女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(8)-7

ビアンカの注意を受け、海中から滑空してきたガノトトスの攻撃を避けたマルク。
だが、完全にガノトトスの攻撃を避けきれず、ヒレにある昏睡毒を注入されてしまう。

棒立ちで、チェーンブリッツを身構えたままのマルク。
その前に、ガノトトスがゆっくりと近寄っていく。

「おい、何やってんや、アンタさーんッ! 目ぇ覚ましぃ! ボケ! おい、コラッ!」

ビアンカの叫びも空しく、マルクは気絶したたま回転尻尾攻撃に直撃され、その勢いのまま、氷点下近い海中へと投げ込まれた。


ここで場面は変わり、バルベキア三国の首都・ノーブル城、その会議室。
宰相であるイルモード・ゲルギスクの緊急召集により、大臣はもちろんのこと、将軍級の人物までもが集められ、会議室は多数の人数でごった返していた。

「一体、何だというのですかな、この緊急の召集は…」
「我ら全員を急に呼び出すほどの事、余程の大事と察せられるが」

会議の座席は、上座を残して各執政大臣が脇を固め、将軍たちが会議室の壁に沿って一列に並び、直立不動の体勢。

ざわついた空気も、残る上座に、イルモード宰相と補佐のカルネラ大臣、そしてクリス王子が登場すると一気に緊張し、静粛な雰囲気となる。

だが、本来クリス王子が座るべき中央に、イルモードが席を取ると、周囲を見渡し、挨拶を始めた。

「緊急のご参集に、まずは御礼つかまつる、大臣諸君!」
「本日は、喜ばしくも重要な報告がある故、皆々に緊急召集を掛けさせて頂いた事を、ご了承願いたい!」
「また、本来であれば、この場はクリストフ=イェルザレム次期国王より、玉言を頂戴するはずであるが、重篤なる体調不良という事により、私が代理を勤めさせて頂く事も、重ねてご了承頂きたい!」

「内輪で長挨拶は結構! 一体、何が起こったと申すのか!?」

その質問に対し、イルモードは「エルムザ隊、入室!」との声を掛けると、会議室の扉が開き、何人かの兵士と共に、鎧の脚部だけを装備した人形が運び込まれる。

「それは…!?」

「まず、喜ばしい報告から行いたい! カルネラ大臣の発案により組織された、紅龍騎士団三番隊、ヴォーデン隊長率いる【エルムザ】が、シャルルに奪われた、黒龍の鎧の脚を取り返してきた!」

「おおおお!」
「本物か!? それは素晴らしい!」

万雷の拍手の中、ヴォーデンは一歩前に出て「私、ヴォーデン・マクステリオンと申します!」と騎士敬礼をする。

「宰相のご説明の通り、私めがシャルル将軍より、黒龍の鎧の一部を奪い返して参りました!」

「おおお! あのシャルルからか!?」
「素晴らしい! よくぞ、国宝を取り返してきてくれた!」
「どこの隊に所属していた? あの女に一矢報いるとは、大した功績よ!」

「…いえ、以前は警邏隊に属し、この城の防衛に勤めておりました」顔を赤くしつつも、神妙に答えるヴォーデン。

「うむ、うむ! これほどの剛の者が、まだ我が城に居たとはな! それを見いだし、登用したカルネラ大臣の眼力はさすがよの…!」
「これで、残るは小手部分のみ! そうすれば、聖ジョルジュアまでに、正式な帯冠式が行えるというものよ…!」

「皆の衆、静かに! 次の報告は、その小手部分の事についてである!」

イルモードがそう声を張り上げると、場はたちまち沈黙し、周囲の視線が熱気と共にさっと集まる。

「紅龍騎士団二番隊、ゴッドフリート隊長率いる【ナクム】が、黒龍の鎧の小手部分を発見した!」

だが、今度はその報告に、大臣と将軍一同は、揃って訝しげな表情を浮かべる。

黒龍の鎧の小手は、ユリウス第二王子が所有していると聞いている。
それは一番隊【ゴールデンビートル】が追跡中だったはずだが…。

「残念な事に、【ゴールデンビートル】はユリウス王子に壊滅させられた」
「なんと! …では、【ナクム】が小手を発見したというのは、どういう事か?」
「それは、こちらから説明をしたい。 ゴッドフリート隊長、前へ!」

すると、ヴォーデンの脇に居た兵士が前に出て、声を張り上げて挨拶を行う。

「私、生まれはメリーランド、ピスカードル男爵家の六男にして、ここバルベキア三国に奉職しております、ゴッドフリート=ピスカードルと申します!」

途端にざわつく周囲。
薄笑いを浮かべるヴォーデン。
無表情のイルモードとカルネラ。
座席にうずくまったままのクリス王子。

ゴッドフリートは顔を紅潮させると、大声で報告を始めた。
「我が三番隊【ナクム】は、ユリウス王子の足跡を追う中で、王子と接触した人間をテネス村にて発見した! その者は、王子より小手を譲り受けており、黒龍の鎧の力を発揮できる模様! 隊は半壊したが、我々は奴を追跡し、鎧を奪還する所存にある!」

その報告を聞いて、大臣の面々に、失笑と苦笑いがそれぞれ浮かぶ。

先に、ヴォーデンより「鎧奪還」の知らせを受けたためか、「部隊半壊」という結末のゴッドフリートの報告は、酷く残念なものに感じられた。
しかもその理由が、ユリウス王子が誰かに国宝を譲り、その者が黒龍の鎧の力を発動させたから…との事。
だが、破天荒で知られるユリウス王子とて、軽々しく国宝を他人に譲ったりするだろうか?
信じたくとも、あまりに荒唐無稽な話に思えるのは仕方のないことだった。

しかも、「鎧を奪還する所存」など、隊長とは言え、自らが決められるはずもない。
隊の意志はあくまでも、紅龍騎士団の統括管である、カルネラ大臣が決定に左右される。
そんな事も理解していないのか、という失笑と苦笑いだった。

「諸君、報告は以上である」これはイルモード。

「…なるほど、理解しましたが、ユリウス王子が国宝を他人に譲ったというのは、今一理解しがたいですな」
「まして、都合よく、黒龍の力を発動させられた、だと? まぁ確かに、宰相殿が今、そういう研究をしている事のは伺ってはいるがね」

「も、目撃した隊員は多数居るのです! あの者は、黒龍の神官同様、鎧の力を完全に発揮しておりました!」

だが、そこでイルモードが口を差し挟む。

「軽々しく『黒龍の神官同様』等という表現を使うものではない」
「し、しかし!」
「神官であるクリス王子を、御前で侮辱する気か、ゴッドフリート隊長殿」
「…ぐ」
「下がれ」

イルモードの静かな、だが圧倒的な迫力にやりこめられ、悔しさを顔に覗かせたまま下がるゴッドフリート。

「何か、ご意見等ございませんか、クリス王子殿」

クリス王子の顔色伺いか、イルモードはクリス王子に話を振る。

「…特にない。 それより…」
「どうかなさいましたか」
「…寒い。 とてつもなく、寒いんだ。 悪いが、毛布を持ってこさせてくれ」
「分かりました。 体調不良の折り、申し訳ございませんが、今回の会議は大事な物ゆえ、最後までの同席をよろしくお願いいたします」
「ああ、分かっている」
「誰か、毛布を!」

その下知に、下女たちが素早く応じ、毛布を持ってくる。
クリス王子は鎧姿のままそれにくるまり、座席でほっと一息を付くが、その滑稽な姿に、大臣たちは忍び笑いを漏らした。

「そして、今回ご参集頂いたもう一つの理由が、今後の方針決定にあたり、大臣各位のご意見を頂戴したい、という事である」
「意見を? 何のだ?」
「今、ゴッドフリート隊長殿より、残る最後の国宝…。 小手の在処について、新たな指針が示された。 しかしながら、我々とて残る部位はユリウス王子が所有しているものと思っていた。 つまり…」

要は、本当に「小手」を持つのはユリウス王子か、それともゴッドフリートの言う第三者か。
どちらを信じ追跡すべきか、という事であった。

「イルモード宰相殿にしては、珍しく迷っておられますな」
「正直、ユリウス王子がここまで粘るとは全くの想像外だったのでな…。 もし、その第三者が本当に小手を持っているのなら、まずそちらを優先して回収すべきか、と考えまして」

「ゴッドフリート殿! その、第三者というのは何者なのです?」

ゴッドフリートが、イルモードに「前に出て良いか」と表情で伺うと、イルモードも同様に、視線で「前に出ろ」と促した。

「『マルク=ランディッツ』! 私と同じ、メリーランド州出身のハンターだ!」
「どのような者なのですか」

しかし、ゴッドフリートは、現在のマルクの状態を良く知らなかった。 
外見はともかく、その素性については、ライトガンナーである事と、ハンター養成学校での思い出しかない。
場をわきまえず、思い出語りをするゴッドフリートを見て、再び失笑する大臣達。
その様子を見て、イルモードはゴッドフリートの話を中断させた。

顔を紅潮させたまま、再び下がるゴッドフリート。
それを見て、ヴォーデンの表情に嘲笑の色が浮かぶ。

「ただのハンター風情であれば、もうちょっとゴッドフリート隊長にはしっかりして頂きたかったですな」
「ええ、ヴォーデン隊長は、あのシャルルめから、鎧を取り返してきたというのに…。 そもそも、貴方が小手を取り返していれば、この会議は王位継承の話が出来ていたというものを!」

それを聞いて、大臣連中が同意する。

「そもそも何故、ユリウス王子は鎧を…、その、マルクとかいう人間に預けたのか? 何か隠していたらしいが、結局は事実を聞けずじまいなのだろう?」
「そ、それは、先に申しましたように、狩りに同行した際、王子とその者には何かの関係性が生じたようなのですが、こちらに連行する際に抵抗されて…!」
「ゴッドフリート!」

イルモードの叱責に、悔しさで口を噤むゴッドフリート。

「何かの関係性とか、憶測で報告を行うな」
「は、はい…」

「もし、何か関連があるなら、そのマルクという男が、王子の眼鏡にかなう人間だった、という事であろうな」
「ライトガンナーなのなら、黒将軍繋がりで、傭兵集団『砂塵の嵐』の関係者、という事もありえる」
「なるほど、なら自分が捕らえられた時の保険、という意図かもしれん。 鎧を一式揃える事が、この国の王位継承の必須条件だからな」

お互いに見解を述べあっていた大臣たちは、ならばと質問を変えた。

「では、壊滅した一番隊、【ゴールデンビートル】は、王子との追跡戦で、小手の存在は確認しているのかね?」
「一番隊は、全員脚を撃たれて当面復帰不可能だ。 だが、意識は正常だったので、全員に事情聴取した」
「それで」
「王子を追いつめる事すらできなかったので、小手を所有しているかは確認できなかった、だそうだ」
「ふがいない…。 まぁ、ここは仕方ないというべきか、あの鬼子を前にしてはな…」

「それで大臣諸君、いかがした方がよろしいだろうか」
「これは、悩むまでもなかろう。 そのハンター…マルクとか言ったか? 彼が鎧を本当に所有しているのか、その事実確認を最初に行うべきだろう」
「貴重な意見を頂戴でき、ありがたく思います。 ならば、そのハンターを狩る部隊を組織し、無事奪還の暁には、聖ジョルジュアに向け、戴冠式の準備を行うという事でよろしいだろうか!」

「異議なし!」
「異議なし!」

そういう声が一揃い上がった所で、最後にイルモードは、「鎧は正当王家の我らの元に集まりつつある! 我らと、その国家と、国民に、千年の繁栄と栄光を!」と激を飛ばし、会議は興奮の中に終了した。


ヴォーデンは、皆が会場を去る中、会議室周辺の廊下に佇んでいた。
国宝である鎧を、文字通り命を賭けて取り返してきたというのに、なんの恩賞も…その報告がなされない、というのが解せなかったのだ。
次期国王であるクリス王子をさしおいて、国の懐から金を大っぴらに出し入れするのが躊躇われたせいもあるのかもしれないが、それだけは確認しておきたかった。

何せ、紅龍騎士団は、騎士団とは名ばかりの犯罪者集団。
しかも、三番隊は、ゴッドフリートのせいで、より劣悪な連中ばかりだった。
あんな乱暴者達を統率し続けるのは困難だ。
もっと、より良い環境か、あるいは報酬が必要。
その展望が見込めなければ、憧れの隊長職も、これでは名ばかりである…。

「(せめて、あの鎧があれば…)」

この城に戻ってきた時、イルモードは自分の事を大層心配し、即座に、王子が使っているという地下神殿で、「古龍の血」を使い、鎧を外してくれた。

「これで、もうそなたの命がおびやかされる事はなくなったぞ」

体調はどうかと訪ねられ、その時は本当に、この鎧は命を吸いつくすのだな、と感じ、部下を思いやるイルモードの姿に感動しさえした。

だが、いそいそと鎧を運び去るカルネラ大臣の姿を見た時、一抹の寂しさを…。
あの圧倒的な「力」を奪われる事に、心細さを覚えたのも事実だ。

自分は、クリス王子と同じ…。
王族同様、あの鎧の力を発揮できる人間。
もし、マルクというハンターが残る「小手」を持っているにせよ、ユリウス王子が未だ所持しているにせよ、自分が赴けば、その二人と互角に戦える可能性は高い。
何せあの鎧があれば、自分はこの国最強の軍隊、その頂点、シャルル将軍とも互角以上に戦えたのだ。

それは宰相も大臣も理解しているはず。
マルクというハンターを狩る部隊には、必ず自分が選ばれるはずだ。
鎧の力を使える自分を重用しないなど、ありえないだろう…。

「ヴォーデン、頑張れ、お前には期待しているぞ!」

あのイルモードがそこまでの言葉を吐くとは思えないが、思わずそんな事を想像してしまう。
せめて、なんらかの意思表示がなされれば、この胸のモヤモヤも、少しは晴れるのだが…。

そう思って、会議室周辺で宰相と大臣の退室を待つヴォーデンだったが、彼の前に現れたのは、同僚だが、あまり仲が良いとはいえないゴッドフリートだった。

お互いに剣呑な表情を浮かべ、ゴッドフリートはヴォーデンの方に近づくと、唾を吐き捨てるように言う。

「…鎧をたまたま取り返して来たからといって、調子に乗るなよ、田舎領主の孫風情が…! 俺に、黒龍の鎧の情報は与えられて居なかったのだからな!」

いきなりの先制攻撃に、ヴォーデンは辟易する。
だが先祖を侮辱された怒りが先に立ち、感情的に反論してしまう。

「300年の間、この国の穀倉たる”テリオの三角地帯”を護り続けた先祖を侮辱するな! 貴様こそ男爵家の末端のくせに! 俺とて、黒龍の鎧の情報は与えられていなかった!」

「嘘を付くな! カルネラから、何か教えられていたんだろうが! 貴様如きが、無策のままシャルル将軍から鎧を奪ってこれるはずがないだろう!」

「なら、貴様はカルネラ大臣殿から、何も策を授けられないほどに、全く期待されていない、という事か?」

「ぐ…!」

「お前も、紅龍騎士団の拝命の際、俺の受けた任務の内容を聞いていただろう? 俺が賜ったのは、シャルル将軍の捜索だけだ。 お前がいかに嫉妬に燃えようとも、俺が捜索だけじゃなく、鎧を奪ってきたのは事実だ」

いかん、冷静になれ、とヴォーデンは内心で自省する。
このゴッドフリートは、名誉の事となると、狂犬のように周囲に噛みついてまわり、冷静でいられなくなるという悪癖がある。
さっきの会議でもそうだった。
おそらくは、ヴェルド王国の男爵家に生まれていながら、ここ辺境、バルベキア三国で奉職しているという出自…。 多分、生家から放逐されたか何かだろうが、そこらへんが関係しているのであろう。

だが、自分までもが取り乱す必要はない。
この男と同レベルの振る舞いをするのは、これから先の騎士道を邁進するにあたってふさわしくない。

「ゴッドフリート…。 身分の差など、同じ軍の中では、何の意味もないぞ。 命令に殉じ、戦果を上げたかどうか…。 軍人にとってはそれが全てだ」

「そんな事、貴様に言われずとも分かっている! 見ていろ、マルクを狩って、最後の鎧を集めるのはこの私だ!  何せ、奴の外見を知っているのは私だけなのだからな! そうなれば、貴様に何か偉そうに指図されるいわれは何もない!」

「そうか、それが分かっているなら結構」

話しにならない、と思ったヴォーデンは、会議室から去ろうとする。
宰相か大臣に拝謁したかったが、このままゴッドフリートの顔を見続けるのが苦痛だった。

多分、大臣達は、ゴッドフリートからマルクの人相を聞き出して似顔絵を作り、犯罪者として手配するだろう。
ハンターという事は分かっているのだから、ハンターズギルドの情報網を使えば素性は一発で知れる。
大臣たちが本当に必要とするのは、鎧の力を持つ者を取り押さえる実力を持つ人間。

それは自分以外にはありえない。

「逃げる気か、ヴォーデン・マクステリオン!」
「いや、とりあえず、お前さんの手並みを拝見させてもらおう、ゴッドフリート」
「…『Herr(尊称)』を付けろッ!」
「その尊称を付けさせるだけの仕事ができたら、な。 お互い、生家の名誉は傷つけたくないものだな」

そう言って、ゴッドフリートの悪罵を背に、ヴォーデンはその場を去った。


その頃、イルモードとカルネラは、大臣全員の退室を確認した後、黒龍の鎧の腰装備を隠し小部屋へと移動させていた。

この城は、大祖レニチェリアが城攻めに負けた時の事を想定して、秘密の通路や小部屋が大量に存在している。
頭は自分の部屋の隠し小部屋に保管し、腰部分は会議室の隠し小部屋に保管する事で、万一謀反者が出た時を考慮しての、リスクを分散する目的の行動だった。

運搬作業の傍ら、カルネラ大臣はイルモードに問う。

「して、今日の会議は、何か意味があったのでしょうか? 大臣に今後の意見を伺うなど、宰相らしくもない…。 この状況でしたら、どう思索を巡らそうとも、そのマルクというハンターの、事実確認が一番でございましょうに」

それを問われると、イルモードは愉快そうに笑う。

「ああ、その通りだ。 実は今回、大臣共の意見を聞く事に、それほど意味はなかった」
「なら、何故にです!?」
「この状況でなら、あの大臣どもの脳味噌でも、事実確認を最優先事項と結論するだろうからな…。 今回、会議を開いた目的はな」

イルモードが言うには、あの会議は今後の方針を話し合う場ではなく、成果報告アピールと、結論を大臣に出させる事で、独断専行のイメージを薄めるためとの事だった。

「だが、一番の目的は、部下共の志気高揚のためだ」
「ほう」
「カルネラ、『勇の席と臆の席』と言う逸話を知っているか」
「存じております。 古シュレイドより前、二大国戦記の雄、クルアーン大帝の部下、バース大将軍の逸話ですな」
「そうだ。 同じ論功行賞を行う際に、勇敢に戦った者の席を立派にし、臆病者の席を貧相にして、ひたすら辱める…」
「それによって、臆病者の席に座った者は、勇者の席に座ろうと、必死になって戦った。 有名な志気高揚策…なるほど、それをヴォーデンとゴッドフリートに」
「そうだ。 ゴッドフリートの使えなさに至っては、怒りすら覚えたぞ、正直。 あれだけ公衆の面前で辱めておけば、マルクとか言う男を探し出すのに、執念を燃やしてくれるだろう」

イルモードは、会議室の奥の隠し小部屋に鎧の腰部を運び込むと、その装備を名残惜しそうに眺めた後、木箱と調度品で完全に隠蔽して作業を終える。

「…なるほど、そういう事でしたか。 申し訳ございません、宰相、この私、いささか先走りすぎ、出すぎた真似を致しました」
「何だ、出すぎた真似とは?」

そういうと、カルネラは慇懃に礼をして報告する。

「実は既に、ハンターズギルドを通じて、マルク=ランディッツと言うハンターの素性は掴んでおります。 武器密輸に関わっておりましたので、身柄を確保するよう指示してあります」

それを聞いたイルモードは、目を剥いてカルネラに問い直した。

「それは、意外な報告だな…。 最近の話か?」
「ええ、今朝入ってきた情報です」
「雪山で戦闘した直後に、武器密輸? …本当に同一人物か?」
「…言われてみれば、多少妙ですな」
「いや、流石の手際だ、カルネラ。 よくやってくれた。 身柄を拘束したら、ゴッドフリートに面を確認させろ」
「して、別人でございましたなら」
「拷問して経緯を吐かせろ。 あと、マルクというハンターの外見を似顔絵にして、他の隊にも捜索させよ」

だが、カルネラは即答せず、多少考え込む様子を見せてから、イルモードに確認してきた。

「…捜索隊に、ヴォーデンを含んでもよろしいのですか?」
「どういう意味だ」
「いえ、ヴォーデンが鎧との相性にて、非常な適性を示しているのが気になりまして…。 もしまた鎧を首尾よく取り返したとして、取引のような妙な考えを起こされるより、手元に置いておいた方が、と思っただけでございます」
「それも確かに…。 だが、あの貴族崩れのゴッドフリートだけに任せる訳にもいくまい」
「そう…ですな」

イルモードは、カツンカツンと高らかに足音を響かせながら、自らに宣誓するように言う。

「…残す最後の『小手』は、即時、そして是が非でも集めなければならんのだ。 手段を云々している場合ではないはず、だ」
「そうですな、鎧さえ揃えば、我らの王権は盤石の物となります。 …我らに軍神のご加護があらんことを」

<続く>
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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