女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(6)-10

テネス村は、カルネラ大臣が組織した警邏組織、「紅龍騎士団」二番隊【ナクム】に襲撃を受ける。
その目的は、失踪したユリウス王子の追跡。
だが、その隊長である「ゴッドフリート・ピスカードル」は、隊を潤すために、軍属でありながら、山賊同様の略奪行為を行っていた。
蹂躙される村人達を見て、マルク=ランディッツは阻止に入るも、隊長警備兵「ヘルシャフト」からボウガンを徴発され、殴打されて意識を失う。

そしてヘルシャフトは、被疑者であるマルクのアイテムポーチをまさぐって、遂に「黒龍の鎧」の右腕部分を見つけだす。
これぞユリウス王子がこの村に立ち寄った証拠、とゴッドフリートに報告した瞬間。

気絶していたはずのマルク=ランディッツが、やにわに起き上がり、「黒龍の鎧」の右腕を奪い取り、体を丸めて抱え込んだのだ。

  *      *

「き、貴様ッ! まだ意識があったのかッ!」
「何をしてる、ヘルシャフトッ! さっさとそいつから鎧を奪い取れッ!」

ゴッドフリートの叱咤を受けると、ヘルシャフトは返事の代わりに、体を丸めたマルクの上に覆い被さり、右腕をマルクの喉元に通すと、力任せに喉を締めあげた。

現代で言うところの、いわゆるチョークスリーパーが、気道と頸動脈をまとめて圧搾する。
軍隊格闘の常識から言えば、チョークが完全に決まれば、どんな猛者でも20秒ほどで意識は消失し、2分半で帰らぬ人となる。

さっさとマルクを落として鎧を回収する。場合によっては死んでも構わない、と思ったヘルシャフトは、チョークの状態のままマルクの体を強引に起こし、宙づりにした。


だが、その時。

ヴォ…。 ヴル…。

どこからか、獣の唸り声のような声がした。

ヴォル…。 ヴルル…。 ヴルルヴァ…。

近い。
そして、すぐそばに迫ってくる、この圧倒的な殺気。
殺気の出所が分からず、村長宅の周りにモンスターでも出たのかと、周囲を見回すヘルシャフト。

「うぐあっ!?」

その瞬間、右腕に走った猛烈な激痛。
マルクに噛みつかれたのか、と思ったが、そんな甘いホールドはしていない。
一体何事かと、視線をマルクに戻すと…。

「うわああぁぁああっ!」

ヘルシャフトは、思わず右腕を解き、拘束を解除しようとしたが、その右腕はしっかりとマルクに握られていた。

マルクの表情は白目のまま、口角を一杯に釣り上げた凶相で、その顔面には…いや、全身に血管が一杯に浮いている。

その変化ぶりに、腕を払って距離を取ろうとするものの、捕まれた右腕は頑と離してもらえない。
見ればマルクは、いつの間にか「黒龍の鎧」の右腕部分を装備しており、その鉤爪のような五指が、自分の太い右腕にガッチリと食い込んでいた。

もちろんヘルシャフトも、鎧の小手は装備している。
それごと変形させる尋常ならぬ握力を見て、これは危険だと直感し、変形(へんぎょう)したマルクに蹴りを入れ、距離を取ろうとしたその時。

みきっ。

材木を押しつぶすような鈍い音とともに、あっけなく彼の右手首が折られた。
鎧ごと。

「ぎゃあ、あああああーーーっ!!!」

ヴォア、ヴォルル、ヴォルルルルルルル!!!

マルクは、右腕から手を離すと、反射的に折れた右腕を抱え込もうとするヘルシャフトの顔面にパンチを叩き込んだ。
ヘルシャフトはマルクより頭一つ背が高いため、マルクのパンチはヘルシャフトの顎を捉え、顔下半分の骨を粉々に粉砕しながら、彼の体を数m先へと吹き飛ばした。

「な…!?」

一瞬の出来事に、何が起こったのか理解できないゴッドフリート。
しかし、目の前に居たのは、もはや彼の知るマルク=ランディッツではなく、もはや別の何か…。

例えて言うなら、一匹の悪魔そのものだった。
彼は、紅龍騎士団の赤い鎧を見るや、飛びかかって鎧の上からメチャクチャに加撃し、床や壁に部下をめり込ませ、大量の血ヘドを吐かせたのだ。

「き、貴様ぁあぁあああーーっ!」

仲間の惨劇に、激昂した騎士団の連中は、武器を片手に四方から切りかかる。
しかし、またも想像外の光景に、ゴッドフリートは驚愕する事となる。

マルクの腕から生えた「棘」が伸長し、襲いくる隊員の片手剣を、悉く絡め取ったのだ。

「うおおぉぉおーーーっ!」
「ぎゃあ、ぁぁああーーッ!」

剣を絡め取られたまま、次々とマルクにブン殴られて、血しぶきを盛大に上げながら地に伏す隊員たち。
ボウガンを装備した隊員が、マルクめがけて狙撃するも、それすら「棘」に阻まれた。

「ぐあああっ!」
「ぎゃああーっ!」
「いやぁーっ!」
「うわわああぁーッ!!」

猿(ましら)の如く室内を駆け回り、次々と隊員を血の海に沈めていく光景に、村人までもが悲鳴をあげていた。

「隊長、ここは危険です! 標的には、攻撃が通用しませんッ! 撤退しましょう!」
「…!!」

ゴッドフリートはマルクを凝視する。
勝利の凱旋行となるはずが、マルクが「変身」した事で、状況が一転してしまった。

原因は…。 マルクが右腕に装備している、あの鎧。
カルネラ大臣から説明した「黒龍の鎧」の力だったが、まさか誰でも装備が可能で、しかもこんな威力が発揮できるとは聞かされていなかった。
それを知ってさえいれば、もっと違う準備ができたのに。
よりにもよって、あの落ちこぼれマルクなどに、こんな目に合わされるとは…。

「隊長! 鎧が惜しいのは分かります! しかしここは一時待避して、援軍を!」
「…くっ! 総員、待避! 撤退するぞッ!」

だが、ゴッドフリートは、状況の圧倒的不利を判断するや、これ以上の被害を出さないために、即時撤退を判断した。
…だが、その時もう既に、動ける兵は半分にも満たなかった。


ここで、場面は変わる。
ノーブル城の自室にて、ヴォーデンの意識を借り、シャルルに助力を求めていたクリス王子の意識の中に、突如、第三者の意識が飛び込んでくる。

「ぐがっ…!?」

シャルルと酒場の光景は消え、脳内に新しく映る光景は、民家の如き室内の風景、大勢の人々、紅い鎧の兵たち。

それらの要素が、今まで見ていた酒場の風景とどこか似ていたため、どうやら別人の、しかも別の場所の意識であるという事に気づくまで、多少の時間を必要とした。

「(ユリウス…? いや、違う、誰だこれは…!?)」

脳内で繰り広げられる、圧倒的な暴力シーン。
怯える村人を後目にして、紅い鎧の連中を素手で殴り倒し続ける光景。

自分とシャルル以外で、黒龍の鎧を所持している人間は、イルモードか、弟であるユリウス王子しかいない。

だから最初はこの人物が、ユリウスなのかと思った。
イルモードに追いつめられ、遂に鎧の力を発動させたのかと。
実際、視界の端々に、「棘」を発露させている、黒龍の鎧の右腕部分が見える。
これはユリウスが戴冠式の際、持って逃げた物に間違いない。

だが、この人物をユリウスと判断するには、かなりの違和感があった。
というのも、兄の視線から言うのも何だが、弟・ユリウスは、きかん坊のやんちゃ者だが、その精神の潔癖性と、理想に掛ける情熱、そして目標に向かう鋼の意志とたゆまぬ努力は、兄

としても認めざるを得ないほどに鉄壁で、頑強なものだった。

何年も見てきた弟。

自分とは全く別種の存在の弟。

自分とは違う場所に住み、生きていると思った弟。

兄より優れた弟。

しかしその弟が、これほどまでに醜く感情をむき出しにし、殺意と害意を前面に押し出して、敵意を失った兵士ですらボコボコにするというのが、クリス王子には信じられなかった。

これは、まるで。

これでは、まるで…。

「僕みたいじゃないか…」

敵を攻撃する際、狙う場所は悉く急所、あるいは剣を持つ左腕。
敵意を失った兵士すら殴打して気絶させるのは、後ろから襲われる可能性を徹底して摘み取るため。

クリス王子には、この鎧の装着者の意図が、手に取るように分かる。

この鎧の装着者は、徹底した臆病者で卑怯者。
だから、相手の害意を決して許さない。
だって、自分が攻撃されたくないから。

それが身に染みるほどに理解できる。
それ故に、クリス王子には、この人物が弟・ユリウスだとは、どうしても思えなかった。
クリス王子の人物眼が節穴で、実は似たもの兄弟だったという可能性もあるが、それこそ願い下げだった。

ならば似ているはずの兄弟で、何故あれほど才能の差がある?
僕の人物眼は間違っていない。
こいつは…。 ユリウスの鎧を装備しているこいつは、だが絶対に別の人物だ…!

さっきから、この鎧の装着者に呼びかけるが、返事の気配はない。 意識の混濁ぶりからして、どうやら気絶しているらしい。

…にしても、何故、これほどまでに脳一杯に、この男の意志が響きわたるのか。
あまりのむき出しにされた敵意と、延々続く惨劇、うめき声と叫び声の連続に、さすがのクリス王子すら、食傷を覚え始めた。

さっきまで、他の「適格者」の声など、簡単に遮断できたはず。 黒龍の神官は、他の「適格者」の精神に干渉できる、と分かったばかりなのに…。

そんな不満めいた思考を泳がせた瞬間、ある一つの可能性が、唐突に思い浮かぶ。

「(え…? い、いや、待てよ…? バカな、そんなバカな!)」

その考えに至った瞬間、圧倒的な恐怖が全身を襲う。

「ありえない…! そんな事は、絶対にあり得ない!」

身を襲う恐怖に、思わずそんな言葉が口をついて出た。

確かめなくては。
嘘だ。嘘に違いない。 
いや、僕の勘違いに決まってる。
僕は、僕こそが…、黒龍の神官なんだ!

心中でそう絶叫し、クリス王子は、心に広がるこの第三者の意識を締めだそうと必死になった。
だが彼が「それ」をどんなに願おうと、結局、部隊が半壊し逃走するまで、その惨劇の映像は続いた。

<続く>
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*Comment

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初コメントいたします。次回も楽しみにしています。なるべく速くつづきを。。。よろしくお願いいたします。
  • posted by kazundou 
  • URL 
  • 2012.11/06 02:33分 
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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