女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(11)-2

「…ペイントボール!?」

紅龍騎士団の包囲網を突破した俺たちだったが、それは相手の思惑どおりだったらしい。

周囲から一斉に投げつけられた玉。
俺とビアンカの胴や腰に、ペタペタと付着した粘性の液体、ショッキングピンクが鮮やかなそれは、モンスターの追跡に使う、ペイントボール…。
強烈な色と匂いを放つ、ペイント草を原料にした塗料だった。

「…くそッ!」

確かに、ペイントボールは、大型モンスターだけじゃなくて、小動物相手でも有効に機能する。
足腰を伝う粘性の塗料は、俺たちの逃走経路を、点々と色鮮やかに描き出していた。
なんとかして、この塗料を擦り落とさなければ!

「(…いや、どちらにせよ、相手の追跡を振りきるのが先決か!)」

そう思ったが、振り返って敵の様子を見れば、なんと相手に騎馬隊が現れた。
人数は3人、装備は赤と黒のコントラスト、ハンターUとイーオス装備で、手には全員がボウガンを持っている。
ゴッドフリートの奴、そこまで準備してやがったのかよ…!


「急ぐで、アンタさん!」
「マルクだよ!」

ビアンカの奴は、走っては止まり、走っては止まりして、俺のペースに合わせながら走ってくれている。
一応、俺もライトガンナーなので、他の連中よりは走り慣れているつもりだが、やはりビアンカは桁が違った。
速度もスタミナも圧倒的過ぎる。

それでも彼女は、俺のペースに合わせながら走ってくれる。
おい、お前、一人でなら余裕だろ。
見捨てる、って言ってたのに、何で俺を待ってんだよ…。

だから、俺は走るしかなかった。
心臓が狂ったように鼓動を撃ち、胸が破れそうなほどに激しく上下しようと、必死に彼女を追いかけ続けた。

「!?」

だが、首尾よく逃走を続ける俺たちの目の前に、撒いたはずの紅龍騎士団が現れた。
…いや、これも伏兵か!
だがまさか、二重包囲網だなんて!

「止まれぇーっ!」
「やかましいわ!」

しかし、そこは「笹神流弓体術」の暫定伝承者、ビアンカが連中に切り込んでいくと、相手は剣を持ってるってのに、それを上手く捌いて、あの凄まじい掌底や蹴りを叩き込む。
特に、盾を蹴って相手を崩すのと、剣の出がかりを捌く方法は絶妙で、さすが戦場で生まれた技術だけの事はある、と(こんな状況にも関わらず)感心してしまった。

…頼りになるぜ、ビアンカ! 味方で良かった!

ビアンカは、次々と紅龍騎士団の面々を倒し、再び包囲に綻びを作る。
だが、そこで後ろから来た騎馬隊の連中が追いつき、ハンターUを装備した男が、馬に跨ったまま銃を構える。
俺は背後からの弾丸を防御しようと、反射的に右腕を掲げたが、「黒龍の小手」は、何故か無反応だった。

バァン、と銃声が弾ける。

「(…え?)」

敵が放った弾丸は、そのまま俺の胸に着弾、炸裂し、目の前で、ばちゃ、と赤い液体が飛び散った。


  *    *


ここで、時間は当日の朝へと遡り、場面は県境のムッシャー丘陵、ユリウス王子達の戦闘に移る。
紅色のザザミシリーズと、白い法衣を装備した、片手剣の「剣だけ」の男は、王子の想像を絶するほどの強さ…いや、もはや人外の強さを有していた。
王子の銃弾を弾いた剣で、間髪入れずに切り込んでくるという超人技。

これには流石のユリウス王子も、後手を踏まざるを得なかった。
だが、通常の相手ならまだしも、この相手を眼前にして、それはあまりにも致命的な隙。
殺られた、と思った時には「ツルギ【凶】」の刀身は、何の躊躇も慈悲もなく、深々と王子の右肩にめり込んでいた。

「ぐあああっ!」

だが、王子の右肩を襲ったのは、鈍痛だった。
斬撃の刹那、相手は剣を逆刃に返したのだ。

肩を砕かれるような衝撃に硬直する王子。
ボウガンだけは取り落とすまいと力を入れるが、相手はそのまま王子の側面を通り過ぎつつ、空いた右手を王子の顎に引っ掛け、同時に強烈な足払いを喰らわせて、王子をぐるっと宙に舞わした。
空中で逆さまになったユリウス王子、その腰のアイテムポーチを、ザザミ男は剣の刃で切り刻む。
その中からこぼれ出てきたのは、回復薬や各種資材に加えて、王子が大切に所持していた「呪われし王者の小手」、いやさ「黒龍の鎧」…。 その左腕だった。

「おおぉっ!」

だが、ガギュンという甲高い炸裂音がしたと同時に、突如ザザミ男はユリウス王子から距離を取る。
距離を取って体勢を立て直す二人の間に、黒龍の小手がボトッと落ちた。

「な、何だい今の! 何があったんだい!? 何があったのか、説明おしよ! なんでアイツは、左腕を奪うのに失敗したんだい!?」

二人の戦闘を見ていたリンデが、眼前の光景に対し、もう一人のザザミ男の肩を揺さぶって説明を求める。

「…ああ? 鎧を奪われる瞬間に、ユリウスが銃を撃ったからって!?」

ユリウス王子は、右肩への一撃が斬撃ではなく打撃だと理解した時、相手の狙いは「自分の命」ではなく、「黒龍の小手」だと直感した。
打たれて宙を舞わされた時、王子は電光石火の早業で、貫通弾へのリロードを敢行、ザザミ男が小手を奪い取ろうとするその一瞬を狙って、「小手を弾き飛ばした」のだ。
ザザミ男を狙わなかったのは、当たらないという予感があったから。

そして予想通り、ザザミ男は、弾丸の発射と同時…。
あるいはそれより早く回避行動へと移り、銃弾が発射された時には、この状況の通り、小手を挟んで対峙する事となった。

「(くっ…)」

進退、ここに極まれり。
理解と想像を遙かに越えた強敵。
鍛え抜いてきたつもりの自分だが、この底知れぬ相手を目前にしては、「死」を覚悟するしかないと決めたユリウス王子は、弾層に残る、残り2発の貫通弾を、相手に確実にブチ込む事を決意した。

この男は、どういう理由でかは知らないが、自分の動きを事前に察知する事で回避している。
予備動作が盗まれているのかもしれないが、それならそれでも構わない。

相手がどれだけの高速で移動しようと、無関係に弾丸をブチ込む方法はある。 自らの命を引き替えにして、だが。

…だが、自分の思いついた戦法が、この底知れぬ相手に通用するかは分からない。
しかし今は、自分のこの直感に殉ずるしかないのだ。

氷雨が、自分の頬を叩く。
だがその冷たさが、逆に自分を冷静にしてくれる。

覚悟を決めろ。
自分が死ぬか、相手が死ぬか。

遠い山岳のどこかで、びょうびょうと、風の唸り声が聞こえる。

今まで潜り抜けてきた幾つもの「嵐」。
人生における、命と魂を試される試練の時「嵐」。

それが今、再び現れたのだ。
今、この日、この時、それを乗り越える時!

「うぉ…。 おぉおおぉおぉッ…!!」

現状、既に死地と覚悟した王子は、極限の集中力を以て、「銃身一体」と化し、誘いを掛けるべく、自ら黒龍の小手へと歩みを進める。

「(さぁ来い! お前の望みは、この小手だろう!?)」

だが相手も、王子の圧力を恐れる事なく、こちらへと向かってくる。

「(そうだ、来い…! この嵐の中に、お前も飛び込んでこい!)」

彼我の距離は、小手を挟んで、お互い片手剣使いであれば、ジャンプ切りで交戦できる間合いまでに重なる。
交錯の刹那、ユリウス王子は、敵の歩みが僅かに鈍った事を見逃さなかった。

「(…気が付いたか、僕の狙い?)」

ユリウス王子が思いついた戦法とは「カウンター」だった。
どういう理由でかは知らないが、敵は王子の行動を完全に先読みする感じで攻撃を避けていた。
ならば、自発的な攻撃は愚策だ。
さっきのように、敵の行動に合わせてのカウンター射撃が有効なはず。
相手は剣を振るという動作が必要だが、銃は引金を引くだけで済む。 互いの一撃が必殺ならば、こちらに勝機があるはず。
そして、相手の目的はこの鎧。
自分がこれを奪おうとする所作を見せれば、相手は何等かの行動を起こさざるをえないはず。

「(…!?)」

だが、接近して銃口を向けても、相手は動かない。
先ほどの膠着の際、相手は射線を嫌って避けたはずだ。
だが相手は今までの挙動が嘘のように、スコープに捉えられたままの状態で、ゆっくり歩み寄ってくる。

「(バカな…? 予備動作を読んでいる訳ではない、のか…?)」

目の前の敵の挙動に、巨大な違和感を感じる王子。
何故今度は、射線を避けようとしない?
カウンター狙い、という事まで完璧に読まれているのか?
だから動かないのか?

「(…いや違う、相手も僕を誘っているのか!)」

身動きしなくなった相手に、王子は一瞬畏怖を感じた。
カウンター戦法で行くと、たった今決めたばかりなのに、もう自分の狙いを完全に読み切られたように思えたのだ。
銃を撃つ動作は読みとれても、「撃たない動作」を読み取る事は不可能なはずだから。

まるで自分の心の奥底を透かし見られたよう…。
この敵は「心を読む化物」かと思ったのだ。

だが、冷静に考えてみればそうではない。
相手の立場に立てば、自分が王子の動作を完全に先読みでき、カウンター狙いだと分かっているのだから、王子が銃を撃ちたくなるような状況に持っていけば良い。
そして王子に銃を撃たせ、自分が後の先を取る。

そうに違いない。
だから動かないのだ。

「(…望むところだ)」

普通の感性を持つ人間なら、銃口を突きつけられて、冷静で居られる者など居ない。
だがここまで、相手の呼吸と意志を読み切り、かつ自分の直感に殉じて、迷うことなく行動できるとは。
いや、相手は本当に化生の者、人の心を読み取る魔物かもしれない。

だが、何が相手だろうと、自分はこの「嵐」から、自分の命を守りきってみせる。

それこそが…。
あの日、母と交わした約束だから。


お互いの渦巻く闘気で、空気の密度すらが変わり、一帯の空間が濃密なものに変わる。
まるで海の底のような息苦しい空間の中で、相手の動作を読む事に全神経を配り続ける2人。

「(さぁ来い…! もっと、もっとだ!)」

だがユリウス王子は、この掴み合いのような、息詰まる対峙の中で、自分の勝機を朧気に見いだしつつあった。

何故なら、敵が僅かに動揺しているのが伺いしれたからだ。 激闘の中で掴む、相手の呼吸。
その流れが、僅かながらに荒れている。
敵も自分と同じ戦法を選択した事もそうだが、何よりも呼吸の乱れが、今の自分にはうかつに手が出せない事を意味していた。
つまり王子が選択した戦法「カウンター」は、この相手にも有効打を与えうる。
それがこの敵の行動によって、計らずも証明されたのだ。

状況は5分と5分。
先にうかつな行動をした方が負ける。

全身全霊を以て相対してみれば、ザザミ男への理解は早かった。
驚くべき事に、相手に殺意はない。
あるのは、どこまでも澄み切った整調な闘気。

この死地にて、これだけの平静な闘気を保てる事自体、ただ事ではない。
先ほどの逆刃もそうだが、まだこの男には余裕があるのか。

対して、自分の灼熱の炎のような、荒ぶる闘気。
心の修養がなってない証だ。
武人としてまだまだ未熟だと、心の奥底で恥ずかしく思う。
だが、今はそんな内省に浸る時ではない。
未熟ならば未熟で一向に構わない。
ただひたすらに心の温度を上げ、闘志を燃やせ。
想像を越える高火力の魂で、相手の油断もろとも焼き付くせ。


互いの距離は、黒龍の小手、その右腕を求めてジリジリと縮まる。
そして、互いの闘気が触れるに至ったその時…。
遂に均衡は破れた。

「…おおおおぉっ!」


<続く>

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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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