女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「GUNNER'S HEAVEN」#2(8)-2

「なぁ、今度の君の誕生日…何が欲しい?」
「何でも良いよ! 貴方から貰ったものなら、何でも」
「何でもっていうのが難しいんだよ、せめて七色たんぽぽの花束とか、メランジェ鉱石の指輪とか…もうちょっと具体的に言ってくれれば、準備しやすいんだけど」
「本当に何でも良いって! マルクくんから貰ったものなら、どんなものでも思い出になるよ」
「…本当に、何でもか?」
「うん!」
「じゃあ、俺の『金のたまご』とかどうだ」

「やっ…! ばっ、金…!? たま…!?」
「そうそう、俺の、金…、たま」
「そ、それはダメだよ! だって、私たち、まだつき合い始めたばかり…」
「あー、お前何変な想像してんだよ、俺が言ってるのはアレだよ、時々クエスト報酬で貰える奴だよ、あの20000zで取引できるピカピカの金塊」
「も、もう! ヒドいよマルクくん! いつもエッチな事ばかり言ってるから、思わず誤解しちゃったじゃない!」
「ははは、ごめんごめ…

そこで、俺の脳内ロールプレイは唐突に途切れた。


「…アンタ、何、変な事をブツブツ言うてるん? 端から見てたら超キモいねんけど」

不審者を見るようなビアンカの視線に、俺の意識は現実に引き戻される。

「…あ、悪い、ちょっと考えごとしてた」

そう、俺はクェル湾岸に現れたガノトトスを退治するため、隣に居る褐色の(巨乳)美少女弓師…ビアンカと共に討伐にやってきていたのだ。


闇ギルドの御者は俺たちの身ぐるみを剥ぐ事なく、きちんと俺たちを任務地まで送り届けてくれた。
リミットは明後日の朝まで。
それまでにガノトトスを倒し、素材を全て回収して闇ギルドに納品すれば、クエストクリアとなる。

ガノトトス討伐そのものはそれほど難しくないのだが、実際に現地に降りたってみたら、意外な難関ミッションが俺を待ちかまえていた。

「…音爆弾、持ってきてないのか?」
「そういうアンタさんこそ、徹甲榴弾持ってないん?」
「…」
「…」

痛恨の物忘れ。
ガノトトスは水棲魚竜なので、普段は水中に居る。
それを狩るためには、高周波を出す「音爆弾」を水中に投げ込んで怒らせ、地上に引きずり出す…のがセオリーなのだが、俺たち二人、音爆弾はもちろん、代用となる徹甲溜弾も持ってきていなかった。

大変残念な事だが、新米ベテランを問わず、忘れ物というのは、ハンターには往々にしてありがちな事。
今回の俺に限っては、財布の都合という事情もあるのだが、彼女の立場からしたら、この依頼をしたのは俺であり、ならば最低限の準備くらいするだろうと考えるのは当然だ。故にどんな忘れ物をしようと、彼女を非難できる理由はない。

まぁそういう理由で、俺たちは現地の地形を確認する傍ら、「二人して採集活動しようか」「しょうがあれへんな」という事になったのだ。

で、先に言った難関ミッションが何かというと、実は俺、こういう美少女と素での二人歩きをした事がない。
酒場なんかだったら、金の匂いをチラつかせておけば、大抵の女は好意的になるし、話もあちら側が合わせてくれるので、その意味では大変気楽だった。
だが、見目麗しい女性ハンターというのは、存在自体がレアキャラであるし、仮にそんな希少種が存在したとしても、既に他のイケメンハンターに速攻で捕獲されているのが世の常だ。つまりそれほど需要が高い。

男のSAGA。
あえて言わせてもらおう、男のSAGAであると。
美少女が隣に居たら「なんか面白い事言わなくちゃ」と思うのは。

正直、俺は剣士系でない事もあり、健康美を全面に押し出した、褐色肌の女はそれほど好きじゃない。
それに、死地を共にする、行きずりのハンター同士なら、必要最低限の義務的会話で事足りる。
しかしながら、この隣を歩くビアンカって女は、やっぱどう見ても美少女で、どんなに素知らぬふりをしようとも、浮岳龍ヤマツカミの如く、その偉大なおっぱい様に視線が吸い込まれてしまう、困った相手なのだった。
なので、不審者扱いされないためにも、上手にコミュニケーションを取り、距離間を縮める努力をする必要がある。俺は半ば現実逃避気味に、冒頭のような「可愛い女の子と上手く会話してるシミュレーション」を行う事で、何か面白いこと言う方法を模索していたのだったが…。

「ちょっ! アンタさんもボーッとしてへんで、さっさとそこらへんの石ひっくり返しぃや! カエル探すんは、アンタの役目やで!」

面白い会話どころか、彼女から叱責される始末。
うむ、俺たちはガノトトスの好物で釣り餌になる「釣りカエル」すら持ってきていなかった。

「何で言い出しっぺが何もかも忘れてきてん、ボケが」

一応彼女は、最後の「ボケが」は俺に聞こえないよう、口の中で小さく言ったつもりらしいが、しっかり聞こえている。
読者諸氏には、ここまでの展開が非常に読みにくかったと思うが、俺も美少女と二人…傍から見れば、デートにも取れるこの状況に動揺しているんだ。そこは勘弁してくれ。


ともあれ、このクェル南岸は、バルベキア三国の南端に位置し、南からの季節風で、割と温暖湿潤な気候を保つ土地柄だ。
ラボルタ川という巨大河川が海に流れ込み、汽水域による一大漁場を作り上げているのだが、目的の漁場は、現在全くの無人。
というのも、指定の場所…河川西側はここから丘陵が連続し、すぐに断崖絶壁となり、崖下の狭い砂浜しか漁場として使用できないという、いかにも不便な地形なのだ。
この狭い砂浜、どこまで続いているのか分からなかったため、俺は丘を上って観察する。

俯瞰して見れば、この砂浜は全体的に、奥行き250~300m、幅20~30mの、かなり細長い戦闘フィールドだった。 
この地形が、高難易度の理由であるのは間違いない。
ガノトトスの巨体がここに出現すれば、逃げ場を失い、至近距離でのガチンコ戦闘を強いられる事もあるだろう。

「おーい、何してんのんアンタ? そこ、釣りカエル居そうなん?」
「いや、とりあえず見てくれよ! 一番奥に、船の残骸が見えるだろ? 多分、あそこがガノトトスが出る、例の地点だぜ!」
「どれどれ…」
「どうだよ、弓師様的に行けそうか?」
「…少し、地形延びすぎやな。 行き止まりってのもマズい。 もしキャンプに近い方に出現されたら、敵の攻撃をかいくぐらんと戻れへんのは結構痛いな」
「難しいか?」
「ンな訳あるかい。 後先考えへん戦い方せん限り、回避に使えるスペースは十分あるわ」
「そいつは頼もしい」
「それはそうと、採集に戻るで? 集めるもん結構増えてんねんからな」
「OK」

俺たちの採集目的は、最初は釣りカエルだけだったので、それは(俺が)ミミズまみれになりながら必要数をかき集めた。

だが、カエル探しが終了した時、そこらへんに生えている「カラの身」と「ニトロダケ」で「徹甲榴弾Lv1」が調合できるじゃねーか、という事にふと思い至った俺たちは、採取の目標を変更した。

しかしこの後、ニトロダケがそこそこ集まった所で「なぁ、ニトロダケは強撃ビンの材料に回して、徹甲榴弾はアロワナでまかなってくれへん? どうせ漁場も近くにあんねんから」と逆提案されてしまう。

せっかくニトロダケ集めたのによ、と思わなくはなかったが、このうじゃうじゃ居るミミズさん達も処分したかったし、ハンター同士のコミュニケーションもそうだが、何よりもこのクエストが非公式クエストだという事を説明したかったので、俺は釣りに行く事を了承した。


 *   *

「うおー、ごっつ綺麗やん! これが温暖期真っ盛りやったら、泳いでみたかったで!」
「本当に綺麗だな、こりゃ都市の連中を海水浴に呼んだら、金取れるかもな」

絶壁の上の台地で、採集活動を一通り終えた俺たちは、今度は魚を釣るべく、お手製の竿を二振り持って海岸を歩いていた。
初冬の光に輝く海と、その波打ち際を駆ける美少女の組み合わせは抜群で、ビアンカの言うとおり、これが温暖期だったら、まさにデート的な気分を惹起した事だろう。

俺たちは、魚の集まっている場所を探しながら海岸を歩いていたのだが、発見できた肝心の釣りポイントは、大変困った事に、この細長いフィールドの最奥だった。

この海岸、崖のせり出した行き止まり周辺が、汐溜まりみたいにちょっとした広場になっているが、その入り口周辺で崩落があり、そこらに落ちた巨石が障害物よろしく散らばり、海に落ちた石がいい感じに魚の住まう所を作っていた。

俺は落石に潜んで、ガノトトスから身を隠せるかどうかイメージしてみたが、まぁ身は隠せそうだ。
ただ、見つかって攻撃されれば岩ごと吹っ飛ばされそうだな。

…想像は出来ていたが、やはりガンナーでもガチンコ勝負を強いられるか。
こりゃ地元の漁師なんぞじゃ対応できねーよな。

覚悟を決めた俺は、とりあえずアロワナを釣るべく、ビアンカに竿を渡し、二人波打ち際の岩に腰掛けて、のんびり魚を釣り始めた。
風は冷たいが、日光があるのでそれほど寒いって訳ではない。

「…おっ、サシミウオちゃんゲットだぜ」
「いきなり雑魚中の雑魚釣ってんなー」
「サシミウオをバカにすんなよ、生で喰うとほのかに甘くて美味いんだぜ? ソイソースを掛ければ絶品だ」
「せやけど、サシミウオは食べる所が少ないやん? せっかくならマグロ釣ろうやマグロ」
「お、それ良いな! 夢はでっかくカジキマグロ!」


「…くっ、眠魚か…」
「お前も雑魚釣ってんじゃねーかよ」
「雑魚言うなや! ほれ、これはアンタにやる! 睡眠弾の材料にしーや!」
「いらねーよ! そーれ、キャッチアンドリリース!」
「あっ、アンタ何海に戻してんねん! せっかく人が釣ったのに!」
「眠魚とか使えねーよ! だって…」

チェーンブリッツは睡眠弾Lv1しか撃てないからな。
そう言いかけて、俺は固まる。

「(そういや、俺が戦力にならない事、言うのすっかり忘れてた…)」

これが非公式クエストである事もだが、それも伝えていなかった。
通常クエストのように、救援用ギルドアイルーが任務地に待機しているなんて事はない。それを意識しているかしていないいかでは、危険度は相当に違うし、またパーティかソロかでも難易度は全然違ってくる。
正しい状況を彼女に伝えないと、謝った認識は彼女の命を奪う結果にもなりかねない。

ぱしゃ、と音を立てて俺の竿が引っ張られる。
反射的に釣り上げたのは、カクサンデメキンだった。

「だって何やねん! アンタもまた雑魚釣ってるやん」

チェーンブリッツは、拡散弾もLv1しか撃てない。
カクサンデメキンは、拡散弾Lv3の材料である。

「そ、そうだな、雑魚しか釣れねぇなぁ…。 景気よく、黄金魚とか釣れれば良いんだけどなぁ…」
「餌が悪いんと違う? やっぱ、釣りミミズみたいな貧相な餌じゃ、食いつくもんも食いつかんで」
「…そうだな、でも釣りフィーバエって、意外に見つからないし…」
「ツチハチノコもどこで取れるか分からんしなー」

口は反射的にビアンカとの会話を続けていたが、俺は内心の焦燥感を抑えきれなかった。
「俺は戦力にならない」事を伝えなくてはと思ったのだが、それが口から出てこない。
会話の端緒を掴もうとするも、何故か頭が働かない。

ビアンカ一人に戦ってもらうのが心苦しいという気持ちは、もちろんある。
二人で釣りをするのは中々楽しくて、多少打ち解けたような感じになった今、申し訳ないという気持ちがさらに増してきたのもまた事実。

だがそれ以上に、何か重苦しい心の壁が…目に見えない重圧が、「俺は戦力にならない」などとは、決して俺に言わせまいとしている。 そんな気がした。

ふと、心の中に、JJの姿が見えた気がした。
そのJJは、俺を冷めた目で見ていた。

「(何だ…。 何が言いてぇんだよ、テメェ…)」

ふと、我に返った俺は、手の中でビチビチと跳ねるカクサンデメキンの姿を見て、今からでも「カクサンの実」を探しに行けば「俺は戦力になるかもしれない」と考え始めた。

そう。
チェーンブリッツは、Lv1なら、大抵の弾は撃てるのだ。 拡散弾はもちろん、毒弾、麻痺弾、睡眠弾などの状態異常弾も。
麻痺と睡眠は、剣士が居ないから役には立たないが、万一の脱出に使える。 
それに、ガノトトスに対し、毒はそこそこ有効ではなかったか?

「(何だ…? 俺は、戦う気なのか? チェーンブリッツで? こんな底辺の武器で、上位、もしかするとG級の敵を相手にして、か…?)」

バカな。 
それはどう考えたって、自殺行為だろう。
この剣士用の手甲のせいで、まともな射撃すら難しいんだぞ、今の俺は。

「おっ! やった! 見てみぃ、見事に『ハレツアロワナ』穫ったでー!」
「おお、スゴいな、これで徹甲榴弾が作れるな!」
「もう、コツ掴んだで! 待っとき、釣り神様たるウチが、バンバンアロワナ釣っちゃるけんな!」

意外と、釣りってのはデートに向いてるイベントなのかもしれない。
ビアンカの楽しそうな顔を見て、皮肉にも、案外距離間が詰まってるのかな、なんて事を思う。

なら、言うのは、今だ。
二人でカクサンの実をフルに集めれば、20発は拡散弾が撃てる。 それなら、俺も十分に戦力になる。

「あのさ、ビアンカ…。 俺、お前に言いたい事が…」
「黙っとき! ウチ、今メッチャ集中してんねんからな! 今のウチには、黒騎士すら攻撃当てれへん!」

喜々としたビアンカは、釣りにハマり過ぎて、俺の言葉など聞く気はないようだった。
ところで、「黒騎士」とは、地元に居たライバルか何かだろうか。 まさか、黒龍騎士団の事ではなかろうし。

いずれにせよ、波打ち際で、釣るぜオーラを全身から発散させるビアンカの姿は、あまりにも真剣すぎた。
下手すれば、彼女が巨大に見えるほどの圧力だったので、俺はこれ以上声を掛けられなかった。

「(くそ、この話題は後回しか…)」

仕方ないので、俺は釣りを一時中断し、ハレツアロワナの解体作業に入る。 
ハレツアロワナは名前こそアロワナだが、実は超小型の魚竜であり、しかも肺呼吸をしているので、釣ってもしばらくは生きている。
他の魚に捕食されたりして絶命すると、内蔵の浮き袋がハレツするのだが、この浮き袋の中には圧搾空気が詰まっている。
この浮き袋を結束して、少量の火薬と共に薬莢に詰め込み、アロワナのクソ堅い骨を弾薬の先端に付ければ、徹甲榴弾のできあがりだ。

これで、薬莢内の浮き袋が乾燥し、着弾した際の火気なり衝撃なりで裂けると、詰まった圧搾空気が一気に炸裂し、火薬の炎が激しく燃え上がる。
まぁ、火気はおまけみたいなもので、実際には圧搾空気の衝撃で甲殻内部の組織にダメージを与える。

その威力はなかなか侮れず、調合に失敗すると、アロワナ解体の途中で浮き袋がパンと破裂し、耳がジーンとする。気の弱い女性なら気絶しかねないほどの威力だ。

そしてバラバラになったアロワナは、大地にお住まいになられる蟻さんやミミズさんや、小動物たちに美味しく頂いてもらう。
堅過ぎる小骨が多いのもだが、肉が臭くて焼かないと食用にならんのだ。

俺は断崖絶壁の足下にある草地に、アロワナの肉をバラ捲きながら、そこらへんにカクサンの実がないかを探したが、発見できたのは、ペイントの実とネンチャク草だけだった。

なんだか妙にやりきれぬ思いを抱えた俺は、再度ビアンカの所に戻ったが、彼女もその後、アロワナ類は釣れてないようだった。

「なんだ、釣り神とか言っときながら、結局オンプウオと眠魚かよ」
「…うーん、元々ここ、それほど良い魚おらへんのと違う?」
「そうかもしれねぇな、だから漁師は船使って沖に出てたんだろうし」

と、俺は打ち上げられた船の残骸を指し示す。
もちろんガノトトスと戦って難破させられた、地元の漁師団のものだ。

「せやな、じゃあ雑魚しか釣れんくても仕方あれへんな」
「でも、さっき1匹でもアロワナ釣ってくれたおかげで、徹甲榴弾が出来たぜ。 これで水中に逃げられても一度は大丈夫だろ、助かった」
「おお、そっかそっか、じゃあウチに感謝しろよ」
「ありがたやありがたや、釣り神さまビアンカさま、できればとっとと黄金魚も釣って下さい」
「お前が釣れ」

 *   *


そして、再び二人して魚釣りを再開したが、二人ともモチベーションの低下は甚だしかった。
ビアンカは雑魚しか釣れない、と分かったせいだが、俺は再度の採集…。 拡散弾Lv1の材料になる「カクサンの実」と、睡眠弾・毒弾の材料になる「ネムリ草」「毒テングダケ」を探しに行きたかったからだ。

「なぁ、そろそろガノトトス討伐の準備しないか?」
「せやな、釣りカエルでおびき寄せよか」

いやそれはちょっと早すぎる。
俺はまだ採集に行きたいんだけど。

「いや、そういう事じゃなくてだな…」
「で、ここのガノトトス、どんなん? ウチ、馬車ん中で寝てたから、上位って事以外には、どんなクエストか良く知らんねん」

ビアンカの強引な話しぶりに、俺はちょっと閉口しつつも、腰を折る事なく要望に応える。

元々ガノトトスは、淡水棲の魚竜なのだが、それが突如、このクェル南岸の海に現れた。
多分、どこかの地底湖に居たものが、偶然川を南下したものだと推測できたが、ガノトトスは淡水棲であるからして、環境に適応できず死ぬだろうと思いきや、奴はこの河川周辺の汽水域に留まり続け、ラボルタ川周辺の漁場を荒らしに荒らしまくった。

「…最近多いな、モンスターが生息域を変えるって話」
「ああ、おかげで『大連続狩猟』なんてクエストが出来たくらいだしな」

まぁ、モンスターが生息域を変えるのは、俺たちハンターが原因の一つだろう。
土地の開拓に伴い、先住者である彼らを駆除するために、ハンターが呼ばれる訳だが、その戦いの中で彼らの生息地は徐々に移動・縮小していく事を、他ならぬ俺たちが一番良く知っている。

その結果か、モンスターが、自らの生息環境に合致しない場所に出現する事はもちろん、果てはその環境に適応し、亜種個体として進化する例も、最近はよく確認されている。

同時に、彼らの生活圏が狭まった事で、モンスター同士の縄張り争いも頻繁に起こるようになった。
周辺への甚大な被害を回避するため、それらを包括的に解決…というか、まとめて退治してしまうのが、大連続狩猟だ。

ギルドは、対外的には自然との共存を謳っている。
だが、その数が爆発的に増えつつあるハンター達の要望を全て汲み取れば、その様相は必然として乱獲にならざるをえない。

今回の、この海に出てきたガノトトスも、もしかしたら人間の都合という、皮肉な運命に蹂躙された個体であろう。 しかし…。

「で、この貧相な漁場で生計を立てていた集落の連中は、ガノトトスにのきなみ船をぶち壊されて、全員廃業。 河川東側の連中に金を借りて、ハンター雇って退治しようとした所、逆にあっさり返り討ち…って訳だ」
「こっちの集落の人たちは、今どうしてん?」
「金を返して貰おうにも、消息が掴めないそうだ。 全員夜逃げしたか、首吊ったんじゃねーか」

それを聞くと、ビアンカは顔をしかめて首を振る。

「嫌な話聞いたな」
「まぁ、船造るのって、相当に金も資材もかかるしな…。 全てを失ってしまえば、あの憎きモンスターに一矢報いよう、って気持ちは分からんでもない」
「せやかて、人生まで失わんでもええような気もすんねんけどなぁ」
「復讐に燃えた人間に、そんな正論は通用しねぇよ。 どちらにせよ、今回のこのクエストは彼らの敵討ちだから、はりきって行こうぜ」
「せやな」

この生存競争、最終的には人間側の勝利で終わる事が多いとはいえ、その経過を鑑みれば、被害も少なからず出ている。

「(…あいつは、どう思うんだろうな)」

俺は今、ガノトトス退治を「生活を失った人たちの敵討ちだ」と定義し、ビアンカの闘志を意図的に鼓舞した。
別にそれは間違いではない。
もし、ここに集落の連中が居たら、血の涙を流してひざまずき、俺たちに家族の敵討ちを懇願するだろう。
今までのハンター生活の中で、似たような状況は幾度か経験がある。

だが、あの死神の衣装をまとったヘヴィガンナー…。
JJが俺の脳裏で言う。 

「だがそれならば、このガノトトスも自分の居場所を失い、その敵討ちとして暴れているのではないか」と。

俺は小さく舌打ちをする。

「(やめろよ、闘志が萎えちまうだろ…)」

俺の脳内で、奴は能弁に続ける。
「複数で単体を叩きのめす事が、果たして『正しい』事なのか」と。

「(…おいおい、俺がチェーンブリッツで戦おう、って殊勝な気分になってんだぞ。 気持ちよく戦わせろよ。 お前みたいな無茶無謀な事が、俺にできると思ってるのかよ…。)」

自分で作りだした奴の虚像に、俺は自分で閉口する。
我ながら、本当驚くほどに、奴に感化されたもんだ。

だけど、あいつは…。
JJの奴は、これが理由で、ソロで戦ってるのか?

胸の中にわだかまるモヤモヤした気持ちに、俺は上手く名前を付ける事ができない。
負い目…という表現が一番近いのかもしれないが、それとも違う気がする。

「僕と貴様の魂には、僅かながらも貴賤の差があると…貴様はそう言いたいのか」

その言葉を思い出した瞬間、俺の目の前が歪んで眩み、危うくひざますきそうになる。

「(…バカ、奴の事なんか気にするな。 チェーンブリッツで戦う、って事だけで十分にお釣りがくるだろうが…。 それよりも、ビアンカの奴に言っておく事があるだろ、先に…!)」

俺は頭を振って立ち上がり、脳裏で語りかけてくるJJの姿を振り捨てる。 

「(…迷うな。 モンスターは俺らと同じ命じゃない。 災害だ。 人間の敵だ。 だから俺らが奴らを狩る事に、なんらの躊躇も必要ないんだぞ、マルク!)」

俺はそう自分を叱咤し、心を落ち着けようとする。

「んじゃ、餌の釣りカエルよろしく! ウチが釣るから、アンタは茂みの中で、徹甲榴弾で引き上げてな」

だが、俺が心の平静を取り戻すより先に、ビアンカはにこやかな様子で、針を俺の方に垂らしてきた。
その様子に毒気を抜かれた俺は、「あ、ああ」と気の抜けた返事をしてしまった。
…こいつ、ハンターのくせにカエルを素手で触るのが嫌なんだろうか?

「あ、それと、もう徹甲榴弾使うのかよ」
「この手製の竿じゃ、釣り上げるのは無理やろ」
「それもそうだな」

とりあえず、針に釣りカエルを通してやった俺は、ビアンカの指示通り、草地の藪に身を潜める。
アングラーの間では「ガノトトスは陸地に敵の影が見えると、餌に食いつかない」というジンクスが常識として伝えられているからだ。
それに、俺たちのはギルド製の竿じゃないので、多分ガノトトスを釣りあげる途中で、ボッキリ折れてしまうだろう。 徹甲榴弾で引き上げた方が確かに確実だ。

ビアンカは、残った釣りミミズを親の仇の如く、思いっきり遠くにブン投げ、撒き餌にする。

汽水域のみとはいえ、海洋に居るガノトトスの活動範囲は、淡水域に住んでいるそれに比べて格段に広い。
餌の匂いを嗅ぎつけて、この湾岸に接近してくるまで、多少時間がかかるだろう。

「(採集、しときたかったぜ…)」

じっと息を潜めて待ってると、退屈のためか、未練たらしくそういう事を考えてしまう。
状況に流されるまま、ガノトトスと素で戦う事になってしまったが、ここはもう彼女を信じよう。
彼女は、ガノトトスごときには倒されない、と。
それに、JJは、ボーンシューターでG級相当のドドブランゴを仕止めていた。 下位武器で上位の敵を怯ませる事も、全く不可能な訳じゃない。

本当は、やはり拡散弾や毒弾が欲しかったのだが、もはや今更だ。 幸いにしてか、ドスファンゴで射撃の練習をしたばかり。 その経験を生かし、なるだけ火力を高めよう。 ガノトトスは、首下や腹が柔らかいので、そこを丁寧に狙えば、効率よく高いダメージを与えられるはず…。

俺がそんな事を繰り返し考えていると、突然ビアンカがこちらを向き、口をぱくぱくさせた。何かの合図だ。
ガノトトスの水影を見つけたのか、と思ったが、そうではなかった。


<続く>
スポンサーサイト

*Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

最近の記事

月別アーカイブ

FC2カウンター

右サイドメニュー

ブログ内検索

ブロとも申請フォーム

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。