女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(8)-1


「実の中身は空なのに、『カラの実』とはこれいかに」

これはドンドルマで一時期流行していた、狂言師による狂句の一編だが、ガンナーなら誰でも一度は聞いた事があるだろう。
「カラの実」はボウガンの薬莢の素材として使われる、わりとポピュラーな素材だ。
通常弾、貫通弾等と用途は広いため、ガンナーだったら、とりあえず取っとくアイテムの一つである。
で、なぜ実の中身は空なのに「カラの実」かというと、実はカラの実は「火薬草」の近縁種にあたるらしく、実が熟して乾燥してくると、風にそよぐ摩擦で発火し、その空気圧でパチンと弾けて種を外に飛ばす。
ちなみに、可燃性なのは乾燥した果肉部分なので、殻と種、双方共に発火が可能である。

この「カラの実の殻」が通常弾Lv2の素材「カラの実」であり、外に飛んでいった「カラの実の種」が、通常弾Lv1の弾薬になる。
区別が面倒なのでごっちゃになっているのだが。

余談だが、この狂句は「実に中身が詰まってるのかどうかはっきりしろよ」的な意味の下句があり、「知らない間に消えちゃいました」「あまり要らない中身だったようです」と客が囃す事でオチとなる。


 *     *


「お待たせー。 …アンタ、もう来てたん? 準備えらく早いな?」
「ああ、一応ベテランだからな。 出発はいつでもOKだぜ」

クェル湾岸に現れたガノトトスを退治するため、待ち合わせ場所を決めた俺たちは、別に分かれて準備を始めた。
ビアンカは、そこらへんの露天商で回復薬やビンなどの資材を購入してきたらしいが、俺に特にやる事はなかった。
何せ、俺の準備はチェーンブリッツのメイン弾薬である、通常弾Lv1…。 カラの実の種を用意するだけだからな。

ギルドでもハンター向けに「カラの実」は栽培しており、殻は需要があるものの、実は殆ど需要ないので超投げ売り状態。
っていうかほぼタダであるため、それこそ何百発…いくらでも貰ってこれる。
俺の準備なんて、あってないようなもんだ。


「お前さんはどうなんだ? 粉塵とか準備してきたか? 秘薬の用意はOK?」

俺のポーチの中に「生命の粉塵」系のアイテムは(金銭の都合で)ない。
しかし、俺が戦力としてカウントできない今、非公式クエストに臨めば、ピンチはすぐさま死に繋がる危険性があるため、一応確認しておかなくてはならない。

「粉塵? 前衛居らんのやから、そんなもんイランやろ? 互いに隙ができたら回復すればええし」
「そ、そうだな、俺も全く同意見だ」

…こ、これだから脳筋ハンターは!!
そりゃ、これが非公式だって事はまだ伝えてないけど、通常の公式クエストでも何があるから分からねえんだから、いろいろと周到に準備しとけよ…!

と俺が内心でブツブツ言ってると、「潮騒の入江」亭の前に、指定時間通り、闇ギルドから斡旋された馬車がやってきた。
見た目は普通のギルドの馬車と変わらないのだが、御者の風体が明らかに一般人じゃないので、分かる人にはそれとすぐ分かる。

衆目的に、あまり馬車を長居させたくなかった俺は、ビアンカを促して馬車に速攻乗り込み、クェル湾へ走らせてもらうように頼む。
ちなみに、この馬車の代金はミルチという女に払った10000zの中に込みになっている。

闇ギルドの馬車の内装は、正規のハンターズギルドの馬車以上の豪勢な作りで、ソファも…雄ケルビの皮製だろうか、ふかふかでいい感じだった。

「ところでさ」
「何? ウチ、ちょっと休んでようかと思ってんけど」
「馬車の中で寝る気かよ」

確かにこのソファふかふかだし。
…じゃなくて、女のくせに、知らん男の側で良く眠れるな。
警戒心なさ過ぎなのか、それとも腕に自信があるからか。

「現場に着くまでは1日あんねやろ? ええやん、ウチちょっと今までいろいろあって疲れてん」
「疲れてる、って例の人探しでか?」
「せや。 で、何の用?」
「いや、クエストの確認をしておいた方が良いと思ってな」
「現地で言うてよ、お休み~」

そう言うなり、奴はシートのロックを外し、背もたれを倒して簡易ベッドにすると、こっちに背を向けてスヤスヤと眠り始めた。 …いいケツしてんな。

っていうか、JJという手厳しい教訓があったから、できるだけ事前にお互いの戦闘スタイルを含めた「情報交換」をしておきたかったのだが、これでは仕方あるまい。
本音としては、今のうちに右手の装甲を見せて「俺、戦力にはならないけれど、荷物持ちとして頑張るからよろしくな」と弁明したかったのだが、後回しだな。

それに、俺も金策の算段が着いて一安心したせいか、結構眠くなってきた。

「お客さん」

しかし、ビアンカが眠って一対一になったのを見計らってか、御者が唐突に俺に話しかけてきた。

「…何だよ?」
「いえ、よもや忘れてはないと思いますが、お借りあげ頂いた20000zの契約の確認を、と」
「…忘れてねえよ、金借りられるのは3日間、だろ」
「はい。 それに加え、利子が1割付くのを忘れずにお願いします。また延滞すれば、1日経つごとに、支払総額の1割を督促料として徴収させて頂きます」

俺は、思わずため息を付く。
分かっちゃいるが、これが商工組合の金貸しだったら内容の酷さに笑ってしまうぞ。

「…泣く子も血の涙を流す極悪非道ぶりだな」
「それだけのリスクをこちらも払っていますからね。 お互い持ちつ持たれつ、一般的なハンターさんが稼ぎ出せる金額の、妥当なラインで設定させてもらってるつもりです」
「…」

お前等はハンターやった事がねぇからそんな気楽な事が言えるんだろうがよ、と言いたいが…。

「何せ、ハンターズギルドのギルドナイト、特に処刑専門の連中に狙われたくはありませんからね。 貴方もそうでしょう?」
「…ああ」

以前に、大々的に密猟をやってたバカな連中が、ギルドナイトに誅殺され、噴水のオブジェになってたのは有名な話だ。

「今ではお互い同じ穴の狢ですから、波風を立てないようにお願いします」
「分かってるよ、皆まで言うない」

今更ジタバタしたって仕方ない、と思った俺は、シートを倒すと、開き直って目を閉じた。

「(…あー、ヤベェな、もし、この御者が変な気心を出せば、俺たちゃ明日にゃ身ぐるみ剥がれて海の底かもしれねぇな…。)」

寝付く前に、そんな事をチラリと考えたが、もはやどうでも良い気分だったのも、また事実だった。


<続く>
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モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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