女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(8)-4

彼女の足は、鮮血に染まっていた。

「(…何だ? 何があったんだ?)」

ガノトトスの攻撃によるものとは思えない。
一体、何が起こったというのか。

「おんどれ、ボケッとしとらんで、とっとと右に回らんかいッ!! ウチら詰むぞっ!」

…詰む?

何の事か分からなかった俺だが、次のガノトトスの挙動で意味が理解できた。



逃げ遅れている俺たちを視認したガノトトスは、前に倒れ込んで巨躯を伏せると、蛇のように全身をくねらせ、俺たち二人をまとめて始末しようと、凄まじい勢いで突っ込んできたのだ。 

…「這いずり」だ! 

ビアンカは、この攻撃を予期していたのか。

「(予測? それとも、何かの予備動作で…?)」

一瞬そんな疑問を抱いたが、それはザザザザと音を立てて突っ込んでくるガノトトスの圧倒的なスケールにかき消される。

「おおおっ!」

俺は右へ回れと指示を受けていたため、いち早くガノトトスの攻撃圏から逃れる事ができたが、彼女は足が動かないのか、ガノトトスの進行方向に居たままだった。

「ビアンカッ!!」

俺の無知ゆえの鈍重な行動。
それがモンスターの中途半端なターゲッティングを誘発し、結果的に彼女の危険へと繋がった。
しまった、という自責の念が俺の心に広がる。

だが、彼女はガノトトスのヒレ…その下にある僅かな空間を瞬時に見極めると、前転しながらそこに飛び込んでくぐり抜けるという、起死回生の回避技術を見せた。

「おおっ!」

まるで歴戦の狩人ばりの度胸と技術だ。
ただ、回避先はクッソ冷たい海中であり、そこに飛び込ませてしまった事を、俺は正直申し訳ないと思った。

…ここは、一度奴を俺の方に引きつけよう。
彼女を退避させて、あの傷を回復薬グレートで回復してもらおう。

そう思った俺は、奴をビアンカの居る波打ち際から引き剥がすべく、ガノトトスの背中へ銃を乱射し、注意を引きつけて崖際の草地の方へと誘導する。

俺の期待どおり、奴を挟んで反対側、海中からビアンカが出てくるのが見えた。 どうやら一旦待避するようだ。

「(…よし、ビアンカ、一度逃げてエリアチェンジしてくれ。 俺もすぐに行く!)」

ガノトトスは、ゆっくりとこちらに歩いてくるが、一拍して俺の方向へ軸を合わせてくる。
そして大きくヒレを広げると、頭を持ち上げた。

…水ブレスか!

よし回避、と思ったその時。
何者かから、足首をガッチリと掴まれた。
俺の足に根が生えたかのように、全く移動できない。

「…な!?」

何のホラーだ、と思って俺は足下を見たら、俺の足を掴んでいたのは、甲殻種ヤオザミの鋏だった。

「(なんだこれ、ヤベェッ!)」

目の前では、既に攻撃動作に入っているガノトトスの姿。
奴が頭を降り下ろすと同時に、力まかせに鋏を引き剥がすと(※俺のレギンスはクロムメタル製だったのが幸いした)、身を転がして水ブレスの範囲から逃れる。
受け身を取ってすかさず背中を見ると、ヤオザミが水ブレスに押し流されて、ゴロゴロと転がっていった。

まさに九死に一生の瞬間だったが、俺が回避した先には、別のヤオザミが待ち構えていた。
そいつも両の鋏をクワッと掲げ、カササササと足音を立て、異様な速度で俺の方に接近してきた。

「(…ビアンカが右足を怪我していたのは、これが理由か!)」

俺はいつものように、銃を連射してヤオザミを追い払おうとするが、キキキキキンと軽快な音を立てて、通常弾Lv1の速射は、ことごとく曲面外殻に弾かれた。

…しまった!
そうか俺、今、火炎弾じゃなかったんだ!

通常弾を押し返したヤオザミが、俺に向かって鋏を繰り出してくるが、俺はそれを避けつつ納銃すると、ガノトトスを迂回して走り出す。

「うおおおおおおっ!」

だが、ヤオザミは「カササササ」と音を立てながら、俺との距離をあっという間に詰めてくる。

「ど、どっせーい!」

予想外の出来事に、多少テンパった俺は、妙なかけ声をかけつつ、汐溜まりの岩に足を掛けて、そのまま大きく飛び越える。

「(…どうだ!?)」

俺は着地ざまに振り向くが、エリアチェンジし、視界を遮ったらヤオザミは付いてこなくなった。
「この岩の先に敵が居る」という想像力が働かない所が、下等動物ならではの悲しさであるが、おかげでもう安全だ。
ビアンカの奴は、大丈夫だろうか…。


「き、きゃぁぁぁあああああぁーーーーーーっ!!」

え、何この可愛い声。

「…お、おんどれぇーーッ! 何いきなりここ飛び込んで来てん! 誰の許可貰てんやブッ殺すぞッ!」

正面を向くと、岩陰のすぐそこに、ほぼ全裸状態のビアンカが居た。

ぱんつは履いていたし、大事な部分は手で隠されていたが、超グラマラスボディからたわわに実る、ド迫力のダブルパイパーイZを、俺は反射的に凝視してしまった。

「何でこの人いきなり脱いでるのもしかして痴女なの」と一瞬思ったが、よく考えれば、今の季節は風吹く寒冷期の11月。
氷点下近い海に飛び込めば、肌に貼り付く服は、マジで身体が凍りつかせるほどに冷たいはずだ。

そうだよね、脱いで乾かさないと、風邪引いちゃうもんね…と納得した時、俺の顔面には深々とビアンカの鉄拳がめり込んでいた。


 *   *

「失明するかと思った」
「頭蓋割られんかっただけありがたいと思えや」

そんな物騒な台詞を吐いて、ビアンカが憎々しげにこちらを見る。

「…ふぇ、ふぇ、えっきし!」
「おいおい、大丈夫かよ、風邪引くなよ」
「…だ、誰のせいや思てんねん!」

岩陰で服を絞って水分を飛ばした彼女は、右足の治療をしていた。
俺と同じくヤオザミの奇襲を受け、無理に脱出したら、甲殻(鋏)の破片が足の裏に刺さってしまったそうだ。

「動きが鈍ったのは、それが原因か…。 何にせよ、致命傷じゃなくてよかったぜ」
「あのな、致命傷やなくても、ごっつ痛いんやからな」

ビアンカは足の裏から破片を引き抜くと、傷口を海水で消毒し、回復薬グレートをポーチから取り出して飲み、ついでにちょっと傷口にも付ける。

「よっしゃ」

ビアンカは大きく伸びをして、回復薬の空き瓶をポーチに戻す。 回復薬のおかげで代謝が一時的に促進されているので、しばらくすれば右足の傷は塞がるだろう。

だが、ビアンカは右足の傷が治っても、フィールドに戻ろうとしなかった。
それどころか、周囲を何か探す様子を見せる。

「…ところでな、依頼人のアンタに、いくつか聞きたいことがあんねんけど」

彼女は何かを探す様子を続けながら、俺に問いかけてきた。

「…何だ?」
「あのガノトトスな、上位って言うてたけど、本当に上位か? G級ちゃうん? それに…」

ビアンカは、声にドスを込めて言った。

「…何で、このクエスト、ギルドアイルーが居ないん? お前、ウチを騙してるんか」

「…あ」

矢が無いのに気づいたのか、コイツ。

「どうなんや。 そこらへん、はっきりせぇお前。 場合によっちゃ、タダじゃ済まさんで!」
「わ、悪い、騙すつもりじゃなかったんだ…」
「騙すつもりじゃないって言うなら、なんやねん!」


彼女が、このクエストが非公式ではないかと察したのは、つい先刻のこと。
ギルドの公式クエストだと、ハンターの救出を専門としているギルドアイルーたちが、非戦闘時に「矢」を拾って回収してくれる。
これは、ギルドがドンドルマの町に本部を構えた頃から、弓師が矢の本数を気にする事なく戦えるように、と始まったサービスなのだ。
ギルドアイルーは、モンスターの目に付かない、それでいてハンターが通りそうな所…例えばエリアの境界などに、まとめて回収した矢を置いていく。

さっきビアンカは、その「回収されたはずの矢」と「ギルドの監視気球」を探していたのだ。

だが、それはいずれも発見できなかった。
彼女が、これを非公式クエストと疑ったのは当然の展開で、俺はそれに対するなんらの反論もできなかった。

「やっぱこれ、密猟やったんか…。 人に、犯罪の片棒担がせおって!」
「ち、違う! 事情があるんだ…!」
「なんやねん! いい加減な事言うと、ガノトトスより先に、ウチが代わりにブチ殺すで!」

俺は観念して、全部白状する事にした。
ここでギルドに引き渡されて逮捕されたら、確実に送致かつ、軍の連中に捕まって死刑だ。
俺はビアンカに土下座し、どうせ死ぬならと、事の成り行きを全部話した。

軍にボウガンを徴発され、かつ一文無しにさせられてしまった事。
このクエストは非公式クエストであり、闇金から20000zを借りて、その受注権を買った事。
実際のこのクエストは、ガノトトスが出るという事以外、その他の条件が分からない事。
借金の返済期限は明後日まで、つまり明日の朝までにはガノトトスを倒さなければならない事。

そして、俺の武器は…。

「…アンタさんの武器、『ハイチェーンブリッツ』じゃなくて、本当に、ただの『チェーンブリッツ』やったんか…。 おかしい思ててん、ウチの弓とG級武器をあんだけ打ち込んで、上位の敵がまだ死なんとか、全く考えられへんかったもん」

「…す、スマン! 繰り返し言うけど、騙すつもりじゃなくて、恥ずかしくて言い出せなかったんだ…!」

ビアンカは、にが虫を噛みつぶしたような渋い表情をしていた。

「…本当に悪かった! 非公式である事も、もっと早く言おうとしてたんだが、言えなくてスマン!」

だが、やがてその表情が緩んでくる。

「頭、上げり。 まぁ確かに、騙すつもりあれへんかったのは、事実みたいやし」

…え?

「アンタ、ただのチェーンブリッツのくせに、えらい真剣に戦ってたもんな…。 弱点をなるたけ狙撃しようってしてたし」

…え、え?

「まー、そやさかい、ウチも騙されてんけどな…。 つーか、それなら最初から、そう言うとけばええやん」
「わ、悪かった…」
「少なくとも、アンタさんがオンブにダッコの寄生ハンターじゃあれへん、って事は分かったわ。 要は軍が全ての原因やろ? 武器を奪われてカツカツになって仕方なく、ってのもこの際納得したる。 …で」

…え、えー?

俺が、寄生ハンターじゃ、ない…?
そんな事、初めて言われて、少し呆然とした。

…コイツもしかして、良い奴じゃない?

「アンタの武器を奪ったんのは、バルベキア三国軍の『紅龍騎士団』なんやな?」
「え? あ、ああそうだ。 俺と元ハンター仲間の、ゴッドフリートっていけすかない奴が隊長」
「そいつら、軍の中ではどない位置にありそうなん? やっぱ、偉い奴らなんか?」
「どうかな、最強の『黒龍騎士団』と似た名前付けるくらいだから、それなりだと思ってるけど…」
「そっか…」

俺は寄生ハンターじゃないと初めて言われ、ちょっと高揚感に酔っていた俺は、ビアンカに聞かれるがまま返事してしまった。

「…で、紅龍騎士団がどうしたんだよ」
「いや、何でもあれへん。 ま、とにかくこれで、あのガノトトスのタフさに納得が行ったわ。 戻ろか」

そう言うと、さっさとビアンカは、ガノトトスが出る汐溜まりまで戻ろうとする。

「おいおい、納得が行ったって、あのガノトトス、実際どんだけダメージ喰ってんだよ」

俺が聞ける台詞では全くなかったが、ビアンカは律儀に返事してくれた。

「ウチの見立てでは、上位なら、もうそろそろ捕獲が可能なラインの一歩手前、G級なら、体力を半分削る手前くらい…かな、多分」
「半分か」
「あんだけのデカさやから、上位としても、強個体として見積もってた方がええかもな」
「イケそうか」
「ま、夜までには大丈夫やろ。 おい、それはそれとして、矢を回収すんの手伝い」

俺たちは、岩陰から例の戦闘フィールド…。
汐溜まりを覗き込むが、そこには、ガノトトスは居なかった。 もう海へと戻ったのだろう。
代わりに、さっきのヤオザミが3匹ほど、奥の草地に集まり、鋏で砂をすくっては口に運んでいた。

「(あ、ヤベェ…)」

甲殻種ヤオザミは、成体になるまで十数回の脱皮を行うが、その間、食性も微妙に変化する。
幼体であるヤオザミの頃はデトリタス、つまり砂に付着した有機物(早い話が死骸や海藻)を漉し取って食べるのだが、成体であるダイミョウザザミになるに連れ、より肉食傾向が強くなり、人を襲う。

…まぁ、その、なんだ。

そのヤオザミは、俺がバラ撒いたハレツアロワナの残骸を食べていたのだ。
連中を呼び寄せたのは、間違いなく俺だった。

…また、ビアンカに謝罪するネタが、一つ増えちまった。

「ま、気は進まんけど、とりあえず掃除しよか」
「放置してるとガノトトス狩りの邪魔になるしな」

俺たち二人は渋い表情のまま岩陰から出ると、ヤオザミ駆除のために武器を構える。

ビアンカは、弓を構えつつ奴らに近寄り、先制の一撃を喰らわせる。
だが、練気によって威力が倍加された矢ですら、ヤオザミの曲面装甲を突き通すには至らず、逸らされて弾かれる。

「…ちっ」

その衝撃で、こちらに気づいたヤオザミ2匹が、カササササと音を立てながら、鋏を振り上げ接近してくる。

「こっちだ!」

俺はビアンカから距離を取ってヤオザミを分断しつつ、なるだけ曲面装甲(ヤド)のない部分を狙って連射する。
だが、ヤオザミの甲殻は、どの部位でも弾耐性が異様に高い。
ダイミョウザザミにまで成長すれば、通常弾や矢を跳ね返すのも納得の堅さで、俺は何発も通常弾を打ち込むものの、ヤオザミの動きはなかなか鈍くならない。

「このっ…!」

ビアンカも、引き絞った弓矢の一撃をヤオザミに打ち込もうとするが、気を込める間もなく肉薄されて、バックステップで回避しつつ、やむなく射撃体勢を解除する。

あまり知られていない事実だが、ライトガンナーと弓師にとって、ヤオザミは最も苦手な雑魚モンスターなのだ。

弾耐性がやたら高いくせに機動力も高く、ソロ狩りの時、数匹に囲まれたら、大袈裟でなく死も十分にありえる。
ハンマー使いや大剣使いがこれを聞いたら「たかがヤオザミにぃ?」と鼻で笑うだろうが、俺達にとっては割と死活問題なのだ。

事実、弓師であるビアンカは、俺以上に苦労していた。

弓矢にも、クリティカル距離は存在する。
打ち出された直後の矢は、僅かに「への字型」に折れ曲がっているため、命中しても威力はそれなりなのだ。
射出直後の分散した運動エネルギー、そのベクトルが矢羽で収斂され、最も威力が出るのは、矢が放物線の頂点を描くとき、と言われている。

また、弓が威力の乗った一撃を放つには、いわゆる「タメ」、練った気を矢に込めるための、僅かな間が必要となる。
タメない矢の威力は、それは驚くほどに微々たるものだ。

以上2点の理由により「タメる間もなくクリティカル距離を潰してくる相手」と「弓」は、甚だ相性が悪い。

「…このっ!」

タメさせてくれない相手に業を煮やしたビアンカは、矢を一本引き抜くと、直接ヤオザミに突きかかる。
強撃ビンを使っていたらしく、甲殻の隙間に鏃が突き立つとともにごく小さな爆発が起こり、ヤオザミはのけぞってよろめく様子を見せる。
そこに追撃の矢を突き込まれて、遂にヤオザミはその動きを止めた。

無理に射撃で倒そうとせず、ガンナーとしてのこだわりを捨て、このとおり斬撃攻撃で戦えば、あっさり倒せるのも非常にシャクな所だ。

「面倒な相手だよな」
「…全くや、本当にもう」

そう言いながら、ビアンカは俺の方をチラリと見る。

…? 何だ、今の表情?

結局、もう1匹のヤオザミも、ビアンカは射撃ではなく斬撃で仕止めた。
俺が力押しで倒した1匹を合わせて3匹、これで掃除は完了した。

「よーし、じゃあ、ガノトトスをもう一回釣ろか!」
「お、おう…」

二人して、砂浜に落ちた矢を回収し、俺は拾った矢の砂を払い落としてビアンカに渡す。
さっきの表情が気になって、俺はちらりとビアンカの顔をのぞき込むが、そこにはさっきの影はどこにもない。

「ほい、また釣りカエル、よろしく頼むで」

俺は、ビアンカに言われるがまま、釣りカエルをポーチから取り出し、残る一本の竿の針に付けてやる。
今も、彼女は形の良い目鼻立ちに、俺の仕草を面白がるような笑みを浮かべている。

だがそれだけに、俺は彼女がさっき見せた表情に、理解できない物を感じていた。

そう。

ビアンカは、俺のこと、寄生ハンターじゃないって言ってたよな。
一応、誉めてくれてたんだよな。
だから、ああいう風に感じたのは、俺の気のせいだよな。
でも、あまりに見慣れた表情だったんだ。
気のせいだと思うけど、間違いだとも思えない。
じゃあ、あの表情は何なんだ?

ビアンカの奴が一瞬、俺に向けて浮かべたあの表情。
それは。

「こいつ、居なければ良いのに」

と言いたげな、俺が長年、他人の顔の中に、よく見てきた表情だった。


<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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