女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(10)-2

同日同時刻、バルベキア三国のオネスト郡県とノーブル郡県の県境、乱伐で大規模な地滑りを起こしたムッシャー丘陵、その郊外、地滑りで傾いた山小屋。
その2階で、「JJ」こと「ユリウス=イェルザレム第二王子」は、先日の【ゴールデンビートル】との戦闘で疲弊しきった体を横たえ、つかの間の休息を貪っていたが、ふとした気配で目を覚ました。

「…雨か?」

さぁー、という音が遠くから聞こえる。
肌にまとわりつく、湿った冷たい空気。
霧雨でも降っているのか。

この丘陵は、保水性に欠ける土質のため、少しの雨でも地面が泥寧化する。
大雨になるようだったら、土砂崩れの危険もあるため、早めに立ち去らないといけないが、むき出しのボウガンを抱えての行動はできれば避けたい。

王子が窓の隙間から天を仰ぐと、案の定、外は薄曇りの霧雨。 気温も比較的低く、いつ雪に変わってもおかしくない様相だった。

これは天候の回復を待つべきか、と再び王子が寝床に入ろうとした所、外から誰かが自分を監視している事に気がついた。
それは直感に過ぎないが、生死の境を潜り抜け、刃の如く研ぎあげた感覚に間違いはない。

これは殺気だ。
蛇が獲物の鼠を見つけ、そっと忍び寄る時の雰囲気…!


ユリウス王子は、静かにベッドから離れると、マントにくるんだ「ボーンシューター」の状態と、アイテムポーチの中身を確認する。

ボーンシューター、OK。

通常弾OK、貫通弾僅少、散弾なし。
【ゴールデンビートル】の連中は、散弾主体に攻めてきたので、通常弾しか残らなかったが、それでも十分だ。

アイテム類、OK。
回復薬グレート等の薬は十分にある。
携帯食料は残り2つ。

…そして、「呪われし王者の小手」の左腕。

これだけは、絶対に保持しなければ。
鎧の紛失は、彼にとっても痛恨の極みだった。
右腕は、多分テネス村での戦闘で紛失した可能性が高い。
だが、それに気づいた時【ゴールデンビートル】の強襲を受け、村に戻って確認できなかったのは痛手だった。
そこからの連続する戦闘の果てに、こんな県境にまで至る。

小屋の外に居る連中は、【ゴールデンビートル】の残党、あるいは新手か…。

相手の勢力をなんとかして確認しようと、王子が丸太小屋の隙間を探していると、急にババババ、と小屋を叩く激しい音。

「(…!?)」

この音、おそらく弾丸を小屋に向かって連射している。
感じからして、弾丸は通常弾。
貫通弾ならば、小屋の丸太なぞ貫くであろうし、近寄っての散弾ならば、もっと叩くような激しい音になるはずだ。

遠距離からの、攻撃するつもりのない射撃。
つまりは威嚇、あるいは挑発。
外に居る相手が本当に【ゴールデンビートル】の残党なら、隊長の性格的に、後者だろう。

「そこに居るのは分かってる、殺してやるから出てこいよ」という事か。

こんな無意味な挑発、奴ならやりそうなことだ。
こないだ散々な目にあったはずなのに、本当にしつこい性格としか言いようがない。

戦闘する覚悟を即座に固めたユリウス王子は、携帯食料を口に放り込むと、回復薬グレートで飲み下す。
別に怪我をしている訳ではないが、人間相手の戦闘になれば、薬なぞ悠長に飲んでる暇はない。
それに、そもそも彼にとっては、回復薬など水の代替品にしか過ぎなかった。

丸太小屋周囲に、人の気配はない。
裏口は、おそらく無人。
だが小屋正面にも、人の気配は薄い。
少数なのか、それとも小屋から離れた位置に居るのか。

さっきの銃声からして、後者だと判断したユリウスは、一応、裏口に罠が仕掛けられてしない事を確認し、銃を構えつつ、素早く小屋の外へと出る。

「待ってたよ、ユ~リウスゥ! こないだ、アタシの部下をケチョンケチョンにしてくれたのは、忘れてないだろうね! 今日こそ、お前の年貢の納めどきだよ!」

下品なハスキーには気も止めず、ユリウスは状況を確認し、内心に驚きを覚える。
相手は、たったの4人だった。
しかも、ボウガンを持っているのはたった一人、こないだ壊滅させた【ゴールデンビートル】の女隊長、リンデだけ。
相変わらず、露出の激しい女性専用装備に生足ブーツ、耐寒用の分厚い毛皮のコート、という下品極まる格好。
残る3人は、全身を覆う赤い鎧…ザザミシリーズの男性用装備に、1人目がランス、2人目は片手剣、3人目が片手剣の「剣」だけを武器として携帯していた。

しかも、さらに異様だったのは、ザザミシリーズを装備している連中が、円模様の紋章を付けた、白い法衣を覆っていたことだ。

リンデは結婚詐欺で捕らえられた女傑であり、相手の男性に(素手で)重傷を負わせたという有名な逸話があるので、ユリウスも最初から名前を知っていた。
おそらく、残りのメンツも有名な犯罪者なのだろうが、法衣は顔までもを覆っているため、外見だけでは誰だか看破できない。

「今日はねぇ、恐ろしく強い連中を連れてきたのよ! もう、流石のお前だって、勝つのは全くの不可能さぁ!」

リンデのその言葉を聞いて、ユリウス王子はその3人の気配を探る。
…確かに、3人のうち2人から、気配を悟られぬように抑えた、だが隠しきれないほどに強大な気配がひしひしと伝わってくる。

「(これは…本当に犯罪者なのか?)」

人間の姿をしたモンスター、と例えてもいいほどの強烈な気配。 老練の武将、エイグリル将軍にも匹敵する圧迫感は、とても克己できぬ人間の醸し出せるものとは思えなかった。

「だから、決闘しようじゃないの。 ボクちゃんの大好きな決闘で、ケリ付けましょう?」
「…何?」
「貴族にとって、誓いの決闘ってのは、絶対なんでしょ? だから、負けた方が全てを差し出すって事で、決闘しましょうよ」

そうすると、リンデは干した木の実を、腰のポーチから取り出し、もぐもぐと噛みながら言う。

「アタシぃ、もうここらへんで、決着にしたいのよ」
「断る」

だが、ユリウス王子の返答は、簡潔にして迅速だった。

「騎士の決闘とは神聖なもの。 生命、名誉、家族…。 互いの一切合切を天秤の台座に乗せて、軍神の審判に全てを委ねる儀式だ!」
「…え? な、何ですって?」
「相手との、命を掛けた魂の裁判、それが決闘! 遺恨もなければ、名前も家系も知らぬ相手と決闘はできない!」
「な、何をお言いだよ、ボクちゃん…。 難しい事言って、人を混乱させようとするんじゃないよ!」
「…」
「大体何だってんだい、グンシンノシンバントカ…あいたっ、舌噛んだ!」

ため息をつくユリウス王子。
と同時に、片手剣の2人組が、ザクザクと足元の砂地を踏み締めながら、ユリウス王子の方へ向かう。
それに慌てて追いすがるリンデ。

「お、おい、お前たち! 隊長であるアタシの言うことをお聞き! おい、ユリウス! こいつらにだってちゃーんと名前はあるよぉ! お前だってビビって尻尾巻いて逃げちゃう相手なんだから! だから決闘しな! こいつの名前はねぇ…」

だがそこで、リンデの口元は、そっと塞がれた。
いかつい身なりの割に、丁寧な所作のザザミの男。
彼はゆっくり首を左右に振ると、何事かを囁いたのか、リンデに顔を寄せた。

「な、なんだよぉ…! アンタらも決闘はできないっての!?」

ザザミの男は、ゆっくり頷く。

「だけど、ユリウスを捕まえることには、アンタらも同意してるんじゃないの!?」

またも、ザザミの男はゆっくりと頷く。

どうやらザザミの男たちは、やはり犯罪者などではなく、本当に名のある武将らしい。
騎士の何たるかを理解しているようだし、上官であるリンデに反論していることからも、元の身分は上だろう。

3人のうちの、片手剣2人組は、ユリウス王子の方を向くと、居住まいを正し、自分の口と喉元を指さしてから、慇懃に一礼する。
「喋れない不作法をお許し下さい」という所だろうか。

そして、片手剣を取り出して、首を傾げる動作をする。
「互いに、甚だ興の乗らない戦いですが」だろうか。

どこか愛嬌を感じさせる動作だ。
だが彼は、剣を天に掲げると、空気を裂くかのように振りおろし、ユリウスに対して剣先を一直線に突きつけた。

「(…こいつら、本気で僕を捕まえる気か?)」

ユリウス王子はそう思う。
確かに、彼らは腕に覚えのある武将かもしれない。
だが、自分を捕まえるのに、片手剣という武器選択は絶対にない。

ヘヴィボウガンは、ハンターが扱える中で、最強の武器種。
自分を本気で捕獲したいなら、実力あるガンナー達に、連射力に富むライトボウガンを装備させて取り囲む、くらいの方法しかないはず。
だのに、リーチの短い近接武器で、しかも単身で挑むとか、全くの論外だ。
相手が本当のモンスターであろうと、間違いなく近寄る前に蜂の巣になる。

「(しかし…)」

その程度のことは、相手も知っているはず。
しかし勝算を持って連中はこの場にやってきた。
何か策でもあるのか、と内心で訝っている間に、例のザザミの男は、またもリンデに顔を寄せて、何事かを囁いた。

「…んもう、それなら、最初からアタシに任せときなよ!」

リンデがユリウス王子の方に向かって、大声で怒鳴り掛ける。

「おい! ユリウスの坊や! 名前は名乗れないけどねぇ、隊名なら名乗ってやるってよ! ウチらは、アンタを始末するために、カルネラ大臣様が特別に編成したチームだ!」

そして、リンデはザザミ3人組と、自分を指さして怒鳴った。

「紅龍騎士団0番隊、【ポオ】だ! 決闘できないんならね、せめて尋常に勝負しな!」


  *   *

同日同時刻、シャルルがノーブル城下町でヴォーデンと会談し、県境でユリウス王子がリンデ率いる紅龍騎士団【ポオ】と交戦を始めたその時。

マルク=ランディッツとビアンカは、闇ギルドの馬車に揺られて、クェル南岸からノーブル城下町への帰路に着いていた。

だが、ビアンカの体調はイマイチ回復せず、彼女はシートを倒して、寝っ転がったままだった。

「見た目スゴく鍛えてそうなのに、案外軟弱なのな」
「軟弱言うな、誰のせいで風門開いた思てんねん」
「俺のせいかよ」
「他に誰が居るねん」

会話の最中にも、ビアンカはゴホゴホとせき込む。

「あの、ちょっとした疑問なんですけど…」
「なんや」
「もしかして、『風門が開いた』って、まさか『風邪引いた』って意味なんでしょうか?」
「せや。 ってか、それ以外の何に見える? お前の目は節穴か?」
「なら、わざわざそんな分かりにくい言い方すんなよ! 最初っから風邪引いた、って言えば良いじゃねぇか!」

と、俺が妥当な反論をしたらパンチされた。

ビアンカ曰く、「風門」とは、首筋裏にある経絡の一つで、ここに冷気が入り込むと、人によっては途端に体調を崩すという。
笹神流弓体術奥義「千龍布溜短縮」「絶影」を使用したせいで『風門』が開き、海に飛び込んだ事が原因で、その経絡一帯が冷えたらしい。
つまりどっちも俺が原因だと。

「ああ、でも良かったぜ、その程度で」
「何が良かったねん!」
「そうカリカリすんなよ。 俺、『風門が開いた』って言うから、もっと重症なのかって思ってたんだよ…。 でも、本当に風邪引いた程度なのなら、すぐ治んだろ?」
「…一応、このまま休んでられれば、な」
「よし!街についたら、完熟マンゴーでもオゴってやるよ、ウメェぞ! それで栄養付けろよ!」
「別に、人にオゴってもらうほど金に困ってないわ」
「バカ、俺の気持ちだって」
「…そっか。 なら、ありがたくご馳走になろかな」

そう言うと、ビアンカはまた眼を閉じて、シートにもたれ掛かった。

「喋るのもキツいのか」
「…約束してた、弓体術の話か?」
「…無理か?」
「いや、ちょっとならええ。 話せる部分だけ話してやる。 ただ、具体的な名前は口に出すなや」

そういうと、ビアンカは自分を指さして、×を作る。

…ああ、「笹神龍心」と「ビアンカ」の名前は出すな、ってことか。 それと、奥義の名前の事とかも、だろうな。

「で、あの体術は、ウチの爺ちゃんが戦場で編み出したもの、ってのは話したよな」
「ああ」
「その骨子はな、『無駄を削る技術』やねん」
「…無駄?」
「ああ、ウチの爺ちゃんが言うに、人間の動きってのはな、元々、非能率な動きしかできんようになっとるらしい」
「へぇー」

…人間は、非能率な動きしかできない?

「だから、その無駄を自覚し、フォームを改善して、『能率的』な動きにしてやれば、それだけでパワフルになれんねんて」
「はぁ…そうなの?」
「なんか、あまり感動してへんな? ウチ今、凄い事教えてんのに」
「いや、だってよ、非能率な動きしかできないからパワーが出ない、って言われてもよ、一体どういう事なのか、イマイチよく分かんなくてよ」

ビアンカは、俺の意見を聞くと、腕を組んで少し考え込む仕草を見せた。

「んーと、言い方を変えればな」
「ああ」
「実はな、人間は普段、筋肉を最小限度にしか使ってへん。 もっと言い換えれば『なるたけ疲れへんように』動いてんねや」
「…そうなのか?」
「ああ、赤ん坊や子供ん頃は、全身の力を自然と使えるんやけど、成長するに従って『筋力を最小限度にしか使わない方法』が染み着いていくねん」

ま、赤ん坊や子供が案外力が強い、のは分かる気がする。
瞬発力っていうか、全身のパワーが違うっていうかな。

「で、何でそうなるんだ?」
「そりゃ、生きるために決まってるやん? エネルギーの消耗を抑えへんと、沢山食べなあかんからな」
「なるほど、じゃあ、体に染み着いた『筋肉を最小限にしか使わない』体の動かし方を一時忘れて…」
「『筋肉の力を最大限に活用できる』体の動かし方を学ぶ、って訳。 だから、ウチらのは『弓術』やのうして、『弓・体術』言うねん」
「なるほど、なんとなく分かった気がする」
「いやいや、実践を経てみんことには分からんはずやで? そりゃ文字通り、『気がする』だけや。 そしてな」
「まだあんのか」
「もちろんや!弓体術は、爺ちゃんの偉大な遺産やからな…。 で、それらを「練気」で強化し、全身の力を「同調」して、天地と「照応」することで、相手を無力化し…」

ビアンカは、そこで拳を掲げると、ビュッと振りおろした。

「一撃。 これで、どんな相手も木端微塵や」
「な、なるほど…」
「どや、参考になったか? 少しは興味出てきたか?」
「ああ、非常にな」

実際は、予想と結構違ってて困惑してた。
正直、非常に困った。

というのも、今の話の中には、射撃の射の字など全く出てこなくて、「筋肉こそが力」という、剣士の教練場で聞かされそうな、ガチムチスパルタ系の話だったからだ。
「ありあまるパワーがあるから、弓師としても凄いんですよ!」的な印象を受けたが、ビアンカの鍛え方を見るに、多分それは間違いではあるまい。

つまり、「笹神流弓体術」とは、小手先の知識とかでどうにかなるものではなく、ビアンカの話から想像するに、永く過酷な修練の日々が必要となってくるらしい。
継続するマメな努力とか、俺が最も苦手とするジャンルだ。

しかし…。

「な、それ、誰でも学べるのか?」

俺は、それでも「笹神流弓体術」を学ぶ気になっていた。
弓師になる気は全くないので、別に全てを学ぶ必要はないだろう。
俺が必要としているのは、あの機動力の秘密だけ。
あのスピードを自分のものにできれば、俺は、究極のライトガンナーに、一歩なりとも近づけるはずだ。

「一つ、条件があるけど、基本的には誰でもこいやで」
「マジで? あの、男だったら…」

奥義とかも普通に使っていいの?
という俺の口パク質問に、ビアンカはうなずいて答える。

「一子相伝とかいう事も全然ないし、初心者にも分かりやすく教えるし、入門料もフレンドリーやで? なんせ、ウチの爺ちゃん、弓体術を後世に残したがってるしな」
「じゃあ、地元には沢山の弟子がいるんだな」

だが、俺がそう質問すると、ビアンカは視線を泳がせた。

「ああ、いや、まぁ、それはそうでもないねんけど…」
「何だよ、さっき言ってた条件か? それがハードル高いのかよ」
「いや、そうでもないで? 人によっては全然楽勝や」
「何だよ、ぼかしてないでさっさと言えよ」

「えっと、まぁ」

ビアンカは多少面白がるような表情を作って言う。

「『弓最強』って言ってみて」
「…? 『弓は最強』。 これでいいのか」

「『弓は、全ての武器種の中で最強です』。 リピート、アフタミー」
「弓は全ての武器種の中で最強です」

「『弓師こそが、最強の狩人です』。 はい」
「弓師こそが最強の狩人です…なんだよ、これ」

「『ビアンカちゃん超可愛い』」
「いや、否定はしないけど、だからなんだよこれ!」

俺が多少イラッとしながら言うと、ビアンカは困ったような笑顔を浮かべながら言った。

「つまり、そういう事やねん。 ウチの門派に入門するには、まず『弓師こそが地上最強』という確固たる信念を持たんとあかん」
「はぁ…」

ビアンカは俺の「チェーンブリッツ」を見やると、何故か艶めかしさを添えて、そっと囁いてきた。

「…だから、今日でライトガンナーは廃業やで?」

<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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