女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(11)-4

銃撃にさらされたマルクを救うため、敵の本隊・ゴッドフリートの護衛めがけて特攻するビアンカ。

首尾よく一人は倒したものの、ゴッドフリートは銃撃を止める気配がない。
残る二人の護衛も迅速に倒す必要があったが、小柄な片手剣使いは、ビアンカの予想を越える反応を見せた。

バックステップしつつ、盾でビアンカの足をタイミングよく上に跳ね上げて流したのだ。

ビアンカは体幹の軸を崩し、片足を上げた格好のままよろめいてしまう。
その瞬間、彼女は僅かながらも、酷く動揺した。
自分の蹴りは、簡単に見切られるような甘いものではないし、小手先の防御などは吹き飛ばせるだけのパワーがある。
なのにこの小柄な片手剣使いは、初見で自分の蹴りを完全に見切り、なおかつパワーでも自分の蹴りに打ち負けなかったのだ。

その理由は、一つしか考えられない。

「(…まさか、練気!? でも、片手剣使いで!?)」

白煙の中で、銃撃音とマルクの悲鳴は、まだ続いていた。




「くっ!」

ビアンカは即座に体勢を整え、片手剣使いの追撃に備える。
ところが、相手の片手剣使いは追撃どころか、まるで蹴りに弾かれたように、後ろによろめいて尻餅をついた。

「(…!?)」

後ろに下がった片手剣使いの代わりに、ゴリラ男が、太刀を背から抜きざま向かってきた。

「相打ちかぁ!? だらしがないぞ!」

だが、今の攻防は決して相打ちではない。
外から見たらそう見えるかもだが、ビアンカにとって、この片手剣使いは、余裕を持って自分の蹴りを弾いた。
それは対峙した相手だけに分かる、間違いのない感覚。
だのに、相手は相打ちのフリをして、後ろに下がったのだ。

「(何や!? …もしかして、挟撃狙い? っていうか、紅龍騎士団って、案外強敵なんか!?)」

このレベルの相手に挟撃されたら危うい。
小柄な片手剣使いの挙動に不審なものを感じたビアンカは、挟撃を避けるため、即時の各個撃破が最善手と判断する。

「せあっ!」

ビアンカは、ゴリラ男の構えと太刀握りを見て剣筋を判断、凡庸な大上段を見極めて右から飛び込むと、敵の左肘と柄頭に手を添えて刃を跳ね上げ、空いた鳩尾への膝蹴り、そして心臓への肘を同時に叩き込み、続けて拳で顎を豪快にカチ上げる連続攻撃を繰り出した。

「ほぺろッ!」

常人なら一発で昏倒する重攻撃を、三発立て続けに喰らったゴリラ男は派手に吹っ飛んで、路上に頭から転がる。

「(…違った、やりすぎたわ! まぁええか、鎖帷子を着込んでたから死なへん死なへん! ていうか、あの片手剣使いだけが特別なんか!?)」

そう思ったビアンカは相手へと向き直るが、件の片手剣使いは、自分に敵意が向くとガードを固め、後退してゴッドフリートの方へスルスルと近づく。

「(…不味い、ゴッドフリートを護られたら、マルクが殺される!)」

「退けんかい!」

銃撃音と謎の片手剣使いを直線で挟み込むようにして特攻するビアンカ。

だが、基本的に素手で剣の達人と戦うのは不可能である。
剣道三倍段、先ほどのゴリラ男のように、かなりの実力差がないと、素手で剣をあしらう事はできない。
笹神流弓体術にも、太刀捌き・刀取りの技術はあるものの、相手の隙に対応する技である以上、やはり相手が格下でないと有効に機能しないのが現実だ。

そしてこの片手剣使いは、明らかに達人級の相手だった。
ブレない体幹、イーオス装備という、視線と足運びを読ませない装備の選択、盾と半身に隠した手先。
剣、目線、体の動き、どの部位を観察しようと攻撃の予測ができないし、その体勢が綻びる様子もない。

残念だが、読めない太刀筋を相手にした時、無手ではほぼ対応策がない。
さっきの攻防でも、足を跳ね上げられた際に攻め込まれなかったのは、単なる手心に過ぎなかった。

「(…ウチがこんだけ、プレッシャー掛けてんのに!)」

ビアンカは一種無謀にも思える突撃で、相手の動揺を誘うが、敵は片手剣使いの基本に忠実に、盾を全面に押し出し剣を後方へ、半身に構えた格好でどっしりと待ちかまえる。
この盾を蹴り飛ばす事で、体勢を崩し背中側に回り込むのが片手剣使いをあしらう時のセオリーだが、このレベルの相手なら、それが「誘い」の可能性もある。
一気にスイッチバックして、牽制の蹴りに斬撃を合わせてくる危険性…。 それも十分にありえる。

「(…時間ないねん、一気に決めさせてもらうで!)」

なので、ビアンカは敵の想像外の攻撃で攻める事にした。
接近しざまに背中の弓を展開、それを相手の視界に入るように仰々しく掲げ持つ。
弓で撃たれるのを警戒したか、敵の重心が切り替わった。
その一瞬の揺らぎを確認するや、ビアンカはさらに加速して突撃する。

「(笹神流弓体術奥義…『絶影』!)」

パワーハンターボウ2の明度の低さ(黒)と、ビアンカの装備の明度の高さ(白)。
この白黒の補色効果に加え、自分の運動方向を、触媒(※この場合弓)で、逆方向に断絶させる事で錯視を起こさせ、運動する一つの物質ではなく、静止した二つの物質だと敵の脳に認識させる。
これが、高速幻視体術「絶影」の原理。
触媒を所持していないと使えないし、天候や装備の色に結果が左右されるが、認知機能の錯覚を利用したこの技は、条件さえ整えば人を選ばず有効に機能する。

「ふっ!」

実際、相手もビアンカが突如分身した事に動揺したらしい。
盾の挙動には明確な意志が感じられず、的を絞りかねた様子が伺えた。
好機、と判断したビアンカは、隙をついて盾を蹴り込み、相手の体勢を崩すと、彼女の得意とする連続技を繰り出す。
敵の動きを止めた上で、前方宙返りからの頭上への二連撃「天斧地鉞」。

注意を前面に向けた上で、飛び上がりざま分身し、頭上へ繰り出される二連撃は、誰も止める事ができない必殺の技だと、十二分に確信して放った技だった。

「(…何ッ!?)」

だが、相手の片手剣使いは、体勢を立て直すと、躊躇なくビアンカの攻撃に対応し、頭上への初撃を盾で弾いた。
まるで、頭上への攻撃を事前に知っていたかのように。

再び足を盾で弾かれ、空中で大きく体勢を崩すビアンカ。
これでは、二撃目を繰り出すなど不可能。
そうビアンカが考えた刹那、遂に相手が腰から剣を抜くのが見えた。

「(…不味いッ!)」

身動きできない空中で切られるという最悪の結末、その絶望的な予感に包まれながら、ビアンカは無理矢理に繰り出した二撃目の蹴りで、相手の肩を蹴って脱出を図る。
だが、その際に足首に、刃の硬質な感触があった。

「…!!」

だが、着地したビアンカの右足は、無事だった。

「(な、何やコイツ!? 何で、ウチの連続攻撃を初見で回避できんねん?)」

もちろん練気で防御はしていたが、気を練れるのは相手も同様。
それは再度の、完全な敵の手加減。
足首から先を切断可能だったのに、それをせず刃だけを触れさせてきたのだ。

「(…バカな…。 笹神流弓体術をマスターしたウチが、こんな雑魚と同等、やねんて…!?)」

ビアンカの心の奥底で、闘志がめら、と音を立てて燃え上がり始めた。
弓師としては不得手の格闘戦とはいえ、自らの攻撃が通用しない相手を目前にしては、本領である弓の業を使って相対せざるを得ない。
そうビアンカが判断し、弓に再び手を掛けた時…。

「お願い、攻撃は止めて」

唐突に敵が発した言葉に、ビアンカは意味を判じかね、弓を展開させる事を止めた。

「(…女!? いや、この声は…)」

どこかで聞いた事がある。
そう言えば、初見でビアンカの連続攻撃を防いだ人間が、もう一人居た。 だが、まさか…。

「お願い、止めて。 貴女は斬りたくないのよ」

小声でそう言って、その片手剣使いは、男性用イーオス装備の口元の留め金を外し、一瞬だけビアンカに顔を露出させる。

「…お前は!」

その顔は、ビアンカの想像どおり…。
どういう因縁なのか、そのヘルムから覗いた端正な顔は、唯一彼女に比肩した相手、あの酒場の受付嬢、リズその人だった。


  *    *


ここで場面は代わり、ムッシャー丘陵へと移る。
ユリウス王子と、剣のみの片手剣使いが激突しようとするまさにその瞬間。

「うぉおおおおーーい!! やめやめー、はいそこでストップ! 勝負なし!!」

遠くから、もう一人のザザミ男…ユリウス王子と最初に戦った片手剣使い…が、剣と盾を振り回しながら突進してきた。

「!!」

その声に反応したか、相手の「剣のみの片手剣使い」が、突如バックステップで距離を取ったため、王子もすんでの所で射撃を思いとどまる。

「はーい、この勝負なしよー! 結果は引き分け! 俺がそう決めた! これ以上、お互いに怪我するこたぁねぇよ!」

その仲裁に毒気を抜かれた王子。
予想外の成り行きに隊長のリンデと、残る片手剣使いも慌てて遠くから走り寄ってくる。

「な、何だってのさ! これから勝負が決まるって所だったのによ!」
「うるせぇ! 黙ってろリンデ! ここからは交渉の時間だ!」
「ひっ!?」

その怒鳴り声に、王子は聞き覚えがあった。
鎧と法衣を通しているため、幾分か変質しているが、王子の記憶が正しければ、彼の正体は…。

「何を言うか! 勅命を受けた貴様等に、交渉の余地などあるかッ!」

リンデの代わりに、護衛らしきランサーが反論するが、最初のザザミ男は火が付いたように反撃した。

「何が勅命だ! どうせイルモードの独断だろうが! そもそも、俺がカルネラに出した交換条件は『鎧を取り返す事』であって『王子を殺す事』じゃないと、くどい程に言ったはずだぜ!」
「う…。 し、しかし、鎧を取り返すには…」
「生死を賭けた戦いになる。 だがそれはできねーから話し合い、その成り行きの何がおかしい!」

やり込められた護衛のランサーはしばし口ごもる。

「な、なんだよチョクメイって! 難しい言葉使って会話すんじゃないよ! それにドクダンって何だよ! …あっ、ボウガンのアレかい?」
「…お前は黙ってろ、リンデ。 話が進まねぇし、カルネラに適当な報告されても困る。 バリル、お前がカルネラにこの件の経緯を報告しろ」
「…了解した」
「ちょっと! アタシをバカにし過ぎじゃないかい、それ!?」

「まず、この戦闘の結果から言う。 正直、ここまで互角の…しかも、生死を賭けた戦いになるとは思ってなかった。 俺たちが王子を殺す事はできないし、逆にこいつまでもが王子に倒されるのなら、もう俺たちで王子に敵う奴はいねぇ。 よって結果は引き分けがベストだ」

そう言って、ザザミ男は「なっ、そうだよな」と、剣のみのザザミ男の肩を叩き、剣のみのザザミ男は頷く。

「だからあんたら二人でかかれば良いんじゃないのさ!」
「黙ってろと言ったろうが、リンデ! そんな下劣な真似ができるか!」
「な…、何だい何だい、隊長のアタシに向かってぇ…!」
「まぁ、我々が複数で掛かっても、王子の前では烏合の衆であるのは認めざるを得ない…それで、どうしたいと仰るのです」
「どうもこうも、そりゃ話し合いしかねぇだろ、なんとか承諾を得るしかない」

しかしそこまでの会話で、王子はその声から、このザザミ男二人の正体をようやく悟った。
一抹の疑念と、だが十分な確信を以てザザミ男に話しかける。

「その前に、まず事の成り行きを僕に説明するのが先じゃないのか、『金獅子』よ」

その言葉を聞くや、全身を硬直させるザザミ男。
彼は、しばらくどう釈明したものか悩んでいた様子であったが、遂に観念したか、軽く肩をすくめると法衣を脱ぎだし、装備も外す。
中から現れたのは、金髪の美丈夫。
彼は密やかにため息をつくと、ユリウス王子の前にひざまづく。

「…この度は、軍命とは言え、多大なるご無礼、ご迷惑をお掛け致しました事を、謹んでお詫びいたします、ユリウス=イェルザレム第二王子」

そう言って頭を垂れ、臣下の礼を取ったのは、王子の想像どおり、黒龍騎士団・右騎将軍「シュバルツェ=カッツェ」本人だった。
そして、彼に習って装備を外し、同じように敬礼した銀髪の青年が、左騎将軍「ウィルフィー=ドルカーン」。

「本当に、申し訳ございません。 カルネラ大臣より、クリストフ王子名にて、貴方を捕縛する命令を受け、【ゴールデンビートル】隊長、リンデの案内の元、本日この地に赴き、命じられた作戦の実行に至った次第です」

二人の姿と経緯を確認した王子は、大きく息をつく。
それぞれが、髪の色と所属にちなんで、「金獅子」「銀獅子」と呼ばれているのは、城内では誰もが知る所であり、軍務では遠隔地での遊撃を勤める事が多いゆえ、ユリウス王子はあまりこの二人との接触がなかったのだが、伝聞通り…いや、それ以上の強さだった。
「捕縛」という命令を受けたという事だったが、先の会話から推測するなら、本来の命令は「殺害による鎧の奪取」だったのだろう。
それをこの二人が交渉によって捕縛に変更したのだ。

「あの、王子。 でも、先にお願いしておきたいんですけど、よろしければ『無礼は死を以て詫びろ』ってのは勘弁して頂けます?」
「はは…。 宰相のような事を言うつもりはない。 君の顔を立てて、今回の件は不問にするよ」
「さすがです、ありがとうございます、王子」

…だが、彼らは本当に強かった。
彼ら自身の仲裁によって引き分けに終わったが、元々、二人の職種は、ランサーなのである。
本来の武器を手にして攻めてこられれば、不覚を取って捕縛、あるいは殺害された可能性は極めて高い。
負けるつもりこそなかったものの、正直、先ほどの戦いは、相当に危うかった。

「(…いや、あの銃さえあれば)」

一瞬、胸中をよぎった敗北の可能性。
だがそれに対し、生来の負けん気が、王子の愛銃を想起させる。
店売りのボーンシューターではなく、永い間使い込んで、血肉の一部と呼べるほどに至ったあの銃ならば、このような結果にはならなかったはず。

あの麗しき「漆黒の決闘銃」さえあれば、自分は誰にも負けない…。

「(…何を考えているんだ、僕は)」

そこまで思った所で、王子はそんな事を考えた自分に苦笑し、首を振った。

戦場で「もしも」はあり得ない。
目の前に今ある全てを駆使して最善を尽くさなければ、生き延びる道は開けない。
「自分の愛銃があれば」なんて考えるのは、もはや負け惜しみ同然、自ら進んで敗北を認めているようなものだ。

「(…そうだ、目の前の結果だけが、全てなんだ)」

王子は気持ちを切り替え、胸に熱くわだかまった闘気の残滓を、改めて大きくゆっくり吐き出した。

「…それでは、改めて交渉に移らさせて頂きたいと思います。 その黒龍の鎧…。 右腕しかないようですが、それをお譲り頂けないでしょうか、王子」

シュバルツェ=カッツェが、にこやかにそう言った。


<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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