女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(10)-3


「ウチの門派に入門するには、まず『弓師こそが地上最強』という確固たる信念を持たんとあかん」
「はぁ…」

ビアンカは俺の「チェーンブリッツ」を見やると、何故か艶めかしさを添えて、そっと囁いてきた。

「…だから、今日でライトガンナーは廃業やで?」
「OK、了解した。 俺、弓師になる」

俺がそう言うと、ビアンカは俺の肩を叩いてしみじみと言った。

「…そうそう、そうよなぁ。 人間、そう簡単に費やしてきた時間を捨てる気にはなれんもんな…。 ライトガンナーを止められん、というのも仕方ないこっちゃ」
「いや、だからライトガンナー廃業するって。 弓師になる」
「…え? おおおおッ!? ま、マジで言うてんのアンタさん!? ライトボウガン止めて、弓使うて!?」
「ああ、俺は弓を使う。 本気だぜ!」

俺はビシッと親指を立てて、できるだけ好青年に見えるようにニヤリと笑う。

「ま、マジでか…!?」


ビアンカが語ってくれた、「笹神流弓体術」の秘密。
それは簡単にマスターできる技術ではなく、永く過酷な修練を要するものだった。
継続するマメな努力とか、俺が最も苦手とするジャンルだ。

しかし俺は、それでも「笹神流弓体術」を学ぶ気になっていた。
別に弓師になる気はないので、全てを学ぶ必要はない。
俺が必要としているのは、あの機動力の秘密だけ。
あのスピードを自分のものにできれば、俺は、究極のライトガンナーに、一歩なりとも近づけるはずだ。

ところが、笹神流弓体術への入門には、ちょっとした問題があった。
それが冒頭のやり取りで、笹神流弓体術を学ぶには、「最強の存在である」弓師へ転職すべしという事だった。
そんな理由で転職を強いられるとなれば、自分の武器に自負や愛着のある狩人なら、かなりの抵抗感を覚える者は多かろう。

だが俺はサクサクッと弓師への転職を決め、ビアンカをその決断の早さで驚愕させた。

「いやぁ…。 アンタさんが、そこまでウチらの弓体術を評価してくれてるとは思わへんかったわ…。」
「ははは、いやまぁ、俺は見る目のある男だからな」

でも実のところ、ライトボウガンをメインにする狩人は数が少なく、大半はサブウェポンとして使用されている場合が殆どだ。
俺はレアケースの「ライトボウガンメインのハンター」だが、それでも金銭的に厳しい時期は別武器を使っていた。

大剣やハンマー使いは、一撃の破壊力にこだわっているのだろうし、双剣、片手剣使いは圧倒的な手数に、ランス、ガンス使いは安定性と堅牢さに魅力を見いだしているのだろう。
でも、ライトボウガンの魅力というのは、一言で言えば「汎用性」だ。 要するに何でもできることだ。
攻め手の選択肢が増えるので、俺みたいな、策を弄する人間に向く。
つまり、ライトガンナーって人種は、一つの武器に固執しない傾向が非常に高い。

ビアンカには「ライトボウガンは止めて弓を使う」と言った。 
だが「永遠に止める」とまでは言ってない。
「弓の奥義を学ぶからには、弓以外使っちゃいけない」とか前時代的過ぎるし、それが仮に、誰かの逆鱗や何かの禁忌に触れたとしても、バックレれば問題なかろう。


そうこうしているうちに、闇ギルドの馬車は街へと到着した。

馬車を降りた俺たちは、御者から、クエスト報奨金の精算の場として「黄昏の紫煙」亭の外のテラスを指定された。
人目に付くので屋外での交渉は勘弁して欲しいところだったのだが、逆に堂々としてる方が目立ちにくいって事なのだろうか。

ともあれ、俺とビアンカはテラスで軽食を頼み、雑談しながら、指定時間まで待っていたのだが…。

「遅いな、アンタに金貸してくれた相手」
「ああ、約束の12時から、もう2時間以上過ぎてるし…」
「査定に時間掛かってんのかな」
「どうかな…。 ガノトトスみたいなありふれた相手じゃ、それは考えにくいがな」
「じゃあ、どうすんの」
「どうする、って、そりゃ待つしかねぇだろ…」

空は明らかに雨が降りそうな曇天。
ギルドさん、もっと早く来てくんねーかなー。

「…そうだ」
「何?」
「どうせなら、馬車の中で言ってた事、実演してくれよ」
「ああ、『削纏』のこと?」
「…さ、さくてん?」
「そう、『無駄を削る技術』の事な。 ウチらはそう言うねんけど」
「そうだよ、それそれ! 人間の動きに無駄がある、って奴。 それ教えてくれよ」

俺がそう言うと、ビアンカは周囲に視線をやった。
誰か人でも探しているのか、と思うと、ビアンカは道をツカツカ歩いてる、グラマー姉ちゃんの背中を指さし…。

「あの姉ちゃんは、何であんなに尻をプリプリさせながら歩いてるんか、分かるか?」

そんな事を聞いてきた。

「…はぁ?」

尻をプリプリ?
むっちりヒップで男を誘うためとか?

「じゃあ、あの荷運びのオッサンは、なぜ尻がプリプリしてないんか、分かるか」

いや、知らねーよ! っていうか、野郎のケツがどうしたってんだよ!

「人間はな、大きく分けて、2種類の歩き方をしてんねん」
「…へ?」

そこでビアンカは席を立つと、歩行の実演を始めた。

「まず、こっちがプリプリ姉ちゃんの歩き方。 『体幹』という、体の中心軸を支点にして、腰を回転させ…」

ビアンカは、ローキックのモーションのように、腰を捻って腿を上げ、

「太股で膝下を釣り上げ、踏み込む」

地面を踵で蹴るように、足を大きく踏みおろす。

くるっ、ざっ、くるっ、ざっ。
ビアンカは、交互に腰を小さく回転させつつ、連続して足を前に突きだした。

…なるほど、確かにヒップがプリプリしている。

「次に、荷運びのオッサンの歩き方」

ビアンカは、今度は背筋をまっすぐにし、両足を揃える。
そしてそのまま、ゆっくり前に倒れ込む。
バランスがやや危うくなったところで、ビアンカはさっと右足を前に出す。
そして前傾姿勢のまま、右、左、右、左と足を前に出して、ざっざっざ、とスリ足で歩行を続ける。

「腰を回転させず、重心の移動によって足を前に出す」

実演が終わったところで、ビアンカは俺を見た。

「分かったか? 人間の歩き方の違い」
「あ、ああ、何となく…」

…腰を回転させる歩き方と、回転させない歩き方。
そういう事が言いたいのだろうか。

「その通り。 で、何故こういう歩き方の差が生まれるかというと、足の長さが原因や」

ビアンカは、軽食のドリンクを手にとって一口すする。

「足の長さ?」
「ああ、座高に比べて足が長い人は、腰を回転させる歩行になり、足が短い人は、体重移動による歩行になりがちやねん。 その方が『楽』やからな」

それは、初めて聞く概念だった。
人間の歩行が、2種類あるなんて。

「…でも、全ての人間が、その2つに分かれる訳じゃねぇだろ」
「その通り、実際はこの両方を併せ持つ事が殆どで、あの二人みたいに極端な例は稀や。 だから、人間の『最適な歩行法』は、その人の体格によって、それぞれ異なってくる」
「俺はどうなんだよ」
「ちょっと歩いてみて」

ビアンカに言われ、俺は慌てて席を立ち、なるだけナチュラルに歩いてみる。

「うん、体重移動8、体幹2かな」
「…それは、俺の足が短いって事か!?」
「いや、アンタ、子供の頃、体小さかったろ? あるいは、何か重いもの持つ仕事してたとか?」
「え、あ、ああ、農業してた」
「せやろなー。 変な癖が染み着いとる。 実際は、体重移動6、体幹4くらいの歩行が、アンタのベストバランスや」
「そうなのか…」
「だから、アンタさんは、もっと腰~股の筋肉をしっかり鍛えたがええ。 股上げを僅かでも意識すれば、移動スピードはかなり変わってくる」
「そ、そうか…」

俺がライトガンナーとしてイマイチだったのは、そういう理由もあったのか。

「分かった? これが『削纏』。 自らの無駄な動作に気づき、矯正することで、ベストパフォーマンスを発生させる技術。 笹神流弓体術を構成する骨子の一つや」
「な、なるほど」
「あとの骨子『練気』『同調』『照応』も、大サービスで実演しちゃる。 …でも、『練気』は説明せんでええよな?」
「あ、ああ、大丈夫だ」

実際の所、俺はガンナーなので「練気」は苦手だ。
昔、一度修行した事はあるが、あれは本人の資質とセンスが成果を大きく左右し、俺は全然ダメな方だった。
本当は「練気」のコツも教えて欲しかったのだが、恥ずかしくて言えなかった。

「じゃ次、『同調』行くで。 同調ってのは『力の束ね方』の事や!」
「お、おう」


ここで、時刻は同日の朝まで遡る。
ノーブルとオネストの県境、ムッシャー丘陵において、ユリウス王子と、紅竜騎士団0番隊【ポオ】は、距離をおいて対峙し、一触即発の状態にあった。

ザザミ3人組のうち、片手剣と盾を装備している奴が、霧雨でぬかるむ足元を全く気にせずに近づいてくる。

「(…何という鍛錬ぶりだ)」

ユリウス王子は、相手の所作を見て、内心で感嘆する。
実に滑らかな運足。
歩法までも修めているとは、明らかにただ者じゃない。
相手は片手剣だが、有利過ぎるこの距離からでも本気を出すべき相手だ、と直感が警告した。

被我の距離はおよそ25m。
零距離までの時間は、優秀な兵士であれば、およそ3秒。
射撃には十分すぎる猶予だが、1秒たりとて無駄にはしない。

ユリウス王子はボーンシューターを構え、スコープに敵の姿を捉えると、一呼吸で3連射する。
初撃はセオリー、剣を持つ左半身へのボディショット。

「(…!?)」

だが、ガガガンという3度響く衝突音と共に、銃弾は虚空へ散る。
ザザミの男は、ユリウス王子の射撃を、片手剣の盾で弾き飛ばした。

「(…バカな!)」

男性用のザザミシリーズは、装甲が全身を隙なく覆っているため、明瞭な弱点がなく狙いどころが難しい。
ユリウス王子がボディショットを狙ったのは、只の小手調べで、それ以上の意味はなかった。
頭、肩、胴、どこを狙ってもおかしくないのに、相手はボディショットという狙いをあらかじめ見越していたかのように、危なげなく弾丸を防ぎきったのだ。

「(なら、これでどうだ!)」

ユリウス王子は相手の姿をスコープで再度確認すると、今度は比較的装甲の薄い「顔面」「襟裏」「股の付け根」の3カ所に正確に狙いを付けて、またも一呼吸で撃ちきる。
エイムとスナイプ、それを3度、高速かつ的確にこなす王子の狙撃技術は、もはや超人の域に届きつつあった。
相手は身を捻って被弾面積を少なくしつつ、顔面への射撃を盾で防いだが、それでも胴へ避けきれない射撃を受け、身体が一瞬硬直する。
その隙を見逃さずタクティカルリロード。

「(行ける…。散らした連射なら、相手は付いてこれない!)」

相手はザザミシリーズという重装備。
致命傷を与えるのは困難だが、このぬかるむ足元では、フットワークで避けられる可能性もまた低い。
被我の距離を1mとて詰めさせる事なく連射で押し返すと、またも王子は「顔面」「心臓」「股間」と、狙いを散らした3連射を連続して繰り出す。

相手は、致命となる部位への弾丸こそ盾で防御していたが、それでも全部を防御できる訳ではなかった。
暴風雨の前には雨傘など全くの無力であるように、ユリウス王子の雨霰と降る銃弾は、敵の愚直な突進を押し返していた。

「(…よし)」

このまま蜂の巣と弾丸を浴びせ続け、相手の戦意を奪う。
それでも向かってくるなら、虎の子の貫通弾を使って鎧に穴を開け、格の違いを理解させるつもりだった。

「…これは…マズいね。 さすが王子」

弾丸の嵐をその身に浴び、ザザミの男が小さく呟く気配がする。
だが銃撃の轟音で、誰だかまでは分からない。

ザザミの男は、盾を構えたままバックステップを繰り返し、大きく距離を取った。

「(…今の動作、この男、ランサーか?)」

「悪ィ、お前の出番だ。 俺でも行けるかなと思ったけど、やっぱ王子の相手はキツいわ」

距離を取った片手剣使いは、後方で待機してたもう一人の片手剣使いの背中を、バトンタッチとばかりに叩きながら、そう小声で囁く。

「何だよお前たち! 一人ずつ戦ってないで、2人で一斉に掛かればいいじゃないのさ! 脳みそ腐ってんのかい!?」

リンデがそう絶叫するが、さっきまで交戦していた片手剣使いの男は、スススと近寄って、またも何事か呟く。

「…え、騎士道に反する? それと…何だよ? それも言えって?」

そして、今度は片手剣の…「剣だけ」の男が、近寄ってくる。

「おい、ユリウスゥ! こいつがどうしてもって言うから、言ってやるけどねぇ!」

「そいつとは、本気で戦った方が良いってよぉ!」

「『本気だから、盾を持ってない』んだってさ!」

だが、ユリウス王子こそ常に本気だった。
彼が戦場において、緩んだ気持ちで臨んだ事など一度もない。
相手が誰であろうと、遠慮のない本気の射撃を叩き込むだけだ。
再びスコープで狙いを定め、一瞬で3カ所の弱点を狙撃する。

その磨き抜かれた技術は、対人戦では必殺のはずだった…のに。

「(…!?)」

ユリウス王子は、スコープの中で展開された光景を疑った。
その、盾を持たない片手剣使いは、連続で襲いくる亜音速の銃弾を、川面を流れる木の葉の如く、僅かな身のこなしだけで避けてのけたのだ。
表現しがたい違和感が、王子の全身を貫く。

「(バカな…!?)」

このぬかるむ足元、しかもザザミ装備で!?
いや、そもそも「銃弾を避ける」などという行為が、人間に可能なのか!?

信じられなかった。
見間違いでなければ、銃爪に指を掛けたその瞬間に、相手は回避動作に入っていた。
まるで「どこを狙っていたのか、事前に知っていた」かのような身体捌き。

これは、何かの夢か、錯覚か。
そう思いながら、再び引き金を引くユリウス王子だったが、それは夢でも錯覚でもなかった。

男は、2度目の3連射をも、舞い散る花びらのように華麗に避けてのけたのだ。
そして、ユリウス王子が6発撃ち尽くしたのを確認するや、イャンガルルガの片手剣「ツルギ【凶】」を掲げて、一気に距離を詰めてきた。

「(…!! マズいッ!)」

リロードはギリギリで間に合い、彼我の距離が4mまで肉薄した所で、王子は相手に銃口を向ける。

だが、銃口を向けた途端、敵はユリウスの周囲を高速で旋回し始め、射線を徹底的に避けようとする。

舞い逃げる相手と、追随し続ける銃口。
円舞を描く膠着の最中、ボウガンを持つリンデが、遠くで何事かを言っているのが聞こえた。

焦りを感じた王子は、唐突に一発だけ発砲する。
相手の動揺を誘い、うかつな行動を取らせて、近距離から仕止める予定の一発。

「(…何だと!?)」

だが、再度の信じがたい光景に、さらなる驚愕が王子を襲う。
ザザミの男は、不意に発砲された銃弾を、なんと「剣先で弾いた」のだ。

信じられなかった。
何故、どうやって。

この男は、完全に自分が射撃するタイミングとエイムを、どうやって把握している!?
この短時間で、射撃の予備モーションを完全に盗まれたというのか?
いや、それよりも、銃弾を剣で弾くなんて…!

その思考は、瞬きにも及ばぬ一瞬。
だが、僅かであれど、確かに動揺した王子の隙を逃すことなく、ザザミの男は残る4mの距離を、一気に詰めて切り込んできた。

「ぐあっ!?」

躊躇ない相手の斬撃は、王子の射撃速度すらをも上回る。
銃弾が弾かれた直後にはもう、片手剣・「ツルギ【凶】」の刀身が、深々とユリウス王子の右肩に食い込んでいた。

<続く>
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*Comment

NoTitle 

GHいつも楽しく拝読いたしております。
どうも個人的にマルク氏がつぼのようで
氏が登場するとテンションが上がります。
ビアンカちゃんとのやりとりも最高に面白いです!
いつも楽しい作品をありがとうございます(^ワ^)ノ
  • posted by PECO 
  • URL 
  • 2013.04/04 18:21分 
  • [Edit]

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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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