女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

Entries

「GUNNER'S HEAVEN」#1(6)-9

「しまった…」

俺が散弾Lv1を撃ち尽くす頃、ようやっと爆発の白煙は晴れたが、現出した光景に、俺は思わず舌打ちをしてしまった。

正直、やり過ぎた。

黒こげになった肉片が洞窟のあちこちに飛び散り、母親ドドブランゴは、その肉片をかき集めようとする格好で死んでいた。
死んだ後も銃撃を加えたせいか、雪獅子の毛皮までもがボロボロになってしまっている。 




こりゃ、酷すぎてJJには見せられそうにもない。
素材としても傷みすぎてて売れそうにないが、まぁ上位だし、どうだっていい。

それよりも、もう1体…。
あの手負いのが残っているはずだ。
それを倒せば、このクエストはマストオーダー達成でクリアできる。

俺はねぐらの入り口を雪で簡単にふさぐと、足取りも軽く中央エリアへと戻る。
何せ敵はもう、瀕死の1頭しか居ないと分かっているのだ、クリアしたも同然だ。

とりあえず、JJには何と言ったもんか。

…そうだ、あのドドブランゴをねぐらから引きずり出して、さも戦ったように偽装しとけば、箔が付くかもしれない。

それもなかなか魅力的な案だったが、オーダー達成を何よりも優先したかった俺は、エリア5には引き返さなかった。 まぁ、言い訳なんてどうにでもなる。

俺が確認したエリア中央(1)、4、5にあの手負いのドドブランゴが居なかったという事は、JJの方に居る可能性は大だ。
信号弾が出ていない事から、全く別の箇所…例えば麓に逃げている可能性も0ではないが、JJの性格なら、相手が1体だと分かれば、俺を呼ぶより一人で戦闘を開始するだろう。

エリア中央に戻った俺は、今度は東側のエリア2、3を確認する事にした。
一応、JJが戦闘をしているという前提で、流れ弾に当たったりしないよう、聞き耳を立てつつ近寄っていったのだが、戦闘をしている様子はなかった。

実際、エリア2を直接肉眼で確認しても、そこは何も居なかった。
今度はもう挟撃の心配はないので、そのままエリア3へと繋がる小道を通る。

…今度こそ、JJとドドブランゴが戦闘しているはず。
もう、全てのエリアを調査したのだから、間違いない。
そっと近づく俺だったが、エリア3に近づいても、予想外に静かだった。 
もしかすると、もう戦闘は終わってしまったのだろうか…?

…あれ?

だが、エリア3にも、誰もいなかった。
ドドブランゴのみならず、JJまでも。

「おいおい、アイツ何やってんだよ…!」

俺はそう軽口を叩いたが、内心不安に襲われた。
居るべきはずの人間が、居るべきはずの場所に居ない。
何か、想定外の事態でも起こったのか。

「JJ!!」

俺は慌ててエリア中央へと駆けて戻る。
とりあえず、見晴らしのいい場所で信号弾を打ち上げよう。
だが、エリア中央に戻るとそこにはJJが居り、俺を見つけると、逆に奴の方が驚いた表情をした。

「おい、JJ、何やってんだよ! 探したぞ!」
「それはこっちの台詞だ! お前、どこに居た? どこを探しても居ないから、もう既に喰われたのかと思ったぞ!」
「え、え? どういう事だよ?」

JJ曰く、エリア2~3を捜索した結果、ドドブランゴが東側には不在である事を確認したらしい。
それで2頭が俺の居るエリア4~5に集合していると直感し、俺の所へ救援に来たが、予想に反し、こっちも不在だった…と、そういう事だそうだ。

どこにも誰も居らず、信号もなかったので、捜索開始直後に俺が即座にやられ、どこかに運び去られたもの…と、そう思ったらしい。

ああ、まぁ、俺一度、エリア4から中央に戻って、そっからエリア5に入ったもんな…。
スゴい低確率だが、JJがこっちに来てても、俺と鉢合わせしない可能性は、確かにあるな。

「…そんな事、あるのか? てっきり、誰もいなくなったのかと思ったぞ」
「あるよ、よく考えてみろ。 それより、問題はそこじゃない」

問題は、俺とJJがそれぞれ、最初にエリアの東と西を調査しても、1体しか見つからなかった事だ。
つまり、全くの想定外だが、あの手負いのドドブランゴは、この山頂以外…麓か崖か、俺たちの知らない場所に逃げ込んだ、という事になる。

「何? じゃあお前、自力で1体倒したのか?」
「あ、ああ、多少手こずったがな」
「…この短時間で? やるじゃないか」

JJは肩をすくめると、俺を見る。
その訝しげな視線。 その顔には「あの銃の腕前でよくそんな早く倒せたもんだな」と書いてあったような気がしたが、それこそ気のせいだと思う事にした。

「それより、早く捜索に行こうぜ! あの一頭をさっさと沈めて、このクエストをクリアしちまおう」
「…クリア? どういう事だ? 何か確信が出来たのか? ドドブランゴは2体だけ、という?」
「あ、いや、それは… …おい、JJ!」
「どうし…!?」

俺が返事に言いよどんだ時、エリア5の方向から、ぬっと現れた巨大な影があった。
それは、あの手負いのドドブランゴだった。

だが、その形相は一変していた。

高く怒らせた肩、逆立つ背毛、口角からはフッフッと息を漏らし、右目周辺からは、血がダラダラと流れ続けている。
そして顎に付着している、夥しい血痕。

「…何だ、アレは!?」

その豹変ぶりはあまりにも異質で、JJが思わずそう口走ったのも分かる。

「何か…あったのか?」

俺にはその理由が、一目で分かった。
幾重にも浮いた眉間の皺と、血走った目、そして食いしばられて剥き出しになった歯茎は、鬼相の証。
奴は、怒っているのだ。 それも、とんでもなく。

家族を守るために、あるいは殺されての狂暴化。
これが、高難易度の所以か…。

多分、奴はどこかを経由してから、休息を取るべく、あのねぐらに戻ってきたのだろう。
そして、あの惨劇を見たのだ。
自分の妻と子供たちが惨殺されている光景を。
それを見て、今どうしようもなく慟哭しているのだ。

…直感で理解できる。
この、遠くに離れていても、辺り一面を焼き尽くさんばかりに伝わってくる憤怒。
まさに怒髪天の炎の如く逆立った体毛。
偶然だろうが、左目から迸る血液は、まるで家族を失った、悲嘆の涙のようにすら思えるのだ。

…そして、そのドドブランゴが、ふと俺たちを見つけた。

一瞬だけ交錯する、俺たちとドドブランゴの視線。

「グォ…。 オゥオオオオ…! グゥウオオオオオアアアアァァァアアアーーーッッッ!!!」

距離が遠いのと、割れた音で、最初は別物かと思った。
だがそれは間違いなく、俺達を「仇」だと認識した、ドドブランゴの怒りの咆哮だった。

----------------------------------------

場面は「雲龍の宴」亭の2階。

なりゆきから、室内での格闘戦となったシャルルとビアンカだったが、「練気」を全開にして挑むシャルルの圧力に押され、謎の弓師・ビアンカも気を練り始めた。

「ふぅうぅ…」

集中していなければ聞き取れないほどに密やかな、だが間違いのない練気の呼吸。
大剣と弓、「気」を扱う武器種同士、その錬磨の精度は気の量の多寡に現れる。
一時は素の状態で、黒龍騎士団長の自分の攻撃を凌いだ彼女。 
おそらくは、膨大な量の「気」を練れる事だろう。
シャルルは、その変化を見逃すまいと、あえてビアンカの練気を邪魔しなかったのだが…。

「お待たせ」

ビアンカが、にやりと笑って顔を上げる。

「(もう…?)」

だが、彼女の練気は、想像以上に早く終了した。
なぜなら、それはごく慎ましやかなもので、シャルルが感じる限り、彼女は下半身の経絡に多少気を流しているだけだった。
上半身もごく薄く気を通しているものの、ほぼ常人レベル。 シャルルの一撃ならば確実に破れるレベルだ。
しかし彼女とて、この状況が把握できてないはずはあるまい。

「(なら、それっぽっちの練気で十分、という事…?)」

何か策があるのかもしれないが、理由は思いつかない。
戦場を駆け抜けてきたシャルルにとって、「わざと練気しない」例は、双剣使いが強敵を相手した際、スタミナの管理のために鬼人化を最小限に留める事くらいしかなかったからだ。

だが、この短期決戦において、そんな事をする理由はない。 まして、自分の圧力からそんなに逃れ得るとでも思っているのか、とシャルルは思う。

「(ナメてくれちゃって…)」

念のために、改めて相手の練気の具合を探るが、やはりビアンカの下半身を流れる気の総量は、どんなに多く見積もっても、自分を越えない。
なら、正面からまともに打ち合っても、負ける事はまずないだろう。
ローキックから足を止めて、打ち合いに巻き込んで、連打で倒す…!

シャルルが初手にローキックを選んだのは「避けられにくい」のと「相手の動きを止める」ため。
だが、右ローを出した直後のビアンカの対応は、想像を絶するものだった。

ドロップキックでのカウンターを狙ってきたのだ。

冗談のような攻撃に一瞬躊躇するが、腕に気を集中させて、十字受けでブロック。
殺しきれない破壊力に体勢を崩され、危うく床に転倒させられそうになるが、上手く捌いて立ち直る。
距離を大きく取ったシャルルは、お互い部屋の角で対峙する形となる。

「(…早い!)」

さっきの攻撃、正直訳が分からなかった。
ビアンカは一度バックステップでローを避けてから、床の反動を効かせてすぐさまダッシュ、そこからジャンプしてドロップキックを放ってきたのだ。

だが真に驚くべきは、ビアンカはこれだけの行動を、ローを放つ一瞬でやってのけた事。
こっちの一手に対し、三手も掛けた返し技…。

ビアンカの表情には、余裕の笑みが浮いている。
その表情が意図する所は、もはや歴然だった。

小柄であるが故の、リーチのなさを一瞬恨んだが、シャルルは鋭いミドルキック、追い突きのジャブで牽制する。
彼女の鋭い牽制の一撃は、熟練の格闘士でも完全に避ける事が難しい。

だが、シャルルの攻撃は完全に空を切った。

「(…何、これ!? 早いッ!?)」

こちらの攻撃を、舞い飛ぶように回避するビアンカ。
部屋を大きく丸く使い、こちらが一撃を繰り出した次の瞬間には、視界の端に移動しているほどの、圧倒的なフットワーク。 
それは、まるで氷盤の上を滑っているかのようだった。

「ぐっ!」
「どうしたん、そんなヘナヘナパンチじゃ、ウチには付いてこれへんで~?」
「このおっ!」

相手の懐にもぐり込み、連打に巻き込みたいシャルル。
だがそのブルファンゴの如き突進を、まさにガンナーの模範のように捌くビアンカ。

なんという、圧倒的なスピード。
これが格闘戦じゃなく、「狩猟」なら、シャルルは今頃、蜂の巣にされている。
そう思うと、シャルルは今まで培ってきた団長の誇りを、皆との克己の日々を傷つけられているような気がして、頬が紅潮するのを抑えられない。

「(確かに、あの3人組が、『ビアンカ女史は足が早い気がする』って言ってた…)」

確かに言われたはずのビアンカの特徴を、今の今まで忘れていた。 それは反省しなければならない。
だが、実際に相対しているこの現象は、それ以上だ。
「鬼人化による身体能力向上」の域を遙かに越えている。

「(何で…!?)」

戦闘の最中、シャルルはビアンカの足元に注意する。
その異常な体速の秘密を探ろうとしたのだが…。

「(不思議な事に、彼女の周りだけ、時間が止まってるような感じなのでござるよ)」

あの3人組の言葉がふと脳裏に浮かぶ。
実際に見て、シャルルは戦慄に体を凍らせた。

…普通なのだ。

余計な力は入っていない。 
全く無駄な動きがない。
おかしな所は、どこにもない。

だから、逆に意味が分からない。

ビアンカの足元に注目すると、普通に歩いている。
なのに間合いを計り距離を置くと、その移動速度は尋常じゃなく早い。

…自分が、時間の流れの遅い世界に取り残されたような感覚が、本当にした。

「(何…!? どうして!? …どういう理屈なの、これ!?)」

<続く>
スポンサーサイト

*Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

最近の記事

月別アーカイブ

FC2カウンター

右サイドメニュー

ブログ内検索

ブロとも申請フォーム