女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#2(2)

バルベキア三国の最南端に位置する、首都・ノーブル城では、先王崩御から2週間が経つに至り、病床のクリス王子を除く側近・大臣たちを全員召集しての大会議が開催されていた。
会議の提案者にして、事実上の最高権力者である、宰相・イルモード=ゲルギスクは、皆を前に言い放つ。

「この度、竜の月である12月…。天の言葉の御使いである、聖ジョルジュアが守護されている24日に、バルベキア三国王の戴冠式を執り行いたい」

おおお、と群臣達の間から声が挙がる。

「古来より戴冠式は、先王崩御と共に行うべきではあるが、続く不幸な事故により、先延ばしとなっていた。 だが、この日は太祖レニチェリア大公の誕生の日であり、歴史に倣って、この日に執り行うのがふさわしいと思われるが、いかがか」

イルモードは、珍しく表情ににこやかな笑みを浮かべ、そう皆に問いかける。


「…それは、クリス王子の戴冠式でございますね?」
「他に誰が居る? アルムード公の嫡子にして長男、クリストフ=イェルザレム王子に、第三代バルベキア王として即位して頂くのだ。 我らは引き続き王子を周囲から補佐していく」

群臣一同、誰もその言葉を額面どおりには受け取っていない。
ここに結集している親クリス派は、全員がイルモードの配下、転じて言うに、王権を強奪しようとしているイルモード派、と言い換える事もできる。
つまりこの大臣の質問は「クリス王子を廃嫡し、イルモードが国を乗っ取る気か」という意味であり、返事は「王子を傀儡として祭り上げ、我らが実権を握る」だった。
それをこの場の皆が理解し、了承した。

「…しかし、戴冠式を行うと申しましても、現状では不可能でございませんか」
「なぜだ」
「我が国において、戴冠式を執り行うには、黒龍の鎧の継承が条件でございます。 それは宰相もご存じのはずかと思いますが」

かつて、この国の王位継承は、黒龍の神官である王が、鎧の一部を身にまとい、7日をかけて鎧と共に全国を行脚するのが慣例となっていた。

「不要。 そんなものは、ただの形式的な儀礼にすぎん」

だが、イルモードがその懸案を一蹴すると、たちまち周囲の大臣たちが色めきだした。

「形式などではございませぬ! あの地獄の釜から湧いた鎧、あれこそが他国からの侵略の抑止力になっているのでございますぞ!」
「戴冠式は、他国に対し、『我が国に黒龍あり』としらしめるための格好の機会! それをないがしろにするのは、すなわち国防の危機です!」

だが、それらの意見を、イルモードは鼻で笑いとばす。

「幻想にたよる国防など、問題外だ」
「し、しかし…! 現実に我々は、黒龍伝説によって…!」
「まぁ聞け。 余が、鎧の継承式を不要と断ずるには、きちんとした理由がある」
「…それは、どんな理由なのでしょうか?」

だが、イルモードの説明した理由は、その場に居並ぶ大臣達にとっては、かなり予想外の内容だった。

「実は我々は、王家に伝わる古文書から、鎧の秘密をある程度解明しつつある」

「な…!? 古文書ですと!? そんな物が実在したのですか!?」
「クリス王子が…? それとも、エイグリル将軍が!?」

ざわつく大臣が静まるのを待って、イルモードは言葉を続ける。

「発見の経緯は話せぬが、おかげで、謎に包まれていた『黒龍の鎧』の性質はおおよそ判明しつつあってだな…」

次の言葉を待つ大臣たち。

「今まで出し惜しみせざるを得なかった『黒龍の鎧』の力を、戦場に常時投入する事が可能、という所まで解読は進んでいる」

「おおお! そ、それは!」
「常時投入!? 本当に、そんな事が、可能なのですか!?」
「毎回では、いくらなんでも、王子の体に負担がかかり過ぎるのでは!?」

今まで、戦争において黒龍の鎧を安易に使用できなかったのは、使用者…「黒龍の神官」の生命力を、限界以上に奪い去ってしまうからだ。
事実、先代のアルムード公ですら、長い統治期間の間、たった2度しか鎧の力を使用していない。
それほどまでに激烈な、あの鎧の力の消耗を抑える…あるいは回復方法に劇的な改善が見られたとしても、戦争になる回数が増えれば、結局は王子の寿命を大幅に縮めてしまう。

「いや、その心配はない。 何故なら、王子自身が鎧の力を使う訳ではないからな」

大臣全員に困惑が広がったのを見て、イルモードは説明を足した。

「王子は、鎧の『胴』『腰』部位を装備し、『頭』は我々が管理しているが、実は古文書の記述に、例え一部位でも、そして一般兵でも『黒龍の神官』並に鎧の力を引き出せる方法が記載されていた。 おかげで、クリス王子に負担を強いる事もなくなる、という訳なのだよ」

それを聞いて、周囲の大臣たちはさらにどよめく。
「そんなバカな」との声も聞こえる。
何故なら、今のイルモードの説明は、「黒龍の神官」である、王族の存在意義を無意味に帰すものだった。
そんな方法を伝えた古文書が、この王宮内に存在するなら、そもそもこの国では、「黒龍の神官」が地位を得る事はなかったはずだ。

「…そ、そんな事が本当に可能なのですか!?」
「既に実験してみたが、可能だった」

おおお、という嘆息とも畏怖ともつかぬ声が、大臣の間から漏れ出す。

「それは、一般兵に鎧を装着させたと…?」
「ああ、『黒龍の神官』である王子と違い、脱着可能なため、充分に休養を取らせる事が可能。 そして、誰でも鎧の力を使えるとなれば、有志によって戦場に立たせる事も可能。 故に、鎧が揃ってない事が他国に看破されようと、軍事力に全く影響はないに等しい」

王子の命を削るため、今までは国家の危機の状態で出すしかなかった「黒龍の鎧」の力。
先日の戦争とて、ヴェルド軍の侵攻の際、シャルルを盾に侵攻を防衛したが、かの悪名高き凶将軍「ギルモア・ソースクラブ」の出現によりシャルルは破れ、一時は自軍崩壊の憂き目にあった。
だが最後に戦局をひっくり返したのは、やはり黒龍の鎧だった。

それを日常的な戦略兵器として使用可能となれば、それはとんでもない発見である。

「…連戦連勝ではございませんか」
「そう、鎧の秘密を解明した事によって、今我々は、他国よりも軍事力で圧倒的優位に立ちつつあるのだよ。 それにな…」

そこで、若い兵士が会議の場の中央に進み出て、手に持った羊皮紙の内容を、よく通る声で読み上げた。

「皆様に、ご報告申し上げます! 我が、北東警邏第8部隊が一昨日の夜、酒場『黄昏の紫煙』亭にて、デスギア装備にて変装した、ユリウス王子の姿を目撃しております!」

「なんと…!」

「王子は、逃亡資材を得るために、ハンターズギルドにて非公式の狩猟クエストを受注した模様! 携行武器は、店買いの『ボーンシューター』のまま!」
「現在、某酒場の一帯に包囲網を敷き、目撃情報を元に、部隊を分けて、慎重に追跡中でございます!」
「また、シャルル将軍につきましては、ある有力貴族を通じ、『黒龍騎士団長』を名乗る女が、『雲龍の宴』亭に現れたという連絡を受けております!」

その報告を聞いて、軍事関係の大臣たちがざわつきだす。

「近いな」
「ああ、その二軒、徒歩でも行ける範囲内だ。 まさか、もう両者は接触してるんではなかろうな」
「どうだ! ユリウス王子とシャルル将軍が結託したという報告はないのか!」

「い、いえそれは、その…」

大臣たちから指摘を受けて戸惑う若い兵士の言葉を、イルモードが拾う。
 
「方々、その可能性は低いと思われる。 有力貴族とは言ったが、なんせあのイースベルト家からの報告だからな」
「…ああ、あの」
「酒場での騒動なぞ、いささか信憑性に欠けるが、皆の指摘どおり、距離が近過ぎるので、確認はせねばなるまいよ」
「確認と申されましても、もし万一、相手が本物だったら、いかがされますか?」
「別途組織した、ガンナーの部隊を派遣させる。 本物ならば、持って逃げた鎧を常時携行しているはずだ」
「…ガンナー?」
「ああ、現在の所、対『黒龍の鎧』戦には、剣士ではなく、ガンナーで挑むのが有効だと考えられるのでな」
「…それも、古文書によって分かったのですか?」

対策まで記載されているとは、随分と破滅的な文書だ。
というより、先の「鎧の力を確認済み」というのも、まるで既に、イルモード自身があれこれ試しているかのような…。

「うむ、古文書に記載されていた。 よって、これからはガンナー部隊増設のため、ハンターどもからのボウガン徴収に、より力を入れていく。 ユリウス王子の『腕』と、シャルルの『脚』を取り返せば、我々は今後、軍事作戦において、従来は不可能であった、三方面への同時侵攻も可能となるからな」

「さ、三方向…」
「そう…。 今までは、守るしかできなかった我々が、遂にこの国に覇を唱える時代が訪れつつあるのやもしれん」

イルモードは、そこで席を立つと、周囲を悠然と見回し言った。

「これが理由だ! 幻想による国防は必要なく、残る部位の在処も判明した! ゆえに、戴冠式を執り行う事に、異存及び意見があるものは

居るか!?」

「異議なし!」
「異議なし!」
「異議なぁーし!!」

次々と拳が天に突き出され、「異議なし」の声が周囲を埋め尽くす。 だが、その喧噪が静まるのを待ち、ある高齢の大臣が、よく通るバリトンで疑問を呈した。

「異議あり! ユリウス親派に対する処遇もお聞かせ頂きたく存じます!」

周囲の大臣達が、その疑問を受けて、何といった表情をする。

「宰相の深慮遠謀、もしかすると、戴冠式を開催する事で、ユリウス王子とシャルルめを炙り出すおつもりなのかもしれませんが…」
「ユリウス親派…いえ、旧黒鳥騎士団の派閥は、エイグリル将軍をはじめ、カッツェやウィルも未だ健在でございます。 このうちの誰かが結託・造反し、戴冠式に乗り込んでこられたら、その時は式どころではございますまい」
「先ほどのお話だと、こちらは3部位ですが、クリス王子が2部位を持っておりますし、その、宰相が仰る鎧の力を引き出す方法を奴らが…ユリウス王子が知らないとは限りませぬ。 せめて、あと一部位は確保すべきかと存じます」
「懸念は最もだ。 だが、カッツェとウィルには、遇を以て対応する。 あの戦力は惜しいし、奴らは自らの能力のせいで、この渦中でも、まだ判断を保留している。 こちらが敵対意志をはっきりと表さぬ限りは、当面大丈夫であろうよ」
「う、うむ…。 それは、そうかもしれませぬが…」

カッツェ、ウィルともに超人的な戦闘能力を有しているが、連中は危険に異様に聡く、やっかい事は何であれ、事前に回避してしまうという奇癖がある。
その他にも、この二人には変わった点がいくつかあるのだが、それはいずれも、彼らが幼い頃に、エイグリル将軍によって捕縛され、その能力を見いだされて、兵として強引にスカウトされた時から知られていた事実。
確かに、奴らが策謀乱れる権力闘争の渦中に、自ら飛び込んでくる事はまずなかろう。

「そして、シャルルはともかく、ユリウス王子の捕縛はほぼ目前なのだよ」
「そうで…ございましたか」
「ああ、居場所が知れた以上、奴のゲリラ戦術ももう通用せぬ」
「外部からの救援はいかがなのでしょうか? あの、弓皇王・笹神龍心の話がありましたが…」

だが、国境に配備している兵は、増員に次ぐ増員によって、陸路も海路も要所はほぼ完全に封鎖されていた。
結果、単純な出入国すらかなり困難な状況になっており、まして外界からの侵入者については、ほぼシャットアウトされていた。
よって、「笹神龍心」なる弓師…及びそれを匂わせる周辺人物についても、ほぼ入国の形跡はないとの報告だった。

「しかし、動員する兵の数に偏りがございませんか…? いくら鎧の力を使えるとはいえ、国境の警備と国内の治安に、数を傾けすぎかと存じますが」
「心遣い痛みいる、だが問題ない。 国内の治安には、カルネラ大臣が発案し、市民から徴兵した、新しい部隊を導入している」
「新しい部隊…?」

そんな人的余裕があったのか?
だがイルモードは、元々現場叩き上げの将軍であり、割と内心の喜怒哀楽を率直に表に出す。
それをよく知る部下の立場からすると、嘘を付いている様には見えない。

対外は黒龍の鎧。
国境は既存の兵士。
国内は先ほどの新規部隊。

イルモードの言葉どおりなら、なるほどこれで、バルベキア三国の治安は完全に保たれるように思える。

「以上である! クリス王子の戴冠を経て、このバルベキア三国は、真の強国へと生まれ変わる! 国民には恵みを、王家には栄光を! この大陸に覇を唱えるために、皆よ、王家のために今こそ一致団結の時!」

イルモードがそうかけ声を掛けると、女中と小姓たちが次々と、大臣達に酒杯を用意していく。
そして皆が酒杯を持つと、イルモードはその場の全員を、その底知れぬ闇と熱望を持つ瞳で見回す。 
狂気を帯びた熱が、再び全員へと伝播した。

「我らが王家に栄光あれ! …乾杯!」
「栄光あれ…! 乾杯!」
「乾杯! …この国の繁栄に!」
「乾杯! …我々の勝利に!」
「宰相の施策に恵みあれ!」

独裁者達の会議は、そのまま熱狂と共に酒宴と化す。

だが誰も、その宴の中で「黒龍の神官」である、クリス王子の事を話題にする者はいなかった。

<続く>
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