女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(8)-5

ガノトトスの残る体力は、ビアンカの経験からすれば、G級で残り半分、上位で討伐直前の域らしい。
もう一度奴を釣り上げて討伐すべく、俺はビアンカに言われるがまま、残る一本の竿の針に釣り餌を付けてやる。
今も彼女は、釣りカエルを針に通すという、俺の仕草を面白がるような、無邪気な表情を浮かべている。

だがそれだけに、俺は彼女がさっき見せた表情に、理解できない物を感じていた。
そう。

「こいつ、居なければ良いのに」

と言いたげな、俺が今まで他人の顔の中に、よく見てきた表情。

ビアンカは、俺のこと、寄生ハンターじゃないって誉めてくれてた。まともな戦いぶりだと。
それだけに、嫌悪感を表に出した表情を突然見せつけられた事は、正直意外だった。
でも、それは俺の人生の中で、あまりに見慣れた表情過ぎて…。
間違いだとは思えなかったのだ。


「(いや…やはり、間違いだ。 俺の気のせいだ)」

だが、俺は、あくまでも理屈に拘った。

「(そうだよな、俺の気にし過ぎだ…)」

もしビアンカが、俺の事を本気で嫌っているのなら、ここまで見事な表情の切り替えができるだろうか。
大体、彼女はあれだけ騙していたにも関わらず、俺の事、快く許してくれたんだぞ。

…いや、まあ、そりゃあんだけ嘘を付いていた訳だし、心中は、まだ不愉快に感じている部分もあるだろう。
あるいは、ヤオザミとの戦闘の面倒臭さを「こいつのせいや!」と、俺にぶつけただけかもしれない。

気にするな。 たかが表情だろ。
どれだけ彼女の表情に、俺を疎む色があった…。
その確信があったとしても、気にスルナ。

間違ってるのはお前、マルク=ランディッツだ。
お前の判断が間違ってるんだ。
正しいのは周囲のミンナだ。
だから、今まで言われてきたように、ミンナノイウコトヲキイテイロ。

「…おい、どしたん、大丈夫か?」
「あ? ああ、済まない、ちょっと考え事をしてて」
「またかぁ? っていうか、こんな時に何考えててん? ライトガンナーの連中は、いろいろ屁理屈好きな連中が多いからな」 
「…屁理屈? そんなんじゃねぇよ」
「じゃあ、何やねん。 …あ! まさか、ウチに見とれてた訳やないやろなぁ~?」

ビアンカは、さらにニヤニヤ笑いを浮かべて、俺の顔をのぞき込んでくる。

冗談…。 だよな、これ。
何か試されてる訳じゃないよな。
ジョークで問いかけられたら、機知に富んだウィットで返すべき、だろう。

「うん、そのゴー☆ジャスおっぱい、ブラジャー何カップが必要なのかなって考えてた」

…次の瞬間、俺の顔面にはビアンカの踵蹴りがめり込んでた。
俺のハンターズジョークは彼女には通じないようだった。


  *    *


「で、結局、考えごとって何やねん」
「徹甲榴弾のことです」

ハンターなら誰でも知っている事だが、ガノトトス釣りは、別に腕力であの巨体を引き上げる訳ではもちろんない。
好物の釣りカエルを食べさせまい、とイジワルしているうちにガノトトスが怒りだし、自発的に上陸してくるのが釣っているような格好になっているだけである。
要はガノトトスを怒らせれば、地上に上がってくる訳だ。
事実、地上でボコボコにして怒らせると、一時的に乾いた皮膚を潤すべく水中に戻ったとしても、すぐにまた陸上に上がってくる。

奴を怒らせるまで餌を盗られないのが、奴を釣るコツだが、残念な事に俺たちのお手製の竿には、それに耐えうるほどの強度はない。
なので別の手段を講じる必要があり、音爆弾がない今、徹甲榴弾を製作するしかなかった。

「じゃ、ほい、ニトロダケ。 ウチが強撃ビンに使おうと思ってた、貴重~な、ニ・ト・ロ・ダ・ケ。 大事に使えや」
「わ、分かってるよ」

俺はニトロダケを少し分けてもらうと、徹甲榴弾の調合を始めた。
承知のとおり、榴弾はアロワナの浮き袋で作るが、そこは現場の知恵という奴で、実はニトロダケでも代用できる。
圧搾空気ではなく、小型爆弾の爆発でダメージを与えるのだ。

ニトロダケの傘をすり潰し、ドロッとした粘性火薬になった所で、砂礫と共に薬莢に詰める。
爆弾に石を混ぜると、爆破の際に石が散弾の如くバラ巻かれて、威力が格段に向上する。
ただ、この「石混ぜ」は他のハンターにも危険が及ぶため、ギルドでは厳重に禁止されている。

しかし、俺に言わせれば、それはバカが適当な使い方をするから、としか言いようがない。
徹甲榴弾とは、本来「相手の体内で爆発を起こす」弾丸であることを理解した上できちんと運用すれば、こんな危険な違法改造弾丸でも大丈夫なのだ。

俺はさっき捨てたアロワナの小骨を拾って弾頭にし、ニトロダケ製の徹甲榴弾を3つばかり完成させる。

「おっし、できたぜ」
「サンキュ、でもホント、ここに別のハンターやギルドの連中が居らんでよかったな」

違法行為の連発にチクリと皮肉を言われ、俺は苦笑で返す。

「見逃して頂いてるビアンカ様には感謝しておりますよ」
「よしよし、その心がけが大事やで」

でも、火薬の比率を変更して、小石を入れる事を止めれば、普通にギルドで認可されても良いと思うんだけどな。
実際、これ使ってるライトガンナーはそこそこ居るんだぞ。

「じゃ、徹甲榴弾も出来たことやし、ガノトトス釣ろか? そろそろ日も傾いてきたしな」
「いや、ちょっと待ってくれないか、俺も、聞きたい事があるんだ」
「…なんや」

そのジト目は何だ。
そして、なぜ胸を隠す。
別に今は、そんな事が聞きたい訳ぢゃないぞ。

「あのさ、ガノトトスの『水ブレス』と『這いずり』なんだけど、あれ、ビアンカはどうやって見極めてるんだ?」

だが、それに対するビアンカの返事は、「何故今更、そんな事を?」と言いたげな疑問の表情だった。
そして、事実その通りの質問がその口から発せられた。

「…今更、何でそんな事を聞くのん? さっきの通り戦ってれば問題ないで?」
「いや、俺が背面から撃ってるだけじゃ、火力が足りないじゃねぇか…。 俺もタゲ取った時に反撃できれば、火力密度(DPS)上がるだろ」

そう俺が言うと、ビアンカはやれやれと言った感じで首を振る。

「ウチは火力が足りてないとは思ってへんで? ガノトトスの弱る速度が、想像より遅かったのが不思議だっただけで、このペースでも、日暮れまでには十分討伐できるわ」
「いや、俺ももっと攻撃に参加したいんだよ…。 ビアンカにターゲットを取ってもらって撃つだけじゃ、何か気分が悪くて…」
「それこそ気にせんでええで? 悪いけど、チェーンブリッツの火力こそ知れたもんや。 無理に突っ込まんでもええ」

予想外にも、ビアンカは俺を気遣ってくれる発言をしてきた。

「アンタは役に立ってる。 ガノトトスのターゲットを逸らしてくれるだけでも、ウチは凄いありがたいねんから」

ビアンカの言っている事は分かる。
武器が弱いなら、タゲ取りに集中した方が効率的だ、と。
それを俺が傷つかないよう、やんわり諭してくれているのは、彼女なりの優しさだろう。

「…それじゃ、ダメなんだよ!」

だがそれは、俺は囮としてしか役に立たない、という事と同義だ。

「なんでダメやねん!」

意固地な俺にイラついたのか、ビアンカも遠慮なく俺を叱責してくる。

「無理して怪我して、戦いのリズムを崩壊させる方が余計迷惑に決まっとるわ! これ、非公式クエストやろ!? 密猟やろ!? アンタが倒されても、キャンプに運んでくれるギルドアイルーはおらんねんで!」

確かにその通りだ。
無理に突っ込み、危険度を無駄に上げる必要性はない。
むしろ、安全確実を優先すべきだと分かっている。

…だがあの日から、狩場に赴く俺の中に、とある感情が芽生えている事に気づいてしまったのだ。

JJが、俺を見ている。
奴は俺の頭上で、俺の一挙手一投足を見ている。
俺がガンナーとして、ふさわしいかどうかを。

「…ビアンカ」
「何や」
「お前は、何故弓を使ってる?」
「…? 何言うてんねん、お前?」

「俺は…」

JJが、俺を見ている。
だが、俺は気後れせずに宣言した。

「…『ガンナー』だ。 そうありたいと、願っているんだ」

俺はビアンカの目を真正面から見つめ、訴えた。
彼女に、俺の言葉が真実の物だと、理解してもらうために。

「俺はな、正直、まともな取り柄なんて何もねぇ…。 30歳になるこの年まで、日雇い以外の職に就いた事ねぇし、嫁はもちろん、恋人もいねぇ…。 同じ狩人仲間の連中とも、上手くやっていけてねぇ…」

銃を握りしめ、独白を続ける俺の姿を、ビアンカが見つめる。

「でも、でもな、唯一、俺が、人と比べて、遜色なく誇れる才能が、これなんだ…。 笑っちまうかもしれねぇけど、本当に、これだけ…なんだよ。 もし、人々の心の拠り所…その精神的支柱、それを仮に『神』と呼ぶならば、俺の心の拠り所はこれ…」

俺は銃を握り締め、言った。

「銃こそが、俺の神なんだ」

ビアンカが、目を丸くして、俺を食い入るように見ている。

「お前…」
「くだらねープライドだってのは分かってる。 人から見れば、きっと愚かで、無様なんだろうな、ってのも分かる。 でもな、自称常識人の言う事なんてクソ食らえだ! 俺は自分の信念に…矜持に殉じていたい…。 そう、俺は…」

「…俺は、強くなりたいんだ!」

俺は、正直自分でも驚いていた。
こんな言葉が、俺の中から出てこようとは。
今まで周囲の人間に負け続け、抑圧されていた心が、今初めて立ち上がったかのような…。

「俺に、ボウガンを教えてくれた奴が言っていた。 ガンナーこそが、最強の狩人だと」

「俺も、その言葉を信じたい。 奴みたいになりたい。 最強なんだ、っていう夢に殉じたい。 だから、どんなに弱い武器を持ってようと、引いたら負けなんだ」

「お前も…。 『パワーハンターボウ』を持ってるお前だってそうなんじゃないのか、ビアンカ!」

俺がそこまでまくし立てると、ビアンカは「まいった」というような表情を浮かべた。

「うーん…」

ぼりぼりと頭をかくビアンカ。

「まさか、ここで、爺ちゃんみたいな事言われるとは思わんかったわぁ…」

彼女は、はぁっと一息ついて言葉を続ける。

「正直、アンタさんがそんな性格だったってのはちょっと意外やけど…」

そこでニコッと笑うと、俺の肩をバンと叩いた。

「…まぁその考え方、ウチも嫌いやない。 …うん、ウチも弓が最強の武器や思てるから、弓使ってんもんな」
「…だろ?」
「ああ、『ガンナー』なら、そういう心意気でないとアカンよな!」

そこでビアンカはニッと不敵に笑うと、近くから木の枝を2本ばかり拾ってくる。

「なら、教えたる。 ガノトトスの攻撃、『水ブレス』と『這いずり』の見極めやけど」
「お、おう!」
「実際は、見極めは結構困難や」
「…おい」
「だから、どっちを出されても良いように、事前の『位置取り』が非常に重要になってくんねん」

そこでビアンカは、二本の線を砂浜に引き、間に枝を一本置く。

ーーーーーーーーー
     ーーー
ーーーーーーーーー

こんな感じに。

「基本的に、ガノトトスの這いずりは、カーブせんから、まっすぐ来るものと考えてええ。 だから、まず奴の進行方向には陣取らんようにする」
「うん」

…という事は、この二本線は這いずりの効果範囲で、この木の棒はガノトトスか。

「それでいて、水ブレスを誘発し、クリティカル距離を維持できる場所…そこがウチらの立ち位置や」

ビアンカは、引いた線の上にブスッと枝を突っ込み、ぐりぐりと点を描く。

○ーーーーーーーー
     ーーー
ーーーーーーーーー

「ここ。 ここをキープしとけば、どんな攻撃も出されてから対応できる」
「…これがクリ距離? 案外遠くないか? もっと近寄ったらどうだよ」

俺は自分のイメージした場所に指で穴を開けるが、するとビアンカは俺の引いた点へと、木の棒を置き直した。

「あまり接近し過ぎると、ガノトトスがこっちに向き直るねん。 あくまでも正面に立ってる、って思わせなアカン。 結構適当で良いかのように見えて、案外シビアやで」

…なるほど。
実際の立ち位置はまだイメージ出来ていないが、とりあえず理屈は分かった。

「それと…。 射撃精度を求めるなら、教えておきたい事があんねんけど」
「うん、何だ!?」
「ガノトトスって、結構攻撃の緩急がはっきりしてんな~って、思ったことないか」
「…ああ、言われてみれば…。 で、それが?」
「実は奴には、隙だらけになる瞬間があんねん」
「何だって!?」

ビアンカの説明によれば、ガノトトスはその圧倒的な巨体、そして原始的知性ゆえの『行動の空白期間』があるらしい。
それはビアンカ曰く、攻撃直後の約4歩、約2秒間。
奴が俺たちを再び視認し、攻撃方法を考え、実行するまでのタイムラグ…その間、奴は全くの無防備になるという。

…なんとなく、「銃の英雄」に出てきた岩山龍を思い出した。

「…なるほど、じゃあ、その間は攻撃し放題って訳か」
「ああ、これを確実に把握してるかどうかで、引き金を引ける回数はかなり違ってくるで。 敵の隙をギリギリまで有効に使えるからな」
「なるほど…なるほどな! よっし、それじゃ行こうぜ、ビアンカ! 奴を狩ろう!」

勢いよく立ち上がる俺を見て、ビアンカが笑いながらツッコんでくる。

「おいおい、あまり意気込み過ぎると怪我すんで? さっきも言うたけど、無理は禁物やで、なんせ密猟…」

それを言いかけた途中で、ビアンカは何か思いついたのか、真面目な表情になり、話を変えてきた。

「後、街に戻ったら、密猟はちゃんと報告せぇよ。 ウチまでとばっちり来たらイヤやし、自首すればお咎めそんなないやろ」

…いや、それは無害な農民達の話であって、お尋ね者の俺が密猟を報告したら、まず間違いなく死ぬ。
ゴッドフリートの奴は、多分俺を探しているだろう。
万一にも処刑の口実を与える事はできない。

「ああ、ちゃんと自首するよ」

そう嘘を付いて、俺は結論を濁す。
意気揚々たる今、志気の下がる話題は口にしたくなかったせいだった、と思う。
だがそれを知らぬビアンカは、ウインクして俺に語りかけてきた。

「そんで、罰金払ったら、ウチの用件…人探しもよろしくな?」
「あ、ああ」

どうしようと思いはしたが、とりあえず目の前の、やるべき事をこなしてから考えよう。

一度撤退してから結構時間が経ったのか、周辺を見回せば、陽は地上に近づき、草地は影に覆われている。
それに、潮も満ち始めてきたのか、さっきまで戦っていた砂地も、なんとなく狭まっているような気がした。

「せやな。 今、午後3時頃かな…急ぐか」
「ああ、さっさと釣ってブッ倒しちまおうぜ」

ビアンカも周囲を見回し、あまり時間がないと思ったのか、首肯する。
そして竿をヒュンと一振りすると、綺麗なバックスイングから「せいっ!」と一気に遠擲した。

俺は草むらに身を隠すと、再びスコープで、釣り餌が投げ込まれた辺りを観察する。
さぁ来い、すぐ来い、その時はさっきビアンカに学んだ事を生かして蜂の巣にしてやる、とやる気満々で草むらに隠れた。

…だが、俺の猛り高ぶった精神は、時間の経過と共に、徐々に萎んでいった。

「(…遅い。 …ってか、マジ遅くねぇか、これ)」

草むらに伏せ始めて結構時間が経つが、ガノトトスが姿を見せる様子がない。
俺が焦ってるだけかと思ったが、ビアンカも同様に感じているらしく、時々汐溜まりに目をやったり、身構えた足を組み替えたりと、気もそぞろな様子だ。

ガノトトスも、自分の縄張りを定期的に巡回する「回遊性」を持つ。
いずれはここに戻ってくる機会があるのは間違いない。
だのに、どこかに行ってしまったかの如く姿を見せない。

汽水域は、河川の淡水と海水が混じる場所。
湖ほどではないにしても、奴の行動半径はそれほど大きくならないはず。
他に淡水の流れ入る場所があるのか、それとも予想外にダメージを喰って、水中で休んでいるのか…?
いや、そんなバカな。

そして異変が起こったのは、俺の体感で、草むらに伏せ始めてから、約30分が経過した頃だった。
それは僥倖だったと言える。
スコープを覗いていた俺が、右腕が重くて一度体勢を変えたら、運良くその先に、こちらに接近してくるガノトトスの背ビレの先っぽを確認したのだ。

「おい、ビアンカ! ガノトトスが来てる!」

俺は小声で注意を促すと、ビアンカも再び身構え、竿をすぐに岩へ差し込める場所に、慎重に移動する。

スコープの中のガノトトスは、とっくにビアンカの釣りカエルの匂いに気づいているらしい。
ぽちゃりと波音を立てて水中に沈むと、次の瞬間、再び派手な波しぶきを上げて、竿の糸を引っ張り始めた。

…来たッ!

「アンタさん、徹甲榴弾!」
「分かってる!」

すかさず、ビアンカが岩間に竿を差し込んでロック。
やや遠間で餌に食らいついたせいか、的が心なし小さく感じる。
だが、俺は慎重に狙いを定めると、再び奴が水面から出てくる瞬間を見計らって、シュート。
今度も、徹甲榴弾は見事に奴にヒットした。

「ビアンカ! OKだ!」

そう声を掛け、ビアンカに注意を促す。
ビアンカがこっちを向いて頷くとともに、海面ではゴボァと波柱が立ち、ドザーンという音と共に、ガノトトスが豪快に水中から飛び出してきた。

俺たちは、弓とボウガンを構えると、豪雨のような潮の水しぶきをかき分け接近する。

ガノトトスは、またもや背中から墜落し、ビッタンビッタンと身悶えて暴れる。
自ら上陸したのにな、とその学習能力のなさに苦笑しつつも、チェーンブリッツの照準をその白い腹に向けた。

「いくぞ、ビアンカ!」
「任せとき!」

ババババ、というチェーンブリッツの速射弾の音が、心地よく俺の耳を叩く。

一気にケリを付けてやる!
ここで全てを終わらせるべく、俺たちは弾丸と矢を、まさに雨霰と撃ち込んだ。
だが、ガノトトスは倒れるどころか、まるで気にしていない様子で元気よく起きあがる。

…さすが魚、受けた痛みもすぐに忘れる訳かい。

これが本物の飛竜相手ならば、多少の「表情」みたいなものは伺えるかもしれないが、魚類はそれが非常に分かりにくい。
ホントにダメージ喰ってるのかよ、と思いつつ、俺はリロードしながら、ビアンカと共に猛烈な攻撃を加えて行く。

「おい、ウチの立ち位置見とき!」

…そういや、そうだった。
さっきビアンカに言われた、対ガノトトス戦での立ち位置。
俺とビアンカは、ガノトトスを挟んで前後に位置しているため、正確な位置取りは把握し辛いが、彼女のおおよその立ち位置をイメージし、そこからやや遠間に位置し、実践で修正を加えて行くことにする。

ガノトトスが、俺の方を向く。
ビアンカは、背後から、腹に攻撃を加えている。

「(…そういや、確か『行動の空白期間』もあるんだったな)」

ガノトトスのもう一つの弱点、行動の空白期間。
それはガノトトスが攻撃してから約4歩、約2秒。

「(1、2…。)」

俺の予測と違わぬタイミングでガノトトスは大きくヒレを広げ、高圧水ブレスの体勢を取る。
だが、俺の立ち位置は奴の正面ではなく、既にそこから少し脇にずれた所。
ここなら、もう水ブレスは当たらない。

「(…恐れるな。 奴の攻撃の最中こそ、射撃のチャンスだぞ!)」

ゴビュウゥウ、という音を立てて、想像より巨大な高圧水ブレスが、風を巻き込み、俺のすぐ脇を通り抜けて行く。

その迫力にちょっとビビって弾道が少し逸れてしまったが、俺はガノトトスの頭に攻撃を加える事に成功した。
弾丸が弾かれている事からして、ちょっと遠間過ぎたかもしれない。

…だが、行ける。
これは上手く行く。

ビアンカに教えられた事は、俺でも戦術としてちゃんと生かす事ができた。
基本の立ち位置と、空白の2秒間。

ガノトトスがビアンカの方を向き、再び水ブレスの体勢を取る。
クリ距離から遠いと思った俺は、思い切って接近し、腹に速射をバリバリと撃ち込む。

「(1、2…。)」

そして慌てて待避。
その行動は正解だったようで、回転尻尾攻撃が俺がさっきまで居た空間を薙ぎ払っていったが、余裕で回避できた。
こうなれば、奴はもはやただの巨大な風車であり、俺は弱点の腹下をメチャクチャに撃ちまくった。

もう、ガノトトスの行動より、確実に先んじて行動できる。
相手の攻撃力が馬鹿げているだけに、俺達は決して欲張る事なく、慎重に…でもアドバンテージを最大に生かして、徹底的に集中砲火を加えていった。

ビアンカが顎下を撃ち、俺が背後から腹下を撃つ。
タゲ交代の間に、距離調節とリロードを済ませ、奴がこちらに向き直った時は、俺が顎下を撃ち、ビアンカが腹下を撃つ。
二人の猛攻撃に晒されたガノトトスは、さきほどよりも怯む姿を頻繁に見せ…、だが俺たちは容赦せず、さらなる銃火を奴に浴びせ続けた。

だが、予想外な事に、奴は倒れなかった。

「(…もしかして、G級個体なのか、これ)」

想像以上のタフさ。
それを説明できる理由は、もはやそれしかなかろう。
だが、それならそれで構わない。
G級ならば、街に戻った時の素材売却代が、相当に高額になるだけだ。

…それに、今はいい調子なんだ。
今度こそ勘違いじゃなく、俺とビアンカのコンビネーションは、いい感じになっている。
もう少し、この時間を続けさせてくれ。
俺たちの「練習台」になってくれ。

俺が攻撃の興奮と陶酔感に酔い、そして確実な勝利をイメージしていた時、ふと誰かが、俺に語りかけてきた。

「(…それで、いいのか?)」

…? 

…何だ、誰だ?

「(…安全圏から撃つ…。 そんな卑怯な射撃を繰り返すだけで、いいのか?)」

それは、JJだった。
俺の脳裏で、俺の一挙手一投足を見ている、JJの姿だった。

「(…もっと、近づけ。 もっと、踏み込め。 それじゃ、全然ダメだ)」

…なん…だと?


<続く>
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*Comment

NoTitle 

面白かったです!!
続きが気になります~。
楽しみにしてます(^^)/
  • posted by PECO 
  • URL 
  • 2012.12/31 05:40分 
  • [Edit]

Re: NoTitle 

> 面白かったです!!
> 続きが気になります~。
> 楽しみにしてます(^^)/

ありがとうございます! コメントこそが創作の活力でございます!
俺も近いうちに、どうにかPECOさんの本買いますよ!
コピー本のガムちゃん買えないのはちょっと寂しい所だけど!
  • posted by 丼$魔 
  • URL 
  • 2013.01/03 14:21分 
  • [Edit]

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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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