女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

Entries

「GUNNER'S HEAVEN」#2(6)-8

場所は「雲龍の宴」亭にて、紅龍騎士団第三番隊【エルムザ】と交戦中のシャルルは、歴戦の猛将ゲオルグとの一騎打ちの末に破れ、剣を折られてしまう。
しかも、強烈無比の片手剣「呪魂」の一撃はシャルルの機動力をも奪い、床に倒れ伏した彼女は、ボウガンによる四方からの射撃を受ける事となる。
だが、軍神に愛されし戦乙女の運命は、まだここで潰える事を天に許されなかったらしい。

絶対絶命の一斉射撃から、シャルルの生命を護ったのは、彼女が戦場にて永きを共に戦い抜いた武器…大剣「クロームデスレイザー」の鈍く輝く刀身だった。

「おおおおっ!」

シャルルは床に突き立つ大剣を引き抜きざま、自分を狙ったボウガン隊の二人に向かって、一気に突撃していく。
さっき3発を撃ちきった後、アルバレストGの貫通弾の装填数はLv1、2共に3発であるから、弾倉が空であるこの瞬間だけは、絶対に反撃される事はない。
攻撃を受けた右足に激痛が走るが、意に介さずシャルルは駆ける。
今こそ、この状況を打開できる唯一のチャンスなのだ!

「何ッ!?」

シャルルの突進に驚愕したガンナー二人が、あわててリロードを行うが、アルバレストGのリロードスピードは「やや遅い」。
豪快に振り回されたシャルルの大剣に、二人は次々に弾き飛ばされて宙を舞い、勢いよく壁に叩きつけられて、壊れた人形のように崩れ落ちる。

二人を斬り伏せた(吹き飛ばした)彼女は、大剣を改めて構え直すと、状況を再確認する。
呆然とした表情のヴォーデンとゲオルグ、そして歓喜の表情のディルガーウェン。

「リズ姫ッ!!」
「ありがとう、ディルガーウェン! …助かったわ!」
「何の、私は無手でも貴女の剣となり盾となる…! あの誓いは嘘ではない…!」

ボウガン隊に四方を囲まれていた時は、正直絶望的であったが、これで相当に戦局は改善された。
特に、背中側から狙撃されなくなったのは大きい。
多少余裕が出来た彼女だったが、無理をした右足には、まだいくらか痙攣が残っていた。

「貴様…! その動き、もしや片手剣ではなく、大剣使いだったのか…!?」

まともな動きを取り戻すまでには、少し時間を要すると判断したシャルルは、ゲオルグの問いかけに答える事にした。

「そうよ、女性で大剣を扱うのはおかしいかしら?」

そして、剣を胸前に掲げ、厳かに名乗りを挙げる。

「我が名は、黒龍騎士団長『シャルル=サンドリオン』…! 貴方を牢獄に閉じこめた、エイグリル=ローグ将軍の直属の部下よ!」

その名乗りを受けて、酒場中からおおお、とざわつく声がする。

「こ、黒龍騎士…!?」
「え、え…うそ…!」
「まさか、あんな女の子がかッ!?」

その酒場のざわめきを背にして、ゲオルグの表情がより一層剣呑になった。

「…ふ、その本質は『兵士』ではなく『狩人』か!? 面白い! その実力、存分に堪能させてもらうぞ!」

だが、ゲオルグはこの時まで、シャルルと自分は、互角の実力だと思いこんでいた。
戦闘の興奮と、過去の栄光の記憶を引きずったままの頭では、正しい状況判断が出来ていなかったのであろう。
ゲオルグが、どれほど自分の腕力に自信があり、また戦場で培った防御勘があろうとも、それはあくまでも対人間の時の話。

「いくぞ!」

ゲオルグは、大剣を豪快に構えるシャルルの体勢を確認するや、盾を掲げた体勢で突っ込んでくる。
それはシャルルの斬撃に「ガード斬り」でカウンターを合わせようという思惑の行動だった。

確かに、普通の相手ならば、それは好手だったろう。
「オートガード」の領域まで達した彼の防御技術は並大抵のものではなく、片手剣の剣筋に慣れた眼には、大剣の剣筋なぞ欠伸が出るほどに鈍重なもの。

「(奪ったぞ…!黒鳥騎士団長よ!!)」

だが、彼は全く考え違いをしていた。
シャルルが総身を以て練った気は、黒鋼の巨大な刃に収束して燦然たる黄金の輝きを放ち、溢れて飛沫く光の粒子は白銀の奔流となって、彼女自身の体をも照らし出す。

「おお…おおおおぉおぉっ!!」

そう、大剣を握ったシャルルの渾身の一撃…「タメ斬り」は、G級モンスターの攻撃すらをも凌駕する。
その超攻撃を、片手剣の盾如きで止められるはずがないのだ。

「ぐぁあぁぁぁあぁぁっ!!」

勝負は一瞬だった。
爆発のような音と共に、盾を木っ端微塵に粉砕され、しかも右肘と右肩を砕かれ、のみならず派手に吹き飛ばされて床を転がされるゲオルグ。

「な、何だとォッ!」

その想像以上の結果に、ヴォーデンが驚愕し狼狽する。
かつてエイグリル将軍とも互角に戦った、最強の手駒のはずのゲオルグが、たった一発で倒されるとは、想像もしていなかったに違いない。

しかし元々、動きが鈍い相手には、大剣は相性が良い。
機動力ではなく、その防御力を頼みにしていたゲオルグが、大剣の性能を存分に発揮しやすい相手だった事、そして戦場においては、大剣はあまり見慣れない武器であるため、ゲオルグ

が警戒せず不用意に突っ込んでいった事も、この逆転劇の理由として付記しておくべきだろう。

だが、それを理解していないヴォーデンにとっては、ゲオルグはただのロートルであり、シャルルはやはり底知れぬ実力の強者、という認識を改めて植え付ける結果となった。

ゲオルグが倒れたところで、残る二人のガンナー達がシャルルの頭部を一斉に狙撃するが、彼女は身を沈め、大剣を構えてガードする。
シャルルを狙った銃弾は、刀身に軌道を逸らされ、天井に穴を開けただけだった。

「終わりよ、ヴォーデン! その鎧を返しなさい! さもなくば、私が復帰した暁には、貴方を軍規によって裁く事になるわよ!」
「ぐ、ぐっ…!」

最強の手駒であるゲオルグが倒された今、形勢は逆転していた。
どう抵抗しても、ヴォーデンに勝ち目は全くない。
仮に撤退した所で、「練気」を修得しているシャルルの移動速度は並ではなく、逃げても追いつかれるのは分かっている。

「ヴォーデンッ!」
「く、くそぉッ!!」

だが、シャルルは知らなかった。
ヴォーデン自身もまた、無法者の集団とはいえど、仮にも(彼の夢である)軍団の長を任され、カルネラ大臣から直々に命令を受けるという、引くに引けない状態であった、という事を


その煮詰まった状況が、彼を極端な行動に走らせた。

「おい、貴様ら、シャルル将軍を撃て!」
「しかし…!」
「倒せなくとも構わん! 少しの間、10秒で良い、足止めしろ!」

その命令を受けたガンナー達は、それを「ヴォーデンが逃げるための時間稼ぎ」だと考えた。

「!?」

ガンナー達が銃を構える動作を見て、シャルルは、反射的に防御態勢へと入る。
彼らが取った戦法は「交互リロード」。
一人がリロードしている間に、もう一人が射撃、それを交互に繰り返すことで、相手に反撃の隙を与えず射殺するという、主に騎馬隊相手に使われる戦法だった。

「…ぐっ!」

抑揚を付けて貫通弾を連射され、身動きが出来なくなったシャルル。
ガンナー二人は射撃体勢を維持したまま、ヴォーデンを逃がすべく、彼の方へとにじりよっていく。

「(マズい…! 時間を作らせれば、連中共々、ヴォーデンは本当に逃げてしまう!)」

このままでは、「黒龍の鎧」を奪われる。
そう思った彼女は、危険を覚悟で大剣を盾に、じりじりとガンナー二人ににじり寄って行く。
反撃の砲火は近寄る度に激しくなり、刀身で受ける衝撃は相当なものになったが、あと少しでガンナー二人を刃圏に捕らえる事ができる、そう思ったその時。

「ぎゃああっ!」

「…いやぁ、バルシームッ!」

突如、シャルルの眼の前に居た方のガンナーが、血をまき散らして宙づりになっていた。

「な…!?」

その唐突にて異様な光景に、一瞬動揺するシャルル。
バルシーム、というのは、その宙づりになったガンナーの名前か。
もう一人のガンナーが女性だったのは予想外だったが、いや、それより、バルシームを宙づりにしているのは、ヴォーデンの体から延びる幾筋もの「棘」…。

ヴォル…。 グゥ…。 ヴォルルゥゥアァァ…。

「はハ…。 うははハハははハぁァァッ!!」

「棘」が、兵士の体から、ヴォーデンの足下へと延びている。
そこにあったのは、彼女がよく知る漆黒の鎧の輝き。

ヴォ、ヴォアウ、ヴォルルルルルル!!!!

「…こレか! これガ…!! 黒龍の力かッ、シャルル!!」

ヴォーデンは、逃げるのではなく「黒龍の鎧」を装備するために時間を稼がせていた。

「ヴォーデン!?」
「勝てる! なんて凄い力だ、コれは! 溢レるッ! こレナら俺は、確実に勝ツるゾぉッ!!!」
「ぎゃあああぁぁぁっ!!」

脈打つ「棘」が、見る見るうちに宙づりにされたガンナーの生命を吸い取っていく。

「いやぁぁぁぁああぁっ!!」

もう一人の女性ガンナーの絶叫。
宙づりにされ、血しぶく男性ガンナーの右手から「アルバレストG」が力なく滑り落ちる。

「はは、ははハはハはぁぁはあハはあぁっっッ!!!」

全身に血管を漲らせ、狂相を浮かべたヴォーデンが吼え猛る。

「バカな…。 何て事をするんだッ、ヴォーデンッッ!」

まさか、とは思った。
軍に居た要職の連中であれば、鎧の素性について知っている。
王族のみが身につけられ、その高貴なる血の生命力と引き替えに、絶大な力を授ける闇の鎧。
ヴォーデンも「祭壇」を準備する役柄にあったから、鎧の事を噂話程度には知っていたはずだ。

だが彼は、シャルルがヴォーデンの包囲網から逃れた際に「王族しか装備できない」という伝聞に疑問を持っていたのだろう。
黒龍の鎧は、誰でも装備できるのではないか、と。

シャルル自身、エイグリル将軍からそれは事実だと聞かされた。
鎧は装着する者を選ぶ…つまり、適性がある、と。
王族はその中で、最も鎧に好まれた一族だ、と。

だが、眼の前に居るヴォーデンのその姿…。
眼は充血した血で真っ赤になっており、全身に浮いた血管と、心臓の鼓動と共に脈動する筋肉。
口角筋は極限までつり上がり、もはや人間とは思えぬほどの狂相を顔に張り付け、高笑いするヴォーデンは、王子が本気になった時だけに発動させる「棘」を既に発露させていた。

「(まさか…! 『黒龍の神官』である、王子と同格…いや、それ以上の適性者…!?)」

確信はない。
だが、シャルルの研ぎすまされた武人としての直感が、そう告げていた。
そして、このヴォーデンの起死回生…いや、見方によっては無謀極まりない策によって、またも状況は逆転した。

正直、ヴォーデンがここまでの適性を示すとは、本人にも予想外だったろう。
あの鎧がこのような反応を示したならば、おそらく「古龍の血」を使わないと装備を解除できない。
となれば、あの鎧をシャルルが回収するためには、必然的にヴォーデンと戦って勝ち、気絶させなくてはならない…。

「(生身で…。 …しかも『神官』を相手にして?)」

背筋をそんな、うすら寒い考えが通り抜けていく。
それは限りなく不可能だ。

かつて、自分が王子を相手にし、まがりなりにも互角に戦えたのは、こちらも鎧の力である「自動防御」や「害意の察知」を発動させ、窮地を逃れたからだ。
しかし、今度はそれがない。
かの凶将軍、「ギルモア=ソースクラブ」ですら、本気を出した王子の前では、まともな戦闘にはならなかった。

脳内でどんなシミュレーションをしようとも、こんな薄着で王子クラスの「適性者」を相手にしては、棘に絡め取られ、斬撃を浴びて真っ二つになる状況しか想像できない。

「いくぞ、シャルルッ!」

ヴォーデンは、片手剣を振りかざすと、シャルルに襲いかかってきた。

<続く>
スポンサーサイト

*Comment

血湧き肉躍る展開ですね!」 

更新待ってました!

シャルルさんが本来の武器を取り戻したら、今度は相手が黒龍の鎧の力発動ですか!これからどういう展開になるのかわくわくします。続きがとても楽しみです。

そして久しぶりにモンハンをやりたくなりました。ポッケ村に戻って、さび付いた大剣を引っ張り出し修行に行こうと思います。
  • posted by Momo 
  • URL 
  • 2012.11/03 22:30分 
  • [Edit]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

最近の記事

月別アーカイブ

FC2カウンター

右サイドメニュー

ブログ内検索

ブロとも申請フォーム