女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(8)-6

対ガノトトス戦、安定した戦いを繰り広げる俺たち…いや、俺の脳裏で、突如囁かれる声。

「(…もっと、近づけ。 もっと、踏み込め。 それじゃ、全然ダメだ)」

その言葉を掛けてきたのは、JJだった。
俺の脳裏で、俺の一挙手一投足を見ているアイツが。

「(…なん…だと?)」

だが俺は、何故そんな事を奴が言うのか、全然理解できなかった。

何故なら、このJJは「俺自身が作り出した幻想」だから。
命の危機に母の愛を、生活の苦境に父の背中を思い出す、それと同じ理屈。
認めたくはないが、これは不肖の弟子が苦戦の最中、師匠の言葉を思い出しているようなもの。

つまり、俺の「強さへの渇望」…。
それがJJの姿となって現れているだけで、この声は元々、俺の心の一部なのだ。

「(…奴を怯ませていないじゃないか。 通常弾の威力を生かせ。 もっと踏み込むんだ)」

だがそれなら、何故こんな声が聞こえる?
…いや、何故俺はこんな事を考えている?
まさか、まだ火力密度が足りないと思っているのか?

これではまるで、本当のJJが、俺に語りかけているようじゃないか…。


「(…距離を取って戦っていたら、彼らの事は分からない。 彼らと真剣に向き合い、彼らのの呼吸を読め)」

「おいおい、何言ってんだよお前…。 クリ距離はもう十分に把握して、撃てる時に撃ちまくってるのに、これ以上何しろってんだよ!」

思わず、本当にそんな声が漏れた。
今、ガノトトスはビアンカをターゲットしている。
俺はガノトトスの近くまで走り込んでクリティカル距離を確保し、腹を撃ちまくって、再び距離を取る。
だが、ヒットアンドアウェイを繰り返す俺の姿を見て、俺の脳裏のJJは、残念そうな表情を浮かべた。

「(…おかしい、と思わないのか)」

何がだよ。

「(…おまえは、このクエストをクリアできると思っているのか?)」

そうだ。
この戦いぶりを見てみろ、当然クリアできるに決まってるだろ、何言ってんだテメェ!

だが、俺がそう返事した所で、脳内のJJは通じてないと思ったのか、先の発言の表現を変えた。

「(…貴様程度が達成できるクエストが、何故誰も手を付けず、非公式の状態で放置されていた、と思う?)」

…え?

「(…理由は、すぐに分かる。 …いや、お前も、本当は気づいているはずだ。 踏み込んでみろ。 奴らに近づき、その呼吸を読んでみろ)」

そう言って、俺の脳内のJJは、唐突に居なくなった。

「お、おい…」

俺が作り出したはずのイメージが、自分の手を離れ、JJ本人であるかのような行動を取られた事に、軽く困惑する。
それほどまでに、俺は奴の動作をリアルに覚えていたのだろうか。 
あの雪山での一件は、俺が思う以上に、俺の心に深く浸透していた…のだろうか。

自分で自分を「貴様程度」って言ってしまったのは何故なんだろうと思いつつ、だがJJの言葉どおり、前に前にと近づいていく。

「…!?」

そしてクリティカル距離間際まで接近して、俺はようやく気づいた。

…クリティカル距離が、おかしい。

回転尻尾攻撃の攻撃範囲内に踏み込まなくても、クリティカル距離が維持できている。
これでは、ヒットアンドアウェイなど、全く必要ないじゃないか。

そう、俺は確かに、気づいていたのだ。

ガノトトスを釣る直前、水面からはヒレしか見えなかったこと。
榴弾を撃つ際、こころなし小さく感じた相手。
タフ過ぎるほどの耐久力。
そして、変化したクリティカル距離。

それから考えられる理由は、認めたくないが、一つしかない。

「……!!」

海側…左手に感じる僅かな殺気。
それを嫌って、俺は踏み込むのを避け、バックステップする。

すると、俺の今居た場所を、背丈を遙か越える水の壁が轟音と共に薙いでいき、視界を一瞬遮った。
耳に残るは逆巻く風の残滓。

悪寒と共に左を見れば、そこには、海面を漂うガノトトスの首。

それが、こっちを見ている。

…今戦っているこのガノトトスは、さっきのとは、別の個体だった。

「ビアンカッ! ガノトトスが…! ガノトトスが、二体居るぞーーッ!!」

一瞬驚愕で息が詰まったが、この非常事態を知らせるために、大声で叫んだ。
ビアンカの返事は聞こえなかったが、息をのむ雰囲気だけは伝わった。

「(まさか、二頭同時クエスト…「双魚竜」だったのか、これは!?)」

二頭同時クエストは、一体の時とは比較にならないほどに…そして、戦闘する場所が狭ければ狭いほどに難易度が増す。
俺は自分自身が、心の奥底で感じていた違和感は、これだったのかと理解した。
今自分が戦っている相手は、別の個体かもしれないという。

それに今まで気づかなかったのは、潮が満ち、戦闘フィールドが狭まって、俺達の距離勘が微妙に狂わされていたこと。
そして「双魚竜」と言えば、原種亜種の混合クエストのはずなのに、原種二頭という予想外の組み合わせだったこと。
そしてこの状況こそが、このクエストが非公式として放置されていた、真の理由だった。

波間を漂うガノトトスの首が、ちゃぷ、と沈むと、次の瞬間、巨大な波柱を発生させて、戦闘中の俺たちの真上に飛び上がって来た。

「(…おい、バカ、こんな所に飛び込んで来たって、お前の入り込むスペースはねぇよ…)」

ザーッと降り注ぐ潮のスコール。
茫然自失の俺の目の前に、もう一体のガノトトス…。
それが放物線を描いて豪快に墜落してくる。
地面を揺るがすほどの、この足に響く質量の感じ。
これはさっきの金冠個体に間違いない。

だが、目の前に突如湧いた大質量の物体ニ体を目の前にして、これはどうあがいても無理だ、という本能が警戒警報を鳴らす。

「ビアンカ! ここはもう無理だ! 一旦引いて、どちらかを海に戻そう! そして一体ずつ倒すんだ!」

「……ってやねん! …ができんなら、お互いタゲを…!!」

だが、ビアンカの声は遠く離れている上、俺も必死に走って逃げてる最中で、鎧の鳴る音がうるさく、何を言っているのか分からない。 
でも、ビアンカが逃げる様子を見せない所から察するに、多分作戦は伝わってない。

俺はニ体を同時に相手した経験はない。

が、ギルドの闘技場で、思い上がって力試しをしようとしたハンターが、簡単に返り討ちにされてきたのはいくらでも見てきた。
一番多いやられ方が、視界の外側からの攻撃だ。
人間の視界は前面にしかないので、ニ体を同時に視界に収めておくような立ち回りをしないと、真後ろからの攻撃を喰らって、簡単に…本当に驚くほど簡単に倒されてしまう。

俺はそれを避けるために、連中ニ体から距離を取り、周囲を大きく迂回する形で走り続けていた。
ニ体同時を防ぐには、いくつか方法があるが、やはり一番簡単なのは分断しての各個撃破だ。
そのため、俺は距離を取って走り回りつつ、一度この場を脱出したいと思っているのだが、問題は、ガノトトスニ体の攻撃をかいくぐるのが困難な事だ。
一体の攻撃を避けている間に、もう一体が別行動をしてしまい、なかなか出口までの道が開かない。
ビアンカにもモンスターを一体担当してもらい、エリアの端に引きつけて、せーので離脱すれば脱出は可能なのだが、ビアンカは俺と違って、二頭を視界に収めつつ綺麗に立ち回り、あろう事か攻撃までしている。

「(マジかよ…)」

ガノトトスくらい全く問題ない、って言ったのは全くハッタリじゃなかった訳か。
だけど、そこまで無理しなくて良いだろ今は。
出口のない闘技場じゃないんだから、分断こそが最適の選択のはず。

「ビアンカーーッッ!!」

俺はぶんぶんと大きく腕を回すと、入り口の方を指さす。
一度撤退しよう、のサイン。
声が聞こえなくてもこれで分かるだろ。

…と思った矢先に、小さい方のガノトトスがドッドッドッと海面に向かって走り寄り…。
そのまま、ぴょーんと海に向かって飛び込んだ。

えええっ!?

再び、フィールドには金冠ガノと、ビアンカと、俺が残される。

「おい! 今や、集中攻撃すんで!」

ビアンカの叱咤に、我にカエル、いや返る俺。
どうやらやはり、ビアンカは分断よりも、互いがタゲを取りつつ、一体に火力を集中して各個撃破を狙う戦術を選択していたらしい。

俺はリロードしつつも、今後の意思統一を計るべく声を掛ける。

「何でそんな無茶すんだよ! ニ体同時になったら、一度分断してエリアチェンジした方が良いだろが!」

「さっき、釣るまでどんだけ時間かかったんか、忘れたか!? もう竿ないねんで!? ダメージ稼ぐ時に稼いどかんと、日が暮れて戦闘できんくなってまうわ!」

「そりゃそうだけど、倒されたら終わりだろうが! 非公式でこんな無茶したら、死んで終わりだぞ!」

「やかましいわ! アンタさん、倒せなくても借金抱えて終わりやん! ウチの目の前で地獄に落ちられても、目覚め悪過ぎるっちゅーねん! 同じ死ぬなら、前のめりに泥喰って死ね!」

…言われてみればその通りだった。
尋常じゃない危機に陥って、とにかく逃げようとテンパりかけていた。
だが、そんな中でもビアンカはまだ冷静で、あくまでもこのクエストを成功に導くために無理をしてくれている。

「くそ…!」

地獄へ一直線、のこの状況。
だが、確かに確率で言えば、ビアンカの言うとおりにした方が(金銭的な意味で)生還率は高い。
それに、これは元々俺が作り出した状況な訳だし、ここまで来れば毒も皿まで、と覚悟を決め、俺はガノトトスに向かって通常弾Lv1を連射し続ける。

…だが、戦闘のさなか、何故このガノトトスが、二頭同時に居るのか、という疑問が俺の脳裏をよぎった。

魚竜種は魚類と異なり、繁殖時以外には群れを作らない。
食性と生息水深が異なる(らしい)原種と亜種は、同時共存が可能だが、原種同士は縄張りが完全に合致するため、仮に同じ場所にニ体が生息したとしても、その成長過程でどちらかが淘汰されるはず。

なら、この矛盾を説明できる理由は、何があるというのか。

それを自問自答する中で、消去法で答えが浮かび上がる。
突拍子もない答えだが、それしか考えられない。

このニ体の生息圏は「ここでしか合致していない」のだ。

そう、もう一体のガノトトスは、この汽水域ではなく、完全な外洋からやってきたとしか考えられない。

「(まさか…。 そんな事が、ありえるのか)」

自分で出した仮説を反芻する中で、その可能性を検証していく。

外洋からやってきたという事は、そのガノトトスは、完全な塩分耐性を獲得しているはずだ。
自己馴化に因る塩分耐性の獲得は、普通の魚類においても別段目新しい事ではない。
だが、単一種であるガノトトスが、この短期間にその能力を得たという事は、その原因が俺たちハンターにある事は想像に難くない。
駆逐の手から逃れるために、海水へと適応し、広大な外洋へ泳ぎ出る事を、自己進化の選択肢に加えたのだ。

もしこの仮説が本当なら、モンスター達は俺達の想像以上の速度で、日々進化し続けている事になる。
ガノス種が、ここではない新大陸のどこかで、爆発的繁殖を遂げる可能性もあるだろう。

「(そうか、だから…。 ここのガノトトスは、釣るまでに、あれほど時間が掛かったのか…)」

回遊性を持つガノトトスが、再度釣り上げるまでに恐ろしく時間がかかったのは、広い範囲を行動可能だったからか。
もしかすると、汽水域のガノトトスも、かなりな部分まで塩分耐性を獲得している可能性はある。

倒せないまま時間切れになる可能性。
それが明瞭になった今、ビアンカの言に従って、一体を先に始末するべく、俺はチェーンブリッツを近寄って連射しまくる。

「ぐわっ!!」

だが、目の前で繰り出された回転尻尾攻撃に、チェーンブリッツの先っ端がカスってしまい、豪快に弾きとばされて俺の腕の中からチェーンブリッツは吹っ飛んでいく。

…しまった、この個体、金冠の方だった!

クリ距離を維持しようと近寄り過ぎ、危うく安全圏を見誤る所だった。
俺は急いで吹っ飛んだチェーンブリッツを拾い上げ、再び銃を構えたが…。

「アンタさん、後ろーーッ!」

ビアンカの叫び声と、背中から感じる殺気。
思わず振り返って見たものは、巨大グライダーのように、遠洋から水面を水平滑空してくるもう一体のガノトトス。

一瞬でぐんぐん大きくなる魚影に、とにかく危険を感じた俺は、身を転がして避けようとする。

「うぐっ!?」

だが、翼膜のように広げたヒレは想像以上の大きさで、俺は避けきれずに転がされ転倒する。

ダメージは…。 ない。 
ちょっと首筋が痛いが、幸運にも鎧の背面部に当たったおかげで、カスリ傷で済んでいるらしい。
よし!

再びニ体同時になってしまったが、一体ずつタゲを取ればどうにかなるかもしれない。
それに、ガノトトスには、「行動の空白きかん」があるのだ。

それをうまくいか して いければ 何 と か

…?

から だが   お か  し  い


ち か ら  が  は い…


 *         *


ビアンカの注意を受け、海中から滑空してきたガノトトスの攻撃を避けたマルク。
だが、マルクは完全にガノトトスの攻撃を避けきれず、ヒレにある昏睡毒を身に受けてしまう。

棒立ちの状態で、チェーンブリッツを身構えたままのマルク。
その前に、ガノトトスがゆっくりと近寄っていく。

「おい、何やってんや、アンタさーんッ! 目ぇ覚ましぃ!」

だが、ビアンカの叫びも空しく…。

「ボケ! おい、コラッ、目ぇ覚ませーーッ!」

マルクは気絶したたま回転尻尾攻撃に直撃され、その勢いのまま、氷点下近い海中へと投げ込まれた。


<続く>


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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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