女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(3)-2

場面は、再び「雲龍の宴」亭に移る。

痛みが取れたシャルルは、仕事に復帰していた。
昼の多忙が過ぎ、シャルルはエリスとマナとの雑談の傍らに、既に配布されていた「笹神龍心」の手配書を見せてもらうことにした。

「リズ姉さま、これが、そのササミさんの手配書ですよ~」

手に取って、思わず息を飲む。

「これは」

あんまりじゃないの、と続けたくなる気持ちを、シャルルはすんでの所で押し込んだ。

弓皇王・笹神龍心。
東方の島国、シキ国に広く名を知られた、伝説の英雄にて偉大なる弓兵。
ある程度の逸話はシャルルも知っているし、詳しい所はエイグリルにも聞いた。


…だが、目の前の手配書は、作りがあまりにも雑だった。

まず名前が「sasami=ryusien」。
…ササミ・リュシェン? 
案の定の誤訳って言うか、後半読めないし。

「で、この絵は何? 似顔絵じゃないの?」
「ああ、それは今の似顔絵がないので、戦記物語に載ってる挿し絵をパクったそうです~」

ウチのギルド仕事が雑だわー、とシャルルは内心思いつつ、その姿に目を落とす。
そこに描いてあったのは、弓兵とは思えぬほどのむくけつき大男。
髭と彫りの深い、いわゆる「虎顔」の、容貌魁偉の巨漢だった。

それが弓と矢を両手に持ち、血塗れの姿で、天を見上げて叫んでいる。

実際自分も物語を読んだ事があるが、この絵は確かロンバルヴィア坂(※シキ国表記で「傾陽の長坂」)で、伝説の「千人射抜き」を達成した時のものではあるまいか。
若き日の戦場で、敗走した軍の殿(しんがり)となり、千人を射倒して自軍を守りきったという、事実なら超人どころではない逸話だ。

しかし、エイグリル将軍は、実物の笹神龍心は「小柄」だと言っていたし、年齢も80近いはず。
事実に多少の誇張があったにせよ、今もこんな若々しい姿をしている訳ではなかろう。
そういう意味では、この手配書で笹神龍心本人を捕らえる事は、まずもって無理だ。
シャルルは手配書の拙さにそれを実感し、内心安堵する。

「うーん、でも、こんな怖い人が居たら超目立つよね? 実際、笹神…いや、ササミさん見つかるのかな? 報告あった?」

この手配書の罪状は「テロリスト」だった。
伝説の英雄に対し、随分と不遜な冤罪を被せたものだが、笹神を知る者は、今の狩人達の中にも結構いよう(特にガンナー)。
果たしてこれで、本当に笹神が見つかるものやら、とシャルルは思っていたが…。

「意外と目撃例あるみたいですよ~」
「はい、ウチの酒場に来てたハンターにも、最近『伝説の英雄・ササミを見た』って興奮してた人いましたし」

「えええええっ!?」

予想外の答えが返ってきた。

「え、まさか、本当に? 笹神…いや、この手配書の犯人が、この近くにいるの…?」
「びっくりしましたよ~、何ですかもう。 ええ、手配書が出回ると同時に、チラホラとそんな噂が。 ちょっと話したハンターの話では、『ササミさんは人を捜している』とかいう話だとかなんとか~」
「どんな格好だったの!?」
「その手配書に描いてあるとおりみたいです」
「手配書にって…こんな巨人ってこと?」
「そう…だと思います」

だが、その回答を聞いて、シャルルの驚愕は内心で冷めていく。
この手配書そのままの姿という事は、多分、売名狙いの模倣犯だ。
本人じゃない事はほぼ間違いない。

「うわー、こわいねー、私たちも気を付けなくちゃだねー」

「ギルドにもですね、一応報告はしてるんですけど、相変わらず反応ないんですよ」
「っていうか、お姉さま、それであの娘さんに目を付けてた訳じゃないんですか? 私たち、あの人がササミさんの実の娘なのかな~って思ってましたよ」
「…実の娘?」

シャルルの棒読みにツッコんだマナの発言に、ふと疑問が湧いた。

ビアンカという、(多分)東方から来た謎の弓師。
東方伝来の「練気」の力。
残像を現出させる謎の技術。
存在を噂されている、伝説の英雄にして弓師、「弓皇王・笹神龍心」。

なんとなく、辻褄が合ったような感覚があった。
確か、ビアンカは「お使いで仕事してる」「おしおきが怖い」って言ってたような覚えがあったような…?

もしかすると、ビアンカは「年老いた笹神の代理」なのかもしれない。
さっきの話の模倣犯も、ビアンカ本人の可能性がある。
人に知られていない今の姿ではなく、往年の有名な姿で現れたのだとしたら。

「(…ありえるわ)」

それなら、彼女が密入国してきた理由も理解できる。
この厳戒態勢の中で、どうやって密入国してきたかは不明だが、笹神龍心の娘なら、そういう手はずもあったろうし、彼女の戦闘能力がシャルルより上なのも、なんとなく納得できる。
笹神龍心と縁故である可能性、そしてあの実力。
ノーブル城を攻めるのには、やはりこれ以上ない人材だった。

「(しまったなぁ…。 やっぱり、何とかして強引にスカウトすべきだったなぁ…)」

しかしどう考えても、あの時の自分に、ビアンカを手元に残しておく方法はなかった。
何せ、自分が最も得意とする力技で負かされたのだから。
それに、逃げたビアンカの所在が全く分からない。
自分達で手配書を作って情報を集めるにしても、そうなればビアンカはここには近寄らないだろうし、今後仲間に引き込むためには下策も下策だ。

どうしたもんか。 全くいいアイデアは出てこない。
ビアンカを仲間にする、というのは不可能なのか。
やはり、他に戦力を求めるべきか。

「リズお姉さま~、考え中申し訳ありませんけど~、そろそろ夕方の準備、よろしくお願いします」
「あ、ごめーん」
「今日は団体客がまとめて入ってますからね、忙しいですよ?」
「他の娘にも『個室予約』が入ってますから~、今日はお姉さまにも、給仕をやってもらわないと回らないかもです~」
「…そっか、団体客かぁ。 今日はトラブル起こらないと良いね。 酔っぱらい同士が激突すると、必ず何かあるからね」

シャルルとマナ、エリスは揃って苦笑する。

「(…また、一から出直しか)」

仕方がない。
もう一度、情報を集め直して対応しよう。
幸い、傭兵集団「砂塵の嵐」の住所は、ギルドの登録台帳から転記している。 
「砂塵の嵐」の面々の周囲には警備兵が配置されているはずだが、それを彼らも不審に思っていよう。
警備の状況を確認し、そっちから切り崩した方が早いだろうか…。

「なんていうか、ハンターの人って、飲むとやたら気が大きくなりますもんね~」
「そうそう、特にあのマルクって人とかね」

ありがたい事に、この酒場には、情報面で力になってくれる仲間も居る。
笹神の事も、聞かなければもっと後手を踏んでいただろう。

「ですよねー。 酒場に勤めてて言う事じゃないですけど、酔っぱらって暴れるなって言いたいですよね」
「あと、飲み過ぎて粗相されるのも勘弁ですよね、掃除する身にもなってほしいですよ」
「両手が塞がってる時に限って、お尻に手を伸ばしてくる奴も多いしね~」
「あるある。 でもまぁ、それが私たちの仕事だから…。 気分よく皆が飲めるように、今夜も頑張りましょう!」
「はーい」
「はい!」


そうやって、3人は持ち場に戻る。
この、和気藹々とした雰囲気…。
シャルルが得た、つかの間にして、仮の安息。

だが「この平穏が保たれるのは今夜まで」である事を、この時のシャルルには知りようもなかった。 

何故なら、この夜に来たのは、団体客などではなかった。


----------------------------------------


場面は、雪山・テネス村に戻る。
標高がある分、山頂の夕暮れは平地に比べて遅い。
今ようやっと、稜線に陽がさしかかろうという所だった。
だが、今から帰路を考えるなら、ここらへんが潮時だろう。

俺…マルク=ランディッツは、ドスファンゴを5体倒した所で、狩猟を止めた。
よく考えれば、電撃弾を使って10体倒した方が村人たちのためになったはずだが、通常弾や貫通弾でドスファンゴを倒すのに拘っていたら、あっという間に夕方になってしまった。

「(5体…。 随分と、中途半端な結果だな)」

ネコタクチケット代わりの信号弾は既に貰っていたので、さっき打ち上げた。
陽が完全に暮れるまでには、あの村人の青年が、ソリを引いて麓のキャンプまでやってくる事だろう。

「(…5体。 JJだったら、どうなんだ…? 奴なら、10体全部狩りきれるのか…?)」

そんな問いを脳裏に投げかけながら、俺は苦笑する。
JJだったら、そんな事、実にたやすくやってのけるだろう。
もしかすると、俺が電撃弾を使うよりも早いかもしれない。
なんせ、俺はライトボウガン最強の「金華朧銀の対弩」を使っているのに対し、JJはヘヴィボウガン最弱の「ボーンシューター」だったのだから。

もし、奴が別の銃…貫通弾に特化した銃に慣れ、使いこなせるようになれば、とてつもない火力を叩き出す事だろう。
それはもしかすると、あの伝説の「A GUNNER」を凌賀するほどの…。

俺はそんな益体もない想像に浸りながら、岩に腰掛け、最後に狩ったドスファンゴの遺骸を眺める。
そして、村からこっち、ずっとJJの事ばかり考え続けている自分に気づき、思わず苦笑する。

「(…はは)」

男の事をずっと考え続けるとか、何なんだ。
ホモ以外の何者でもねーだろ。 

…だけど、それもむべなるかな。
女の色香とか、今の俺にとっては全く問題じゃない。
なぜ、俺がこうも奴の事を考え続けるのか。

それは、奴こそが…。

「奴の存在そのもの」が、俺が長年追い求めてきた「答え」だったからだ。

俺が、ずっと追い求め続けていた命題。
狩人として生きることの意味。
どうすれば強くなれるのかという、その方法。

その答えが、あそこにあった。
誰あろう、JJの中に。

「最強のガンナーとは何か?」という命題に対する、JJの回答は

「最強の弾薬…貫通弾を、最速かつ最適の効率で、最も弱点となる箇所に全弾ぶち込む」

これだった。
…まるで子供が言うような、これ以上ないくらい、分かりやす過ぎる回答。
俺が長年悩んできた事が、バカバカしく思えるほどに。

ガンナーの中において、貫通弾の最強性は以前から話題には上っていた。
単純な威力だけなら、確かにそうかもしれない。
しかし、全ての状況において、貫通弾は優位という訳ではない。
フルフルのように火炎弾が優位な相手も居れば、イャンクック、ディアブロスのように、通常弾による定点スナイプが有効な相手も居る。

何より、貫通弾を使うには、敵の真正面に立たなければならない。
危険を避けて射撃時間を確保するなら、貫通弾以外の弾丸が有効だと言える場面もあるだろう。

しかしJJの戦闘スタイルは、それらの小賢しい意見を一切否定していた。
貫通弾を最強と信じたならば、それ以外の弾丸は不要。
扱いの難しい貫通弾の威力を最大限に生かすために、敵の正面に立ち、回避技術を磨く。
あの時、奴のあまりに一徹な戦いぶりからは、そんな強固な信念が、肌を刺すようにビシビシと伝わってきた。

一般的に、最強のガンナーと知られる「A GUNNER」は、確かに貫通弾に頼る傾向はあったものの、それだけに囚われず、相手に対応して様々な弾丸を使っていた。
それを記録で見ていた俺も、相手の弱点を突く事がクレバーだと思っていた。

だがJJは、ほぼ貫通弾だけを使っていた。
相手の弱点などお構いなしに、奴の性格そのもののように、自分の信念を貫き通す事で敵を屈服させる。

戦い方はシンプルにして明白。
だからこそ、何をすれば良いのかが、俺みたいな凡人にも、ありありと理解できたのだ。

敵の初動を読む、完璧なリロードをする、正確なエイミングをする…。 
それらガンナーの基本を丁寧に積み重ねる事こそ、あの圧倒的な火力を手に入れる、唯一の方法のはずだ。

「けっ…」

だが、心のどこかで「冷静になれ」という声もまた、こだまする。
俺は、JJが見せつけたあの凄まじい光景に…。
狩人にとって、どんな美酒よりも甘美な毒に…。
心のどこかで酔っているのかもしれない。

何故なら、あの戦い方を構築するには、まず「貫通弾が最強だ」という前提の基での克己をし続けなければならない。
つまり、自分の戦闘能力がまだ頼りない頃から、ずっとあのように、すべてのモンスターと真正面から対峙し、命を差し出して戦う必要があったはずだ。

奴が、一体何年の訓練、あるいは実践を経て、あそこまでの戦闘能力を得るに至ったかは定かではない。
だが、俺ですらG級になるのに、十余年かかっているのだ。 それが2、3年という事はなかろう。

その数年間を、奴は一度の敗北もなく切り抜けてきた。
その重圧を想像するだに恐ろしい。
自殺行為を数年繰り返して完成する修行とか、一体どんな精神性が、そんな荒行を可能にするのか。

多分、本当に師匠は居るのだろうが、それを弟子に科し、弟子もまたそれを飲み込むあたり、師弟揃って本物の狂人としか思えない。

「…はは」

だから、「モンスターの命も僕の命の価値も同じ」とか、意味が分からない発想が出てくるのかもしれない。

いや、本当は…。

ガンナーであっても、モンスターと命を掛けて直接対峙する事こそが、強くなるための、本当の方法だったのかもしれない…。

「まさか」

そう思ったところで、思わず声がでる。
そんな発想が俺の中から出てくるとは、正直自分で驚いた。
これは、また随分と奴の気に当てられたもんだ。

確かに、奴の戦い方全てが真似できるなら、それが一番良いだろう。
だが、あの戦い方全てを真似きるのは、まずもって不可能だ。 
単純な話、あまりにも危険過ぎる。

だから、俺が真似するのは、奴の方法論だけで良い。
アイツが作り上げた戦闘スタイルの良いところだけを組み入れれば、それだけで強くなれるはず。

…それでいいはずだ。

「…なぁ、それで良いよな、相棒」

俺は手の中にある「金華」に語り掛ける。

狩人の間で知られる、ごく初歩のセオリー。
被弾を徹底して避ける事が、火力向上に繋がる事は誰でも知っている。
安全性を追求するのは、決して悪い事ではない。

だけど、俺の直感が…。
戦い方を表層だけ真似ても、その真髄までは真似できないのではないかと、そう訴えている。
奴のように、命を掛けなければ、人は強くなどなれはしない、と。

その予感がどうしても否定できず、長い時を共に過ごした相棒に問いかけた一言だった。

だが、雪山の冷気を存分に吸った我が愛銃は、冷たく沈黙したまま、何も答えなかった。

<続く>

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まとめtyaiました【「GUNNER

場面は、再び「雲龍の宴」亭に移る。痛みが取れたシャルルは、仕事に復帰していた。昼の多忙が過ぎ、シャルルはエリスとマナとの雑談の傍らに、既に配布されていた「笹神龍心」の手配書を見せてもらうことにした。「リズ姉さま、これが、そのササミさんの手配書ですよ~」...

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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

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