女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(11)-3

ここで再び、場面はこの日の昼、逃走劇を繰り広げる、マルクとビアンカへと移る。
二重包囲網を突破しようとしていたマルクたちを追いつめる、後方から迫る騎馬隊のボウガン。

銃撃を防御しようとして、マルクは右腕を掲げるが、「黒龍の小手」は、何故か無反応だった。
ボウガン騎馬隊が放った弾丸は、そのままマルクの胸に着弾、炸裂し、赤い液体を飛び散らせた。


「…ぺ、ペイント弾!?」

一瞬、血かと勘違いしたが、俺の胸で炸裂した赤い塗料は、ペイント弾のそれだった。

ボウガン騎馬隊は、俺にペイント弾でマーキングすると、距離を取って下がった。
どうやら、馬が銃撃音で驚いたためらしい。

そう、馬は臆病な動物なので、弓と馬ならともかく、銃と馬という組み合わせは本来存在しない。
ボウガン騎馬隊という見たこともない兵科、あれは俺たちの足取りを絶やさないためだけに組織されたものか。
絶対に俺たちを逃がさない気なんだな、ゴッドフリート…!











「ビアンカ…!」
「あの路地裏に逃げこむで! 狭い道なら、馬は追ってこれんはずや!」
「分かった!」

俺たちは、群がってくる敵を(主にビアンカが)ちぎっては投げ、ちぎっては投げして、遂に二重包囲網を突破しつつあった。

だが、戦闘の最中においても、俺の脳裏を離れない疑問がある。
さっき、何故鎧は反応しなかった!?
もしもあれが、普通の銃弾…。
例えば貫通弾などであれば、俺は胸を撃ちぬかれて確実に死んでいた。
もしかして、もう、鎧の防御エネルギーが無くなったとか、そんななのか!?

「マルク、こっちや!」
「OK、ビアンカ!」
「アンタは先に行き!」

俺たちは建物が密集する路地裏に入り込むと、ビアンカが殿(しんがり)となって残る。
そこで彼女は弓を取り出して展開すると、路地裏の壁を撃って破壊し、煉瓦の雨を降らせて連中の足を止めた。
そこで、連中も今更ながら、こっちが弓を持っていると気づいたらしい。
隠れる場所がないこの狭い路地では、追えば確実に射抜かれると思ったか、急にこっちを追う足取りが鈍くなった。

…なるほど、近接武器や騎馬は路地裏ではその効力を発揮できないが、弓は狭い路地裏でも全く問題ないのか。

敵を足止めした俺たちは、路地裏を走りながらも、体にまとわりついたペイントボールの塗料を擦り落とす。

「待てぇ、お前らぁ…!」


追っ手の声が遠くなり、十分に距離を取ったと確認できた所で、ビアンカが俺に聞いてきた。

「…おい、時間ないから手短に聞くで。 さっきの乱射男…ゴッドフリート言うてたか、奴が前に言ってた、紅龍騎士団のリーダーなんやな?」
「ああ、テネス村で俺を襲った連中だ! それが?」
「団の人数や構成は分かるか!?」
「以前見たのとは全然人数も兵科も違う! ここまで大々的に追い立てられるとは思わなかった!」
「大々的、か…。 なら単純な脚力で逃げられる相手やあれへんな」

ビアンカは何事か考えていた様子だったが、彼女は自分のアイテムポーチを探ると、何かを取り出した。

「ペイントボール?」
「ボーッとしとらんで、アンタも探し!」

俺の手持ちにペイントボールは無かったが、幸いにして、ガノトトス戦の際に採集した、ペイント草とネンチャク草がある。
俺はそれを手早く揉んで調合し、ペイントボールを作った。

「二人合わせて、9つか…。 ちと足らんな」
「何をする気なんだよ」
「街を出る馬車とか、野良犬を探し。 それにぶつけんで」

…なるほど、あちこちにマーキングをする事で、追っ手を攪乱させようってんだな。

「なるほど、包囲を拡散させて、その隙に逃げるんだな」
「いや、ゴッドフリートってのを倒すわ。 取り巻きが邪魔なだけや」

ちょっと待て!
それ、このシチュエーションでやる事じゃねぇだろ!

「だけど、アンタには、この街の地図、頭に入ってるか? 確実に安全な所がどこか分かるか?」
「…いや、それは無理だ、完全には把握してない」

酒場の場所なら分かるが、それを言ったらぶっ飛ばされるし。

「なら、包囲が緩やかになるのを待とう。 それから相手の首根っこを押さえた方がええ。 ウチの目的にも叶うし、ウチらが安全に逃げるための人質になるし、なにより、アイツが持ってたボウガン、アンタのやろ? 一石三鳥や」
「まぁ、それはそうだが…」
「何や、心配か」
「そりゃ心配するに決まってんだろ、たった二人で大丈夫なのかよ…!」
「ウチ的には、このまま待つのが助かるねん。 そろそろ日が陰ってくるから、『絶影』も使える」
「あの分身の術か? 人前で奥義を使っても良いのかよ」
「この状況でなら、しゃあないやろ。 それより…」

ビアンカは、俺の右腕を見て言う。

「…その右腕、何なん? アンタさんが言うてた事、マジなん? 弾丸をあんな風に防ぐ防具とか、初めて見たで」
「ああ、本当に王家の秘宝らしい。 海中に叩き込まれた時も、多分こいつが助けてくれたんだと思う」
「なるほどなぁ…。 正直、それのせいで、ウチも助かったわ。 アンタがウチの背中を守ってくれてたから、流れ弾に当たらんで済んだ。 って言うか、まさか町中で銃を乱射するバカが居る事自体、想定外やったけどな」
「ああ、あの野郎は、絶対に許せねぇ」

以前からだが、ゴッドフリートの奴は、俺の件ともなると、事態を派手にする傾向が多かった。
それに巻き込まれる事で、俺まで周囲からトラブルの元凶と見られ、しかもゴッドフリートの奴が、俺が原因だと吹聴するもんだから、連られて俺も周囲から信頼を失っていったのだった。 …ま、それはどうでもいい。

「それと、アンタ、まだウチに色々隠し事してたんやな」
「ど、どれの事?」

隠してた事が多すぎて、どれの事やら(汗)

「…いや、まぁそれはええわ。 問いつめてる時間ないし、予想外にウチの目的が近まったから、結果オーライや。 で、マルク、アンタさんはユリウス王子ってのに会った事あるん?」
「ああ、一応な」
「そいつがクーデターの首謀者ってのは、マジなん? エイグリル将軍を閉じこめた敵か?」
「いや、それはない」

俺はハッキリと断言した。

「俺の印象でしかないが、アイツは人質を取るような、そんな卑劣な奴じゃない。 仮に他人と意見が食い違ったにしても、自分が納得行くまで、真正面から堂々と言い合いする奴だよ」
「アンタさん、えらい詳しいな?」
「まぁ、色々あってな…。 とにかく、俺には奴が、クーデターの首謀者とは思えねぇよ。 あいつは追われてるっぽかったし、黒幕じゃない、絶対に」

「ま、跡目争いのクーデターってのは、お互い正義だと思ってるから、相手に容赦なく噛みつけんねんけどな」
「…おい、どういう意味だ、ビアンカ」
「自分はそのユリウスさんに、えらく肩入れしてるみたいやけど、実際はどうか分からん、って言ってんねん」
「いいや、見ればお前も、ユリウスはシロだってすぐに分かるぜ」
「客観的な事実の確認が先やろ? 愚鈍な兄で、聡明な弟でも、普通は兄が王権を継ぐ。 それが正当」
「いや、まぁ、そりゃそうだが…」
「秘宝を持ち逃げした弟って、まともに考えればクロやん? 結果次第では、そのユリウスって奴も探さないかん」
「ぐ…」

それは確かに、理屈ではそうなのだが…。

「ま、今のところ、アンタさんの意見は尊重したるわ。 それより、先にペイントかますで」
「お、おう」

俺たち二人は、路地から大通りに出て、馬車や野犬にペイントボールをぶつけ、ダミーの逃走経路をあちこちに付ける。

「追えーっ! 目標はこっちに逃げたぞーっ!」

「こっちにも逃げた後があるぞーっ!」

そんな事を自分たちで叫びながら、ペイントボールをぶつける訳だが、本当にこんな方法で、紅龍騎士団が引っかかってくれるかは分からない。
機動力のある騎馬隊が居たから、もしもそいつらに的確に看破されれば、この方法は瞬く間に効果を失うだろう。

そう思えば、ゴッドフリートへの奇襲は、意外性があるだけに、案外有効な手なのかもしれない。

「そういう事。 戦は、兵力やのうして機会や」

ビアンカがそう自信満々に言ってるのだから、とりあえず信じよう。

「で、これからどうすんだよ」
「相手の状況を探るに決まってるやろ。 いつ仕掛けるか、そのタイミングが重要や」

どうやって、と俺が言うより早く、ビアンカは狭い路地…レンガ作りの壁に指を引っ掛け、猿のようにぴょんぴょんと、互いの壁を蹴り、窓や突起物に指や足を掛けながら、一気に壁を登っていく。

うわっ…。 こんな技術あるんなら、そりゃ確かに捕まらないわぁ…。

あれだけデカい口叩くのも当然かな、と取り残された俺が地上で心細く待っていると、ビアンカは建物の屋上で周囲を確認すると、行きの逆再生のようにするすると降りてきた。

「早かったな!」
「とりあえず、確認できたで。 紅龍騎士団の連中は、思ってたより遠くまで探しに行ってる」
「マジで!?」
「せやけど、早々に見切りを付けて戻ってきてる連中も居るわ。 根気ないやっちゃ」
「どうすんだよ」
「周囲に護衛がおるけど、今が多分一番手薄な時や」
「やるのかよ」

ゴッドフリートを襲撃するのか。

「ああ、やるで。 …ところで、マルク、もしウチが盾になってくれ言うたら、やってくれる?」

ビアンカが、俺を上目づかいで見て、微妙に媚びを作りつつ言う。
何か珍しいシチュエーションだな、これ。

「盾? それがな…」

本当はそうしたいのだが、さっきの攻防で、小手が反応しなかったことを説明する。

「ふぅん…。 エネルギー切れ、ねぇ…。 まぁ、盾なしでも戦う方法はあるから、別にええけどな」
「何だよ、実は期待してたのかよ」
「そりゃするわ、相手が散弾をまき散らすバカ相手じゃ、確実な盾があるとないとでは大違いやもん」
「ところで、何で盾に拘る? 弓を使って遠距離で仕止めないのか」
「アホか、弓撃ったら殺してまうやろ」

まぁ確かに、対モンスター用の弓は、その装甲を貫くため、鏃(やじり)がちょっとした短剣程度のサイズがある。
ビアンカが気を込めて撃てば、足どころか半身が吹き飛ぶだろう。

「できれば、接近戦に持ち込んでボコりたいねん。 うっかり射殺したら、話聞けない、人質取れない、ボウガン奪えないの三重苦や」

それは確かに。

「…なるほど、じゃあ良い方法があるぜ、俺に任せろ」
「何や、何か思いついたんか!?」
「ああ、策はある。 ま、これは奴の性格を良く知ってる俺だけに出来る方法だと思うがな」


  *     *


ここで場面は、同じ時刻、同じ市中、マルク達を追った騎馬隊へと移る。
ハンターU装備と、イーオス装備のボウガン騎馬隊は、三人一組で行動しながら、ペイントボールの足跡を辿っていたが、それが複数に増えたところで、馬の足を止めた。

「…やられたな、これは」

騎馬隊のリーダーらしき、ハンターUの男が呟く。
その表情は、ハンターUヘルムのバイザーが目深に被さっていて見えない。

「ええ、これは明らかに、ペイントボールを複数使って、足取りを掴ませないようにしていますね」
「我らには馬があります、追いかけて確認しますか?」

部下らしき、イーオス装備の二人がそう進言するが、ハンターUの男はかぶりを振った。

「いや、止めておこう。 多分、無駄足を踏むだけだ」
「ならば、いかがなさいますか」

ハンターUの男は、しばらく天を仰いで考え込むと、言った。

「嵐が来るまで、待とう」
「…嵐?」
「ああ、西に雲がある。 もうしばらくすれば、雨が降り出し、夜闇が早く訪れる。 乗じるなら、その時だ」
「しかし、標的がもう遠くに逃げているやもしれませんぞ…!」
「何、それはそれで心配は要らない」

ハンターUの男は、イーオス装備の二人に言う。

「私には『千里眼』がある。 マルクの居場所なら、どこに居ても見通せる眼がな。 この状況は逆に、好都合とも言える」

ふふ、と笑うハンターUの男に対し、イーオス装備の部下は、揃って顔を見合わせる。
それがハンターU装備のスキルを意味しているのではない事は分かるのだが、その真意とする所を計りかねたのだ。
本当にマルクの居場所が分かるのなら、ここでペイントボールの跡を追って立往生するはずはない、から。

「それに、まだ主役が登場していない」
「主役?」
「ああ、貴様達には言っていなかったが、この後、おそらくはどこかで、黒龍の化身が現れる。 かの黒龍の姫君が、どちらに害を成すか分からん。 …が、できれば我々の利になるように動きたい」
「黒龍の姫君…? それはもしや、あの方ですか!?」
「ああ、おそらくは貴様の想像どおりだ」

そこで、紅龍騎士団の本隊…。
ゴッドフリートと護衛の面々の姿が遠くに見えたため、ハンターU装備の一同は、捜索を続けるフリをしつつ、建物の陰へと隠れた。

「これが急拵えの部隊の欠点ですな。 隊長の仰るとおり、他人が紛れ込んでいても気づかない」

イーオス装備の男の発言に対し、ハンターUの男は含み笑いを漏らしながら応えた。

「ふふ、私はゴッドフリートをいう男をよく知っているが、奴は他人の存在など、塵芥程度にしか思っていない。 部下の顔すら覚えているか、疑わしいものだよ」


  *    *


ここで再び場面は、同じ市中のビアンカに移る。

ビアンカは一人、路地裏に隠れつつ、大通りを我が物顔で闊歩する、ゴッドフリート(ボウガン)とその護衛の面々3名(片手剣)の状況を観察していた。

今、マルクは自らが提案した「策」を実行するため、単独行動を行っている。
その策とは「紅龍騎士団に変装して本隊に紛れ込む」という物だった。

「大丈夫かいな、そんな方法で」
「ああ、十中八九な。 ゴッドフリートの奴は、他人の事なんて全然興味ねぇからよ、紅い鎧さえ着ておけば、部下かどうか分からねぇはずだ」
「ホンマか、それ」

ゴッドフリートは、マルクと共にハンター訓練生だった時代、卒業まで一部の同期生を「これ」「貴様」「お前」で通し、なおかつ顔も覚えなかったという。

「うーん、まぁその性格が今も治ってへんなら、行けるかもしれんけど…。 しかし、アンタは名前覚えられてたのな」
「悪い意味でだけどな。 正直、アイツと関わるくらいなら、『これ』呼ばわりの方がまだマシだったぜ」

そう言いながら、マルクはビアンカが倒した紅龍騎士団の面々から鎧…剣士用イーオス装備をはぎ取って装着する。
右腕だけは「黒龍の小手」を装着せざるを得ないが、それは片手剣の盾を装備する事で隠す。

「アンタさん、ガンナーやろ? 剣の扱いはできんのか?」
「ガンナーだ! と言いたい所だけど、片手剣もそこそこは使える。 駆け出しハンターよりマシな程度だけどな。 それと」
「何や?」
「悪いが、閃光玉とけむり玉のスペアがあったら、くれ。 できれば両方あるとなお良い」

ビアンカは閃光玉を持っていなかったので、けむり玉だけを手持ちの半分…2個だけ渡す。
剣士装備を着込んだマルクは「まぁいいか」とうなずくと、「行ってくる」と言い残し、路地裏から姿を消した。


  *    *


ビアンカは、マルクがいつ行動を起こしても良いよう、身構えつつゴッドフリートの本隊を観察する。

…ゴッドフリートを接近戦で倒すには、二つのハードルをクリアする必要があった。
護衛をどうやって引き離すか、また、あの乱射されるボウガンにどう対処するか。
マルクは、秘策を自信満々に語っていた。

「実はな、『金華』の散弾の装填数は2なんだよ」

元々『金華朧銀の対努』は、貫通・属性特化のボウガンであり、散弾を撃つのには不向きらしい。
速射機構によって、一度にバラ蒔かれる弾丸数は凄まじいものの、2発撃てばリロードを必要とする。

そして、マルクが狙っているのは、そのリロードのチャンスだった。

まず、マルクがゴッドフリートの後方から現れ、注意を引きつける。
ここで、護衛の部下が向かうか、ゴッドフリートが向かうかするだろう。
そこでマルクは距離を取って、散弾を防御しつつ護衛とゴッドフリートを引き離し、リロードの隙にビアンカが背面からゴッドフリートを襲撃する、という段取りだった。

そして、ビアンカが段取りを一通り復習したところで、遂にマルクが行動を起こした。

「大変です、ゴッドフリート隊長!」

マルクは連中の背後の路地裏から出て、さも重大ごとのように叫びながら走って近寄ってくる。
男性用イーオス装備は、顔のかなりの部分が隠れるので、見た目だけからは、正体はまず看破できない。

「ペイントボールの足跡が複数あります! 目標はもう、遠くへ逃走したものかと!」

しかもマルクは、自分だと悟られないよう、普段より凛々しい、まさに兵士然とした声を出していた。
その細かい演技ぶりに、今から決戦というこの時にも関わらず、ビアンカは思わず笑わせられてしまう。

「どうした、何があった? どういう事だ?」
「はっ、先ほど、別の隊員が、自分たちが追っていた足跡とは別のものを発見しました! 他にも、似たような報告が寄せられております! それぞれが別個に追跡中ですが、いかがしましょうか!?」
「…」
「隊長殿!?」

だが、その質問に対するゴッドフリートの返事は、やや予想外のものだった。

「貴様、なぜ一人だ? 私は複数で行動しろ、と行っていたはずだが」
「…!? いえ、現在も追跡を続行中ですので、隊を分けて私だけが報告に上がりました!」
「ふん、複数の足跡とな…。 ペイントを複数使って、包囲を拡散させたか…。 奴にしては、とっさによくそんなアイデアが出てきたもんだな」
「それで、いかがいたしましょうか」

そこで、ゴッドフリートはボウガンをリロードした。

「極めて腹立たしいが、対応する方法はある。 おい、貴様、こっちに来い」
「何でございましょう、ゴッドフリート隊長殿」

だが、次の瞬間、ゴッドフリートは「金華」を構えると、イーオス装備を着込んだマルクめがけて発砲した。
瞬時に、マルクの装備した盾の裏側から、「黒龍の小手」の棘が伸張し、放射状の網目の巨大な盾を作る。

「…がぁっ!?」

だが、銃弾を受けてマルクは吹き飛び、尻餅をつく。
その右肩からは、鮮血が吹き出していた。

「その声、やはり貴様か、マルク=ランディッツ」
「な、何で…」
「一つ教えておいてやる。 この紅龍騎士団の一般兵に、そんな丁寧な言葉を使う奴はいない」

だが、マルクが聞いた「何で」とは、そういう事ではなかった。
先刻、「黒龍の小手」の防御機能はきちんと動作したのだ。 なのに、ゴッドフリートの銃弾は、その盾を突き破ってきた。

「(まさか…!?)」

…貫通弾の速射、か。

雨垂れ、岩をも穿つ。
「金華」に搭載されたもう一つの速射機構、貫通弾Lv2の速射によって、鉄壁とも思われた鎧の防御を破ったのだ。

「死ねッ、マルク! 貴様が死ねば、鎧も外れるはずだ!」
「うおおぉぁっ! ビアンカーーッ!」

そう言って、マルクは目くらましのためか、所持していた「けむり玉」を使った。
周囲一帯が、白煙に覆われる。
その中から響いてくる、連続して轟く発砲音と、マルクの悲鳴。


 *   *


「…な、何やってんや、アイツ!?」

あまりに予想外の展開、マルクの悲鳴を受けて、ビアンカは路地裏から飛び出て走り出す。

「…策どころか、ただの特攻になったやんけ!」

襲われたマルクを救うためには、ゴッドフリートの注意をこっちに向けなくてはならない。
そう思ったビアンカは、護衛にいた3人の片手剣使いのうち、一人を突進ざま蹴り込んで、ド派手に吹き飛ばした。

「何だ、貴様は!?」

ゴリラ男が奇襲に気づき、こちらを振り向く。
だが白煙の中では、銃撃音が続行していた。
そして、未だに続くマルクの悲鳴。

ゴッドフリートが、異変に気づき銃撃を止めるかと思ったのだが、奴はどういう状況になろうとも、まずマルクの殺害を一番の目的としているらしい。
となると、残る二人の護衛を速攻で片づけなくては…!

ビアンカは導引の気法によって、呼吸を整え「練気」を行い、全身の筋力を強化する。

まずは、もう一人の雑魚を倒し、最後にゴリラ男を倒す。
そう思って狙いを定め、棒立ちの片手剣使いに、疾風の如く襲いかかるビアンカ。
十分に気を込めた、膂力も速度も十分な左ミドルキックが唸る。
盾の上からでもKO、万一ガードされても体勢を崩せる、二段構えの攻撃だ。

「(…!?)」

だが、相手の片手剣使いは、ビアンカの予想を越える反応を見せた。
相手はバックステップしつつ、盾でビアンカの蹴りをタイミングよく上に跳ね上げて流したのだ。

ビアンカは体幹の軸を崩し、片足を上げた格好のままよろめいてしまう。
その瞬間、彼女は僅かながらも、酷く動揺した。
自分の蹴りは、簡単に見切られるような甘いものではないし、小手先の防御は吹き飛ばせるのパワーがある。
なのにこの小柄な片手剣使いは、初見で自分の蹴りを完全に見切り、なおかつパワーでも自分の蹴りに打ち負けなかったのだ。

その理由は、一つしか考えられない。

「(…まさか、練気!? でも、片手剣使いで!?)」

白煙の中で、銃撃音とマルクの悲鳴は、まだ続いていた。


<続く>
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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