女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(6)-11

場所は「雲龍の宴」亭にて、黒龍騎士団長である「シャルル=サンドリオン」は、紅龍騎士団三番隊【エルムザ】の面々と交戦中し、部隊を壊滅状態に至らしめる。
全滅を恐れた隊長・ヴォーデンは、シャルルを倒すために黒龍の鎧を装備するが、戦闘の最中、ヴォーデンの意識の中に、クリス王子が割り込んできた。
彼はどういう理由か、シャルルを発見するや、救助を依頼してきた。 イルモードはクリス王子を殺し、この国を乗っ取る気なのだ、と…!

 *     *

片手剣を持ったヴォーデンが、シャルルの方へ幽鬼の如く近づいてくる。

「…逃ゲなイデくれ、しゃルル。 お願イダ」

距離を取りつつ、様子を観察するシャルル。
ヴォーデンは距離を詰めつつ、なおも続ける。

「イルもードは、僕を殺そウトしテイルんだ」

シャルルは、皮肉な微笑みを浮かべながら言う。

「…ヴォーデン、演技が下手ね。 そう言いながら油断させてバッサリ、のつもりなんでしょう?」



一瞬、ヴォーデンの動きが止まる。

「…お願イダ、シャるル…。僕はマダ、死ニタくナイんだ…」

「私を殺せば、貴方も生きてはいられないわよ。 王子にそう忠告されていないかしら」

しばらく、間があり…。

「クッ…。 …よく見破りましたね、シャルル将軍」

「『練気』のできない貴方には、鎧の励起状態が見極められないみたいね? 一つ忠告しておくけど、黒龍の鎧の力は、使いすぎると王子のように、自分の命を縮めるわよ。 早く城に

戻って、イルモードにその鎧を外してもらうべきね」
「…私を見逃す、と仰るのですか」
「というより、この時点で既にオーデトワール(詰み)なのよ」

シャルルは一つため息をついて言う。

「もう、その鎧を回収する事は、私にはできない。 何故なら、その鎧を私が回収するには、貴方と闘って気絶させ、貴方の足を…」

そこで、シャルルは大剣をぶん、と振る。

「…するしかないもの」

ヴォーデンは、なんとも言えぬ表情を浮かべる。

「…将軍が全く攻めてこなかったのは、それが理由ですか」

シャルルが曖昧にうなずくと、ヴォーデンの表情が、より複雑な色を帯びる。
黒龍の鎧を装着し、生死を賭けた戦いに挑んでいたというのに、相手から情けを掛けられていたというこの状況を、どう解釈すべきか整理しかねているのだろう。

「…どういう意味であれ、私を倒せない、と。 なら、それは私が勝った、と解釈してよろしいのですか」
「いいわよ。 それで貴方に勝利の実感があるかどうかは、また別の話だけど」

どういう理由か、鎧の暴走状態は嘘のように鎮まっている。
シャルルの目的は持久戦だった。
だが、鎧が鎮静化し、装着者の命を削る速度が遅くなってしまったので、ヴォーデンを気絶させることは困難…。 いや、不可能と判断した。
そこで、彼女は即座に「交渉戦」へと戦略を切り替えたのである。

ここで最も恐れるべきは、ヴォーデンが無謀な戦闘の継続を計る事。
今、ヴォーデンとシャルルの戦闘能力は拮抗している。
激闘の末、二人共々に倒れるという結末こそ愚の骨頂であり、最も避けたい展開。
何故なら、ヴォーデンが倒れても、部下が鎧を回収して持っていくからだ。
対してシャルルは、何が何でも生き残らなくてはならない。

「王子の傍仕えをしていた私の経験から言うなら、その鎧が、貴方の残った生命力を食らいつくすまで、多めに見積もっても、あと2日程度しかないわ」
「…そ、それは本当ですか」

嘘である。
シャルルには、目の前で黒龍の鎧に食われて死んだ者を見た経験はない。
王子や自分の消耗度合から適当に捻りだした数字である。
だが、あと2日という余命宣告は、たとえハッタリだと分かっていても、動揺を促すには十分なはず。

「貴方に鎧を奪われたのは仕方ないわ、私の力量不足よ…。 でも、ヴォーデン、この次はこうはいかない。ユリウス王子を貴方達より早く探し出して、反撃の糸口にさせてもらうわ!


「…そ、そうはいきませんぞ! ユリウス王子を捕縛するのも、我々だ、シャルル将軍!」

そして、功名心を煽る事で、「次」の機会に備えなければ…という気持ちを抱かせる。

正直、この場にイルモードが居たら、ヴォーデンに名誉の戦死を命令しただろう。
あるいはヴォーデンに、まったき正しい滅私報国の精神があったなら、我が身を犠牲にして鎧を取り返す選択をしたかもしれない。

だが、数々の修羅場をくぐり抜けてきた経験の絶対的な差か、それとも軍神に愛された者ならではの強運か。

「…今回は鎧の回収をしただけで良しとしますが、次はさらなる援軍と共に、貴女の首を取りに参りますぞ、シャルル将軍」

シャルルは遂に、紅龍騎士団の自発的な撤退を引き出した。

「いつでもどうぞ、待ってるわ」
「…全員、撤退ッ!」


それから30分もの間、紅龍騎士団の撤退を、シャルルは鬼のような表情で、抜かりなく観察していたが、最後の一人が完全に撤退した…と確認してから、しばらくして。

「ぷはぁ…。 助かったぁ…」

大剣を杖代わりにして、よろよろとその場にへたり込んだ。

「だ、大丈夫かっ…!? リズ姫!」
「リズにゃん、大丈夫ー!?」
「リズ殿、お怪我はござらんかッ!?」

目の前の、この大剣を操る女性は、泣く子も黙り、鬼をもひしぐこの国最強の部隊・黒龍騎士団…その団長。
驚愕なのか畏怖なのか、誰もシャルルに寄ろうとする者はいない中、例の3人組だけが、速攻でシャルルに駆け寄る。

「あ…ありがとう、貴方達のおかげで、本当に助かったわ」

ディルガーウェンの差し出された手を掴んで、老婆のようによっこいしょ、と立つシャルル。
何せ、騎士団の10人斬りから、反逆魔ゲオルグとの戦闘、そしてさらに黒龍の鎧を相手にしての戦闘と、密度の高すぎる大連続狩猟を終えたばかりなのだ。
多少みっともない姿を晒した所で、軍神も見ないふりをしてくださるだろう。 多分。

「とと、ところで、貴女は、その…」
「ああ、ごめんなさいね、リズとかいう偽名使ったりして」
「…と、と、いう事は、アレは…ハッタリや話の勢いとかじゃなくて、やっぱり…本当にゃんですか?」
「ええ、さっきも言ったけど、バルベキア三国王直属近衛兵・黒龍騎士団団長『シャルル=サンドリオン』が、私の本当の名前」

「あ…う…」

にこやかにそう言われ、微妙な表情を浮かべる三人。
シャルルは、左拳を腰に、右の手刀を胸に当てる「騎士礼」のポーズを取ると、

「貴君らの奉剣、その深甚なる処、軍属の範たりえ、名誉に値する物也…。 助力、誠に感謝する」

上位軍人として、古式正調の礼に則った感謝の言葉を、三人に贈った。

「…ぼ、僕ら軍人じゃないんだけどにゃん…」
「御指示頂いた、鎧も回収できなかったでござるし…」
「そ、それに、知らなかったとは言え、酒場での、数々の非礼をどうお詫びするべき、かと…」

普通、軍人に対して侮蔑の言葉を浴びせていれば、その場でいきなりの制裁を受けても文句は言えない。
だが、シャルルの場合は、とても軍属とは思えない格好をしていた…というか、どこからどう見ても、酒場の給仕嬢としか思えなかった。
ある意味「罠」みたいな物だが、結果的に三人の処遇はシャルルの思惑一つである。

「いやぁ、そんな事気にする必要ないわよ! 鎧を奪われたのは残念だったけど、あの状況では仕方なかったし、酒場で働くのも、これはこれで結構楽しかったもの! 狩人同士の屈託

のない話も、久しぶりに楽しめたしね」
「え、そ、それじゃ」
「ええ、今までどおりの喋り方で結構よ。 それに、私も『元』団長、って言った方が正確かもしれないしね」
「よかったでござる~、リズ…いや、シャルル殿!」
「なら、新しい呼び名は、シャルにゃんで良いかにゃん?」
「名が変わっても、貴女の本質には変わりない…! これからも、我々は貴女をお慕い申し上げる…!」

シャルルの許しを得た事で、一気に3人の様子がほぐれ、笑顔が戻る。

「あ、それで、貴方たちに聞きたい事があったんだけど」
「な、何でござる? あ、もしかして笹神殿の話でござるか!?」
「うん、それは後からたっぷり聞かせてもらうとして」
「もしかして、僕たちの実力とか?」
「…まぁ、それは、いつか機会のある時に聞かせてもらうとして」
「じゃあ、一体何が聞きたい…と?」

そこでシャルルは、全身から静かな闘気を放出させつつ、にこやかに質問した。

「…誰が、伝説の原始部族アマゾネスなのかしら?」

「…ウワァ」

もはや言葉にならぬ悲鳴を口中であげ、みるみるうちに青ざめていく3人組。
世に聞こえた黒龍騎士団の、極悪非道な弾圧ぶりを彼らが真に知るのは、まさにこの後だった。


ここで、またも場面は変わる。
ノーブル城から離れた、例の廃闘技場…。
黒龍の鎧の人体実験、その試験場と化したその場所には、多数の兵士と囚人が送り込まれていた。

「今回は、事前に調査は済ませているんだろうな」
「もちろんでございます」

前回、無作為に鎧を装備させてみた所、意外に「適性」を持つ人間が多い事が分かった。
そして、装着する人間の資質によって、効果に大きく差が出てくることも。
しかし、何が「適性」たりえ、何によって「差」が生じるのか、その部分は未だ不明だ。

「こ、ここに手を触れればよろしいのですか?」
「そうだ、場合によっては痛みを感じるかもしれん! その場合は、即座に手を引き抜くように!」

なので、囚人と兵士達全員を使った「適性検査」を行う事にした。 
鎧の内部…。装着者の血液を吸い取る、例の海綿状の内壁に手を触れた時、適性がある人間は、「棘」にて血を吸われる。
ならば、接触面積を最小限にする事で、適性を確認できないものだろうか?という疑問を抱いたイルモードが、実際に試してみた所、期待どおりの効果があった。

「イタッ!」
「手を引け! 28番、どうか! 手を見せろ!」

検査では、偽装して壷みたいな外見にした「黒龍の兜」の内壁に、ちょっとだけ指先を触れさせている。
適性がある人間は、今の被験者のように、鎧が反応して、血を吸うために棘を延ばす。

仮に、どんなに想定外の結果が起ころうと…。
例えば、王子以上の適性を持つ人間が現れ、指先が鎧から剥がれなくなったとしても、その時は被験者の指を切断すれば良い。そういう思惑だった。

「43番、前へ!」
「は、はい…」
「どうだ、中に手を触れて、痛みはあるか」
「い、いえ、何もありません」
「全くか」
「はい」

受付の兵士が、さらさらと実験結果をカルテ(身元調査書)に記入し、別の兵士に渡す。

「下がってよし! 44番、前へ!」

実際に鎧を装備しなくては、鎧との親和性…どこまでのレベルで、鎧の力を引き出せるかは分からない。
だが、これなら王子に実験内容を悟られる可能性はないし、最低限の適性だけは計れる。
「黒龍の鎧」の力を軍事目的に転化するに当たって、「適性者」のリストを作っておく事は非常に有益なはずだ。

だが、こうして見れば、やはり思っていたよりも、「適性者」の数は多い。イルモードが見る限り、反応の大小はあれど、半分程度の人間が該当しているような気がする。

「宰相、ちょっとよろしいでしょうか」
「何だ」
「今までの結果を見ていて、ちょっと気になる点がございます」
「何だ、何が分かった」
「ええ、今まで、我々は囚人を使って実験をしてまいりましたが、それは案外に正解だったのかもしれません…これを」

そう言うと、カルネラ大臣は、まず大きく「兵士」と「囚人」の二つに、カルテを分ける。

「そして、この二つのグループを、それぞれさらに、『適格者』と『非適格者』に分けますと…」

「…! これは…!」

囚人の「適格」率が、兵士のそれを上回った。

「そして、カルテにおける、適格者の過去の履歴を見ると、何か共通する事がお分かりになりませんか…?」

イルモードは、適格者のカルテに目を走らせる。

「これは…。 鎧は『勇猛な者を選んでいる』のか?」

「そう読みとれなくもございませんが、この私めも鎧に『適格』と選ばれておりますし、クリス王子もそうでございますゆえ、それが鎧の判断基準とは思えませぬ」
「じゃあ、何だ」
「それをお伝えするために、お耳を拝借できれば、と。 私の考える仮説は大変失礼なもの故、宰相のみにお伝えしたく思います」

イルモードは何も言わず、カルネラ大臣に耳を寄せる。

「…なるほど」
「いかがでしょうか」

イルモードは、皮肉な笑みを湛えて言う。

「俺は犬畜生で、貴様は腹黒狸、という訳か」
「そういう意味合いで申した訳ではございません」

返事を返すカルネラ大臣も苦笑する。
だが、イルモードは真剣な顔を作ると、再び実験場の方を向いて言う。

「だが、可能性をそれだけに絞りきる訳にもいかん。検証する必要はあるな」
「検証? いかにしてでしょうか?」
「貴様の仮説が真であるなら、次の実験対象には、人畜無害な連中を選ぶべきだ。体格の良い農民、なんてのはどうだ」
「ご理解頂き、ありがとうございます。 しかしそれなら、比較対象に、まず我が城の下女で試してみてはどうでしょうか」

それを聞くと、イルモードは愉快そうに笑う。

「ははは、それは妙案だな! だが、エミネムの婆がまた顔を赤くするぞ、約束を破る気か…と言ってな」
「いえいえ、おそらくですが、結果は空振りに終わります。 命の危険はないのですから、そもそも約束にすら該当しませぬ。 …それに」

「エミネムはおそらくは交渉に応じる事でしょう」
「何故だ」
「エミネムは、下女全員の命を守るために、シャルルを見殺しにする、という我らの取引に応じています。 シャルルなら生き残る、という確信があったのかもしれませんが、エミネム

は自分の信念で動く訳ではなく、数ある選択肢から、最良な可能性を引きだそう、とするタイプです」
「つまり」
「別に新たな選択肢を用意し、彼女の魂が『私はベストな選択をした』という言い訳する機会を用意してやれば良い、のです」

ふむ、という表情をして、イルモードはカルネラの発言を理解しようと努める。

「妥協する人間は、結局は初志貫徹できない…。そういう事か」
「仰るとおりです」

イルモードは、またも屈託なく笑う。

「物事が、自分の思い通りに進むというのは、なんとも心地よいものだな、カルネラ」
「当然でございます…。 我々は、決して妥協せず、国の安定のために、文字通り全身全霊を尽くしておりますからな」
「全くだ」
「これで、残る鎧の部分が集まる事で、我らの計画も順調に推移する事でしょう」
「こうしてみれば、王子の持つ『胴』『腰』を、奴に持たせておくのも惜しいな…。 いっその事、計画を早めるか」
「それは早計でございましょう。 生活力が皆無のクリス王子だからこそ、この城に居ざるを得ない、という側面がある事をお忘れなきよう」
「それもそうだな」

イルモードとカルネラは、眼下で順調に進む適性試験を眺める。

彼らにも、おおよそ「鎧の選別基準」が分かってきている。
ある特徴を持つ人間なら、適性の有無は見て分かるようになってきた。
もう実験を止めても良かったのだが、囚人と兵士達が、次々に並び選別を受ける様は、彼らの推測が正しく、またその行為を繰り返し祝福するものに思え、イルモード達は眼下の光景を

、いつまでも愛でるように眺めていた。

<続く>
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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