女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

Entries

「GUNNER'S HEAVEN」#2(6)-6

突如、テネス村に現れた武装集団「紅龍騎士団」。
彼らが探しているのは、数日前に、俺…マルク=ランディッツと共に、この村を訪れた謎のヘヴィガンナー「JJ」本人に間違いなかった。
だが俺は、連中が掲げた手配書を見て、奴の素性が知れた喜びよりも、その正体に驚愕せざるを得なかった。
何故なら奴は、この国の頂点に立つ王族の一人、由緒正しき血統、バルベキア三国第二王子「ユリウス=イェルザレム」なのだという。

「(…『Julius(ユリウス)Jerusalem(イェルザレム)』…。 なんだよ、『JJ』って偽名じゃなくて、只のイニシャルだったのか!?)」

「(犯罪者…!? 殺人? 反逆罪? あいつが? まさか、そんな!?)」

「(王族として訓練を受けていたが、市井の人間じゃないから、ギルドカードを持っていなかったのか…!)」

俺は、混乱しているにも関わらず、今まで得られた情報を反射的に脳内で整理していく。
すると、今まで説明のできなかった事に、足りないパズルのピースが埋まるかの如く、辻褄が合っていった。

…残念だが、奴が罪を犯したという件以外は、これでおおよそ納得できた。
俺の心中で、間違いなくJJは、ユリウス王子だとの確信が湧く。

俺が手配書をまじまじと見続けていると、その連中…。紅龍騎士団の隊長らしき、やたら装飾けばけばしい男が、怪訝な表情をして、俺を指さす。
なんだアイツ…? 何か、どこかで見たような…。

「おい、お前…。 そこのライトボウガン『金華朧銀の対弩』を持ったお前、ハンターか? 名を名乗れ」


「…お、俺か? 俺は、その、ユリウス王子じゃねぇぞ…」
「ふざけているのか、貴様! そんな事、見れば分かる! ゴッドフリート隊長殿は、貴様の名前を聴いているのだ! とっとと名乗れ!」 

ゴッドフリート。

その珍しい名前を聞いた時、俺の脳裏に、思い出すのも躊躇われる、過去の苦い記憶が連鎖的に蘇る。
…だが、なぜ、こいつがここに居る!?

『ゴッドフリート=ピスカードル』。

ピスカードル伯爵家の6人息子の末子であり、俺と同期でハンター養成学校(アカデミー)の門を叩いた男だ。
そして、いちいち俺に難癖をつけ、最後には騎士の決闘なんて物を持ち出して、合法的に俺を殺し掛けた奴…。

あれから10年が経っているが、その鋭利にて傲慢な表情は、かつての奴と同じ。
そいつが、その軽薄な精神性にふさわしい、過度な装飾の隊長服と鎧を着て、今、俺の目の前に立っていた。

「…まさか、お前だったのか? ゴッドフリート=ピスカードル…」
「尊称(Herr)が抜けているぞ、マルク=ランディッツ…。 だが、久しぶりの再会だ、一度は許そう…。 しかし、どういう運命の申し合わせかな、これは」

そう、ゴッドフリートは俺と同じく、ヴェルド王国の出身だったはずだ。
その二人が、バルベキア三国にて再会するとか、偶然にも程がある。

「だが、有象無象の連中に話を聞くより、仮にもハンターが混じっている方が、話が早いという物か。 お前に問おう」

宴会周辺にいる皆の視線が、俺とゴッドフリートの二人に向く。

「…なお、私は今、バルベキア三国の騎士団、その隊長職を任される身分にある。 そこを心して聞くが良い」

…? 騎士団の隊長職? この紅い鎧の連中がか?
バルベキア三国の騎士団は、あの「黒龍騎士団」しかなかったはずだ。
新しく組織されたのだろうか?

奴は嘲笑の表情を浮かべたまま、手配書をヒラヒラと振って俺に問いかけてくる。

「ここに、このユリウス王子がおいでになられただろう? 装備はボーンシューター、ナルガX装備一式に、変装のためのデスマスクとマント、だ」
「…それを聞いてどうする?」
「相変わらずの馬鹿か、お前は? 犯罪者は捕縛するに決まっているだろう? それとも、これすら読めないほどに老いたのか?」

正直、詰んだ、という諦観が俺の心を一杯に支配した。
この連中はJJを逮捕しにきている。
それに抵抗したい気持ちはもちろんあるのだが、高貴なる王族の問題に、平民如きが口を挟めるはずもなく、返事の内容によっては本当に重罪になる。
…というか、この状況では、JJが来ていないと証言する事そのものが不自然だ。

「ああ、済まない…。 確かに、ユリウス王子は、偽名を使って、俺と共にパーティを組み、この村から依頼されたクエストを承けられた。 そして、一足先に山を降りたよ」
「偽名? どんな名前だ? そして、お前等はどこで出会った?」
「…。 『JJ』。 俺たちが出会ったのは、ノーブル城の城下町にある酒場『紫煙の黄昏』亭でだ」
「何故お前は、ユリウス王子とパーティを組んだ?」
「彼の武器が、ボーンシューターだったからだ。 あまりに無茶だろうと思って、同行を願い出た」
「何故、パーティを組んだお前は、王子と別れ、今まだここに居る?」
「俺だけ別のクエスト…。 ドスファンゴ討伐を依頼されたからだ」

少しばかり恣意的な返答をしたが、奴らには分からないだろう。
一通り問答を済ませると、ゴッドフリートの側近らしき男が耳打ちをする。
ゴッドフリートは頷くと、再度質問をしてきた。

「ユリウス王子は犯罪を犯し、逃亡中の身であった。 それでありながら、何故この村のクエストをわざわざ承けた? そこまでの経緯を、事細かに答えよ」
「そ、それは知らない…。 この村の子供たちが依頼主だったんだが、彼らの状況に同情して、じゃないのか」
「同情で自らの身を危険に晒すとでも言うのか? その子供は誰だ。 ここに連れてこい」

だがそこで、村長が意見を述べる。

「お、お待ち下さい! 私、この村の村長のギムガと申します! 子供たちの依頼は、この村を襲っていた害獣ドドブランゴを狩って欲しいという物で、それは村の総意でもございます! 我々に、何らやましい事はございません!」
「本当か? やましい所は全くないのか?」
「ほ、本当にございます!」

そこで、ゴッドフリートは俺の方に向き直って言う。

「じゃあ何故、王子はこんな寒村にわざわざ来る理由があった? 村連中が知らないのなら、お前に思い当たる事はないのか?」
「し、知らないって言ってるだろうが! 俺が同行を願い出たんだし、そもそも奴が王子様なんて、全然知らなかったんだよ!」

「貴様ぁ、隊長どのに対して口を慎まんかッ! 貴様らを軍務執行妨害で捕縛するのも可能なのだぞッ!」

だがそこで、紅龍騎士団の中でもひときわ巨大な、ゴッドフリートの護衛らしき男が一喝してくる。
というかこの連中、騎士団という割には非常に人相の悪い連中ばかりだ。 まるで、犯罪者や喰い詰め者達を引っ張りだして来て、鎧を着せてやったらこんな風になりました、と言った風情の。

事実、村の皆は騎士団連中の獰猛な雰囲気に気圧されて、部屋の隅で固まっている。

「…本当に、知らないというのだな? 皆、何も、やましい所はないと?」

「ああ、その通りだとも!」俺。
「そ、その通りでございます」村長。

「ならば、質問を変えよう。 ユリウス王子は国宝である、漆黒色の鎧の小手…。 剣士用の小手(アーム)部分を持って逃げたのだが、それを見た者は居るか?」

この質問を受けた村長と村の役員は、顔色を変えて狼狽する。
そして、俺が取り繕うより早く、先に村長が返事してしまっていた。

「は、はい…。 確かに見てございます。 確か、『呪われし王者の小手』と、王子殿は申してございました」
「ほう。 呪われし王者の小手、か。 で、何故貴様が、国宝であるそれを見る事ができた?」
「お、王子殿自らが、その鎧を取り出して来歴を尋ねられたのでございます…。 しかしながら、我々の中にその鎧の素性を知る者はおりませんでした」
「それはどこにある? 貴様が預かっているのか?」
「いいえ、王子殿は我々に触れる事すら許可いたしませんで、すぐさまお仕舞になられました」
「王子は、貴様等の依頼をこなした後、どこに行くと行った?」
「そ、それは存じませぬ、そこにおられるお方…。 マルク殿と喧嘩された後に、すぐさま旅立たれて…」
「…喧嘩?」

そう言うと、ゴッドフリートは、再び視線を俺に向けた。

「おいマルク、王子と喧嘩とは何だ? お前は、王子が何処に行くのか、聴かなかったのか?」
「け、喧嘩って言っても、狩り方の食い違いで、俺が一方的にやられただけだ…。 奴がどこに行ったのかは、知らねぇよ」
「貴様如きが、王子殿を『奴』などと呼び捨てするなッ! 無礼者!」

またも、ゴッドフリートの隣に居るゴツい奴に叱責された。

「まぁ、そう猛るな、ヘルシャフト…。 なぁ、マルク、私とお前の仲だ…。 お前は私に協力する義務がある。 そうだよな?」
「あ、ああ」

それは、警邏を任務とする軍と、狩人としての関係性…。
治安維持に従事する者への民間人の協力だろうと思い、俺はそう返事した。

「ハンターアカデミーの際に、貴様のような人間のクズをどれだけ庇ってやったと思っている? なあ、ちゃんと隠している事は全て吐け。 私は、これからこの国の重鎮として上り詰めていく身だ。 私への恩義を自覚しているのなら、お前の全てを擲(なげう)って協力せよ」

「な…!?」

あまりの言いがかりに、俺は一瞬声を失う。

俺みたいなクズを庇ってやった?
何を言ってやがる。 
傲慢な態度だけは伯爵のお前の方が、人を人とも思わぬクズだったろうが。
貴様の懐に金があったから、皆媚びへつらっていたのを、人望があったと勘違いしているお前こそが。

「何言ってやがる! 俺はお前に庇ってもらった事なんて一度もねぇぞ! それに、隠している事はねぇ、って言ってるだろうが!」
「成績不良、素行態度劣悪の貴様を、ハンターアカデミーから除名されぬよう教官に嘆願したのは私だぞ! 自分の事しか考えぬ貴様は知らんようだがな!」

一瞬、まさかとは思ったが、やはりそんな事はありえない。 
俺が知る限り、このゴッドフリートという男は、そんな身分や利害を越えた行為を絶対にしない人間だ。もし、奴の言う事が本当なら、そもそも俺を決闘で殺そうなんてするはずがない。

しかし、奴の話は全くの出任せだとしても、周囲に俺をよく知る人物が居らず、奴の味方ばかりする連中が固まっているこの状況では、それを否定する方法がない。
数の暴力を利用して、自分に優位な状況を作り出す事に長けていたこの男の特徴を、すっかり忘れていた俺がマヌケだった。

「しかも、お前が密猟を行っている事は露見しているのだぞ? それで、よくまぁ『やましい事はない』と言えたものだな、マルク」
「…! そ、それは、店の受付の奴に『密猟は見逃してやる』と言われたからで…!!」
「そんな戯言を堂々と垂れるなッ! 犯罪を見逃してやると言われても、だが実際に行えば犯罪者だ! 良識ある普通の人間は、犯罪にはそもそも関与せぬのだよ!」
「だ、だが、それならば受付の奴もそうだろうが!」
「もちろんだ! 『紫煙の黄昏』のギルド受付の奴は処分せねばならん! だが、だからと言って貴様の罪が消えた訳ではない!」
「罪って何だ、人を犯罪者みたいに言うな!」
「お前が犯罪者でなくて何だ! そもそも、密猟でなかったにしても、ハンターズギルドに何故報告と上納をしない? しかも、任務地への長期駐留、過剰な接待は禁じられている事を忘れたか?」
「…!」

そこまでまくし立てられ、俺は完全に自分の不利を悟った。 ゴッドフリートは余裕の顔で言う。

「これでは、どう考えてもお前は確信犯、最初から犯罪を侵す意図があったとしか思えんな」

元々、ある程度事実を把握しているのに、わざわざ俺たちの言質の矛盾を引き出させてから叩く。
…完全にやられた。

「そ、それは…。 JJ、いや、ユリウス王子を待っていたからで…」
「何故待っていた? 喧嘩別れしたはずのユリウス王子が、何故ここに戻ってくるのだ?」
「…!!」

しまった。 今のは、失言だった…!

「そ、それは…。 奴と仲直りできないものかと…」
「お前の『行き先を知らない』という発言が本当なら、今後当然、お前と王子は出会う事はない。つまり、仲直りする機会は失われている、と理解しているはずだが? …本当は、どこかで落ち合う予定か、お前が何かを預かっているのではないか?」

そこまで言われて、完全に俺は言葉を失った。
全身をつたう脂汗にまみれ、俺がなんとかこの状況を打開する策を考えるが、テンパッた頭には何も浮かんでこない。

村の連中も、俺を不安そうに見ている。
チラリとモーリンを見ると、彼女の表情も青ざめていた。
彼女はこの村で唯一、俺が「小手」を持ち帰った事を知っている。

「…これで決定だな。 お前は何かを隠している。 そして、密猟の事実も確定した事だし、事情聴取と処罰のため軍本部まで連行させてもらう」
「じょ、冗談じゃ…!」
「そして、この村の連中も、密猟幇助(ほうじょ)、組織的隠蔽で同罪とする! この男の密猟を知っていたのなら、即時報告の義務があるのに、集団でそれを行っていた事実は、十分処罰に値する!」

そう高らかに宣言するゴッドフリート。

「な…? 俺たちが犯罪者…?」
「なんで、害獣を駆ってもらっただけで、そんな事になるんだよ…」
「い、いや…。 密猟になるなんて、知らなかったのよ…」
「お、おい、マルクさんよ、なんとか言ってくれよ、アンタ!」

村人達が一斉にどよめく。
だが、ゴッドフリートの本当の思惑は、すぐにこの後分かった。
周囲に控えていた紅い鎧の連中が、全員残忍な笑みを浮かべて、俺たちににじり寄ってきたのだ。

「そういう訳だぁ。 犯罪者への罰は禁固か罰金刑、あるいは鞭打ちだが、いちいち裁判やるのも、おめぇら全員連れてくのも面倒くせぇから、罰金刑で勘弁してやる」

「そういう事だ。 軍務の円滑な遂行のために、村人全員、素直に罰金を提出すべし。 …鞭打たれたくなくばな」

そうゴッドフリートが楽しげに嘯く。
何のことはない、これは正真正銘の略奪行為だ。
だが、権力を盾に、冤罪を被せて略奪を正当化するとは、まさに外道の所業、なんと卑怯極まりない行為…!

「ま、待て! 話し合えば分かる! 待ってくれ!」
「…話せば分かる? しかし、我らは先ほど、話し合いの機会は十分設けたはず。 全て答えよと言ったのに、まだ伝えてない事があったと? これは偽証罪にも問うべきかな?」

俺が状況を打開すべく、ゴッドフリートに掛け合うものの、あっさり流される。

「そうだそうだァ! テメェら犯罪者がどう言い逃れしたって、無駄なんだよ!」

部下たちが一斉に怪気炎を上げるが、その顔には一様にギラつく形相が浮いている。
それを見て、こいつらは元々金品が目的だったのだと直感する。そうとしか思えない柄の悪さ。
ならば、もはや対話による交渉は不可能だ。

どうする、どうやってこの状況を逃れれば良い?
「金華」の散弾を使って制圧したら、場合によっては死人が出て、俺は確実に犯罪者扱いにされてしまう。
だが、だと言って、それ以外に一人でこの連中を鎮圧する方法など見つからない…。
いや、こいつらの目的が金なら、俺の全資産を取引材料にすれば、皆を助けられるかも…。

だが、俺がそんな胡乱な事を考えている間に、状況は無慈悲に進行していた。

「きゃあああ! や、やめてっ!」
「げへへ、いいだろ姉ちゃん、俺、牢から出てきたばっかりでよ、女の匂いとか超久しぶりなんだよ」
「や、やめるんだッ!」
「邪魔すんなよ、ボケッ!」

若妻・マリアンヌが襲われている所を、多分夫だろうが、青年が助けに入って返り討ちに逢う。

「あなたーッ!」

マリアンヌの夫は、脳天を片手剣の剣束で殴られ、鼻血を吹いて崩れ落ちた。
それを契機として、紅龍騎士団という名のチンピラ連中は、村人に一斉に襲いかかった。

「や、やめろ、撃つぞォッ!」

俺が銃を構え、声を張り上げるが、誰も俺の様子を気にかける者はいない…。
何故、と思った瞬間、俺は不意の体当たりを食らい、宴会の座席の中に頭から思い切り突っ込んだ。
そして、転倒した俺の右腕から「金華」が強引にむしり取られる。

「隊長殿、ボウガンの徴発完了しました」
「ご苦労。 その男は連行していくから、適当に痛めつけておけ」
「了解いたしました!」

体当たりしてきたのは、ゴッドフリートの脇に居た、ヘルシャフトとか言う、やかましい巨漢の兵士だった。

俺の「金華」が…!
返せテメェ、と声を荒げ立ち上がろうとしたが、立ち上がりざま、俺の腹に丸太のような蹴りが思いっきり入る。
その威力に内臓が痙攣、全身が硬直し、棒立ちの俺は二度、三度と続けて顔面を殴られた。
眼前で火花が派手に散り、岩石が直撃したような衝撃に意識を失いかける。

…バカな!
ここで倒されたら、本当に死ぬぞ!
意識をしっかり持て、マルク!
G級ハンターだろうが、お前は!

俺の本能が、飛びかけた俺の意識をすんでの所で引き戻し、半ば無意識のまま、相手の攻撃を避けて、カウンターを取ろうとした。

「…おっと」

カウンターは成功したが、相手の顔面に入ったはずの、俺の攻撃は全く効かなかった。
後で思い出して分かるのだが、意識を失いかけていた俺のパンチには、全く力が入ってなかったのだ。
だが、この時の朦朧とした俺には、攻撃が全く効かず驚愕した事だけはうっすらと覚えている。

「驚かせるな、コラァッ!」

俺はそのまま、殴られ放題に殴られた。
いかにG級ハンターと言えど、剣士ではなくガンナーが、まして巨漢の兵士を相手に狩人が、肉弾戦で勝てる道理はない。
一応、戦いの中に身をおく職業である以上、殴られて意識を失おうとも、ガードしたり手を出したりと、体だけは反応していたらしい。
だが、俺の攻撃の手応えは一切記憶になく、もう覚えているのは、奴の石のような拳の感触だけだった。

「ぐあああっ!」
「ぎゃああーっ!」

「いやぁーっ、やめてぇーッ!」
「モーリン…! やめろ、僕の妻に何をするんだ!」
「あなた…!」

「頼む、村の者にもう手出しは止め…」

「あーん、ああーん!」
「うわわああぁーッ」

「ぐ  あ ぁ」
「ぎゃ    ぁ  ぁ」

ヤベェ…。
皆が、襲われてる…。
すまない、皆、俺のせいで…。
俺が、全財産を投げ出していれば、助かったかもしれないのに…。

その時、ほぼ意識を失い、無明状態の俺の背中を、ぐいっと動かす感覚があった。
どうやら、誰かが倒れた俺のアイテムポーチをまさぐっているらしい。

…道具を換金する気か。 山賊行為もここに極まれり、もう好きにしろよ。

俺はなすがままになっていたが、脳裏で、誰かがそれではダメだと、俺を叱咤する。 早く目を覚まして動けと、そう言っている。

…何だ? そういや、何か、絶対に奪われてはならない物が、あったような…。

その時何故か、俺は無意識の中で、ポーチに仕舞い込んでいた「呪われし王者の小手」が見つけられたのを察知していた。
多分意識はなくしても、耳は聞こえては居たのだと思う。

…そう、それだった。
俺が絶対に奪われてはいけないもの。
JJと俺の唯一の繋がりになるもの。
それを奪われたら、間違いなく俺の未来は閉ざされる。
それだけは、ダメだ。

そう思った俺は、「呪われし王者の小手」を取り返そうと、手を伸ばす。

…灼けつくような痛みと、骨を切り裂くような痛みが、同時に右腕を襲ったのは、その直後だった。


<続く>
スポンサーサイト

*Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

最近の記事

月別アーカイブ

FC2カウンター

右サイドメニュー

ブログ内検索

ブロとも申請フォーム