女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(6)-9

シャルルを倒すために、黒龍の鎧を装備したヴォーデン。 
だが彼の鎧への適性は、王子のそれに匹敵するものだった。
となれば、鎧をシャルルが回収するためには、必然的にヴォーデンと戦って勝ち、気絶させるより方法がなかった。

 *        *

「(生身で…。 …しかも『神官』を相手にして?)」

背筋をそんな、うすら寒い考えが通り抜けていく。
それは限りなく不可能だ。

かつて、自分が王子を相手にし、まがりなりにも互角に戦えたのは、こちらも鎧の力である「自動防御」や「害意の察知」を発動させ、窮地を逃れたからだ。
しかし、今度はそれがない。
かの凶将軍、「ギルモア=ソースクラブ」ですら、本気を出した王子の前では、まともな戦闘にはならなかった。

脳内でどんなシミュレーションをしようとも、こんな薄着で王子クラスの「適性者」を相手にしては、棘に絡め取られ、斬撃を浴びて真っ二つになる状況しか想像できない。

「いくぞ、シャルルッ!」

ヴォーデンは、片手剣を振りかざすと、シャルルに襲いかかってきた。

「!!」

驚愕すべきは、その速度。
斬撃の間合いからは四歩半以上離れていたのに、その遠間を一瞬で詰めてきた跳躍力。
ジャンプ切りの踏み込み速度は、シャルルのそれを、圧倒的に上回っていた。

「ぐっ!」

大剣の分厚い刀身で受ける事で、ガードは可能だったものの、それはゲオルグの一撃よりも遙かに重い攻撃。
足捌きだけでは威力を殺しきれず、シャルルは自ら地面に転がり、体勢を整える。

この状況でなら、ヴォーデンには「逃げる」という選択肢もまたある。
自分だけ脱出し、鎧の奪取を報告する、という。
だが、わざわざ自分に攻撃を仕掛けてきたと言うことは、さらなる手柄として、自分を倒すつもりなのだ。
遙か格上だった自分を倒す、という無謀な選択をさせるほどに、あの鎧から得られる力は圧倒的、という事か…!

「みんな、逃げてッ! ここは危険よ!」

酒場の皆に声を掛けると、シャルルは追撃を避けるために、ヴォーデンに向かって、近くにあった椅子を投げつける。

それをやすやすと盾で弾くヴォーデンだったが、シャルルは電光石火の早業で、テーブル上にあったナイフとフォークを、投げた椅子に隠して連投していた。

「ぬっ…!」

熟練の「狩人」でもあるシャルルの投げナイフは、モンスターの装甲にすら突き立つほどの、熟練の技量。
生身の人間相手なら、必殺の凶器にもなる。
だが、それをヴォーデンの足元から生えた「棘」が、鎖帷子の如き網を展開し、飛び道具を止めてしまった。

「みんな、逃げて! 早く!」

「全員、続けッ! こっちだッ…!」

ディルガーウェンが全員を先導し、裏口へと皆を移動させる。
重装備の連中を先頭に立たせているという事は、裏口の敵襲に備えての想定だろう。

「おゥおオおォオォぉおッッっ!!」

再びヴォーデンがシャルルに向かって飛び込んでくるが、それをもう一度ガードでいなすと、シャルルは空席となったテーブル群へと近づき、またも椅子を投げ…。
テーブルの上の食器をあらいざらい掴み取り、今度は投げナイフの連射を喰らわせた。

「マルで子供の喧嘩ダナ、シャルル! こノ俺が…、貴様の部下ニシか過ぎナカった俺が、そンナに怖いかッ!」

もちろん、これらの攻撃は、全てヴォーデンに通用しなかった。盾で防ぎきれなかったものは、すべて棘が生成する「自動防御」に阻まれたからだ。

だが、ここにきてシャルルは一縷の勝機を見いだしていた。
何故なら、ヴォーデンは気づいていなかったろうが、シャルルはテーブルを縫うように、アンダースローで一本の投げナイフを放っていたのだ。

先の攻防の際、シャルルの椅子に隠して放った投げナイフは、不可避の一撃であったのに防御された。
その不可解な光景に、それはヴォーデンの意志なのか、それとも鎧の意志なのか、という疑問がシャルルの中に芽生えたのだ。

あの鎧の「自動防御」は、本人の防御勘を補助するものなのか、それとも鎧自身の意志なのか。
それを確かめるために投げたのが、さっきの連射に混ぜた一本のアンダースローの投げナイフ。
ヴォーデンの意識は、飛んでくる椅子や顔面へのナイフに向けられており、シャルルのアンダースローには気づかなかった。

だが、鎧はアンダースローのナイフにも完璧に反応していた。
という事は、あの鎧の自動防御は、ヴォーデンの意志とは無関係に、独立した命令系統で動いているのだ。

それを確認したシャルルは、さらにテーブル群の奥へと入り込む。

対して、こちらにゆっくりと歩いて間合いを詰めるヴォーデン。
その姿は、まるで海百合の如く、足元から生えた「棘」の花びらに囲まれ、ある意味非常におぞましい姿で…。
そして、僅かではあったが、確かに歩きにくそうにしていた。

「もウ後がナイぞ、シャルル」

遂に壁際にまで追いつめられたシャルル。

「そうね、絶好の機会を作ってあげたわよ…? ここまでお膳立てされて、まだ掛かってこれないの、ヴォーデン僕ちゃん?」
「何を言ウか、俺を嘗めルナッ!」

再び疾風の如き斬撃がシャルルを襲う。
だが、いくら早くとも、ヴォーデンの片手剣の技量はさほどでもなく、プレモーション(予備動作)と無警戒に吐き出す殺気で、狙いの箇所はおおよそ分かる。

「ぐうっ!」

力任せの激しい斬撃が、クロームデスレイザーの刃をガギィンと激しく振動させるが、いくら相手が黒龍の鎧とは言え、大剣の分厚い刀身はそうそう折れっこない。

シャルルが「練気」で増幅した全身の力によって、見事ヴォーデンの攻撃を受けきってみせると、今度は連続攻撃を繰り出してきたが、素人の連続攻撃には柔軟性がなく、状況に応じて

ある程度決まったコンボを安定して出すだけ、の場合が多い。

ヴォーデンもそのセオリーの例外ではなく、大剣でそれらの攻撃をガードしていくうちに(刃はボロボロに欠けてしまったが)、攻撃パターンはおおよそ読めてきた。

「(ヴォーデン、貴方…。)」

正直な所、ただ勝つだけなら十分に可能。
それだけの勝機は既に見いだしている。

さきほど、頭に投げつけた椅子とナイフは、棘の自動防御に阻まれたが、そのために「棘」は足元から頭上へと延伸せざるをえず、その強度については非常に危うかった。
フォークやナイフではなく、もっと小さく貫通力の高い攻撃であれば、多分鎧の防御を貫いていただろう。

だが、安易に頭を攻撃する訳にはいかなかった。

この状況でヴォーデンの頭を攻撃する方法は二つ。
落ちている「アルバレストG」を拾って頭を撃つか、大剣「クロームデスレイザー」で頭上からの一撃を加えるか。
だが、シャルルは予備の弾丸を持っていないし、相打ち覚悟で脳天唐竹割を敢行しても、防具を装備していない今、お互い致命傷となる可能性は高い。

「そんなものなの、ヴォーデン!? 貴方の剣は!」
「こノオおっ!」

よって、シャルルが見いだした勝機とは、防御に徹して「持久戦に持ち込むこと」だった。

クリス王子は、鎧の力を発動させる度に、鎧の飢餓感に負けて倒れ、命の危機に瀕していた。
つまり、鎧を相手にした場合、攻撃を防ぐ事さえできれば、相手の自滅を待つ事ができる。

そのために、さっき酒場の客を揃って逃がしたのだ。
人質を取られない事もそうだが、何より、ヴォーデンの回復の手段を絶つために。

「イクゾぉっ!」
「来なさいッ!」

一見、激しく攻撃を仕掛けるヴォーデンと、それをやっとの事で凌ぐシャルル。

だが実際は、ヴォーデンの激しく瞬く命の炎が尽きるのを、シャルルが静かに待っているというのが正しい見方だった。

「くうっ!」
「まだマダだァッ!!」

だが、この持久戦はシャルルの本意ではなかった。
かつて、まがりなりにも部下だったヴォーデンが、鎧の恐るべき本性を知らぬまま、食われて死ぬ光景は見たくない。

というより、このままでは、ほぼ確実にヴォーデンは鎧に喰われて死ぬ。
その前に、一撃を与えて運良く倒す事ができれば、ヴォーデンは助かる可能性もある。
そのために、あの鎧の「自動防御」の欠点を探したのだ。

こちらから攻撃しなければ、あの「棘」は反応しない。
また、足下から延びるという形状ゆえ、頭への攻撃には比較的弱いと思われる。

よって、チャンスはただ一度。
飢えによって体調に異変をきたすその瞬間、棘は「防御」か「捕食」かで、挙動が怪しくなるはず。
そこを狙い、剣の腹を使ってヴォーデンの頭を叩き、スタンさせる…!

連続するヴォーデンの重撃は、ガードに徹するシャルルの全身へと響き伝わり、内臓を振動させ、気の流れと調息を滞らせようとする。
だが、それを慎重に堪え忍び、必ず来るはずの「その時」を決して逃すまいと待っていた。

そして、シャルルの目の前で、ヴォーデンの片手剣が、大きく泳ぎ、空を切る。

「(チャンスか!?)」

ヴォーデンが不自然なほど体勢を崩したのを見て、シャルルは、待ち望んでいた機会が遂に来た、と思った。

「…! …? …がェ! 誰だ、オマえ! …久しぶりダナ、シャルル」

「…持キュウ戦狙い…!? 死ヌ!? 俺が!? 逢いたカッタぞ」

「黙レ! 誰だ、貴様!」

だがその変化は、あまりにもシャルルの想像外のもの。
ヴォーデンが頭を抱え、訳の分からない事を喚きちらし始めたのを見て、先に警戒感をかき立てられたシャルルは、飛び込まずに距離を取る。

「(…!? 何、これは!? 飢餓状態ではないの!?)」

異様な様子のヴォーデンが、棒立ちになって硬直し…。
その口元から、こんな言葉がこぼれた。

「あ、貴方ハ…。 まサカ…。 くリす王子…?」

それを聞いて、雷鳴に打たれたような衝撃を受けるシャルル。
天井を見上げるヴォーデンの右目だけが、シャルルの方を見た。

「…そンナに驚きか、シャルル」

この口調、イントネーションは、ヴォーデンではない。 確かにクリス王子のものだ。

…完全に忘れていた。
鎧を装備した者同士は、お互いの感覚を共有することが可能だということを。 
ヴォーデンの視覚を共有したクリス王子は、自分を遂に発見した事で、どういう方法かは知らないが、ヴォーデンの意識をのっとり、自分に語り掛けてきたのだ。

ヴォーデン…いや、ヴォーデンの体を借りたクリス王子が、剣を片手ににじりよって来る。

何、と思ったシャルルに掛けられた言葉は、意外なものだった。

「シャるル、お願いガアる。 僕ヲ助けケテくれ。 いるモードは、僕を殺ス気なンダ。 時間ガナい、お願イダ、助けてクレ…」

そう言って、さらに距離を詰めてくるクリス王子。
その唐突な行動に、どうすれば良いのか判断しかね、さらに距離を取るシャルル。

「…お願イダ、シャるる!」


同時刻、場面はノーブル城へと移る。

一人、ベッドの中にうずくまるクリス王子は、精神を集中し、突如、脳内に飛び込んできた誰かの意識を分析する事に努めていた。
目の前に居た、この装飾華美な女性が、本当にシャルルだとは思わなかった。
だが自分と戦った後、街にまぎれ変装していた彼女を、捜索の任に当たった連中が首尾よく見つけだした…という所か。

シャルルは、この鎧の装備者の事を「ヴォーデン僕ちゃん」と言っていた。
周囲に薙ぎ倒されている紅い鎧の連中から察するに、多分カルネラ大臣が新しく組織した警邏隊、その隊長だろう。

だが、クリス王子が意識を共有していた男「ヴォーデン」がシャルルを本格的に攻撃し始めるのを見て、クリス王子は慌ててヴォーデンの意識に割り込み、それを止めさせるように命令

した。 

シャルルは持久戦狙い、このまま戦い続ければ貴様の命はない。 戦闘を止めろ。 もし命令に背きシャルルを殺せば、ヴォーデン、貴様を殺す、と。

それによってようやくヴォーデンは攻撃を停止した。
うっすらと、狂おしい憤怒の念が伝わってくるが、王子はそれを鼻で小さく笑い飛ばす。

それよりも、クリス王子は、再びシャルルに出会った歓喜の念で一杯になっていた。
装飾華美な彼女も、また着飾られた人形のようで美しかった。
化粧の下品ささえ除けば、彼女の花嫁姿はこんな感じになるのではないか。

彼女への思慕を募らせたクリス王子の意識は、知らぬ間に肥大化し、ヴォーデンの意識を浸食した。
まるで、ヴォーデンの発動させる黒龍の力が、自分そのものの力であり、意志であるかのように。
そしてこの事実に、クリス王子とヴォーデンの二人は、驚愕と共に戦慄する。

「神官」が他の「適格者」を操作できる事に。

クリス王子は、ようやく見つけたこの秘密に、内心の興奮を抑えられなかった。

…これか! これが、「黒龍の神官」の、真なる優位性か!

どうやら、適格者同士が鎧を装備した場合、鎧の意志の疎通において、格上に当たる方が「声が大きい」らしい。
自分の意識が消え飛びかけているヴォーデンの動揺ぶりから、それが伝わってくる。

思い返せば、あの悪夢…。 
イルモードの実験の際にも、当初、自分が殺されると思って3回戦い抜いた。
だが、今になってよくよく考えてみれば、あれもかなりの部分、被験者と自分の意識が混在していた気がする。

だが今、歓喜にいつまでも浸っている訳にはいかない。
まず大事なのは、この「籠の鳥」状態を脱出するのが第一だ。
イルモードを打倒するために、彼女に城に帰ってきてもらい、自分の味方になってもらわないといけない。

「シャルル、お願いがある。 僕を助けてくれ。 イルモードは、僕を殺す気なんだ。 時間がない、お願いだ、助けてくれ…」

…ヴォーデンの、必死の抵抗の予感がある。
奴の精神をいつまでも抑え込めている訳ではなさそうだ。
できるだけ、短い時間の間に、こちらの状況を伝え、シャルルの情に訴えかけなくては。

「イルモード、奴は…」

だがそこで、王子の意識は、突如飛び込んできた、さらなる第三者の意識に分断される。

飛び込んできたイメージは、凄惨を極める血と暴力と悲鳴。そして、煮えたぎるほどの圧倒的な怒り。

「ぐがっ…!?」

脳内で「意識権」を奪取せんと荒れ狂うヴォーデンを抑え込みつつ、意識をシャルルにも向け、慎重に会話しようとしていたそこに、見知らぬ第三者の激情が横から割り込んできて、ク

リス王子は一種の混乱状態に陥った。

みるみる、目の前のシャルルの姿が暗くなっていき、酒場の光景が寸断されて消えていく。

「(待て、まだ…。 待ってくれ! 僕はまだ、君に、伝えたい事が…!)」

クリス王子は、必死に口を開こうとするが、体が思うようにならない。ヴォーデンが「意識権」を取り戻したようだ。
意識権を失い、脳内の光景が切り替わる直前、ヴォーデンが自分の体を再操作できるようになった事を、無邪気なまでに喜んでいたのが、妙に印象的だった。

<続く>
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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