女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(7)-2

「オヤジ、ホピ酒もう一杯」
「あいよー」

人の都合も知らず、カウンターのオヤジが景気のいい声を返してくる。 こっちゃ既に煮詰まってる、ってのに。
その後、俺は背中のチェーンブリッツを、ハイチェーンブリッツだとごまかしてG級クエストに同行させてもらおうと思ったが、悉く断られた。
どうやら下位武器だから、という訳ではないらしい。

「もしかして…」

「(チェーンブリッツだからダメなの…?)」

おいおい、それちょっと切ねぇだろうが…。
俺、案外好きな武器なのに…。
通常弾Lv1が5速射なんだぞ。

どっちにせよ、もうまともな方法では金稼ぎは不可能。
再びチェーンブリッツでハンター街道を昇ろうとしても、先にゴッドフリートの奴に見つかっちまう。

ならもう、非合法な方法しか、生き残る手段はない。
ハンターにとって、非合法ったら、アレに決まってる。

…密猟、だ。


とりあえず、まとまった手持ち金を作るために、俺は酒を飲んでいた。
読者諸氏には俺の行動は意味不明だと思うが、実はギルドカードを担保にして、金を借りる事ができるのだ。
もちろん公には認められていない、アンダーグラウンドな話だが。
他人のギルカにどんな価値があるのかと言うと、民間人でも公然と武器を所持できるようになる事。
つまり武器に関わるその筋の方々には、ギルドカードの携帯は業務上、非常に都合が良いのだ。

俺は周辺に要る酒場の給仕嬢の中で、特にだらしなさそうな奴を狙って話しかけていく。
(※それを見極めるために俺は酒を飲んでいた)

「なぁよぉ、姉ちゃん、俺今度、ハンター引退して、デカい仕事やりたいんだけどよ、どっか金貸してくれる所知らねぇ?」
「お金? そりゃアタイの方が知りたいよ」
「どこでも良いんだよ、多少危険な所でも。 こう見えて、オレ武闘派だからさー。 誰か、心当たりのありそうな人、知らないか?」
「うーん…。 アタイは知らないけど、ミルチ姉さんなら知ってるかも? おーい、ミルチー」

…蛇の道は蛇って訳で、地下金貸しはあっさり見つかった。
というか、そのミルチという酒場の女が、金貸しの情婦だった。 こりゃ都合が良い。

密猟を行うにあたり、もう一つ、法の抜け穴がある。
それは、「ハンターでない人間が密猟をしても罪に問われない」事だ。

厳密には罪に問われるが、地方の細々した自営猟まで、ハンターズギルドが管理・裁定できている訳じゃない。
よって、「生活を守るために、オラが村の力自慢が、モンスターっこを退治しただぁ!」という状態なら、軽い注意と資材の1割没収(罰金)くらいで見逃される。

ギルドカードを預けて、その間マルクというハンターは、武器の売買に関わる仕事をする。
…というアリバイを作り、別人になった俺は密猟で荒稼ぎする。

ここまで完璧だ。
相当に執拗な調査をしないと、俺の行動の裏は取れないので、予想外の出来事(クエスト途中で知り合いに合うとか)がない限り、上手く行くだろう。

で、ここからが難しい。
密猟をするにしても、肝心の良いクエストがあるか、が問題なのだ。
俺は「ギルカを貸してくれた金だけじゃ足りないので、密猟をさせて欲しい」とささやいて、そのミルチという女に、いくらか金を握らせた。

すると、ミルチは眉をひそめて

「それならさ、悪いけど非公式の方を受けてくんないかな」

と、そう言った。
ここで言う非公式というのは、言わずと知れた非公式クエスト。 未知のモンスターに対し、ハンターズギルドの後ろ盾なしで挑む、ついこないだやったソレだ。

「公式クエストで堂々と密猟されたら、斡旋したアタシたちにもお縄が飛んできちゃうから、ヤバいのはアンタの周囲だけで収めてくれないかな」

ミルチはにこやかな顔でそう言ってくるが、この提案には俺も二の足を踏んだ。
何せ、非公式クエストの危険度はハンパない。

「何かあるのか」

とはいえ、俺もえり好みできるような立場でないのは重々理解している。
進路は危険度を吟味してから決めよう。

「ガノトトス、っていう巨大な魚竜が出てくるクエストがあるよ。 あまりの凶暴さに、地元民で対処不可能になってる奴」
「ガノトトスが? なんだそりゃ? 上位か? G級? 何故ガノトトス如きに、そんな事になる?」
「そんな一遍に質問されても、わかんないよ」

というか、俺も意味が分からなかった。
ガノトトスは、ガンナーにとっては比較的、組しやすい相手だ。
ガンナーの多いこの地で、それが対処不可能な困難クエストになる、というのは合点が行かない。
だがしかし、俺たちガンナーにとって、ガノトトスは比較的狩りやすい相手。
これで募集を掛ければ、腕自慢たちが集まってくる可能性も高い。
なら、何か不都合な点…たとえば、G級2頭クエストとかだったとしても、連中の力押しで突破できなくなないかもしれない。

甚だ他人任せな計算だったが、とにかくガノトトスが相手という点にはうま味がある、と思った俺は、その非公式クエストを受注する事にした。

「オッケ、じゃあ、アンタのギルカ預かるね? えーと、マルク、って読むの? G級ハンター、ライトボウガン使い…とりあえず、貸すお金は1000zくらいで良いかな?」


 *      *


俺はそのミルチという酒場女を怒鳴りつけ、上限額の20000zを借りた。
足下を見られたのかもしれないが、たった1000zを借りた所で何ができる訳ねーだろ、バカなのか?

とりあえず、まとまった金ができた俺は、非公式クエストの受注権を10000zで買った。
これで、報奨金の額や募集の案内文まで、一切合切を俺が決定する事ができる。

今、残る手持ちは16000zほど。
G級なら15000zの報奨金額が妥当だろうが、もし上位クエストだった場合が痛い。
なので、俺は報償金額を7000zと設定し、上位ガノトトスの単独狩猟…と設定した。

G級2頭だったらどうすんの、とか内心思ったが、まぁガンナーは当たらなきゃどうって事ない。
それに、上位なのにG級クラスの戦闘力なら「ディアソルテ(俗称:マ王)」って前例もある。
腕自慢の連中が集まれば平気だろう。

「(ガンナー、か…)」

同じガンナーでも、ボウガンナーは経費が嵩む。
対して、弓師はそんなに経費が掛からない。
落ちてる矢をリサイクルして撃つ事ができるからだ。

すこし悩んだが、

「上級弓師限定! 選民歓迎!」

という参加条件を書き足した。
「選民」ってのは、弓師の間でプロハンターを意味するスラングで、つまるところ「弓の腕に自信あるなら、このクエスト受けてみろよ」的な煽りだ。
これで本当に超絶な上級選民様が、経費を掛けずにパパッとガノトトスと退治してくれる事を願うぜ…。

こうして俺は

「上位ガノトトス単独、弓師限定の腕試しクエスト! クリアした暁には何かあるかも!?」

というイベントクエストを張り出した。
何かある「かも」なので、実際には何もなく、強いて言えば、俺が資材を持ち逃げするエンドがサプライズのイベントだ。

掲示板に張り出した募集のポスターを見て、その出来映えに満足した俺は、手元に残った8000zを眺めると、

「オヤジ、ブレスワインいっちょ」
「あいよー」

と、もう一杯酒を頼んだ。
もちろん、計画が上手く行ってる自分へのご褒美だ。

借りた金で酒飲んでんなよこのカスが、というツッコミは禁止だぞ。


 *      *

「(何でだよ…)」

俺の計画の中では、ガノトトスという美味しいクエストを見て

「よっしゃ、いっちょ軽く調理しちゃいますか! 今夜は朝まで魚のムニエルだ!」

と、上級選民様が俺のクエストに大挙して集まるはずだったのだが、予想に反して、全く人が集まらなかった。
2時間経っても、一件の打診もない。

…報奨金を7000z、という微妙な額にしたのがマズかったか。
それとも、やっぱこの土地では、ボウガンナーの数が圧倒的過ぎたか。 弓師ってホントに数少ねぇのかよ、クソッ!

しかし、焦っていても仕方ない。
ここは我慢だ。

「オヤジ、ブレスワインもういっちょ」
「あいよー」

とにかく俺は、ちびちびとブレスワインを飲みながら、打診があるのを待つ。 

…ここ半日が勝負か。
ハンター連中の層がまるごと入れ替わっても、打診がなけりゃ、条件を書き直さなくちゃなぁ…。 にしても…。

俺は、ズシリと重たい右腕を見る。
そこには、JJが「呪われし王者の小手」と言っていた、重厚な意匠の小手があった。

…こいつが曲者だった。
改めて言うまでもなく、これは剣士用の小手(アーム)で、ガンナー用の小手(ガード)じゃない。
俺がチェーンブリッツを持って戦闘をしない理由は、武器が弱いという理由もあるが、剣士用の装備は基本的に全ての部位が肉厚なので、ガンナーに不可欠な「指先の細かい作業」が凄くやりにくいのだ。 
端的な話、銃爪に指をかける事すら難しい。
あと、重い。幾度も銃を構えていると、徐々に疲労で右腕が下がり、知らず照準がズレてくる。

どっちにせよ、今の俺が戦えないという事実には変わりない。 JJの奴にもう一度逢って、この鎧の外し方を教えてもらいたい。
でないと、ゴッドフリートの奴が、喜々として、俺の右腕を切り落としに来るだろう。

「(冗談じゃねぇぞ…)」

弓師連中は何見てんだよ、早く俺のクエストに注目しろよぉ! 
と、内心で毒づきながら、俺はワインをあおる。
その時、俺が弓師の事ばかり考えていたせいか、隣の連中の噂話がふと耳に入ってきた。

「…聞いて驚くなよ、俺、あの『ササミ=リュシェン』に逢ったんだよ!」
「うへぇ、マジかお前! あの伝説の弓師にか? 手配書、本当だったんだな!」

何だか、年若い二人のハンターが、興奮しながら話をしている。

…伝説の弓師? 『ササミ=リュシェン』って、あの『笹神龍心』? まさかだろ。

ハンターの英雄伝説は、一通り暗記している俺の記憶によれば「笹神龍心」ってのは、遙か東方、シキ国に名を轟かせる伝説の弓師だ。
その偉業が、狩人の中に広く知れ渡っている事により、ハンターの中でもさらに別格扱いされる事は、たまにある。
今は消息不明の「A GUNNER」もそうだが、笹神龍心もいわゆる「レジェンドハンター」の中の一人だ。

生きていたのか…。

だが、本で読んだ、ロンバルヴィア坂の激闘の時、既にかなりの年齢だったはずで、今彼が生きていれば、相当な高齢のはず。最低でも70は過ぎている。
その話、どう考えても眉唾じゃないのか?

「ど、どんな見た目だったんだよ?」
「ほら、そこに手配書があるだろ? その手配書まんまの格好だよ!」
「おいおい、そんな訳ねぇだろ…。 『笹神龍心』って、もっと昔の時代のハンターだぞ? アレと同じ姿してる訳ねーじゃねーか」
「え、そうなの?」
「だよ。 アレは戦記物語の挿し絵そのままで、実物はもっと年喰ってるはずだぜ? …お前が見たの、それホントに笹神さんかぁ?」
「見たって! 間違いなくマジモンだよ! ちゃんと弓使ってたし!」

俺も壁側を見ると、なるほど確かに「ササミ=リュシェン」という手配書が貼ってある。
ああ…。 これ「笹神龍心」のつもりだったのか。
しかしまた、ギルドは何で、あの英雄を…。
えーと、何々、…テロリスト? に仕立てあげてるんだ?
しかも、似顔絵が挿し絵とか、仕事雑過ぎるだろ。

「っていうか、お前そんな事も知らないで『笹神龍心』を語ってた訳? もしかして『千人射抜き』すら知らねぇんじゃね?」
「知らなくて悪いかよ! ってか、ササミってどんなハンターなんだよ」
「ササミじゃなくて笹神」

隣の席の若いハンター二人が「笹神龍心」についての話題を続ける。
それが気になって、俺もちょっと耳を傍立てていたが…。

「ま、『千人射抜き』は当然として、『兄弟国』や『鉄槌と岩山』くらいの逸話は、できれば知ってて欲しいところだな」
「お前、どんだけ笹神マニアだよ」

連中、自分でマニアとか言ってるが、戦記物語に掲載されている、割と普通めのエピソードを、さも凄そうにご披露している。

「でだ、笹神龍心は、一騎打ちをしている二人の国王の武器を、弓矢で同時に打ち砕いたんだよ」
「嘘付け、二つの武器を別々、かつ同時に打ち砕ける訳ねーだろ! それ、凄い神業じゃねーか」
「笹神龍心なら、それをやってもおかしくないんだよ。 なんせ、世に聞こえた『弓皇翁』だからな」

俺は連中の話を聞いて、苦笑する。
若い奴らが、偉大なる先人・笹神龍心に興味を持つってのは微笑ましくもあったが、せめてマニアを自称するなら、戦記物語に載っていない「神風奉君(しんぷうほうくん)」「彼岸問答(ひがんもんどう)」くらい調べてから蘊蓄を垂れて欲しいもんだな。
「兄弟国」くらい、俺に言わせりゃ基本中の基本だ。

まぁ結局の所、そいつらが見た笹神は別人らしい。
話は笹神のトンデモエピソードに移行したため、こいつらの話は聞く価値なし、と判断した俺は、耳を傾けるのを止め、酒席に戻ろうとしたのだが…。

その瞬間、目の前の光景の素晴らしさに、一瞬視線を釘付けにされてしまった。

おっぱい!


<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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