燃えるような視線でバリルとリンデを直視し、確固たる声音で言う。

「バリル、リンデ…。 貴様らに一つ、言っておく。 イルモードには、必ずや公平なる協議の場に出てくるように伝えろ! さもなくば、貴様等も国賊とみなす! その暁には、然るべき報いを受ける事を覚悟しろ!」
「ひいっ!?」

その舌鋒の鋭さに、バリルとリンデは震え上がる。
だが、連中は何も具体的な返事をする事なく、ウィルとカッツェを促すと、そそくさと逃げるように去っていった。


去っていく彼らを見送りながらも、纏綿と続く氷雨の中、果たしてこれで良かったのか、と自問自答する王子。

これで、我が身に迫る危険こそ大幅に減少したが、おそらく、もう大部分「鎧」は集まっているはず。
鎧が集まるごとに兄の命は危うくなるが、どうすれば兄を救えるのか。
一番現実味のある方法が、兄自身にあの城から出てきてもらい、鎧の解除方法が見つかるまで隠れていてもらうこと。
しかし、噂で聞いた、聖ジョルジュアの戴冠式は間もなくだ。 
それは事実上不可能であろう。
だが、武力で強行突破するには、戦力が足りな過ぎる。

「(…。 頼むぞ、カッツェ、ウィル…)」

結論の出ない思考の袋小路に陥った王子は、ただ、去っていった獅子たちの交渉が上手く行く事を願った。

「(願わくば、無事にエイグリル将軍が解放されん事を…)」

世界を変革する「特異点」たるべく修行をしてきたのに、何もできない自らの無力を噛みしめながら…。
ただ、二人の未来に行く先に幸あれ、と願った。


  *    *


場面は代わり、ノーブル群県の郊外の村、アラティゴへと移る。

気絶したゴッドフリートを県境に放置してきたシャルルとビアンカは、遂に雨が降り出してきた事もあって、郊外にある寂れた村、アラティゴ村の酒場にて休憩を取る事にした。
時間は夜の10時、雨も本降りとなり、この視界の悪さであればもう追跡は困難であろう。
そう判断した二人は、別室を借りてマルクを寝かせると、軽食を取る事にした。

「…で、彼があの時けむり玉を使ったのは、ゴッドフリートに散弾を使わせるため。 貫通弾を使えば致命傷は負わせられるけれど、しかし命中の可能性はほぼないに等しい。 その隙に逃げられるくらいなら、散弾を乱射してラッキーヒットに賭けた方が良い。 つまり、あの局面ではゴッドフリートは散弾を選択するしかなかった」
「で、マルクは散弾を黒龍の小手で防ごうとしたけど」
「予想以上の物量を捌ききれずに怪我した、って所。 ま、さすが黒龍の鎧というか、致命傷に至らなかったのは不幸中の幸いね」

そこまで説明を受けて、ビアンカはふぅ、とため息をつく。

受付嬢リズ…いや、実は黒龍騎士団団長の「シャルル=サンドリオン」から、超駆け足でこの国の実状、エイグリル将軍の状況、黒龍の鎧の秘密、国に反旗を翻し、紅龍騎士団に潜り込んだ経緯を次々と聞いた。
紅龍騎士団は犯罪者で構成されているため、統率性に欠ける。
一兵卒としてなら侵入可能であろうと考え、ビアンカ達が逃亡して兵士がバラけた隙に入れ替わったのだと言う。

「うーむ、ウチらと似たような事考えてたとはなぁ…」
「ま、私も入れ知恵されて、この方法を思いついたんだけど…。 でも、隊の動きを掴むのが遅れて、市民に被害を出してしまった事は痛恨の極みね…」
「過ぎた事はしゃあないやん、それに、贖罪するならアイツやで? でも、アンタ…シャルルさんやったか? は、あの時ゴッさんを守ろうとしたんは、何で?」
「シャルルで良いわよ、ビアンカ。 理由は、街中で隊長が居なくなると、部下が逃亡して犯罪者に逆戻りする可能性があったから。 不意打ちのチャンスが来るまで、味方のフリをしていたかったの」
「なるほどな…。 まぁそっちの方が確実やもんな」

ビアンカはあの時の事を思い返し、シャルルの不可解な行動に、彼女なりの理由があった事と知って納得する。

シャルルの本来の計画では、兵に紛れてゴッドフリートに接近、彼がマルクから鎧を奪取する瞬間を待っていた。
そして、自分が鎧を横から奪い取り、黒龍の鎧の力を使って脱出するつもりだったのだという。
しかし彼女の予想した展開とは大きく異なり、まずマルクは鎧を既に装備しており、また逃亡したはずのビアンカが本隊を強襲してきた。

ビアンカが、ゴッドフリートを倒す事で事態の打開を計ろうというのは分かったが、ゴリラ男を一瞬で倒したのを見て、ビアンカを放置したらゴッドフリートが死ぬかもしれないと危惧したシャルルは、一時的に彼を護る事で、結果的に紅龍騎士団の暴徒化を防ぎつつ、ゴッドフリートを無力化した。
結果だけ見れば、シャルルの行動は極めて適切だったと言えよう。

「(…でも、あれを除いてな…。)」

だが「天斧地鉞」を弾いた後、剣をビアンカの足にピタリと触れさせるパフォーマンスは必要なかった。
あそこは防御に徹するのが最上、わざわざ剣技の実力を見せつけるような真似をしてきたという事は…。

「(…剣なら負けん、てか。 ウチにやられたのを、心のどこかで根に持ってるんやな、黒龍騎士団団長さん)」

内心苦笑するビアンカだったが、シャルルはそんなビアンカの思惑には気づかず、ひたすら自分の事情を解説する事に終始する。

「それで、お願いなんだけど、貴女からマルクさんに、この小手を私に譲ってくれるよう伝えてくれない? 黒龍の小手は、この内乱を収束させるために、絶対必要なものなのよ」
「いや、ウチそんな決定権ないし、マルクとは、たまたま知り合っただけの仲やねん。 それに、その小手を譲ってもらえるかどうか知らんで」
「大丈夫よ、内乱が収束した暁には、十分なお礼をするわ」
「いや、そうじゃなくてやな、その小手、どうも腕から外れんらしいねん。 アンタ知らんかもしれんけど、ゴッさんと交渉決裂になったんは、それが理由やで」
「大丈夫よ、鎧を外す方法はあるわ」

そう言って、自信満々に答えるシャルル。

「どんな? 『古龍の血』を使う以外に、何か方法あるん?」

だが、ビアンカのその言葉を聞いて、シャルルの表情が蒼白になった。

「え? ま、まさか、もう既に『古龍の血』を使って、鎧を外そうと試みたの…?」
「ああ、アンタが合流する前、壷になみなみ一杯使ってな? どんだけの量を使えば良いのか知らんけど、そこらへんどうなん?」
「つ、つつ、壷に一杯使って、ダメだったの…? そんな…それじゃ、城に戻って『祭壇』を使わないと外れないかも…」
「なんや、じゃあここで外す方法は無いんか?」

その質問を受け、シャルルは力なく首を振る。

「…残念だけど、そういう結果が出た以上、私は城に戻る以外の方法を知らない」
「なら、とりあえずマルクの件は保留、やな。 本人が目覚めてから、実際に聞いてみた方がええ」
「何で…。 何でこんなに、鎧との適格者が多いのかしら…?」
「ってか、鎧って誰でも装着できるんと違う? 黒龍の神官さんは、何か別の理由で選ばれてるとか」
「そんなバカな! だって、それは王族自身に伝わる伝承で、そう言われているのよ!?」
「初代はそうでも、代を重ねれば、別の血が混じりこんでいくやん? それでも王族としての純性を保てるん?」
「それは…でも…。」
「ウチは、鎧の装備条件、血筋は関係ないと思う。 マルクが何よりの証拠や。 奴はどう見ても、高貴な生まれっぽくないやろ」
「う…。 そ、それは、確かに…」

思い当たる事があるのか、ビアンカの予想よりもあっさりとシャルルは食い下がり、黙ってしまう。
ビアンカもお喋りは控え、とりあえず無理を言って作ってもらった夜食を口にする。

そして、今まで得た情報を改めて整理しつつ、自分の目的を再確認した。

エイグリル将軍は城に囚われたまま存命中。
クーデターの内容は、正当王権を得た二男に長男が反旗を翻した形。
ユリウス王子の人物像は、マルクから聞いたものと、シャルルから聞いたものはほぼ一致した。
愚鈍な長男より、聡明な二男に王権を、という事らしい。
ただし、王家の摂理に反したこの継承式が、王自身の意志によるものかは分からない。
遺言は残していたらしいが、ユリウス側の群臣による、ねつ造の可能性は否定できない。
そこで切り札となるのが、「黒龍の鎧」。
この国では、鎧を全て集めた者が王となれる不文律があるらしく、クリス王子の手勢、イルモード宰相とカルネラ大臣、対するはユリウス王子とエイグリル将軍の部下で、王の証たる、鎧を取り合っている最中。
ある意味極めて分かりやすい派閥戦だ。

「(…と、なると、この状況では)」

ビアンカの目的は、笹神龍心の朋友である、エイグリル将軍を救出すること。
その意味ではシャルルと目的は同じだが、協力関係になる可能性は多分低いだろう、と予感していた。

なぜなら、現状でエイグリル将軍を救出する最も妥当な方法は、マルクを確保して城に連行し、「鎧」を渡す事を条件に、エイグリル将軍とその部下を国外に亡命させる事だからだ。

正当王権がどちらにあるのかについては、王族達が解決すべき事であり、他国民であるビアンカ達の関与する事ではない。
最終的に、エイグリル将軍さえ救出できれば良いのだ。

「(…しかし、爺ちゃんが、何て言うかが微妙なんよなぁ…。)」

だが、エイグリル将軍からの手紙を読んでこの国に赴いた笹神翁が、何を胸中に秘めていたかは、孫娘である自分にも分からない。

「(まさか、クーデターに参加するとか言わんよな…)」

あの破天荒爺がそういう事を言い出す可能性が0ではないのが恐ろしいが、常識的に考えて、クーデター参加はまずない。
普通に考えれば、それは国を相手にした壮大すぎるゲリラ戦となるし、こちらの素性が分かれば、二国間での戦争の火種になるからだ。

ならば、この状況では「笹神龍心と合流し、その意志確認をするまで、マルクを切り札として確保しておく」のが最上の手となる。

「(…シャルルちゃん、すまんなぁ、やっぱまたアンタを騙す事になってしまうかもしれんな)」

対して、シャルルはマルクの鎧を、エイグリル将軍の解放と、クーデター成功のための切り札に使おうとしている。
どういう思惑があるのかは分からないが、それはいくら何でも望みすぎであり、分の悪すぎる取引だ。
王権奪取は諦め、将軍の解放だけを目的にすれば、取引としては妥当に成立する可能性は高い。
そうなればシャルルとビアンカの目的は一致するが、ユリウス王子・エイグリル将軍配下である彼女は、おそらく納得すまい。

「(…どうも、不本意やけど、マルクは渡せそうにないで)」

現状、彼女たちの風向きは逆風と言って差し支えないのだ。

「…そういえば、マルクさんの調子はどうなのかしら」

シャルルがふとそんな事を言い出し、ビアンカも慌てて話を合わせる。

「せやな、まだ目が覚めんのかいな」
「心配ね、古龍の血を吸収しているのなら、命に別状はないと思うけど…ちょっと、様子を見てくるわ」
「ちょい待ち、それならウチが見てくるわ」
「ううん、貴女はそこで待っててくれて良いわよ」
「いや、アンタこそ、マルクをずっとおぶさって疲れてるやろ? ウチが様子見てくるわ」
「良いのよ、貴女が鎧から攻撃されたら危険だから、私が見てくるわ」
「心配あれへんよ、アレやろ? 気を絶って近づけば、あの鎧は敵とは見なさないんやろ? ウチが行ってくるって」

そこまでのやりとりを交わすうち、シャルルの瞳に凄みが増していく。
ビアンカはシャルルに対し、「流浪の弓士」だとボカした自己紹介をしていたが、一度騙された経験があるためか、鵜呑みにしていないらしい。

「な、アンタは休んどき? ウチに任せときや」
「いえ、結構よ。 『黒龍騎士団』団長として、王家に伝わる鎧の事は、私が管理する責務があるわ。 私が見てきます」
「(…そう来たか)」

団長とか偉そうなお題目を出すあたり、先んじてマルクを確実に確保する気だ、とビアンカは判断した。

「いや、見ず知らずのアンタが行っても、マルクには何の事か分からんかもやん? ここは、狩友であるウチが見にいくべきや」
「さっき、たまたま知り合っただけ、って言ったでしょ!?」
「一度でも狩りを共にすれば狩友やねん! とにかく、マルクの事はウチに任せぇ!」
「何で、いきなり横からしゃしゃり出てくんのよ! それに貴女、全国民は軍に対する協力義務があるって、知らないの!?」
「ウチは国民やあれへんし、そんなん知らんわ! えーから、ツベコベ言わんでそこ退けや! また泣かすぞ小娘!」
「何ですってッ!?」

ちなみに、ビアンカの口が多少悪いのは、シキ国において、会話を円滑にする挨拶みたいなもので、ここでの「泣かす」には他意はなかった。 彼女には。

「…そう。 一度、貴女とは、はっきり決着を付けなきゃ、って思ってたのよね」

だが、言葉どおり「泣かす」と挑発されたシャルルは、怒気を全身に漲らせながら、腰の片手剣に手を掛けた。

「…なんや、たったあれだけで激おこぷんぷん丸か? 沸点低いな! ええで、どっちがマルクを連れていく資格があるか、今から決めようやないか」

そして、ビアンカも背負った弓を展開する。

「良いの? 私に剣を握らせて」
「ウチの弓矢の前には、藁人形が竹槍持ったのと大差あれへんわ」
「…言ったわね!」

この二人の激突はこうして唐突に始まったのだが、これより二時間後、この勝負は、当人たちにとっても全く予想外な形での結末を迎える。

そして、鎧の行方も。

<続く>

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*Comment

 

激おこぷんぷん丸ww
  • posted by ユラ 
  • URL 
  • 2013.06/05 16:49分 
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NoTitle 

時々…時々ね、こういうネタを入れたくなる時があるんですよw

後々リライトした時に、本筋には影響のないレベルで。
ただ、リライトの機会があるのかどうかが微妙ですけどw
  • posted by 丼$魔 
  • URL 
  • 2013.06/14 22:30分 
  • [Edit]

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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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